グラップラーLメモ第四話「鬼と闇」 投稿者:beaker

もう一度念のため、このLに登場する葛田さんは本来の葛田さんとはまったくの別人です。
本来の葛田さんはまだ設定が上がっていないので不明です(笑・・・えないぞ)
石どころか銃弾ぶち込まれても文句を言えないことをしているんですが、
平にご容赦をm(T‐T)m

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控え室。
柏木梓はやや緊張した面持ちで靴紐を結び直していた。
しゅっ・・・しゅっ・・・しゅっ。
上手に直った。
「よし・・・と。」
そう呟くと梓は立ち上がった。
先ほどスタッフが出番であることを報せに来た。
梓にとっては別に実戦が始めて、という訳ではもちろん無い。
何度も死線はくぐり抜けている。
だが、この大会にはそういう実戦ともまた違う雰囲気があった。
(おまけに相手の正体は全然不明だし・・・ね)
まあ、いいや。
考えていてもしょうがない。
自分は自分。
自分の闘い方で闘うだけ・・・

梓はそう思うと、自分の控え室の扉を開け、試合場へと急いだ。
ちょうど、観衆から自分が見えない場所ぎりぎりまで進むと、
歩を止めてちらりと周りを見た。
久々野がいる、Runeがいる、葵がいる、綾香がいる、ハイドラントは・・・さすがにいないようだが・・・
梓は自分の仲間達・・・友人達の姿を見て、心を落ち着けると大きく深呼吸した。
「すーーーーー、はーーーーーー」
先ほどまでやや耳障りに感じていた歓声が気にならなくなった。
(3・・・2・・・1・・・)
「よし!!」
そう叫ぶと梓は闘技場に走っていった。
一際歓声が大きくなる。


志保はマイクを持って実況中継を始めている。
「さあ、最初に入場したのは梓選手!!!
葛田選手、続いて入場して下さい!!」

来ない。

「葛田選手!?速やかに入場して下さい!!」

来ない。

「葛田選手!!開始時刻はもうまもなくです!!、葛田選手!!」

来ない。

梓からも遠目に自分の入り口と反対方向・・・
つまり本来葛田が来るはずの通路を見ていた。
影すらも確認できない。

「あらあら。」
選手専用の通路の少し脇にそれた所に待機していた綾香が呟いた。
「いきなり試合放棄かしら?」
観客・梓・選手全ての人間の視線が通路に集中した。

「・・・来た・・・」
梓から微かに影が見えた。
影は次第に大きくなり、やがて遠目に姿が分かるようになった。
「ハイド・・・?」
葛田の導師とも言える存在のハイドラントだ。
だが、肝心の葛田は一向に姿が見えない。
ハイドラントは観客のいぶかしげな視線に構わず、
試合開始用の銅鑼を叩くデコイに近づいていった。

「・・・?」
「試合を始めろ」
ハイドラントはいきなりデコイに言った。
「え?で、でも・・・」
「でもも何もない、始めるんだ。」
デコイは救いを求めるように志保に視線を移したが、
志保は黙って肩をすくめるだけだった。
デコイはため息を吐いて、念を押すように言った。
「ルール上、試合を開始して三分以上選手の攻撃が無い場合、
特定の状況下を除いて試合の意志無しとみなされ反則負けにされますが・・・いいんですね?」
「いいと言っているだろ、鳴らせ。」
表情をまったく崩さずにハイドラントは言った。

デコイは覚悟を決めると、銅鑼を鳴らした。


体育館中に銅鑼の音が響き渡った。
だが、葛田は来ない。
最初は歓声を上げていた観客もやがて、白け始めたのか
次第に小さくなっていった。

一分経過。
来ない。

歓声どころかざわめき・咳払い一つ聞こえなくなった。
梓は辛抱強くファイティングポーズを取りつづけていた。
待機中の選手や久々野も黙って相手のいない闘技場を見つめている。

二分経過。
来ない。

いつしか観客は心の中でカウントダウンを取り続けていた。
二十秒前まで来ると、次第次第に大合唱となっていった。

二十
来ない
十九
来ない
十八
来ない
十七
来ない
十六
来ない
十五
来ない
十四
来ない
十三
来ない
十二
来ない
十一
来ない
十
来ない
九
来ない
八
来ない
七
来ない
六
来ない
五
来ない


梓はカウントダウンを聞きながら五秒前でファイティングポーズを解いた。
張り詰めていた気がカウントダウンの心地よさにふっと切れた気がした。


一方久々野はカウントダウンを聞きながら、ふっと天井のスポットライトを見上げた。
・・・何か・・・いる?
”それ”は梓がファイティングポーズを解いた瞬間、
堕ちて来た。
その瞬間久々野は気づいた。
なぜ、葛田が来ないのか。
なぜ、ハイドラントは試合を開始させたのか。
なぜ、ここまで我慢したのか。

