21世紀記念SS 史上最大のリレーL「学園食糧難事情〜いかにして僕らは餓えに至ったか〜」VOL.3 投稿者:雅 ノボルと血を見た参加者達

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「さて、とりあえずここまでの状況をまとめる必要があるだろう」
 グリーンベレースーツを身にまとった男−シッポ−が、電子ホワイトボード
をバックに指し棒を手の内で弄んでいる。
「どうでもいい前説はいいから、さっさと始めなさいよ〜」
 気怠げな様子でそれに突っ込んでいるのは、会議室の長机に突っ伏している
ボブカットの女−長岡志保−だ。
「どうでもいいとは何だ。どうでもいいとは」
 シッポは多少出鼻をくじかれてむっとしながら、彼女に問いただす。
「………それこそどうでもいいことでしょ」
 が、志保に一言そう言い放たれただけだった。
 珍しく、シッポがストレートに志保にやり込められた現場だった。

「………えー、現在、学園内は稀に見る食糧危機に陥っている」
「………私もお昼食べてないのよね」
「そこうるさい。何故か。何故このような事態が起こったのか。………どうも
千鶴校長が絡んでいるらしい。と言うか、主原因のようだ」
「「………千鶴校長………」」
 そこで急遽会議室に集められた情報特捜部の部員達が、一斉に溜息を付く。
「………しかし、千鶴校長が絡んだ事件は今回が最初というわけではないだろ
う。何故、ここまでの大事件になったのだ?」
 いつも学食派だったこの部の部長−悠朔−もご多分に漏れず食いっぱぐれ、
廊下でうろうろしていたところを一年生部員に連れられてやって来ていた。
「それが………、何故か千鶴校長以外にも何人かが、この件に関与しているよ
うなんです」
 白衣の学者っぽい女性−シャロン−が、手にした資料をシッポの背後にある
電子ホワイトボードに映し出した。
 
『ジン・ジャザム、食料買い占め疑惑!! 背後には第二購買部の黒い影』
『校内カフェテリアが突然の休業! ダーク13使徒、遂に権力に屈する!?』
『期待の屋台は開店休業状態! 関東vs関西。ここに妥協を一切許さぬPRIDE勃発!!』
『今、水道水が危ない!! ―流れ出てくるのは死の水― 環境を考える特集第一弾』
『奥様必見! これが今のトレンドだ!! 全部見せます怪しい出店完全攻略MAP付き』

 見ただけで、何があったかすぐ分かりやすいと言えば、この上なくわかりや
すい。
 そんな電子ホワイトボードから目を逸らし、頭を抑えながらシッポは聞く。
「シャロン………。何も今から記事にするこたぁないだろう………」
「いいじゃないですか。この方が手間も取らずに楽ちん楽ちん」
 何処かうきうきとした様子のシャロンを見て、シッポは確実に頭痛が増すの
を感じた。

「何でもいいから誰か私にお昼食べさせなさいよ〜」
「誰だそこで珈琲なんぞ淹れてる愚か者はッ!!」
「部長ッ! こんな狭い会議室で魔皇剣なんぞ使うなぁぁぁッ!!」
「あ、ここをこーすると、もっと奥様向けになるかな。うん、そーしよう」

 一旦荒れだした室内は、なまじ空腹で苛立っている為になかなか沈静化へと
向かわなかった。



「所で響君、どうしてそんなにお腹が膨れているのかね? この食糧難に」
「げぷっ!(うきゅっ!)」

                              ―PM00:35

               ***

………えーと、全然話が進みませんでした………失敗(笑)
シッポでした〜。
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「我々に残された時間は、もはや幾ばくとして存在しない!! 次回の攻撃は
総力を結集してのものとなろう。総員、覚悟は出来ているな!?」
 七回目の総攻撃が失敗に終わって、ディルクセン総司令は声高々に宣言した。
いつもの議事堂で行う演説だったらきっと、みんな熱狂していたのは間違いな
いと思う、

「おー」

 でも、それに応える声はとても弱々しい。
 皆の疲労が極限に達していた。と言うものある。でも、同じ台詞を三回も連
続で聞かされている。という事実の方が、僕にはずっと重いように感じられた。
「包囲陣形を持って科学部を攻略する! 一番隊、前へ!!」
 総司令の檄に応えて、僕らは「はちがね」(そういえば、これでひどい目に
あったこともあったな……)とスタンバトンを手に取る。
 正面攻撃の第一部隊。それが僕の部署だった。はっきり言って、『死ね』と
言われたに等しいこの状況。運良く、裏手に回った本隊が、科学部に入るまで
生き延びられればいいんだけど……。

―――うおおおおおおおおおっ!!

 ヤケクソのつもりか、それとも総司令に洗脳でもされたヤツなのか、誰かの
口をついて鬨の声が上がる。
 僕も、恐怖を振り払うため、それに習う。

――――おおおおおおおおおっ!

