21世紀記念SS 史上最大のリレーL「学園食糧難事情〜いかにして僕らは餓えに至ったか〜」VOL.16(最終回) 投稿者:雅 ノボルと血を見た参加者達

ある日、休み時間にみやびん達が目撃したのは、寸胴鍋を抱えた千鶴校長の姿………
全てはここから始まった!
幾多の艱難辛苦を乗り越えた勇者たちは、いま驚愕のエンディングを見ることになる!
はっきり正直2年間ほどほったらかしにしていてスマンかったです。
『至上最大のリレーL:最終章・後の祭り』………
いま、感動のフィナーレを迎える……… かどうかは活目して見れ!!

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「で、この結末、一体どうするつもりなんですか? 千鶴せんせ?」
 出会った傍からみんなに凄まれて、せっかく耕一さんの為に〜とせっせと作って
いたらしい千鶴鍋(中身は千鶴校長が黙秘権を行使した為不明、だが処理する際に
激しく抵抗したため、何らかの実験を行っていた模様)を学園の全能力を駆使して
どうにかこうにか「処理」した後に、縄でぐるぐる巻きにされ、勇者たちによって
監禁された千鶴校長に詰め寄る関係者。
 その代表者であるシッポが千鶴に問いかけた。
「えっと……… その………」
 と言われても、訳もわからぬうちにいきなり勇者一行に縄でぐるぐる巻きにされ
てしまった千鶴に、答えられるはずもなかった。
「ち・づ・るさん」
「千鶴姉………」
「校長………」
 嵐の前の静けさという状況で、千鶴の発言を待つ勇者たちご一行。
「しくしくしく………」
 訳もわからぬまま縛られた千鶴はいま、学長として、教育者としての威厳の崩壊
という危機に大きく晒されていた。
「だいったい、何で学食の大鍋を使うようなモン作ってたんだよ」
「梓、それは……」
 まさかアレでソレな物を耕一に食べさせて、一気にウェディングロード&ハネム
ーンを企んでいたと言う訳にはいかない! 断じていけない! それは勇者たちと
いう爆縮寸前のミノフスキー粒子にメガ粒子をくべる様なものである。
 自分のブチキレ暴走よりも、みんなの怒りのハイメガキャノンのほうが断然に恐
ろしい結果になる。
 このまま黙秘権を行使し逆転裁判にかける(ヲイ)か、それとも……
「………」
 決意しまなじりを上げる千鶴。
『?』
 いよいよ千鶴の答えが返るのか、目を見張るみんなが見たもんは。
「 っ 手 屁 っ 」
 
