21世紀記念SS 史上最大のリレーL「学園食糧難事情〜いかにして僕らは餓えに至ったか〜」VOL.7 投稿者:雅 ノボルと血を見た参加者達

ある日、3〜4時限目の休み時間にみやびん達が目撃したのは、寸胴鍋を
抱えた千鶴校長の姿………
噂はあっという間に全校生徒……… いや校内の全員に伝わり、わずかな
食料をめぐってのバトルロワイヤル(を)な昼休みが始まった!
あらゆる思惑がめぐる試立りーふ学園のお昼に、騒乱と言う名の疾風(かぜ)
が舞う!

――このままっ!
 願いを込めて、鈴香はハンドルを切る。
 ここへ来るまでの普段馴れた…… しかしいつもに増して長い道程、いくつ
もの障害があった。

 生徒の群とか生徒の固まりとか生徒の残骸とか。

 それら全てを、彼女と、彼女の相棒――ペンギンマークの軽トラック――は
文字通り粉砕しつつ、進んでいった。
 勝利の証を(タイヤに)赤々しく輝かせ、彼女は進む! プロの意地に賭けて!
(そう、私はプロの運送屋。一瞬でも早く、お客様に荷物を届けるのが仕事で
す………… 真心をこめて!!)
 奪われた第一便の事は、既に彼女の中では決着がついている。そう、プロに
とって、その程度の感傷は不要なのだ。
(……雀鬼の仕事が来たら、最後に回しましょう……)
 勿論、彼女をしてもプロに徹しきるのは難しいが。

 とにかく、この永かった道程もあと二つのカーブを曲がれば終わる。第一購
買部に食料が入れば…… 食い物の確保さえ出来れば、生徒の心にも余裕が生
まれるだろう。
 そしてその余裕は、障害の軽減にも繋がる。
(……そうすれば、大型トレーラーを使って搬入が出来る筈。アメリカ製のモ
ンスター級なら、三回で生徒全員分の食料を運搬できます!)

―――勝った!!

 ラスト二のカーブを曲がりきった瞬間、彼女はそう確信した。その時である。

ぼむ

 間抜けな音がしたと思った瞬間、フロントガラスが漆黒の闇に覆われた。
「な、なんですか!?」
 前面を覆う闇……”何か”が、上空から落ちてきた何かがフロントガラスに
へばりつき、視界を奪った。

――わきゃわわきゃわきゃわきゃ

 しかもその闇は、ちぢけた、細い、真っ黒な……そして、一本一本がうねう
ねと動く………… そう、アフロだった。
「アフロ同盟!? くっ、油断ですか」
 もしも、アフロ同盟が勢力拡大を狙っているのなら……そう、この食糧難の
瞬間がなによりの機会だ。幾ばくかの者は仕方なく食用アフロを買うだろう。
そして…… アフロに呑まれるのだ…………。
「どいて下さい! わたしは進まねばならないのです! どうしてもと言うの
なら……」
「HAHAHAHAHA!! ドーすると言うのデ〜スか。車をブつけてモ、
ワタシのアフロにはキキませんヨ〜!」
 予想した応え……しかし、鈴香には違和感が残った……そう、台詞は確かに
TaS…… というか、アフロ特有のものだったが………… 声が、違う。
「シ・カ・モ〜! 日頃鍛えタこのワタシの柔道なラ、こんなトラック、五秒
でオしゃかデ〜ッス!!」
 真っ黒なアフロの中から見え隠れする純白の柔道着……そう、この男もまた、
アフロに呑まれた犠牲者なのだ。
(……私の、力不足で……)
「HAHAHAHAHA〜!! アフロDE! ア・ミーゴ!! コんなス〜
ばらしい世界を皆に広めるのデ〜ッス!!」
 交渉する山浦を哀れげに見上げ、鈴香は覚悟する。
(もう、こんな犠牲者は出しません!!)
「せあああああああああああああああああああああっ!!」
 裂帛の気合い。そして、ありったけの力でアクセルを踏む。
「HA〜? ムダとイッたのが聞こえマセンデしたカ〜?」
 訝しげな山浦を無視して、軽トラックに出来る最大速度で最終カーブにつっ
こみ…………。