――――やああああああああっ!

――――だああああああああっ!

 魂を響かせる音叉のように、僕たは鬨の声に応じるように声を上げ、一つの、
巨大な気勢の和音を響かせる。
 僕たちは、まるで一塊りのなにかになったかのような感覚を覚えながら、科
学部めがけて向かっていった。

「ごめんなさいっ!」
 でも、SS使いの前にはやっぱり無力だった。
「koseki! 貴様、裏切ると言うのか!?」
「僕は元々科学部の人間です!!」
 総司令に口答えしつつも、攻撃をやめないkosekiくん。彼は彼なりに葛藤が
あって、その結果として僕たちに向かってるのだろう。多分。
「kosekiの野郎…… 後でいびってやる……」
 まあ、被害者側からしてみりゃ関係ないけれど。
 かくも言う僕も、ジン=ジャザムならまだしも、kosekiくんに蹴散らされる
と言うのはちょっと…… いや、かなり…………。
「ええぃ! 裏手の工兵部隊はどうした!? たくたく! 真藤! なにをや
っとるかぁ!?」
 このとき、総司令は気付いていなかったのだと思う。
 今、学内は僅かな食料を求めて暴動が既に起こっているわけで。
……それから、真藤誠治は…………。

『食わせろおおおおおおおおおっ!!』

……マグロな、わけで…………

『助けてええええっ!』
『ええから、食わせんかい!!』
 通信機の向こうから真藤の悲鳴と、追うものたちの怒声。それに爆音が響い
てくる。向こうは、修羅場で済んだら幸いだろう…………。
「なんと言うことだ!!」
 かくして、八回目の総攻撃も失敗に終わった。しかし、今回は前の七回とち
ょっと違っていた。
「報告します! 暴徒化した生徒がカフェテリアに対し侵攻を開始しました!」
「こちら中庭! 屋台を中心とした戦闘はいまだ続行中! 応援を求む!!」
「校門前! 脱出しようとする生徒を押さえられません! このままだと被害
が外部にまで…… うわああああああっ!!」
「……げふっ! 食堂、まえ………… 謎の匂いを有する気体を確認……部隊
は全め……………」
 はるかに、ひどい状態だった。
 事態は最悪の段階にまでさしかかっている。そう、全ての人間が感じていた。

 その時だった

『――――』

 全校スピーカーが、ONになり。そして…………。

(山浦@一般風紀委員の一人称。まとめに入ってみました)


−−−

  ぴんぽんぱんぽーん♪

『ただいま、食料が到着しました。
間もなく、トラックに積まれて学園に到着します。
一応第一便のトラックは、学生食堂に到着する予定なので、間違っても襲撃し
ないように。繰り返します――』

  おっしゃああああああああああああああああああああああああっ!
  学園中に歓喜の大絶叫が轟き渡った。
  ついに飯にありつける。そう思った生徒達は、一気呵成に甦る。
「飯ぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!」
「腹減ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「第一便!?  そしたらまだ全然足らねえじゃねえか!!」
「襲撃するなだぁ!?  そんな悠長なことしてられっかあ!!」
「おそらく正門から入ってくるはずよ!  倒して一気に食料をかっさらうのよ!」
  まあ、当然のこと。
  第一便ということは、少なくとも第二便以上はある。
  全員に穏便に食料が行き渡るのが一体何時になることか、考えただけで気が
  遠くなる。
  あまりの空腹に暴徒と化した生徒達に、そんな忠告など通用しない。
  そんな生徒達の勢いを煽るかのように、宅配トラックのエンジン音が校庭に
  響き渡った。
「来た!!」
  少ない食料を我が物とする為、目を血走らせた生徒達は、トラックを待ち構
  える。

「お疲れさまです。わざわざすみません」
「いえ、これが私の仕事ですから」
  そんな生徒達をよそに、宅配トラックの中。
  女子寮管理人・牧村南を助手席に伴い走る“真心運ぶペンギン便”運転手・
  風見鈴香。
「それにしても……」
「どうしたんですか、南さん?」
  不安げな声で呟く南を気遣う鈴香。
「いえ、みなさんかなりお腹がすいてらしてますから。おそらくはかなり危険
な状況じゃないかな、と……」
「どうやら、そうみたいですね」
「えっ?……… ああっ………!」
  平然とした鈴香の口調に、ふと前を見た南の目に映ったもの。
「あんなに大勢……… どうしよう………」
「大丈夫ですよ」
  不安がる南を励ますように、鈴香がニッコリ微笑んだ。
「真心運ぶペンギン便。承ったお荷物は、何があってもお届けします」

(YOSSYFLAMEです。なんか場を混乱させましたが、如何様にも御調
理ください^^)


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