21世紀記念SS 史上最大のリレーL「学園食糧難事情〜いかにして僕らは餓えに至ったか〜」VOL.6 投稿者:雅 ノボルと血を見た参加者達

<あらすじ>
ある日、3〜4時限目の休み時間にみやびん達が目撃したのは、寸胴鍋を
抱えた千鶴校長の姿………
噂はあっという間に全校生徒……… いや校内の全員に伝わり、わずかな
食料をめぐってのバトルロワイヤル(を)な昼休みが始まった!
あらゆる思惑がめぐる試立りーふ学園のお昼に、騒乱と言う名の疾風(かぜ)
が舞う!

−−−−−


 ……ヒュオオオオオオ……。

 地上が、一部を除いて阿鼻叫喚の様相を呈している頃、学園の遙か上空では、
一艘の巨大飛行船が優雅に滞空をしていた。
「……うん、たまにはこんなのも悪くないわね」
 窓の外を吹き荒れる風の音も完全にシャットアウトされた室内で、
優雅にティータイムなど楽しみながら、来栖川綾香がくすりと微笑んだ。
 室内には他にも、数人がくつろいでいる様子が見て取てとれる。
「ホントは、こういうのって趣味じゃないんだけどさ」
「………………」
「みなさんに悪い気もします、って? まあ、仕方ないんじゃない?」
 ミニテーブルを挟んでそんな会話を交わす来栖川姉妹の間では、松原葵が
がちがちに緊張しつつ湯気を立てるティーカップをじっと見据えていた。
「ほら葵、せっかく呼んであげたんだから遠慮しないの」
「で、でも私、こういうところ初めてで……」
「大丈夫よ。舞踏会でもあるまいし……みんな制服か私服でしょ?」
 その綾香の言葉に葵がのろのろと顔を上げると、自然と耳に会話が飛び込ん
でくる。


「本日はお招きいただき、ありがとうございます☆」
「いえいえ。立川様が芸術に大変造詣が深いと、高倉宗純様の強い要望もござ
いまして。雄蔵殿も、ごゆっくりくつろがれるがよろしかろう」
「…………うむ」
 セバスチャンと立川兄妹が、挨拶を交わしている。


「……はぁ、いいですね……こうやって、みんなで楽しむお茶というのも」
「ええ、できることなら生徒全員を招待したかったのですがね……」
 高倉みどりと足立教頭が、にこやかにお茶を楽しんでいる。


「はっはっは、人がゴミのようだねぇ」
「ちょっと兄さん! そう言うこと言って誰かに聞かれたらどうするのよ!?」
「り、理奈ちゃん、声が大きいよ……」
 緒方兄妹と森川由綺が、いつもと変わらぬ様子を見せていた。


「それで、どうですか高倉さん? 最近の絵画や陶芸で、華開きそうな新人は?」
「……おらんね。見込みのあるのが一人いたが、今は漫画など描いておるらしい」
 長瀬源五郎と高倉宗純が、とりとめもない会話を交わす。


 そんな中(葵には知らない顔も多々あった。とゆーか、ほとんどが初対面だ)、
葵の目に留まった人物が、一人いた。
 ガチガチに緊張した全身と表情など、まるでそっくりである。
 とはいえ、容姿や髪型などには全く共通点はない。

「あ……」
「え……?」

 目が合った。
 お互いに、ぎこちない表情で。
 お互いに、泣きそうな表情で。
 そして、思わず笑ってしまった。
 自分だけじゃないんだ、と。

「ほら、行ってあげなさいよ」
 綾香に背中をこづかれる葵。
 ちらりと振り返ってから、こくんと一つ。

 前を向いたとき、彼女はすっかりいつもの雰囲気を取り戻していた。
 目があったその女性に向かって、早足で近寄る。
 そして、声をかけた。

「あの……こんにちは、はじめまして!」
「は、はじめまして……!」

 その女性……桜井あさひは、固さの取れた、それでいて多少固い。
  そんないつもの表情で、ぺこりとお辞儀をしてみせた。


(ここまでティー2周目です。ブルジョア万歳(笑))


