21世紀記念SS 史上最大のリレーL「学園食糧難事情〜いかにして僕らは餓えに至ったか〜」Vol.16 投稿者:雅 ノボルと血を見た参加者達

ある日、休み時間にみやびん達が目撃したのは、寸胴鍋を抱えた千鶴校長の姿………
全てはここから始まった!
校内を怒涛の如く混乱の中に叩き込んだドン底の食料パニックと、その裏で起きた
一連の熱い戦いも終止符を打つときが来た。
『至上最大のリレーL:決着編』………
君は時に、なんかの涙を見るかもしれない………<マテ

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 とりあえず後に起こるであろう暴動は、もうどうしようもないと踏んでか、月島
兄を取り囲んで、激戦を戦いぬけた面々が集まった。
「まぁ、そっちの暴動は風紀委員会がどうにかしてくれるとして………」
 多分、まだ外でもめているだろう、広瀬ゆかりとディルクセンらの風紀委員たち
の働きを心配するのを他所に、目の前の首班を藍原瑞穂は情けないやら悲しいやら
のジト目で見てから、ため息を一つこぼす。
「月島さんの処遇ですな」
 シッポが心底げんなりしながらのたまった。
 当然と言うべき結果ではあるが、騒動の発端ともいえる人間への責任問題と言う
のは、どういう形であれきっちり行われるべき、と言う訳であるが。
「え”?」
 などと言うあたり、月島兄も騒動の後の責任をどうかわすかまでは、計算外だっ
ったらしく、いつものポーカーフェイスの端は蒼くなってた。
「判ってるとは思いますけど、あんだけのことをやった黒幕と言うからには、やは
りきっちりと、けじめをつけてもらわなければ、納得いきませんが?」
 悠朔も心底苦虫噛み潰したような表情で、事の首謀者に話し掛けた。
「く、くくくくく、本当にそう思っているのかい?」
  はりついた笑みの奥にある、月島拓也の真の表情が一瞬だけ、ちらりと具間見え
 るが………
「お兄ちゃん………」
「るるるるるりこぉぉぉ! いやこれはちが、そうなんだ、違うんだよるり瑠璃ル
ルりこぉぉぉぉ、ああああああおにひちゃんをそんな目で見ないでくれェェェ」
 瑠璃子の一言で、そんな狂気の一片も何処へやら。ホントにこの人生徒会長? 
つーか、こんなダメ人間のクズに生徒会長を任してる我々って一体……… とか言
うのはもちろんナッシング。言うだけ自分もダメ人間だし。
 たんこぶが疼くのか、こぶの当たりをさすりながら、裕介も拓也を説得する。
「月島さん、今度ばっかりは………」
「ふっ、裕介。良くもそんな事がいえる……… 立場でした………」
 あくまで、裕介には尊大な立場でいようとする拓也だが、全員の一斉のジト目で
完全に黙殺。というより、こんな時にまで兄貴風吹かすなとも言うのだが。
「はぁ……… まぁこの学園にしてこの生徒会長ってのもあれなんだけどね………
マジな話、みんなどう判断する?」
 おもいきり苦虫噛み潰したような表情の綾香の言葉に。
「有罪ですね」
 と一も二もなくシッポ。
「当たり前の判決だな、生徒会長ならばなお厳しい処断を」
 こちらは悠朔と、次々に上がる関係者の有罪の声々。
 まさに遠慮なし、全員一致の有罪判決。後にも先にも止める奴はいないし。
「極刑。全校生徒の前で、磔獄門って線は?」
 マナが憤然と具体的な仕置方法を言い出すが。
「だとまずいだろ?」
 流石にそれは、あまりにも自分達の恥をさらす結果となるので、ボツと相成った。
他にも投石だの鳥葬だの、アキバの新電波塔の礎になる等の案が出ては、ボツにさ
れていく。
「じゃぁどーするん?」
 来夢が諸手を上げて肩をすくめる。幾分か案が出るだけ出ても、一向に決まらな
いのだ。
「うーん……… あ、そういえば。おーい、みやびんちょっとー!」
 悠朔があれこれと考えていた矢先に、フとある事に思い至って、みやびんを呼ぶ。
 呼ばれてみやびんがひょこひょことやって来た。
「なんです?」
「少々お耳の方を拝借………」
 とみやびんに内緒話を敢行する。
「へいへ……… い”!? えええええええ!? マヂにやるの私が!?」
 一人狼狽するみやびん。
「と言うか、これだけはあなたにしか出来ない。と言うよりあなた以外に出来ない
芸当ですから……… やりますよね?」
