シネマLメモ「スターウォーズエピソード1:ファントムメナス」邂逅編 投稿者:beaker






 ついにヒメカワ星の首都まで辿りついた西山英志と風見ひなた(アフロ付属)。
 だが、第二購買部へは既に琴音王女を拘束したとの連絡が……
 包囲網の中、彼等はどう動くのか?



  CINEMA Lmemo「STAR WARS:EPISODE1/THE PHANTOM MENACE」



       「邂逅」








 ドロイドには全くもってこちらのことを考える思考は存在していないらしい。
 琴音は速く歩くように銃で突つかれながらそんな馬鹿馬鹿しいことを考えていた。
 街の民は――表に出ないように、との指令を守っているらしく、全くもって
 街はひっそりとしている。
 

「あっ」
 銃で突つかれた一人の侍女が転んだ。
 慌てて王女は彼女を助け起こす。
 ドロイドはそんな彼女たちの行動にまるで無関心だ。
 スピードさえ保ってくれていれば、彼等は全くこちらの行動に干渉しない。
 だが王女が動いたことで彼等全体の動きが鈍ることになった。
 ドロイドは敏感に察知して、
「ハヤクシロ」
 といった。
 だが、今度はドロイドが動きを止める。
 目の前を、一人の男が歩いていた。
 ドロイドの前まで来て止まる。
 ドロイドは一瞬当惑したが、単純なプログラムで構成された思考は
 すぐに次の答えを弾き出した。
 ドロイドは銃を突き付け、
「ドケ」
 そういった。
 これでどかなければ、ブラスターの引き金を引くだけである。
 だが、その瞬間、
 彼の腕と思考を司る頭脳回路が切断された。
 他のドロイドがそれを確認して、ブラスターの引き金を引けと思考回路が
伝えたとき、既に全てのドロイドの思考回路と腕は斬り落とされていた。
 呆然と見守っていた琴音たちだが、ようやく気を取りなおして琴音は聞いた。
「あなた達は……もしや」
「我々はエルクゥの騎士です、時間がありません。王女、宇宙船で脱出しなければ
なりませぬ。急いでください!」
 琴音は頷いた。
「こちらがエアポートです!」
 他のドロイドがようやく異変に気付いたようでこちらに近付きながら
ブラスターを連射してくる。
 侍女たちが隠し持っていたブラスターで応戦する。
 風見ひなたがブラスターのエネルギーをライトセイバーで弾き返しながら、
しんがりを受け持った。
 

 エアポートに辿りついた途端、ブラスターが一斉に掃射された。
 西山英志は全く躊躇を見せずに突撃しながら、ライトセイバーを振り回す。
 ドロイドが予想だにしない行動に手間取っている間に西山英志は五体以上の
ドロイドを屠っていた。
 その間に侍女がブラスターを連射して援護しながら、琴音たちが宇宙船へと乗り込む。
 
 風見ひなたと何故か遅れているTaSがようやくエアポートへ辿りついた時、
宇宙船は既に出発寸前であった。
 乗り込み口の西山英志が叫ぶ。
「来い! 急げ!」
「判ってますよ!」
 ドロイドの追撃を振り切って、風見ひなたとTaSはダッシュした。
 後ろからブラスターの光線が次々と襲いかかってくる。
 風見ひなたはTaSのアフロを引っつかむと、
「おりゃぁぁぁぁ!!!」
 気合い一声、跳び上がった。
 その腕を西山英志がガッチリと掴む。
 ニヤリ、と風見ひなたが笑い、
 西山英志も笑い返した。
 TaSは、
「痛いデスー」
 悲鳴を上げていた。




「さて……ここからが問題だ。この宇宙船に何か武器は?」
 西山英志がコックピットに乗り込んでいった。
「ありません」
 申し訳なさそうにパイロットがいう。
「防御シールドはあるのだな? 後は……SSの加護があることを祈るしかないか」
 こればかりはエルクゥの騎士といえどもどうにもなりそうになかった。