『「てへっ」ですますなぁ(んじゃねぇ)(じゃないです)(じゃありません)
(ふもっふ)!!!』

 そして、食堂は怒りの坩堝と化した………
 そして、千鶴は逃げ出したっ!
「ちーちゃんおーち、かえゆぅ〜〜!!」
『むぁとぅぇえぇい!!!』

 最後を締めくくる、地獄のマラソン大会が始まった。

「くぉらぁああああ!!」
「あそこににげたぞぉぉぉぉ!!」
「くそっ! 跳びやがったか!」

 怒りの暴徒と化したLキャラとSS使いたちが、己の全能力を駆使してふぉっく
すはんてぃんぐならぬ千鶴狩りに執念を燃やす中。

「あたしはただ、耕一さんに食べさせたあげたっただけなのにィ〜〜〜」

 と、まだ未練がましく千鶴はのたまっていた。いやマジで。

 どどどどどどどどどどどどどどどどど……。

「ううっ、まだ追いかけてくるの? お姉さん寂しいわっ!」

 鬼の力を開放し、超感覚をスタートさせて逃げの一手にまわるしかなかった。

「裏に回ったぞっ! 逃がすなっ!」
「囲めッ!! 二手以上に別れて挟み撃ちだっ!」
『応っ!』

「……ちーちゃんとっても悲しいわ」
 などとワカメ涙を流しても、状況など何一つ変わらないのであった。

 どどどどどどどどどどどどどどどどど……。


 そのころ、騒ぎを一切合財無視した離れでは……

 ……こぽこぽこぽ。

「……(ずずず……)……何やら、騒がしいな」
「……千鶴姉さんったら……」
「まあいい、楓、おかわりを頼む」
「……(こくん)」

 ……こぽこぽこぽ。


 どどどどどどどどどどどどどどどどど……。

 そのころ、図書館のカフェテリアでは……

「あれ、地震かな電芹?」
「――地殻からの波は確認できませんよ、たけるさん」
「それじゃ、お客さんかな?」
「――今日は仕入れもできなくて、お客さんはもうみんなどこかへ行ったはずですが」
「うーん……それじゃ、そこでなけなしの食材をただ飯食らいしてる人に確かめてもらおっか」
「――ナイスアイディアですたけるさん。是非そこの穀潰しを活用すべきです」
「……まて、貴様等」
「それじゃ、よろしくお願いします」
「――働かざる者食うべからずです」
「一応な……俺は雇い主で、ここで俺が食事をするのは当然の権利なのだが……」
「ごーごー」
「――さあさあ」
「……まったく」

 ガチャ。

 ぎゅむっ。

「あ、なんかドアを開けた瞬間に上から降ってきた校長先生に踏まれてるよ電芹!」
「――しかも校長先生は鬼化していますね。頸骨がいい具合に砕けてるようですよたけるさん!」
「ちょっぴり急いでるから、ごめんなさいねっ!」
「ああ、校長先生が逃げて行っちゃったよ電芹!」
「――見事な蹴り足です。反動でオーナーの身体が絶妙な勢いで吹き飛んでいますたけるさん!」
「きゃー!」
「あああ、校長先生をたくさんの人たちが追いかけてるよ電芹!」
「――しかもその足元で、なにかボロ切れのように黒ずくめの身体が歪んでますよたけるさん!」

 どどどどどどどどどどどどどどどどど……。

その頃、上空に待機中の飛行船では……

「何? まだ飛行船降ろせないの?」
「申し訳ありません。柏木校長が校内を逃げ回っているため、今下ろすと乗っ取られる恐れが」
 冷や汗を掻きつつ、丁重に謝るセバス。
「の……乗っ取られるって、そんな……」
「いやあ、あの人ならやりかねんぞ」
 英二がきっぱりという。
「綾香さんだけ先にパラシュートで降りたのは、正解だったかもしれませんね……」
 葵がポツリとつぶやくのに、周りの何人かがうなづく。
「あ、見えます見えます。千鶴先生が校舎の屋上を走って……え? 飛んだ?」
「こっちの方に、向かっているように見えますねえ」

 ずどぉぉぉぉぉぉんっ!!

「ぬお……!? 何だ、なんの衝撃だというのだ?」
 衝撃に焦るセバス。
「………………」
「千鶴校長が、船底にぶつかったみたいだ……ってそんな!?」
「むぅ、恐るべし柏木校長……」
「ど、どうやら……ここを足場にして更に遠く逃げたようですけど」
「そ、そんなことより、早く降りるか昇るかしないと!」
「あーもう、急いで急いで! こんな所まで逃げてこられちゃ、大迷惑よ!」


 どどどどどどどどどどどどどどどどど……。


 その頃、屋台な連中は……

「……あー、結局タコヤキ食いそびれちゃったじゃないですか」
「Runeさん、どこいっちゃったんでしょうねぇ」
「あのインチキ仲介人九品仏大志もどこかに消えて……ああ、腹が立つッ!!」
「あわあわ、ひなたさん、暗器を振り回さないで下さい〜!」
「ん……美加香、あれって千鶴校長じゃないですか?」
「あ、そうですね。何か追いかけられてるみたいですけど」

「きゃ〜!」
「待てえぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」
「あ〜れ〜!」
「逃げるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「勘弁して〜!」
「止まれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

「……多勢に無勢というか」
「……大海簫というか」
「……9回裏ツーアウトからの逆転サヨナラ満塁ホームランというか」
「って、なんですかあなたはっ!?」
「あー、びっくりしたぁ……」
「あたし? 通りすがりの天使って者よ、今ちょっと人探してるの。知らなぁい?」
「知りません」
「そんなつれないこと言わないでさぁ〜」
「あ、ひなたさん、千鶴先生がこっちに走ってきますよ!?」
「言ってる間に逃げなさいぃぃぃっ!!」


 どどどどどどどどどどどどどどどどど……。


 そしてグランドの芝生では、河島はるかと高瀬瑞希が……

「……お腹空いた?」
「すいてる〜」
「……チョコ、食べる?」
「食べる〜」
「……ん、はい」
「ありがと……」

 ぱきっ、もぐもぐもぐ。

「言っておくけどぉ〜」
「……ん」
「これ、借りにばっかりはしないからね〜?」
「……うん」
「テニスの方でも、きっちり借りは返してやるんだからぁ」
「……わかった」

