ちょっと間隔が空いた感が無きにしもあらずですが、 グラップラーお届けします〜。 ・・・このシリーズ下手すると年内いっぱいかかるかも(汗) ============================================== はあ〜 藤田浩之はこの大会が始まって以来何十回目かのため息を吐いた。 まあ無理もない。 あかりに強引に誘われたと思ったら一回戦の相手は「不死身の肉体」つーか 「マゾ」の忍者秋山登。 作者だったら泣いて逃げるだろう。 「・・・浩之ちゃん、ごめんね。」 さすがにあかりも反省(当たり前だけど)しているらしく、申し訳なさそうに柔軟体操を 続ける浩之に声を掛けた。 「ん?ああ、まあこんなところまで来ちまったんだ。今更あーだこーだ言ってもしょーがねーよ。」 浩之がいつもの調子であかりに言った。 「でもなあ・・・相手が相手だけに、諦めるのは癪だけど、一回戦突破は難しいかもな。」 「そ、そんな・・・戦う前から諦めるのは良くないと思うよ。」 「むー・・・ま、そりゃそうだな。やれるだけのことはやってみるわ。」 「うん!わたしも応援しているからね!!」 「わたしも応援していますぞ!!」 「僕も応援しているよ!!」 「おまーら・・・応援は結構だが・・・その格好何とかならんか・・・」 浩之がジト目でツッコむのは’ちあがーる’な格好をした佐藤雅史とセバスチャンであった。 もちろんモッコリミニスカート・ポンポン付きで子供がこんな人たちに出会ったら、 とりあえず泣き喚くようないでたちであった。 千歩譲って中性的な顔立ちの雅史はともかく、セバスチャンのおぞましさと言ったら、 原田美佐子だって裸足で逃げ出すよね☆(内輪ネタ、ごめん) 「あ、私ちょっと用があるから・・・」 あかりは場の雰囲気の微妙な変化を感じ取って逃げ出した。 「浩之殿、これから闘うあなたの為にも我々は踊りますぞ!!」 「それ、ワンツーワンツー♪」 足を上げるな、死ぬほど見苦しいぞ。 「あかり、こいつらと三人きりにしないでくれえええええええええええ!!」 という悲鳴が後ろから聞こえてこないでも無かったが、 あかりは「聞かなかったこと」にした。 なぜなら彼女には「浩之を一回戦突破させる」という非常に重要な使命があったからなのである! (その為には・・・多少の犠牲も必要だよね♪) って犠牲が浩之なら・・・何にもならないんじゃ・・・ 大丈夫だよお、浩之ちゃんは浩之ちゃんなんだから。 うーむ根拠のない信頼は実に羨ましい。 こういうのをラブラブっていうんだろうなあ、やっぱり(そうか?)。 一方こちらは秋山登の控え室。 いちおー元忍者であり、格闘技もこなす彼にとっては、主人公とは言え 影が薄い上に(おい) 女の子に嫌われている上に(こらこら) 所詮はお名前なんてーの?の曲と共に名前が変更される運命(だあああああ!) の藤田浩之なぞ楽勝である・・・と思っていた。 こんこんこん 秋山登の控え室のドアを誰かがノックしてきた。 (まさか・・・梓!?応援に来たのか!?) 期待を込めてドアを開ける。 が、そこに居たのは・・・ 「秋山・・・先輩でいいのかな?こんにちわ。」 神岸あかりであった。 ・ ・ ・ 「それでね、梓先輩ったらね・・・『千鶴姉が自分の料理を食べても死なないのは、 やっぱりフグが自分の毒で死なないのと一緒なのかな・・・』とか悩んじゃって。」 「ははは、梓らしいなあ。」 当初、何事かと警戒していた秋山もあかりの巧みな話術についつい乗せられて、 梓に関する色々なエピソードを自然に聞かされていた。 「そうそう、梓先輩の男の子の好みってどんな人か知ってます?」 「あ、梓の好み!?・・・いや、知らない・・・」 「梓先輩ってね、『やっぱり男だったら乱暴な人間よりも繊細な心を持つ人間の方がいいなあ。 暴力に暴力で立ち向かうヤツは駄目ね。たとえ謝ってでも戦闘を避ける男の人が理想よ。』 ・・・だって。やっぱり男の子は優しくて無抵抗な人がいいみたいだよね。」 もし、この時秋山が冷静に考える時間があれば、すぐに変だということに気付いたかもしれない。 だが、秋山があかりに聞き返す間も無く、控え室にアシスタントが彼の出番を告げに来た。 「秋山選手、出番です!!」 「あ、ああ分かった。」 慌てて秋山は立ち上がった。 準備運動すらしていないが、それどころではなかった。 「それじゃあ、頑張ってね。秋山先輩・・・」 「お、おい。さっきの話の続きを・・・!!?」 「私、浩之ちゃんの応援をするから・・・(すたすた)」 「おお〜い、あかり〜〜〜!!!続きは〜〜!!」 秋山の絶叫にも関わらず、あかりはニッコリ微笑むと観客席へと去っていった。 「・・・好みのタイプは・・・優しくて無抵抗・・・」 秋山は闘技場に向かいながらぶつぶつと自問自答していた。 (も、もしかして・・・梓の好みのタイプって俺か!?) (で、でもそうすると今から俺って梓の好みと合わない事をするのでは!?) (かと言ってこの戦いに勝たないと梓と俺のラブラブ戦場巡りで血の雨計画が台無しになってしまう!) 梓は死んでも参加しないと思うが・・・ (こ、ここは一つ心をエルクゥにして、藤田浩之を倒すしか!!) (だ、だけど・・・これは弱いものいじめでは!!) (ああっ、梓のハートか梓に捧げるプレゼントか!?