 琴音は王女用の席に座ると、次々と指示を下す。
「こちら側の通信の送信は一切を禁止します。探知されて追撃される恐れがありますから」
「いざという時の為にセリオをセッティングしておきなさい。特に防御シールド発生装置の場所へ」

 そんな彼女の前に西山英志と風見ひなたが進み出た。
「王女、少々よろしいですかな?」
 侍女の一人が差し出した水を飲み干した後、
「どうぞ」
 といった。
「これから我々はリーフ星へ向かうのですが……」
「そうですね」
「一つお聞きしたいことがあります。何故第二購買部は……こんなことを?」
 琴音の顔が困惑した。
「それはわたくしどもが知りたいくらいです。我々は――武器を持たないだけで
特に第二購買部と対立していた訳でもなかった」
「確かに。ヒメカワ星に何か貴重な資源があるというならば別ですが――」
「我々の資源は人ですわ。それしかありませぬ」
 ヒメカワ星の女たちは代々超能力を持つという。
 SSの力とは全く異質の力――また、SSの力に唯一対抗できる手段ともいわれる。
 彼等の狙いはそれか――? だとしても納得がいかない。
 第二購買部がSSの力に対抗する術を持ってどうしようというのだ。
 これはやはり――
「やはり、この侵略。何か裏があると思われます。……我々も全力であなたを
保護することを誓います」
「エルクゥの騎士の名に賭けて」
 風見ひなたが言葉の後を次いだ。
「心強い限りですわ」
 琴音はニコリと笑った。
 

 途端、震動が起きた。
 ライトが一瞬、ふっと消え、次に真っ赤に点滅し始める。
「どうしました!?」
 琴音がコンソールに叫ぶ。
 コックピットのパイロットが応答した。
「防御シールドをやられました! 修復用メイドロボ、セリオを出します!」


 TaSはぶらぶらと宇宙船の中をぶらついていた。
 ふと横を見ると、四体のメイドロボ――いずれも同じ顔だ――が
直立不動で待機していた。
 好奇心が沸いた。
 そろそろと近寄ってみる。
 どうやら髪の色で全員が区別されているようだった。
 赤・緑・黄・橙。
 橙のメイドロボに興味を持ったTaSはそろそろと近寄ってみる。
 ぷに。
 頬をつっついてみた。
 反応なし。
 目は閉じているので寝ているのかもしれない。
 ちなみにTaSはメイドロボなるものを知らない。
 ふーむ。
 回りをうろうろとうろつき始める。
 どうやらこの橙のセリオが気にいったらしい。
 そうだ、名前を書いておこう。
 TaSはアフロからマジックを取り出した。
 アフロは四次元ポケットに繋がっているのである。
 いざとなればアフロで脱出もできるはず。
 勿論自分一人だけで。
 結構外道な考えであった。
 それはさておき、マジックを取り出して、しばし悩む。
 とりあえず、頬にドリー○キャストの如き鳴門を書いてみた。
 きゅきゅきゅのきゅ。
 勿論両方とも。
 ほほぅ、これではまるで赤塚さんのバカボンの父親。
 だが、これではまだ区別がつかないかもしれない。
 サングラス越しに文字が見難いのである。
 だったら外せばいいのに。
 いや、外すともしかして目玉がなくて眼窩だけなのかもしれない。
「プレゼントしたかったのにぃぃぃっっ!!!!!!」
 サクラ(ヤングアッパーズ「餓○伝」参照)か、お前は。
 しょうがないのでアフロからついでにゴムを取り出した。
 ゴムといっても薄型とかそういう類のゴムではない。
 ここでゴムが出たらまるでマガ○ンのクソボケラブコメ漫画だ。
 ちなみにオムニバスの方ね。
 あの作者、どんどん絵が下手になっているのは気のせいだろうか?
 数年前の方が可愛い女の子描いていたよーな気がするが。
 あ、また話がずれた。
 とにかくゴムを取り出したTaSは髪を持ち上げ、ぞんざいにゴムで束ねた。
 いわゆるポニーテールというやつである。
 ついでだ。
 TaSはマジックで首の後ろにマークをつけた。
 悪魔の使徒の証拠のマーク。
 判らなかったらジンさんに聞け(ネタ元:「ベル○ルク」)
 よーし、これで判りやすくなった。
 その途端、警報が鳴り出した。
 メイドロボが起動する音がし、彼女達の目が開く。
 TaSを思いっきり突き飛ばして、彼女達は次々と傍の射出口から飛び出していった。
 ブラスターの嵐の中、彼女達は黙々と防御シールド発生装置を修理する。
 だが、一体がブラスターで吹き飛ばされた。
「あ〜れ〜」
 吹き飛ばされたセリオは旗を振って別れを告げた。
 さらに一体、また一体と吹き飛ばされる。
「さよ〜なら〜」
「後はお任せ〜」
 どうでもいいが吹き飛ばされた割にノリが軽いな、あんたら。
 そんな中、頬になるとを描かれたままのセリオは防御シールド発生装置を
真面目に修理していた。
 そしてブラスターが彼女に狙いをつけた瞬間、
防御シールド発生装置の修理が完了した。
「ぴーす」
 敵のドロイドが乗りこんでいるシップに向かってピースサインをするセリオ。
 ドロイド、くやしそう。