 言葉の内容こそ丁寧なモノの、その言葉には有無を言わせぬだけのモノも内包し
ていた。
「なんだか、喜んでいいんだか悲しむべきなのか………」
 とは言え、着ぐるみが頭を抱えようとしても、所詮は頭に届かない為に、素振り
の方も喜んでいるんだかなんなのかが解らないが。
「なんだ雅。君は僕に何をするんだ?」
 月島兄はここに来ても、至って尊大であるのだが………
「あぁ皆さん。みやびんさんの顔は絶対見ないでください。あと、出来るだけ彼ら
から離れて………」
 彼らの裏で、こそこそとティーがこの場にいる勇者達に伝達している。
「一体何をやるっての!?」
 結花が一抹の不安を覚えてティーに聞くが。
「まぁ、見ればわかります。みやびんさんの最終兵器を、彼らは使おうとしている
んですよ。元は究極の防御機構のはずだったんですが……… 詳しい解説は後程」
 実際に、ティーも解説をするのには少々データ不足だったらしい。
「その秘密兵器の公開をしたくてウズウズしてたのは、みやびん自身じゃないです
か。さぁみやびん、ちゃっちゃとやってしまいましょう」
 悠朔がにこやかに『最終兵器』とやらの試用を促すのだが………
「うわわわわ! いやだいやだいやだ! 後々厄介な事になるんだよォぉぉ!」
 着ぐるみの顔をぶんぶんと、盛大に横に降り回す雅。
「せっかくの仕掛けを試す良いチャンスですが?」
 悠が殆ど引導を渡すような事を言う。
「ま、この際事後の是非は問いませんし………」
 と、月島兄をがっちり羽交い締めするシッポ。
「そーいう問題じゃなぁあああい!」
 わめくみやびんの事を無視して、悠がみやびんの後ろに回ったかと思うと、巧妙
に隠されていたタッチボタンの一番大きい部分をためらわずに押した。
 カチリ。
「あ」
 観音開きのように、顔の真ん中から「パカン!」と割れたかと思うと、雅の素顔
を拝む前に強烈なフラッシュ光が、割れた顔の内側から溢れ出して辺りを閃光に染
める。
 ちなみにそばにいた悠とシッポは、鉄板サングラスと言うなかなか卑怯なモノを
いつのまにやら装着していた。
「うぐわあああああああああああああああああああああ!!! ひっひぃぃぃぃぃ
ぃぃぃぃぃぃぃぃうげろおえばぁああああ!!! ごぷっ………」
 憐れ強引に直視させられていた月島拓也は、まるでゴキブリにゴキ専用殺虫剤か、
中性洗剤をたっぷりと吹きかけられた後の壮絶な死に様と同じくらいに、滑稽かつ
無様かつ壮絶な悶死っぷりを披露するのであった。
 元々は、雅が少しでも素顔を見られた際の、相手へのフォローのためと、せっせ
と作っていたシロモノだったのだが、閃光システムの改良に度が過ぎたのか、なん
とメガワット級の超高放電管を仕込むに至っている時点で、何かが間違っているの
だが……… 
「結果は見てのとおり、目くらましどころか、素顔の効果まで一瞬にして焼き付け
るビームみたいなモノが出来あがったわけですか………」
 ティーが惨状を見て、ポツリと解説した。
 散々わめき叫び、口からなんかヤバそーなものまで吐いた後には、別の世界の扉
を開き切ったよーな拓也が存在していた。
「や……… やったのか?」
「みたいだな」
「すげぇ、凄すぎるぜ………」
「絶対あーは死にとぉないわ」
 あくまでも、その威力に驚嘆し(と言うよりかはあきれ)ている男性陣に対し。
「ah、アンビリィ………」
『へたな武器より強いの』
「『生まれた技は必殺だ』……… けだし名言だな」
「って言うか、あれはもう立派な兵器よ!」
 現実的にヤバ過ぎと判断しきった女性陣。
「って言うよりも産業廃棄物から生まれた猛毒ね………」
 全員の感想を、綾香が端的に的確な言葉で言い切った。
「そう言う事みんなして言いますかぁ!? ぬがあああああ!!」
 今度こそ厳重に首のロックをした上で、雅が皆のほうに振りかえって吼えるが。
『つーか、そーじゃん』
「げふっ」
 トドメの一言で、みやびんは泣いた。男泣きした。着ぐるみの口の端からも血
を吐いてるくらいに。
「まぁ、これで終り……… だっけ?」
「あれ? なんか肝心な事を忘れている様な気が………」
 そう、みんなそれまで、肝心の千鶴校長の鍋、略して『千鶴鍋』の存在をコロっ
と忘れていたのであった。

<みやびんですけどまだつづくのであるある〜>