(・・・この為か!!くそっ!!)
とっさに久々野は叫んだ。
四秒前
「梓ァァァァァァァァ!!!上だァァァァァァァァァ!!!!」


三秒前だった。
彼女は久々野の叫びを聞いた。

二秒前だった。
彼女が久々野の叫びを理解できたのは。

一秒前だった。
彼女が天井をちらっと見上げたのは。
完全な無防備だった。


思いきり振り上げられて加速がついた拳が梓の頭蓋骨と頬骨に直撃し、脳を揺さぶった。
「えっ・・・・!?」
体がくの字に曲がるほどの拳を食らった梓は低く呻くと、ゆっくりと崩れ落ちた。

全てが一瞬沈黙した。
綾香も、葵も、他の選手達も驚愕の表情で飛び降りてきた彼を見つめた。
顔も体つきも脚もいたって普通の少年だった。
ただ・・・常人よりはるかに腕が長かった。
長いだけではなく、筋肉も以上に発達していた。

彼はいたって何事も無かったかのように立ち上がると、
咳き込みながら立ち上がった梓に向かって挨拶した。

「はじめまして、葛田玖逗夜です・・・」
静寂が途端に切れた。
歓声と怒号があたりに巻き起こる。
「ひょう〜、さっすがダーク13使徒、やることが汚ねえや!!」
「梓せんぱ〜い!!しっかりしてください!」
日吉かおりが悲鳴を上げる。
「梓お姉ちゃん!!」
初音たちや、

「梓!」
「梓先輩!」
「梓!!!」
綾香たちも懸命に声援を送る。

「がはっ!!」
むせ返りと共にぽたりぽたりと、血が滴り落ちる。
あっけにとられていた志保も気を取り直したかのように実況を始めた。
『な、な〜〜んと!!いきなりの奇襲だぁぁぁ!!
これは予想もつかなかった!!』

『しかし、これは反則ではありません!!ルール上特に銅鑼が鳴った後に奇襲を
仕掛けては駄目だ、などと言う事はありません!!』

「はあ〜〜〜〜、ったく・・・やってくれるわね・・・」
梓がとてもではないが大丈夫とは思えないほど震えた足で立ちあがった。
しかしゆっくりとだが、梓は混乱から抜け出していた。
自分のダメージを確認する。
確かにかなり痛かったが、特にこれからの闘いに支障は無さそうだ。
「お待たせしたわね・・・じゃあ、始めましょうか?」
そう言って梓はゆっくりと構えた。
「・・・はい。」
葛田も応えて、構えをとった。
ボクシングスタイルだ。
キュッ、キュッと小気味よいフットワークで間合いを少しずつ詰めていく・・・

(腕が長いわね・・・少し見切りの度合いを修正しないと・・・〜〜〜ッ!?)
一気に葛田が踏み込んでくる。
梓はぎりぎりで避けてカウンターを取るつもりだった・・・が、
「ッ!?」
ワンツーが見事にヒットした。
さらに葛田は踏み込んで拳を縦に変えた。
(裏拳!!)
梓はよけた・・・つもりだった。
しかし・・・
「ぐっ!?」
右頬に葛田の甲が直撃する!

「梓、一旦離れて!!」
綾香が悲鳴にも似た叫びを上げる。
言われるまでもなく、梓はステップバックして間合いを取った。
だが、思考は一層混乱の度合いを深める。

(どうして・・・どうして・・・?確かに私はパンチをぎりぎりで避けたはずなのに・・・
なぜ当たったの?・・・なぜ?)

ハイドラントは塔の同窓生から少し離れて、腕組みして自分の弟子の姿を見守っていた。
(さて・・・梓はあいつの”罠”をどうやって切り抜けるかな?
もっともこれを切り抜けられないようでは、この試合に勝ち残れるわけないがな・・・)


(つづく)









闘いはより一層混乱を深め


疑惑は梓の精神を縛る


「無理ですよ、僕の拳は避けれません。」


「葛田のもう一つの”罠”を回避できるか?」


「梓!あいつの腕の模様よ!!」


「・・・全部読めたわ、あんたの二重の罠が!!」


「僕のこの長い腕の本当の使い方・・・教えます。」


次回グラップラーLメモ「三重のセキュリティシステム」お楽しみに!?






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「ふっ、パクリも複数二重三重にパクるとごまかしが効くぜ」(beaker)
「・・・外道ね、あんた」(綾香)
「何とでも言ってくれ!!・・・でも葛田さん本当にすいませんねえ・・・」


何か一気に書いちゃいました。
ふう、立て続けに書くとさすがに疲れる(笑)
感想なかなか書けませんが絶対に書きます!!
・・・信じて(懇願)

http://www.s.fpu.ac.jp/home/s9712056/www/index.htm