 そんな訳で最後のセリオは無事、宇宙船に帰還したのであった。



「……」
「……といった訳でこちらのセリオが防御シールドを修理したのですが――」
 いや、それはいいんですが。
「何と勇敢なメイドロボ、誉めてつかわします」
「――ありがとうございます」
 しかし、頬のなるとは何なのだ。
 真面目な表情だけに笑うのもはばかれるし。
 笑いを噛み殺しながら、
「笛音、彼女の体の汚れを拭いて差し上げなさい」
 といった。
 笛音も、やはり笑おうとする口を手で押さえながら、
「はい」
 と答えた。


「女王、困った事態が起きました」
 入れ違いに一人の男が入ってくる。
「どうしました?」
「防御シールドが修復される直前、どうやらハイパー・ドライブ(ワープ専用のドライブ装置)
のエネルギー装置が破壊されたらしいのです。このままでは百年経ってもリーフに辿りつけま
せん」
 深刻な問題であった。
 琴音はしばし、熟考する。
「――この近くに第二購買部の息がかかってない人型の星人が棲む星はありませんか?」
 そこで何とかして修理しなければならない。
 西山英志が進み出た。
「この近くでただ一つ、第二購買部も干渉していない惑星があります」
「それは?」
「それは――暗躍星です」
「暗躍――」
「逃亡した囚人やら自分の惑星に住めなくなったゴロツキどもが
唯一過ごせる星――いわばスラムの惑星ですな」
「そんなところしか――ないのですか?」
「はい。ですがあそこならば多分――装置の修理部品くらい手に入るかと」
「なるほど。仕方がありません……そこへ向かいましょう」
 宇宙船は一路、暗躍星へと向かった。





――暗躍星

「ん?」
 OLHは空を見上げた。
 流星がキラリと光ったようである。
「もしかして――宇宙船かな?」
 そんな微かな期待をする。
 そうだとするならば――
「僕たちを解放しにきてくれたのかもしれない」
「そうだといいわねぇ」
 母親が窓の外を見上げるOLHをひょいと抱え上げた。
「さぁ、寝ましょう。明日も早いわよ」
「うん」
 OLHはもう一度窓の外を振り返ると、寝室へ向かった。
「おやすみ。かあさん」
「おやすみ」
 寝室のドアを閉めて、ベッドへ寝転ぶ。
 まだ頭からあの流星の姿が離れない。
「いいなぁ……」
 誰にも束縛されずに宇宙船を乗り回すのはどれほど気持ちが良いだろう。
 そんなことを考えながらOLHは眠り込んだ。