−−−

「……お姫様達は、優雅に空をお散歩中ですか……」

 珍しく開け放たれたオカルト研究会の部室の窓枠に腰をかけ、皇日輪は空を
見上げていた。
 そしてため息一つつく。
 たったそれだけの間に芹香達を乗せた飛行船は雲に隠れて見えなくなってし
まった。
 また一つため息をついて今度は地上の方に視線をやる。

 …………。

「…………ちゃちゃちゃ〜、ちゃちゃちゃ〜、ちゃちゃちゃちゃちゃんっ」
「カッコつけてるのかと思ったら、なぜいきなり『天国と地獄』。しかも判り
にくいよ」
「現状にもっともふさわしいと思わない? 東西君?」

 言いながら、窓枠から降り、ついでに後ろ手で窓とカーテンを閉める。

「まあ、留守番をする代わりに安全地帯にいられるわけだし……これくらいは
別に良いんじゃない?」
「にしても不謹慎だと思うよ。 みんながあんなに困ってるのに」
「腹が減った程度であんなに騒ぐのは、修行が足りない証拠です」
「修行ってなんだよ。 修行って……」

 修行は修行です……っと笑いながら言う皇に東西は半ば呆れた様子で食べ掛
けだったお茶請けのくり饅頭を一口、口に入れる。

「でも、留守番と言ってもなーんにもすることがないけどね」
「そうそう。 僕らがなにかする前に『先輩』たちが大抵のものは追い払って
くれますしね」

 皇もそう言ってお茶請けに手を伸ばす。

「……ちなみに聞くけど……見えるの?」
「いえ……残念ながら気配を感じるだけです。 ……自信無くしちゃいます、
僕」

 その『先輩』達がいるであろうはずの虚空を見つめ、お茶請けをかじる。

「……っと、そういえば……『先輩』で思い出した」

 ごそごそと、東西は小瓶を取り出した。

「そこの大量の茶菓子といい,その瓶といい……どこにそんなに直しこんでる
んだか……」
「うるさいな。 別に四次元から取り出してるわけじゃないから安心してくれ」
「……四次元じゃなさそうだから気になるんじゃないですか」
「とにかく、今はこの小瓶の話」
「はいはい、この小瓶ね」

 東西が取り出した小瓶には紫色のなにやらどろりとした液体が入っていた。

「なんですか、これ? やけに厳重に封印がしてあるみたいですけど……」
「ん、だから、来栖川先輩からの預かり物」
「……ちょっと貸してください」
「いいけど……割るなよ?」

 東西から小瓶を受け取る皇。

「よく……わかりませんね。 封に何か書いてあるけれど……擦れて読めない
し……」
「『渡しそびれたから、渡してください。多分取りに来るはずだから』と言わ
れて預かってるんだけど……」
「……誰に渡すんです?」
「……聞きそびれた」
「こらこら」
「まあ、『取りに来るはず』ですから……ここで待ってれば何とかなるんじゃ
ない?」
「……それまで、お茶でも飲んでなさいってことですかね?」
「そーいうこと」

 そう言ってのん気にお茶を飲み出す二人。
 だが二人は気づいていなかったのだ。
 いつのまにか、周りから『先輩』達の気配が消えていることを。
 この数分後には『最後の仕上げに必要な材料を忘れちゃったっ☆ ちーちゃ
んのオマヌケさんっ☆』とか
言いつつ、部室の扉が、ある女性によって開かれることを。



 ……本日の千鶴先生被害、二名追加。


(人間用の文章を書くのって久しぶり……ここまで、皇でした(笑))