 がちゃ。

「どこ行くの?」
「……決めてない」
「ふーん……あたしはまだここで寝てるわね」
「……ん。踏まれないようにね」
「踏まれないように、って、え、ちょっと、何!? きゃーっ!?」


 どどどどどどどどどどどどどどどどど……。


『むぁちくされぇ!』
「い〜〜〜〜やぁあああああ〜〜〜〜〜」

 それはまさしく、最後の大鬼ごっこ(鬼はモノホン)だった。
 そしてその鬼ごっこは、その日の授業のあとも、SS使い達の体力が切れるまで、
行われたと言う。

(嗚呼、やっと終るよ、おわるんだよぉぉぉおお! の、みやびんでし)
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 後日談

 キンコ〜ン、キンコ〜ン……。
 仮眠館管理人室のチャイムが鳴った。
 扉の前に立つ人物はしばらく待ってみたが返事は無い。
「?」
 首を傾げ、もう一度スイッチを押す。
 キンコ〜ン……。
 また待つ。
 やはり返答は無い。
 ここで出てきてくれないと困った事になる。どちらかというと管理人自体は
不在でもかまわないのだが、目的の人物が居ない場合は非常に困る。
 意を決してもう一度スイッチに手を伸ばした時の事だった。
「は〜い! はい! はいはい! どなたですか〜?」
 元気良く返事が返って来た。
 と、同時に扉が開き、赤毛の元気のよさそうな女性が姿を現す。
 仮眠館に居候している異世界の勇者。
 今はしがない食いつなぎの体育教師、ティリア・フレイである。
「あ、真心運ぶペンギン便です! お届物をお持ちしたんですが、ルミラさん
いらっしゃいますでしょうか?」
「ルミラさん? ちょっと待ってね〜」
 パタパタと奥へ引っ込んでいくティリア。
 ふと視線をその後ろ姿へと向けた鈴香は奇妙な物体を見てしまった。
 うぞうぞと動めきながら、変形を繰り返すアメーバ状の物体。
 頭上に手を掲げる人間の姿を取ったかと思うとそれは苦しげにもがきながら、
また元のアメーバに戻る。かと思ったらその物体の真中からおもむろに剣が突
き出し、消化されるようにまた取り込まれていった。
 ――T1000みたい……。なんだろ? 危ないものじゃ……なさそうだけ
ど。
 その様は確かに映画ターミネーター2の敵役の姿を髣髴とさせる。
 千変万化するその物体を飽きずに眺めていると、奥から眠たげな瞳をショボ
ショボさせたルミラが姿を現した。
「あ〜に〜? 宅急便?」
 着崩したTシャツですら身体のラインがはっきりわかるのは、モデル並の体
型である証だ。大きく開いた首もとから覗くきめ細かな肌は、それだけで蠱惑
的ですらある。が、同性の鈴香にはさほど興味を引くものでもない。
 少し羨やましかったりはするのは事実だが。
「いえ、ペンギン便です。ルミラさんですね? お届物に上がりました。それ
じゃこことここと……それからこことここに印鑑をお願いします」
 律儀に訂正し、受領書を手渡す。
「印鑑〜? そんなもん作ったっけ?」
「あ、無ければサインでも構いませんよ」
「じゃ、ペン貸してくれる?」
「はいどうぞ」
 サインが書き易いようにレポート用のボードとボールペンを手渡す。
「なんか随分サインするところ多いのね〜」
「申し訳ありません、今後善処します。ところで……さっきから気になってる
んですけど、アレ、なんなんですか?」
 ん〜? と面倒臭そうに首を向けたルミラは、ああ、と肯いた。
「幻八って言って、ここの管理人なんだけど……なんか食べ物であたったらし
くってああなってるのよ」
「ああなってるって……」
「元がナノマシンの集合体だとか言ってたから……毒物排出しようとしてるん
じゃない? エリアに解毒魔法でもかけてもらえばいいのにね〜」
 鈴香は「はぁ……」と曖昧に肯いた。
 少なくとも自分がこれまで見知ってきた物事で対処できる問題ではなさそう
だ。彼女はアレを忘れる事に決めた。その方が精神衛生上良さそうだ。
「はい、サイン」
 ホイッと無造作にルミラがボードを差し出すのを受け取り、
「あ、ありがとうございます。じゃ、これが受領の控えになりますので……」
 必要な書類だけを手早く抜き取って手渡す。
「ありがとうございました〜! またのご利用をお待ちしてます!」
 帽子を取って一礼し、速やかにその場に背を向ける鈴香。
「ちょっとっ! 荷物は?」
「え? あ、失礼しました。ルミラ・ディ・デュラルさんですよね?」
「だからそうだってば」
「フランソワーズさん、イビルさん、アレイさん、メイフィアさん、たまさん。
こちらの方々の名前に覚えありますよね?」
「うちの子達がどうかしたの?」
「保護者、ということで間違いありませんね? では荷物はすでに引渡しして
ありますので、なにか問題がありましたらこちらの方にご連絡下さい」
 言ってペンギン便支店の電話番号が書かれた紙を手渡す。
「では改めて、ありがとうございました〜!」
 鳩が豆鉄砲食らったような顔で立ち尽くすルミラを残し、鈴香は足早に愛車
に近付き、素早く乗りこんだ。
 仮眠館に横付けされていた車で去って行く鈴香を、見るとはなしに見送りな
がら、
「……なんなんだか。いったい……」
 ルミラはのんびりと呟いた。
 ――誰が何送ってきたんだろ?
 心当たりになるようなアテはあまり無い。そのアテもここに住んでいるとい
う連絡を取っていないから、自発的に探さないと見つけられないはずだが……。
 視線を先程渡された受領書に落とす。
 そこにはしっかりとこう明記されていた。
『納品書  食料品 惣菜 缶詰 ……』
「? 間違えてったのかしら」
 ――あとで連中に聞いてみりゃいっか。
 被保護者の面々の顔を思い浮かべながらルミラは仮眠館へと足を戻し、
「ティリアー。これカタすか治すかしてよ。こんなとこに放り出されてちゃ邪
魔でしょ〜?」
「メカだから魔法効かないんだよぉ。自己修復してるはずだから、もうちょっ
としたら治ると思うから〜」
「すみませ〜ん」
「ったく……。誰が持ち込んだかわからないもの食べるから、こんなことにな
るのよ」
 ティリアとエリアの謝罪の声を聞き、ブツブツ文句を言って自室へと引っ込
んでいった。寛ぎながら呑気に雑誌を読む彼女は、自分がなにをしてしまった
のか、まだわかっていなかった。
 さもありなん。彼女は連中がどうやって食料品を確保したか知らなかったの
だから。


