21世紀記念SS 史上最大のリレーL「学園食糧難事情〜いかにして僕らは餓えに至ったか〜」VOL.13 投稿者:雅 ノボルと血を見た参加者達




 ダアアアアンッ!
「か……あ……っ!」
  またも、またも投げを食らって、柏木梓は叩き付けられる。
  暗躍の刺客・謎のミイラ男の柔道殺法の前に、予想外にも翻弄されっぱなしの梓。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
  息を切らせて構える梓相手に、悠然と近寄るミイラ男。
「……黙ってればいい気になりやがって」
  そう吐き捨てたと同時。
  梓の声色が女子高生のものから、異界の存在“鬼”そのもののそれに彩られる。
  それと同時に、彼女の身体から物凄い重圧が放たれ、敵を圧倒する。
  質感が数倍となると共に、拳の質感も桁違いに。
「……今のうちに降参すれば、命だけは助けるよ」
  梓の脅しをも含んだその言葉に、なんと相手のミイラは、大袈裟に肩を竦ませた。
  まるで、最初から相手にならない、と言わんばかりに。
  その瞬間、梓のメーターが一気に振り切れた。
「死んで後悔しやがれええええええええええええええええええええええ!!!」

  ドバアアアアアアアアアアン!!

  その衝撃は、この広い空間中に響き渡った。
  柏木梓の“必殺の拳”が、不遜なミイラ男の肩口を砕き壊した。
  ――が。
  委細構わず、梓の腕が伸び切ったその瞬間。男はその腕を確と取る。
  同時に自らの足の裏を、梓の脛に付着させる。
  自分の全ての力を込めて、そして、梓の“鬼の力”さえも逆用し、男は一切の躊躇なく
、目の前の剛拳の鬼女を掴み撥ね投げた。

  ――幻の技“山嵐”で。

〈……なんなの一体、この戦いは〉
  山嵐で脳天から叩き付けられ、冷たい床に仰向けに倒れている梓の脳裏に、一人の少女
の声が木霊する。
〈単調な突き一辺倒の攻撃。パワーにしか依存できない戦術〉
  その声は梓に対し、かなりキツ目の調子で投げかけられる。
〈行きつけば“鬼”の力にすっかり依存。挙句の果てに見事に力を逆用される始末〉
(……なにぃ!?)
  あまりといえばあまりの言葉に、さしもの梓も怒り出す。

〈一撃必殺の大技に縋らなきゃ、あんな相手倒せないほど弱かったの。あんたは〉

(はっ!)
  脳裏の声のあまりにも的を得た言葉に、目が覚めた思いの梓。
〈梓……〉
  そして梓はやっと気づく。この声は心の声なんかじゃない。
  紛れも無い現実の声であり、そして、自らが認めた最高の宿敵のそれであることを。
「敵のペースに呑まれやすいのはあんたの悪いところよ。自信もって行きなさい!」

  瞳を開ければそこにいた。最高の好敵手・来栖川綾香が。

「よおおおおおおおおおおおおおし!」
  柏木梓・完全復活。一気に身を跳ね起こし、男に向かって突き進む!
「せええええええええええええっ!」
  バキイイッ!!
  そこから梓、強烈無比のドロップキックを繰り出し、男を一気に吹き飛ばす!
「うりゃああっ!」
  そしてそのまま、強烈なショルダーアタックをぶちかます!
  先程とは別人のような。いや、これこそ梓本来の持ち味ともいえる奔放な攻撃の前に、
柔道技を駆使する暇すら与えてもらえないまま、男は翻弄されまくる。
「まだ終わりじゃないよ!」
  そこから梓、男の両足首を掴み、そして――
  ミス、ミス、ミスミスミスミス………!
「うらうらうらうらうらあっ!」
  大技ジャイアントスイングで、ミイラ男を振り回し――
「しゃああああああああああああ!」
  そのまま真上に投げ上げる!
  そして、トドメは――
「うっしゃああああああああっ!」
  勢いよく宙に舞い、空中で男を捕らえ、ここで梓必殺の――
「喰らええええええええ!  必殺パイルドライバーーーーーーーーーーーー!!!」

  ズダアアアアアアン!!!