―――ぷち

 潰した。

「山浦さん! 貴方の犠牲は決して無駄にしません!!」
 なんかみょ〜に晴れやかに鈴香は微笑み、そして第一購買部倉庫にトラック
をつけたのだった。

               <事態の収拾は近いか!? 山浦でした>
               <追記:ひげさん、悠朔さん、覚えテロ>


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 食料の争奪戦が、各所で繰り広げられている頃。
 ある程度騒ぎの収まった校庭で、倒れてる二人の男がいた。
 暴徒と化した生徒たちを止めようとして失敗した、岩下信とセリスである。
 そこに近づく、一組の男女。
 冬月と綾波である。
「…岩下さんに、セリスさん?生きてます?」
「…ぐ…?」
「あ、ああ…。なんとか…」
 辛うじて、身を起こす二人。
 流石に、SS使いなだけあって、タフなものである。
「…大丈夫ですか、岩下様?」
「大丈夫だ。それより、今の状況は?」
「各所で暴動が起こっています。先ほどのトラックは辛うじて目的地に向かっ
ているようですが、いつ略奪されてもおかしくありません」
 綾波の答えに、即座に反応する二人。
「瑞穂君が!!」
「マルチが!!」
『危ないっ!!』
 最後だけ、ハモっていたりする。
「…それは、彼女たちの身がですか…?それとも、食料がですか…?」
『両方に決まっているだろう!!』
 またハモる。
「…そうですか…」
「こんなことをしている場合じゃないぞ、冬月!!ジャッジの名にかけて、彼
らを止めなくては!!」
「…どうやって…?」

 ひゅ〜…。
 風は、何故か冷たかった。

「…な、なんとしてもだっ!!とにかく、この騒ぎを収めないことには、どう
しようもないだろう!!」
「そうですね。でもその前に、現状を正確に把握しないことには…」
「確かに…。とりあえず、本部に戻って対策を練ろう。その時間があればいい
が…」
 そう言って、動き始めたセリスを冬月が待ったをかけた。
「まぁ、落ち着いてください。腹が減っては、戦は出来ないでしょう?」
 そう言い放つと、岩下とセリスに向かって何かをほおる。 
『…こっ、これはっ!!』
 ただのカロリーメ○トだった。
「一人一本しかないですがね。無いよりましでしょう?」
『助かる!!これだけでも「マルチ」「瑞穂君」にっ!!』
「大丈夫ですかね…?」
「…さぁ?」
 呆れ顔の冬月と綾波を尻目に、二人は勢いよく戦場へと戻っていった。
 その後ろを、冬月と綾波はカロリーメ○トをかじりつつついていくのであった。


     <ここまで、冬月です。…事態の収拾しようとして、失敗?(笑)>

-*-*-*-*-*-*-*


「このチャンスを見逃す手はないわよ!」
 一年生棟、リネット。
 その屋上でマスターア○アよろしく仁王立ちしているひとりの少女がいた。
 彼女の名はスフィー。
 見た目小学生のボインボインな21才だ(意味不明)
「この騒動を治める事ができれば、レザムヘイムとの『どちらが学園を平和に
できるか』の勝負で大きな差がつけられるはず!」
「それはそうだけど…… 姉さん、アテはあるの?」
 リアンの心配はもっともだ。
 これまで学園中の猛者達が壮絶に散っていくのを見てきた。
 果たして彼女達にこの大役が勤まるのだろうか。
「大丈夫大丈夫! あたしのぐれーとな魔法にかかればこんな騒動のひとつや
ふたつ!」
 こんな騒動がふたつも起こってはたまったもんではないのだが。
「こんな事もあろうかとグエンディーナから持ってきた魔法のアイテム!」
 スフィーは足元に置いてあったリュックから一枚の大きな布を取り出した。

 ぱぱぱぱーん
「魔法のテーブルクロス〜」(ドラゑもんの声でお楽しみください)

「それは……?」
「これは童話で有名なテーブルクロス。なんと、テーブルにかけて『テーブル
よ、食事の用意!』って言うだけで豪華な食事が出てくるんだよ! スゴイで
しょ〜」
 それ、姉さんの魔法ちゃうやん。
 なんとなく関西チックなつっこみを心の中でいれてしまうリアンであった。
「さーて、実際に試してみよ〜。えーっと、テーブルテーブル……」
「姉さん、ここ屋上よ?」
 こんな場所にテーブルがあるわけがない。
 ひゅるりら〜と乾いた風がふたりの間を吹き抜けていった。
「わざわざこんなところに来ないで五月雨堂にいればよかったのに……」
 おかげで暴動に巻き込まれたりなんかして、実は結構満身創痍。
「う、うるさいわね! こーゆーのは雰囲気が重要なのよ!」
 要約すると、馬鹿と煙は高いところに登るという意味だ。