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 罵声と怒号。
 喧騒。
 肉を打つBeat。
 そんなものは遥かに遠い。
 それがほんの、わずか数mの距離であろうと、意識から締め出してしまえば
それは遠い世界の出来事。
「トコトノカジリっ!!」
 誰かが放った音声魔術が、また爆音をあげる。
 その光と余波が顔を撫でる。
 髪が風にそよぐ。
 今は最強の鬼神と称される柏木耕一が詰めているのに加え、柏木の鬼娘が三
人も控えている。
 その取り巻き連中までぞろぞろと彼女達を護るためと言って警護に当たって
いるのだから、彼に出番が廻って来るはずもない。
 食を欲する者達は、ただ掃討されるのみだろう。
 じっと手もとの、弁当の入ったビニール袋を虚ろに眺めていた目が、ふっと
視線を上げた。
 天空を行くは大型の飛行船。
 今は大きな、ディフォルメされた熊の顔が描かれている方の腹をさらしてい
る。その反対側には『Kurusugawa』のロゴが打たれているはずだ。
「……ここにくれば、せめて食事くらいは一緒に出来ると思ったのになぁ」
 ここ。
 即ちエディフェル屋上。
 食に満たされた最後の楽園。
 呟いて、嘆息。
 ごそごそと胸元を探り、メモとペンを取り出す。
『こんなにも想う貴方は蒼穹の彼方
 君への距離は測れないほど遠い
 手を伸ばしても幻さえ掴めない
                        午後のポエム』
 しばし黙考し、吟味する。
「……イマイチ」
 飛行船に乗っているのを『蒼穹の彼方』と形容すると、すでに亡くなった人
を想っている唄に見えてくる。
 これは非常によろしくない。
 だが、
「かといって他にいい形容も思い浮かばないし……」
 また嘆息。
 ――メシにするか……。
 腹が減れば気が滅入ると言ったのは誰だったか。
 とにもかくにも食事をとって、午後の授業に備えなくてはならない。
 ビニール袋から取り出した弁当箱――タッパ――を膝の上に置き、蓋を開け
る。
「ふ、腐敗してるぅ〜〜〜〜〜〜〜!?」
 購入した時には確かに、綺麗な束になっていたはずだった。
 それが今は、見る影も無くちぢれ、絡まりあっている。
 ゴクリと、喉が鳴る。
 ――落ちつけ……。これは腐敗じゃない。そう、発酵してるんだ。
 自分に言い聞かせ、鼻を近づける。
 匂いに問題はない。腐臭はしない。ならそれでいい。
 今更もう、細かいことなど気にする必要があろうか? いやない(反語)
 続けて袋から紙コップと割り箸を取り出す。
 密封されていた紙コップのシールをはがすと、カツオ出汁のいい匂いが辺り
に広がった。
「いただきます」
 両手を合わせ、軽くお辞儀をする。
 格闘家たるもの、どんなときも礼儀は忘れない。それが武徳というものだ。
 わずかな緊張を伴う一口目。
 出汁に浸し、一気にズルズルと飲み下す。
 ――ソバは喉ごしが命だよな。
 と、自分に苦しい言い訳をしつつ、とにかく飲み下す。
「!?」
 一瞬、己の味覚を疑った。
 ――う……美味い!? ば、そんな馬鹿な!?
 少なくとも不味くはなかった。
 想像していたよりは数段美味いと言わざるを得ない。
 ――なんでこんなもんが美味いんだ?
 見た目は黒く細長い。
 黒い、というのは食欲を減退させる一因かもしれないが、烏賊スミスパゲテ
ィや炭ソバ――活性炭は体に良いのだそうだ――なんてシロモノもあるのだか
ら、別に驚くには当たらない。
 ――もしかしたら名前だけで、ただ黒く着色しただけのソーメンだった……
ってことか?
 続けてズルズルと、今度はしっかり味わって食べる。
 やはり悪くない。
 舌を刺激するような味もないし、恐らく危険はないだろう。
「こうなると薬味が欲しいよな」
 気分的に余裕が生まれたせいだろう。少し贅沢を言ってみる。叶えられない
のが残念だ。
 しっかりと最期の一本まで食べ尽くし、彼は大いに満足し、大きく息を吐き
出す。
「ふぅ〜〜……う?」
 不意に、胸の奥から不可思議な欲求が生まれた。
 叫びたい。
 この思いを。
 この場に居る総ての人に聞いてもらいたい。
 誰にも、止められない!
 思いが口から叫びとなってこぼれ出る。
「アフロで……アッミ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ゴッ!!」