「よっしゃあああああああああああああああ!!」
  謎のミイラ男を床に串刺しにし、次の瞬間、ガッツポーズで勝ち誇る、梓の勝利の咆哮
が木霊した。
「やるじゃない梓!  最初からそうやって闘えばよかったのよ〜」
  好敵手の圧勝劇に綾香も駆け寄り祝福する。
「へへ……」
  綾香に激励されたこともあってか、やや照れながら梓は鼻を擦る。
「ところで綾香、なんでここに?」
「ゆーさく達の手伝いよ。なんでもあいつら、今回の事件の重要な鍵を握ってるらしい
から」
「重大な鍵!?  それってホントか!?」
  梓の表情が一気に晴れやかになる。
  やはりここまでの騒動の一因を担っていたのが自分の姉ということは、態度には出ずと
も、やはり梓の心に何か翳りを残していたに違いない。
  それの解決の鍵があるということは、やはり喜んで当然といえよう。
「――おめでとうございます。先輩」

「「――え?」」
  思いがけないところからの声。
  梓と綾香が驚き振り向いた先には、さっきまで勝負していたミイラ男が。
「それにしても、さすがは柏木先輩!やはり自分の目に狂いはありませんでした!押忍
!!」
  やけに熱い、いやむしろ暑苦しい歓喜の声を上げ、梓の両手を取り喜ぶミイラ。
「ねえ、ひょっとしてあんた、私の予想が間違ってなければ……」
「そういうことだ。来栖川」
  無造作に包帯に手をやり、一気に解いたその奥の正体は――

「山浦あああああああああああああああっ!!」

  ……まあ、皆様とっくの昔にわかってらしたと思いますけど。
「何でお前がこんなところにいるんだよ!」
「いやあ……なんか屋上でソーメン食ってからの記憶がないんすよ。それで気がついた
らこの奥にいて、暗躍の連中がいて、手伝ってくれれば飯食わせてやる言うもんすから
、まあいいかなと思って全身ミイラで待ってたら、柏木先輩の姿が見えて。おお、これ
はいい、先輩の実力を拝見するいい機会だ。ようし、ついでにドサクサ紛れに柔道部に
入れてしまおうか、と考えて、柔道の強さと素晴らしさを肌で体験してもらおうと思っ
たんすけど、うーむ。やはり先輩は強く、そして素晴らしかったす!  ええ、特に組み
際の巨乳の質感と来たらもう――」
「吹っ飛べえええええええええええええええええええええっ!!!」
  げしいっ!
  今度こそ、今度こそ梓の鉄拳が、山浦を遥か彼方へ吹き飛ばした。



  シャギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!
「くああっ!」
  ゴオオオオオオ!
  FENNEKの火炎放射器から炎が噴き上がる。
  しかしそれさえも巨大オジギソウの軍団は素早く身を躱し、そして、FENNEKに対
して、攻撃の牙を向け進む。
「無駄だって。コイツらの自然の力に立ち向かおうったって、それは無茶な話さ」
  シャギイイイイイイイイイ!!
  シャギャアアアアアアア!!
  幾本ものオジギソウに囲まれ、余裕綽々で事を見守るYin。
  彼自慢の食人植物群は、まさにFENNEKを圧倒していた。
  シャギャアアアアアアアアアアアアアアアア!!
  そしてまたしてもFENNEKに牙剥き襲いかかるオジギソウ。
(こうなったら……肉を斬らせて骨を断つ、だ!)
「なにいっ!」
  なんとFENNEK、怪物オジギソウの牙の真ん前に、自らの腕を差し出した!
「バ、バカ!  コイツらは鋼鉄くらい軽く食いちぎるってのに!」
「――承知の上さ!」
  キシャアアアアアアアアアアアア!!
  ガキャゴキャンッ!!  ブシュウゥゥゥ………
「ぐああああああっ!はあ……っ!!」
  右腕を食いちぎられ、金属が切り裂かれ、ガソリンさえも激しく吹き出る。
  そのガソリンは、見る見るうちにオジギソウ全体を激しく濡らしてゆく。
「だからもう降参してくださいって!  そうすれば見逃しますから!!」
  自分が手を回したことながらも、あまりのFENNEKの惨状に思わず降伏勧告をする
Yin。
  しかしそんな状況の中、FENNEKは薄く笑っていた。
  まるで自らの勝利を確信したかのように。
「気持ちは嬉しいが、見逃してもらうまでもない。何故なら、俺は勝つんだからな!」
  そう言いながらなんとFENNEK、左腕さえも差し出した!
「な、なに考えてるんだアンタはぁ!!」
「何を考えてるかって……?  決まってるさ……」
  キシャオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!
  オジギソウの牙が、今まさにFENNEKの左腕までも噛み砕かんと食らいつく!
「俺が考えてるのは、勝つことだけだ!!」
  瞬間、FENNEKの胸の火炎放射器から、紅蓮の炎が吹き上がった!

  ボオオオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!

「何いぃぃぃぃぃっ!?」
  なんと火炎放射器からの紅蓮の炎が、オジギソウを濡らしたガソリンに引火。
  瞬く間に紅き業火は、全てのオジギソウに燃え広がった!
  シャギャアアアアアアアアアアア!!
  キシャアアアアアアアアアア!!
  さしもの食人オジギソウの群れも、実際に引火した日にはたまったものではない。
  茎を葉を振り乱し、熱さに悶え苦しんでいる。
「これで、この勝負は決着……だ……」
  右腕を犠牲にしてまで繰り出したFENNEKの必殺“炎壁(ファイヤーウォール)”
  しかし多量のガソリン漏れの為に、FENNEKのボディが崩れ落ち動きを止める。
「フェネック先輩!?」
  炎から逃れたYinが、そんな満身創痍の先輩を見つけ、抱え上げようとするが、
「くっ……駄目だ……重過ぎる……っ!」
  元々は車体のFENNEK。非力なYinにどうにかできるものではない。
  その時。

  シャギャアアアアアアアアアアアアアア!!

  引火して燃え盛るオジギソウが、事もあろうにYinとFENNEKの方へ落ちる。
  このままではFENNEKの漏れたガソリンに引火して、彼の命は……
「仕方ない……っ!」
  絶体絶命の危機に、Yinはただ一人、オジギソウの前に立ちはだかった!
(元々は俺の蒔いた種だ。FENNEK先輩を、そしてコイツらを置いて、俺一人逃げ
出すわけにはいかないっ……!)
  シャギャアアアアアアアアアアアアアアア!!
  苦しそうに飛び込んでゆくオジギソウを目の前にしても、何故かその時、Yinの心の
中には、恐怖心というものがなくなっていた。
(熱いか………ゴメンな………)
  悶え苦しむオジギソウに向かって。Yinはゆっくりと手を伸ばす。
  その時……

  シュウウウゥゥゥ………

「……え?」
  Yinはまだ、自分の目の前の光景が信じられなかった。
  なにしろ、目の前のオジギソウ達に燃え広がっていた紅蓮の炎のことごとくが、あっと
いう間に鎮火してしまったのだから。
「ど、どうなってるんだ、一体………?」
「気孔術の一種、だよ」
「え?」
  突然後ろから聞こえた声に、びっくりしてYinは後ろを振り向く。
  そこには一人の生徒が、後ろから彼の両肩をそっと掴みながら、優しげな笑みを浮かべ
て立っていた。
「僕は昂河晶。よろしく、“天使憑き”のYin君」
「あ、ああ………よろしく………」