「あ、エビルさん。ちょっといいかしら?」
 授業終了後、バイトのCDショップから仮眠館へと帰路を辿っていたエビル
に声を掛けてきたのは、彼女には少し意外な人物だった。
「柏木千鶴校長? ……私に何か用か?」
「これをルミラさんに渡しておいてもらえますか?」
 手渡された紙片に視線を落とし、ほんの少し目を見開く。表情の変化の乏し
い彼女なりには驚いているらしい。
「これは……。承知した。いったい何をしたんだ? ルミラ様は」
「ちょっと、ね。イビルさん辺りに聞けばわかると思いますが……。今後もこ
ういった行動を取るようなら、こちらにも考えがある。と、そう伝えておいて
ください。それで伝わるはずです」
「……ふむ。わかった。伝えておこう」
「よろしくお願いしますね」


 その後、納品書のサインを楯に請求書に記された金額に、面々は蒼白になる。
 が、
「……クーリングオフというものがある」
 というエビルの一言で、消費してしまったもの以外は返済する事でなんとか
事無きを得た。
 ただ、缶詰は安かったし日持ちするということでそのまま購入。
 雀鬼の面々はしばらくそれで食いつなぐ生活を送ることになる。
 エビルにはとんだとばっちりであったが、
「…………。ふむ……。このいわし缶はなかなかいけるな。今度芳晴に教えて
やろう」
 それなりに満足しているらしい。


 ペンギン便移送業務、No.50948324。
 発    各食料品店。
 宛    試立Leaf学園。
 輸送品目 各種食料品。
 依頼者  試立Leaf学園総務、牧村南。
 受領者  試立Leaf学園仮眠館住人、ルミラ・ディ・デュラル。

 輸送者  ペンギン便宅配業務部所属、風見鈴香。
 移送任務、ミッションコンプリート。


 彼女の戦歴は未だ敗北を知らない……。


<もしかしてこれは詐欺だろうか? などと書いていて思う、
   出来るならば校内で死者として怠惰にゴロゴロしていたかった・悠朔>