 そして神が降臨した。


 狂乱絵図と化した屋上の景色も知らぬげに、その片隅に少女――悠綾芽――は
座り込み、ポツリと呟いた。
「ママも待ってるのに、パパ来ないよう……」


 その頃、校舎内某所。
「部長……。生きて……ますか?」
「…………」
 返事が無い。ただの屍のようだ。


                      <度胸の3ターン目:悠朔>
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「と、いうわけで。千鶴校長が何やってんだか知らないけど、毒物巻き散らか
してる現状を、見過ごせないのよねぇ、校医の私としては」
 第1保健室に集められた有志……… と言うか強引に集められた連中。
 まず………
「響子センセ、なんで私が引きずり出されるんです?」
 ディフォルメチックな犬の着ぐるみに、同サイズの白衣を羽織ったみやびん
こと学園一の着ぐるみ師、雅ノボル。その声は空腹のせいかどこか力ない。
 その隣では………
 かきかきかきかき……… とん。
「えーと、なになに……… 『お声がけくださいまして、ありがとーなの』だ
そーで」
 初代着ぐるみ(?)生徒のがちゃぴんちゃんである。(本邦初登場?)
「あんた達二人がいないと、今回はどーにもならないのよ」
 などと、あらゆる薬品、解毒剤をボストンバックに詰めこみながら言う響子
さん。
「………なぜです?」
 みやびんが疑問に思って呟くのと同時に、がちゃぴんもボードに大きく?マ
ークを書いて掲示する。
「あんた達の着ぐるみ、そりゃもう丈夫な上にハイテク満載よね?」
「えぇ……… そりゃーもう、コイツにはある程度金かけてますからね。ちょ
っとした気密服にもなりますし、体外機さえあれば冷房暖房思いのまま。視覚
センサーもいろいろと遊んで、暗視装置やらホロビュアーいれてますよ」
 かきかき……… ぱっ。
「………右に同じ。もっともこっちは宇宙服なの。だそうで」
 がちゃぴんのかわいらしい丸文字日本語を、音読するみやびん。まぁお約束
ってことで………
「そう、それを聞いて安心したわ」
 響子さん、笑って答えるが、実のところ目はマジ。これから行く先の状況を
考えれば当然とも言えなくない。
「で、あたしらは何の為に?」
「あたしだって、もう高等部の人間じゃないのに………」
 柏木梓に江藤結花、某所では柏木家の取り替え児だの、互いに互いのパチモ
ン呼ばわりされてるらしいが、若干の差異(カチューシャ・部活・胸)はあれど、
似たよーなキャラが為に、親近憎悪もあいまって居心地が悪いらしい。
「あんたたち、身内の罪は身内でかたつけて貰わないとねー」
「ぐっ! もしかして、千鶴姉かぁ!?」
「あたしは関係無いぃぃぃぃぃ!」
 梓は本当に身内であれど、結花に至っては身内どころか赤の他人の校長先生
だのに、と思うのは何もここにいるみやびん達ら高等部の面々だけではない。
「冗談よ、江藤さんには後始末と寮の台所の守護神としての力を貸して欲しい
のよ。いい加減に、このバカ騒ぎを静めないと………」
 有無を言わせぬいい方で、保健室の壁に隠し設けてあった保管庫から、厳重
に封印され、滅菌されていたゴーグルにガスマスクと暴徒鎮圧用のライアット
ガン、火焔放射機代わりのアセチレンバーナーとボンベを人数分取り出して、
自分と梓と結花に渡す。
「わっ!? わぁぁ!? なんでこんなものが保健室にっ!?」
「くっそー、あのドジ姉めぇ〜〜。身内が苦労するってのに!」
 手渡されたものがマジなのに驚く結花と、手馴れた様子でいやいやと扱う梓
が対象的すぎ。
「雅君にがちゃぴんちゃん、あんた達の武装は?」
 響子先生の恐るべき物言いに、みやびんは黙って自分のブツを見せる。ポン
プアクションの改造ガスライフルだった。
 駆動のガスは超高圧縮炭酸ガスを使った、泣く子も黙る本気仕様。弾頭はB
B弾ならぬ、釣りのおもしで使う鉛玉の散弾という極悪な代物である。しかも
この通常弾頭のほかにも、化学焼却用のケミカル反応焼夷弾を用意してる。
「へい、一応言われたとおりに持ってきましたよ。がちゃぴんちゃんは………」
 『○ぇーざーらいふるもってきましたなの』と書いたボードといっしょに、
未来的な形のライフルを見せる。やっぱり宇宙人だし。(笑)
「さてみんな。今回の目的は知ってのとおり、また柏木校長が騒動の元らしい
んだけど、困った事に食堂でも何かやらかしてるわけ。きっと、あの人がなに
かするとなると………」
「食堂、汚染されまくってますな」
 みやびんがあっさりと言いきる。他の人間も大体の事情は把握してるせいも
あって、状況は想像に難くなく苦い顔。
「話に聞いたところ、有毒ガスが出てるとか……… もうどのみち時間も無い
し、暴徒と化した生徒が、このまま学校外に出て暴食の限りを尽くすってのも、
あんまりいいこっちゃないし。というわけで………」
「いやです(どきっぱり)」(×3ぷらす文字で1)
 全員が力の限りいやがったが、響子先生は無情にもみんなの拒絶を無視して
言い放った。
「私達で、食堂をまずなんとかしないと………」