「まったく、君達二人とも無茶するんだから……」
  気を失っているFENNEKをYinと一緒に担ぎながら、晶は呆れた声を出す。
「いえ、その、あれはもののはずみって奴で……」
  と、Yinも弁解してみたり。
「それにしても、昂河さんのあの気孔術……って、一体何やったんですか?」
「ああ、簡単だよ」
  Yinの問いに微笑みながら、昂河は返す。
「あれは、君の植物を思う心を媒介に僕の気で増幅して、それを利用して鎮火しただけ
さ」
「は、はあ……簡単なんですか……」
  そんなわけねーだろと心の中で毒づくYin。
「簡単だったよ。相手が君だったから」
「へ?」
  Yinの心の中を読み取っているかのようなタイミングで、昂河は言葉を続ける。
「君のような特性をもった人の想いを媒介にした気孔の増幅だからね。
いくらなんでも普通の人相手にあれだけ鮮やかにやるのは、難しいかもね。
SS使いを媒介にしても難しい。天使憑きの君なればこそ、かな?」
「はー……そういうもんなんですか……」
「そういうこと」
  よくわかったようなわからないような面差しのYinに、昂河は悪戯っぽく微笑んだ。

「どうも、ありがとうございました」
「いいよ、気にしなくて。僕も仕事だったから」
  FENNEKを無事入り口まで運んだ二人。
  入り口の前でYinが礼を言い、昂河もまたそれに応える。
「仕事、ですか?」
「うん。T-star-reverse君に急遽呼ばれてね。本来は十勇士側の助っ人として、君らに
相対するつもりだったんだけど……」
  んー…と考え込む昂河だが、
「まあいいか、結果オーライみたいだし。あと、それから……」
  あっけらかんとした態度のまま、昂河はにっこり微笑んで。
「これ、ありがとう。大切にさせてもらうから」
  彼の手の平の上には、業火の中唯一生き残っていた小さなオジギソウが息づいていた。



「ハアアッ!!」
  ビキイッ!
「ぐっ……は!」
  こちらはHi-waitvs江藤結花の因縁の激突。
  なんとここ一方的に結花が押しまくる展開になっている。
「行くよ!」
  バキャッ!
  Hi-waitのこめかみに結花の痛烈なハイキックが決まり、
「セッ!セリャアッ!」
  立て続けに脇腹と膝の二箇所に二連撃を叩き込む結花。
「が……っ!」
  たまらず膝を折るHi-wait。しかしそれこそ結花の好機!
「チェストォ!!」
  バキイッ!
  とどめとなる上段廻し蹴りがHi-waitの頭部に決まり、成す術もなく沈みゆく。
「……フン」
  倒れ伏したHi-waitをよそに、悠々と結花は立ち去ろうと――
  ――!?
  結花の脳裏に、疑心暗鬼がよぎった。
  おかしい。
  話が出来すぎている。
  健太郎をはじめ三人もの男達を屠り去ったこの男が、これくらいのことで果たして素直
に倒れてくれるものかどうか――
  ――否!
  全身に例えようもない寒気が走り、この場から飛びすさろうとする結花。だが――
「存分に喰らえ……正義の使徒達よ!」

  グチャアアアアアアアアアアアアアアッ!!

「う……うああああああああああああああああああああっ!」
  結花の絶叫があたりに響く。
  全身の骨が粉々に砕かれ、己の四肢が破裂しそうになる程の想像を絶する衝撃が、彼女
の全身をくまなく蹂躪する。
「う……う……うあ……!」
  胸も苦しい、吐き気もする、身体中グシャグシャに噛み砕かれたと思うほどの衝撃。
(け……健太郎も……この技で……!)
  立ち上がろうと膝を起こすも、それすら出来ず崩れ落ちる。
  その時、立つことすらできない結花を見下ろすかのように、Hi-waitが側に寄る。
「へっ………かかりやがったな」
  憎々しい口を叩いてくれるこの敵に、なんとか一矢を報いたいと思うも、それすらもこ
の身体が食らいし衝撃の前に叶わせられず。
「まあ?  一撃で沈んだあの情けねえ男共に比べれば、お前はまだマシな方だけど?」
「……なんですって……!」
  結花の瞳に炎が戻る。
「もう一度……言ってみなさいよ……」
「ん?  あの主役気取りで突っ込んで来たはいいけれど、一撃で不様に噛み砕かれた、情け
ねえ男共に比べれば幾分マシだと――」