「ん、そこにいるのは誰だ?」
 弁当の生米をぽりぽりかじりながら散歩をしていた秋山は(流石に生米を盗
って食おうというワイルドな方はいなかったようだ)校庭の隅になにやらうご
めく人影を見つけた。
 ゆっくりと近づいてみる。
 そこにいたのは──
「なんだ、ティーナか」
 そう、汎用人型決戦強制平和押付魔道兵器こと、ティーナだった。
 どうやらOLHや笛音との食事は終わったらしい。
 それはそれでいいのだが、何か普段とは様子が違う。
 例えば17歳バージョンである事とか、魔法少女の衣装の代わりに百姓ルック
に身を包んでいる事とか、クワを片手に畑を耕している事とか、顔に付いた泥
をぬぐって「ふぅ」と額に流れる汗を健康的に光らせている事とか──些細な
事ではあるが。
「何してるんだ?」
「今学園は食糧難でしょ? だからボクは飢餓に苦しむ哀れな愚民どもに救い
の手を差し伸べてあげようと思って……」
 無邪気で純粋な笑みが愛らしい。
「おお、やはり政府の減反政策は間違っていると思うか。偉いぞティーナ、頭
をなでてやろう」
「えへへ〜」
 だが、秋山の手がティーナの頭を撫でる事はなかった。
「ちょっと待てぇぇぇぇぇ!」
 ほのぼのとした空気をぶち壊す怒号。
 それは汎用人型決戦哀愁不幸格闘兵器こと、ルーティだった。
「お姉ちゃんも撫でられたいの?」
「違うっ!」
 もう、照れ屋さんなんだからぁ。
 本当は撫で回せされてみたいくせにぃ。
「あたしが言いたいのはね、そんな畑なんか作ったところで、収穫までに何ヶ
月もかかるから意味がないって事なの!」
 すぐに変な言い訳を言う。
 まあ、そこがルーティのいいところなんだけどね。
「そうよティーナ。少しは科学的に考えなさい」
 そうこうしているうちに、汎用人型決戦難解思考回答兵器こと、マールまで
やってきた。
「今の食糧難に対応しようと思うなら、作物にこの(自主規制)を投与しないと
間に合わないわ」
「ああっ、姉さんまでヤバイ事言ってるし!」
 しかしティーナはマールの申し出を断った。
「大丈夫だよお姉ちゃん。ボクには魔法があるんだから!」



「リアン! こっちにテーブルの代わりがあったわよ!」
 これが?
 リアンは絶句した。
 それはダンボール箱だった。
 しかも長い間屋上で雨風に晒されてきたらしく、表面はボコボコに歪み、汚
らしいシミができている。
「よーし、じゃあ早速テーブルクロスをかけてと」
「姉さん、素直に五月雨堂まで戻った方が……」
 もちろんスフィーは聞く耳持たない。
「いくよ! テーブルよ、食事の用意!」
 ぽわん
 そんな擬音と共にダンボール──もといテーブルは煙に包まれ、その煙が晴
れると……
「……」
「……」
 確かにテーブルの上には食事が用意されていた。
 しなびなさつまいも、もやし、カチカチの干し肉。
「清貧ってやつかな?」
「あたしに訊かないで、姉さん……」
 どうやらテーブルの状態が出てくる食べ物の質を左右するらしい。
 しかし…… いくらなんでもこれは酷い。
 あの雛山家だってここまで貧しくはないはずだ。
 いや、確証はないけど。
「でもこれを見てると…… 一杯のかけそばの話を思い出すよね」
「そ、そう?」
「家族で一杯のかけそばを分けて食べる…… ああ、なんて優越感に浸れるい
い話なんだろ!」
 所詮ブルジョワ階級には貧困の苦しみなどわからんのだ。
 パンがないならケーキを食え。
「でもその後の展開がまた凄いんだよね。全財産投げ打って出前寿司を頼む。
そして、お腹一杯食べて一時の幸せを噛み締め、子供達が寝たのを見計らって
ガスの元栓を……」
「違う! それ絶対話が違う!」
「でもガスは既に止められてて、一家は死ぬ事ができなかった。これはきっと
神様が生きろと言っているに違いない。そう悟った一家は再び生ようとする」
「ふぅ、良かった……」
「でも、神様は神様でも地獄の魔神だったのよ! 膨れ上がる借金、見つから
ない仕事、病に倒れる子供達…… 耐え切れなくなった一家は、ついに立ち上
がる。この病んだ社会を粛清するために!」
「えええっ!?」
「飛び交う弾丸、飛び散る肉片、阿鼻叫喚の地獄絵図──一家は日本を武力制
圧し、ついに全ての元凶、アメリカへ宣戦布告する……」
「姉さん! 帰ってきて姉さんっ!」