――翌日

「では私とこの――セリオを連れて行ってよろしいですかな?」
「ええ、勿論」
「私も行きたいデスネー」
「余計なことをしないと約束するのならばな」
「勿論デース!」
 全然信用ができねぇ。
「あの――」
 侍女が声を掛けた。
「私も付いて行ってよろしいですか?」
 侍女――確か笛音と呼ばれた娘だ――は躊躇いがちに声を掛けた。
「……遊びに行くのではありませんよ。ここは大変危険な場所です。
できれば――よしたほうが良い」
「ですが――女王たってのお願いなのです」
「女王の?」
「お願いします」
 笛音は頭を下げた。
 ううむ、と西山英志はしばし唸ったが、
「いいでしょう。ただし、私から絶対に離れないようにしてください」
 といった。
「はい!」
 かくして、西山英志、セリオ――なるとは拭き消されたがポニーテールは元のままだ、
笛音、それにTaS、という訳の分からない異様なパーティが暗躍星の街へと向かったのであった。


 きょろきょろと物珍しそうに笛音とTaSは回りを見渡す。
 どう見てもマトモな星人には思えそうにないような連中が
騒ぎ、笑い、怒鳴りながら物を売っている。
 不思議なことに、これほどの荒くれ者の集まりでも――いや、集まりだからというべき
なのか――秩序はそれなりに成り立っているらしく、市場は公平に形成されていた。
 公平、というよりも騙された人間が愚か、なのであるが。


 西山英志は三歩歩くごとに三人を振り返りながら進んだ。
 危なっかしくて見てられない。
 はぁ、とため息をつきながら西山英志は汚い文字でジャンク屋と描かれた看板が
立てられている店の前に立った。
 多分、ここならば。
 そう思って店――といってもテントで作られたような店だが、店に入った。
「いらっしゃーい」
 明るい、弾んだ声が答えた。
 どうやら人型の星人らしい少年が店番をやっているらしい。
「すまないが主を呼んでくれ」
「判りました。えーっと……YOSSYFLAMEさーん!」
 面倒臭そうに一人の男が奥のジャンクの山から現れた。
「何だー?」
「この人が――」
「ああ、済まないが店長。ハイパー・ドライブのエネルギー装置はないか?」
「あるよ。こっちへ来な」
 ぐいと親指でジャンクの山を指差す。
 西山英志は、
「お前達はここで待っていてくれ。勝手に外に行くなよ?」
 そう念を押してYOSSYFLAMEの後へと続いていった。

「……」
「……」
「……」
「これ、何デスカー?」
 TaSが不思議そうに近くの装置を弄繰り回した。
「あまりいじくらないほうが――」
 突然箱からボクサーグローブが飛び出した。
 スマッシュがTaSの顎にカウンター気味に入った。
 ノックダウン。
「いいって言おうとしたんだけど、遅かったか」
「そういうことはもう少し早めに言って下サーイ」
 そんな二人を見て、くすくすと笛音が笑う。
 少年はそんな彼女をじっと見つめた。
 そして、
「ねぇねぇ。もしかして君って天使?」
 そういった。
 天使と呼ばれた笛音はびっくりして、彼を見たが――
どうやらからかっている訳ではないらしい。
「違うわよ」
「なぁんだ。かあさんから天使のことを聞いていたから、
君は天使だと思ったんだけど――」
「光栄だけど――違うわね」
「ふうーん、君の名前は?」
「わたし? わたしは――笛音よ」
「ふえね? あ、僕の名前は――OLHっていうんだ」
「そう、OLH。よろしく」
 笛音が手を差し出した。
 OLHもその手を握り返す。
「よろしく、笛音さん」




――偶然――というのは余りに悪魔的な出会いだった。
出会っていなければ――後の悲劇は防げたのかもしれない。
だけど――出会っていなければ目の前の悲劇は防げなかったであろう。
所詮悲劇を後回しにするか、先にするかの違いに過ぎないのだ――






<つづく!>