どーすればいいんだっ!!) 「あの〜秋山選手・・・試合前の注意聞いていましたか?」 ふっと秋山が気付くと、すでに自分は闘技場で浩之と相対していた。 浩之は呆れ顔で彼を見つめている。 「おいおい、秋山さん(センパイでもないが年上なのでさん付け)、 これから闘うっていうのにどーして鼻の下が伸びているんだ?」 「い、いや。何でもないっ!!さあ、行くぞ!!」 秋山はごほんと咳払いをして、構えた。 「ようし、こっちも本気で行くぜ!!」 腐っても主人公(待てやコラ)。やはり浩之も覚悟はしてきているようだ。 素人の構えだが、場慣れはしているのだろう。 「そりゃああああああああああああああっ!!」 浩之が右手で思い切り殴り掛かってきた。 「ぬっ・・・」 秋山はその拳を上手く捌くと、そのまま浩之の右腕を掴んで回転させた。 合気の要領でそのまま腕を極めようとする。 だが・・・ ふっと先ほどの言葉を思い出し、思わず極めの力が緩んだ。 その隙に浩之は秋山の頭を蹴って、脱出する。 頭を蹴られても大した痛みは走らない。 だが (ううっ・・・あ、梓はどこだっ!?俺の暴力的な姿を見てどう思っているんだ!?) 秋山は観客席にいるはずの梓をきょろきょろと探し始めた。 観客席を一通り見渡す・・・梓・・・梓・・・ いたっ!! ・・・な、な、な、泣いているううううううう!!!!! あ、梓がっ、梓がっ!! や、やっぱり俺の暴力的な姿を見て幻滅したのか!? ち、違うんだ。これはお前の為なんだよおお!!!!! 秋山はへたりこんだ。 何とか立ち上がった浩之がそんな彼を不審そうに見つめる。 アシスタント兼審判員でもあるデコイも彼に近づいた。 「あ、あの〜・・・秋山選手?一体どうしました?」 恐る恐るデコイが聞く。 秋山はむくりと立ち上がった。 「ううう・・・お、俺はこの大会に勝つことに執着しすぎて大事なことを見失っていた・・・ 梓ァ、お前の為に俺は・・・この試合を放棄する!!」 「「へ?」」 浩之とデコイは思わず同時に叫んでいた。 ・ ・ ・ ややあって、ようやくデコイが口を開いた。 「あ、あの〜それはつまり・・・棄権するということですか?」 「ああ、梓の為だっ!!そうするしかないのさ・・・フッ・・・」 秋山が全てを悟ったような口振りでそう言った。 デコイはちょっと呆然としながらも、とりあえず志保に合図を送った。 志保も志保でアナウンスを始めるまでもなくいきなりギブアップした秋山を不思議そうに見ていた。 とりあえず気を取り直して浩之の勝利宣言をする。 『えーっと・・・と、とりあえず秋山選手ギブアップ!!藤田選手の勝利のようです!!』 一瞬の沈黙の後、 「「「「「「ええ〜〜〜〜〜!!」」」」」」 観衆の唖然とした声が辺りを支配した。 たちまちの内に両選手に対するブーイングが飛び交った。 浩之はきょとんとしながらもとりあえずデコイに右腕を抱え挙げられ、観客席のあかりに向かった。 「お疲れさま、浩之ちゃん。」 あかりがタオルを持って出迎えた。 「お疲れって・・・俺何にもしてねーぞ。」 「でも頑張ったんだからお疲れさま。」 ニコニコしながら浩之がかいた汗をタオルで拭く。 「・・・秋山さん、何でまたギブアップしたんだろ?梓先輩の為だとか何とか言っていた気がするが・・・」 「わ、私がどうしたって・・・ぐす・・・」 「ってええ!梓先輩どーしたんすかっ!!」 浩之が見たのは泣きながらこちらに話し掛けてきた梓であった。 「何って・・・ぐすっ・・・ あかりが急にこんなところで玉ねぎ切りながら胡椒を辺りにばら撒くから・・・」 「あかりが・・・?おい、あかり・・・何でまた?」 「え?ええっとお・・・浩之ちゃんに新しいお料理をごちそうしたくて・・・」 「で、何でこんな所で料理を?」 「あはははははははははは、まあいいじゃない。後でご馳走してあげるから、ね?」 「胡椒と・・・玉ねぎねえ・・・」 とっても腑に落ちない顔をしつつ、浩之はあかりと連れ立って去っていった。 「こらあ、あかり・・・ぐすっ・・・ちゃんと片づけていきなさいよお・・・ぐすすっ」 梓が涙を溜めながら抗議したが、あかりは聞こえないフリをした。 「・・・・・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・・・」 「僕たちの立場って一体・・・・」 後には応援する暇も無く決着がついたので、 誰もいなくなった試合場を呆然と眺めるセバスチャンと佐藤雅史がいた・・・ 藤田浩之・・・二回戦進出! 秋山 登・・・一回戦敗退 <追記> 秋山登はこの後「お前の為なんだああああああああ」と叫びながら梓に突進。 梓にカウンターで止めを刺される。 あかりは・・・上手に逃げおおせたようだ(ひでえ)。 <続く> ============================================== 秋山:こら、待てえ。逃げるな、作者ああああああああああああああああ!!!! b:どひーーーーーー!!ごめんなさーーーーーーーーーーい!!!!!!!!! 秋山さん、ごめんね(笑) 感想・・・またの機会に(汗)