「確かにあっという間にできたね、作物」
 ティーナ達4人の前にはたわわに実った作物が並んでいた。
「でしょー? ボクの魔法にかかればこーんな事朝飯前なんだから! 見直し
た? ルーティお姉ちゃん」
「うん、凄いのは認める。でもね、でもね……」
 ルーティの肩がぷるぷる震える。

「なんだこのデカイ野菜はっ!」

 確かに通常よりはちょっとでかかった。
「ちょっとか!? これがちょっとか!?」
 ルーティが全長3メートルはあろうかという大きさのピーマンを振り回しな
がら絶叫する。
「いいではないか、この生米はかじりがいがあるぞ」
 ラグビーボール大の米粒をぼりぼり噛み砕きながら爽やかな笑みを浮かべる
秋山。
「やかましい!」
「大丈夫ですよ、ルーティ」
 場を治めようと、マールはルーティの肩に手を置いた。
「ビオ○ンテはゴ○ラ並の大きさなんですよ。それ比べれば可愛い物じゃない
ですか。それに国語でならった『おおきなかぶ』を実体験できますよ。わぁ凄
い」
「そーゆー問題じゃなーい!」
 ルーティが切れた。
 いつもの事だけど。
 ドスンと地面を踏み鳴らす。
「ティーナ! 前々から言おうと思ってたんだけど、あんたは……」
 その時だった。
 地面がぐらぐらと揺れだしたのだ。
 地震──ではなかった。
 少し離れたところにある校舎はまったく揺れていない。
 この場所だけが揺れているのだ。
「な、何が起きているの!?」
「ティーナ! あんた一体何を……」
 ぼこっ
 突如、ルーティの足元が盛り上がった。
「なになになになに!?」
 現れたのは巨大な卵。
 それは現れるやいなや、中央にひびが入ってまっぷたつに割れ……
「くけーっ!」
「わーい、鶏が生えた〜」
「動物を栽培するなっ!」
 これはマールの頭脳を以ってしても見抜けなかった。
「有機肥料で育てたから肉もやわらかくておいしいよ?」
「うるさいうるさいうるさい! とにかくこんな大きな鶏は……」
「テッド〜!」
「ん?」
 こちらに駆けてくる三人の影。
「こんなところで再会できるなんて!」
「元気でしたか?」
「相変わらず目つき悪いな。金に汚いもの健在か?」
 仮眠館で崩壊した幻八はさておき、とりあえずエリアが遠のく意識の中でかけ
た魔法でなんとか復活を果たした、とってもずるい勇者さまご一行だった。
「テッド……?」
 ティーナ達四人にはさっぱり訳がわからない。
「ああ、テッドというのはですね……」
 良識派、エリアが待ってましたとばかりに説明をはじめる。
「フィル○ノーンにおけるチョ○ボ」
「ああ、凄くよくわかった」
「しかしなんでこんなところにいるんだ? あっちの世界から来たのはあたした
ち三人だけだったはずなんだが……」
「そんな事いいじゃない。せっかく再会できたんだから、また背中に乗せてもらっ
て……」
 がぶ
 ティリアはテッド(仮)に噛み付かれた。
 やはり他人(鳥?)の空似だった模様。



 とにかく──
 スフィーとティーナの二大魔法少女の活躍によって、学園の食糧難は徐々に解
消されつつあった。
 しかし、まだ最大最悪の問題が残っている。
 そう、柏木ちーちゃん☆ミだ。
 彼女を野放しにしている限り、学園に平和は訪れない。
 さあ、どうする。


           <ここの担当はへーのきです。ついに最終決戦か!?>

(^▽^;)(^▽^;)(^▽^;)(^▽^;)
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えーと、すいません。もう気がつけば2週間近く経過してるし(汗)
投稿の間隔、少し詰めますね。