「あうううう……… 結局食堂前に来てるし」
 器用に着ぐるみからも涙がちょちょぎれてるみやびん。ちなみに、みやびん
も着ぐるみ用のガスマスクとゴーグルに、汚染防止服を着た上で、各種武装と
マグライトを構えて、列の一番先頭を歩かされている。
 もちろん役目はみんなの楯。(笑)
「不幸だぁ!」(涙)
「うるさいっ! あんた達だけじゃまずいから、私だって来てるのよ。男だっ
たら文句言わない!」
 列の後ろから2番目の響子先生がうんざりしながら言う。
 状況は、言わないでも「最悪」の一言だ。
 食堂の周りには暴徒と化した生徒と、それを押さえるべく立ち向かった風紀
委員と思しき生徒、すべて食堂から発生する紫色の毒々しい煙というか、ガス
に捲かれて倒れている。
「なんだかマスクしてても息苦しい………」
「アンマリ気にしない方がイイネ、結花サン。時には無視も止むナシダヨ」
 列の真ん中にいるのは宮内レミィ。
 あのあと響子先生につかまって連行……… もとい、協力を仰ぐ事とあいな
り、この場にいるわけである。
 当然、愛用の和弓と暴徒鎮圧用のライアットガン、ガスマスクにゴーグルは
自前のものだったりする。アメリカ人ってこれだから………(笑)
「あんまり息苦しければ、酸素ボンベを渡すから……… ほら雅君、早く先へ
進む!」
「はいはい……… 梓先輩、レミィに結花さん、それからがちゃぴんちゃん、
お先にぃ………」
 ため息一つついて、先行偵察にいくみやびん。暫くして………
「キャインキャインキャイン!!!」
 あちこちかじられた跡をつけられたみやびんが、食堂の厨房から四足全力疾
走で帰って来た。
「ミヤビン!? ドーしたのっ!?」
 レミィがさっそく犬の着ぐるみの元へ近寄ると、すごく驚いたような顔に変
わって呟く。
「Reary………? ひどい姿だヨ。あの中に何がいるノ?」
「だいじょうぶか雅!? うわっ! なんだこりゃぁ!?」
「齧られた……… あとっぽいけど………?」
 レミィの様子に慌てて近寄って、みやびんの姿を見る梓と結花。お互いのそ
の顔色は、良いとは言えない。
『にしては、なんだか人間サイズっぽいの?』
「この歯型は……… ネズミね? 雅君、気密は大丈夫?」
 急いで救急キットを取り出して負傷箇所を直していくがちゃぴんと響子先生。
「きゅぅ……… わん、わんわんわんわわん!」
 ボイスチェンジャーが入ってしまったのか、いくら喋っても犬語だったりす
る。
「雅君、びっくりしたのは判るけど、ボイスチェンジャーを切りなさい!」
 響子先生に言われて、のどもとの首輪にあった鈴をいじくって、ボイスチェ
ンジャーを切る。
「ひ、ひ、ひ、人形のネズミらしき物体とか、でろでろでぬちゃぬちゃでぐと
ぐとでヘモヘモな物体とか………」
『気密は大丈夫みたいなの。齧られたのはパンヤのところまでで、素体までダ
メージ入ってないみたいなの』
 ひとまずがちゃぴんのスキャン結果を見て、安堵する響子。
「一人安心しないで下さいよぉぉぉぉ! すっげー怖かったんスから! なん
だか外よりも気温低いし、殺気がするしで……… 殺されるっつーか喰われる
かと思った………」

 一体何がこの中にある!(笑)

(みやびん2週目です。とにかくかたつけ無いとねぇ、でもおわらねぇよぉ(涙))
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※ いやはや、中10日ほど空いてしまい、すいませんでした(汗)