「黙れえええええええええええええええええええええええっ!!」

  バキャアアッ!
  あまりの怒りに身を駆られたのか、突如復活した結花のハイキックが強烈に決まる!
「あんたに、あんたなんかに何がわかるっていうのよ!!」
  ――イリュージョン・ダンス。
  江藤結花の得意技“音速の魔脚”の最高峰に位置する究極の蹴撃乱舞。
  続けざまに止むことのない流星群の如き脅威の連蹴が、矢のように彼に降り注ぐ。
「男の精一杯の生き様を、馬鹿にできる権利があんたのどこにあんのよ!!」
  尚も止むことのない結花の怒りの連続蹴撃。
  しかし彼女はあまりの怒りに冷静さを欠き、そのために気づいていなかった。
  雨に打たれるような蹴りの嵐を食らい続けているHi-waitの口元が歪んでいたことを。
  そして、彼自身の真の狙いを――
「健太郎の……そして、あんたに蹂躪された彼らの無念、今こそ晴らさせてもらうわ!」
  一瞬後ろにバク転で飛び退り距離をとり、そして、イリュージョン・ダンスの最終楽章
、結花最強必殺の“音速の魔脚”が、Hi-wait目掛けて、今撃ち放たれた!

  ――かかった。
  内心ほくそ笑むHi-wait。
  全てはこのための伏線。
  主人公達を鼻でせせら笑ったのも、怒りに駆られた結花の烈蹴を受け続けたのも。
  そして、結花の最強必殺“音速の魔脚”を引き出したのも。
  今度こそ、いかに結花であろうとも、これを食らえば立ち上がることなど絶対不可能。
  “音速の魔脚”をもカウンターで返し、自らをも砕く捨て身の必殺“正義の鉄槌”。
  そう――
  最初からHi-waitは“勝ち”など狙ってはいなかった。
  この強敵江藤結花相手に狙っていたのはまさしく――“地獄への道連れ”!
「悪いな!これも絶対正義の為!  喰らええぇ!!  必殺・正義の鉄槌!!!」



グシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!



  床があまりの重力に無残にもクレーターのように陥没している。
  その陥没したクレーターの中に、二つの人影が無残に潰されていた。
  一人は言わずと知れた、この技の術師・Hi-wait。
  “正義の鉄槌”とは、自らの周囲半径10m以内に最大で300Gの重力を起こし、そ
の範囲内の――生物、非生物にかかわらず――物体を、重力によって押し潰す技。
  そしてその影響からは、術者ですら逃れることができないということ。
  おそらく全身の骨は、粉々に砕け散っているだろう。
  もはや彼に闘う力は残ってはいないのは、当然のこと。
  そして、そこまでしても健太郎達侵入者を阻止したのだろうということ。
  今にして思う。
  この男・Hi-waitは決して、彼らを軽視していたわけではなかった。
  誇り高き戦士として認めていたからこそ。
  だからこそ、自らの身をも削る捨て身技を躊躇なく駆使したのだろう。
  床の淵から陥没した床の底の、力尽きたHi-waitの姿を見つめながら、結花は心からそう
感じていた。
  彼もまた、一人の誇り高い戦士だった、と。

  ――そして、“正義の鉄槌”の発動寸前に結花を突き飛ばし、重力の犠牲になった男。
  あの、潰れているもう一人の男は、一体誰なのであろうか?
  と、思ったその瞬間。
「とおっ!」
  瞬く間に跳ね起きて、そして――
「きゃっ!」
  こともあろうに、結花のすぐ横に飛んできた忍者姿の巨漢は、満足そうに咆えたのだ。

「はっはっは!――苦痛こそ最大の快楽ッ!!」


(YOSSYFLAMEです。
えらく長くなってしまいましたが、あとはお任せいたします。m(_)m)