Lメモ外伝「月夜の晩に踊る狼を見たことは?」後編  投稿者:beaker
「・・・ところでさあ、このタイトルに意味はあるの?」(綾香)
「・・・ないですね」(beaker)
「昔どっかの映画でこういう台詞を見たような記憶があるんですけどねえ・・・」
「間違いじゃないの?」
「・・・多分ね。」

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急に曇り空になってきた。
今にも空から雨粒が落ちてきそうだ。
(今夜は荒れるかもしれませんねえ・・・)
beakerはそんなことを考えていた。
「・・・さて、結城・・・紫音さんですか?今は・・・」
「・・・貴方に聞きたいことがある。」
「へえ・・・・・・・・・・・・・・・。」
beakerは肩を竦めた。
「うかがいましょうか・・・でも、ここでお話できる内容ですか?」
「・・・ついてきてくれ」
紫音はマントを翻して、近くのこじんまりとした森に向かった。
beakerも後に続く。
さらに後ろには久々野配下”草”も忍び寄っていたが。



Leaf学園の裏手にある、こじんまりとした小さな森・・・
森林浴をするなら絶好の場所だろう。
もっともこの天気でそんな物好きは一人もいないらしく、森には動物の姿すら見受けられなかった。
紫音はここまで来て足を止め、beakerを振り返った。
光とは違い、鋭い眼光がbeakerを値踏みするように見つめていた。
数秒の沈黙の後、ゆっくりと紫音が口を開いた。
「さて・・・貴方に二つ聞きたいことがあるんだが・・・いいか?」
「伺いましょうか。」
beakerは普段の愛想良い顔を崩さず答えた。
「聞きたいことは・・・このタロットのことです。」
そう言うと紫音は懐からタロットカードを取り出した。
”死神(デス)”のカードだ・・・
以前の絵柄はただの死神だったのが、今は紫音と光が描かれている・・・
もっともbeakerからでは絵柄が良く見えなかったが。
「・・・なぜ、このカードを俺に?そしてどうしてこのカードは絵柄が変化したんだ?」
「知りたいですか?それを。」
「当たり前だ、ある日突然貴方にこのカードを渡されて『肌身はなさず持っていなさい』
と言われて、持っていたら絵柄が俺達に変わったんだぞ!!」
「ちょ、ちょっと紫音さん落ち着いてくださいよ。」
慌ててbeakerは紫音をなだめ始めた。
「・・・そもそも”死神”なんて不吉なカードを渡さなくても、・・・」
そう言って紫音は俯いた。
紫音にとってこのカードは忌みでしかなかったのだろう。
”死神”このカードは他の種類と違って文字どおりの意味を持っている。
すなわち”死”だ。
これほど”死”がふさわしいカードもあるまい。
beakerは紫音がこのカードにやや過剰なまでに反応を示す事に、少し興味を覚えた。
だが・・・”死神”にはもう一つの意味もある。
その意味があってこそ、このカードの真の意味が伝わると言うものだ。
重苦しい沈黙の中、beakerが口を開いた。
「紫音さん、”死神”のカードにはもう一つの意味があることをご存知ですか?」
その言葉に紫音は俯いていた顔を挙げた。
「もう一つの・・・意味?」
「死神には二つの相反する・・・アンビヴァレンツがあるんですよ。
一つの意味は”終わり・別れ”・・・だけど終わりはまた始まり、すなわち”再生”を意味するもの
なのですよ。」
「終わりは・・・始まり。」
「そう。
”我はアルバなり、オメガなり”
”最先(いやさき)なり、最後(いやはて)なり”
”始まりなり、終わりなり”」
beakerはまるで魔法を唱和するように呟いた。
「・・・・・・?」
紫音は呪文でも唱えられたかのように、beakerの顔を見た。
「黙示録の一節だそうです。もっとも僕はゲームから学んだんですけどね。」
続けてbeakerは言った。
「このカードはあなた達の望みに応じて、その力を行使します。
あなた方の力を引き出すかもしれない、あなた方に対してカード自身が力を使うのかもしれない・・・
ともあれ、持っていて損はないですよ。」
紫音は数刻の逡巡の後、ようやく口を開いた。
「分かった・・・」
その時だった、突然木々の中から何かが飛び出してきた。


「・・・・!!危ない!!」
どちらが叫んだのかは分からない、ともかく二人は咄嗟の判断で後ろに飛び跳ねた。
つい先ほどまで紫音がいた場所の側の木が、粉々に砕け散る。
「ちっ・・・」
紫音は舌打ちした。
(迂闊だった・・・決戦の日まで、来ることはないと思っていたが・・・)
木を砕いた怪物がようやく直視できた。
・・・強化人間だ。
(・・・斥候のようだ。大方チャンスと見て、抜け駆けしようと言う魂胆だろう)
紫音にも何型までは分からなかった。
抜けた後に、強化を受けたタイプかもしれない。
何はともあれ、それでもこちら側にとっては脅威的なものであることに変わりはない。
(光の身体だととてもじゃないが、持ちこたえられないし・・・beakerさんも
戦闘タイプって訳ではなさそうだしな・・・・)
実質一人でこいつを相手にするのか・・・
やれやれ、と紫音はため息を吐き、ちらりとbeakerの方を見た。
驚いたことにこの非常事態にもいつもの穏やかな表情は崩していなかった。
「beakerさん・・・少しは危機感持ってくださいよ。」
呆れて紫音は警告した。
強化人間を目撃した以上、beakerにも襲いかかってくることは当然だ。
だが・・・
「・・・ちょうど良かった!!せっかくだから僕のタロットの使用法教えてあげましょうか?」
ぽんと手を叩いて、beakerは言った。
「は、はあ・・・?」
戦闘中だということも忘れて、思わず紫音は聞き返した。
タロット?
beakerさんも持っていたのか?
・・・って戦闘中だろうが!!
紫音が気を抜いたことに気がついたのだろうか、先ほどから様子を伺っていた強化人間が
こちらに向かって一気に襲い掛かってきた。
beakerはのんびりと懐からカードを取り出すと、強化人間に向かってかざした。
強化人間もそれに気づいたのか、反射的に紫音からbeakerに向かって襲いかかった。
「あ、危な・・・・・・!?」
爪がbeakerを切り裂く直前だった。
ぽろぽろぽろ・・・と強化人間の表皮が崩れ落ちていった。
表皮だけではない、爪も、牙も、零れ落ちていった。
やがて、そこにはただの男が呆然とした顔つきで立ち尽くすだけとなっていた。
紫音も同じく呆然としていた。
(い、一体・・・何が起こったんだ?)
ようやく気を取り直して、紫音はbeakerに尋ねた。
「beakerさん・・・今のは!?」
「これが僕のカード”運命の輪”の力なんですよ。」
「力って・・・強化人間があんな男に変身させるなんて・・・」
「変身じゃありませんよ。僕は彼の”もう一つの未来”を具現化しただけですから。」
「もう一つの・・・未来?」
「そうです。」
それからbeakerは自分のカードの能力を説明し始めた。
「このカードは他人の過去を変化させることが出来ます。
すなわち人生で決定的に重大な分かれ目を探って、別の道に歩んだ場合の身体に変化させるんですよ。」
「今の場合が一番分かりやすい使い方です。僕は彼のもう一つの未来”強化人間となっていない”
未来を彼の身体に与えたんです。」
「な、なんて・・・(自分にとって都合のいい使い方を・・・)」←ほっといてくれ
紫音は言葉を失った。
「ま、他にもいろんな使い方はあるんですけどね・・・ん?」
ふと振り返ると慌てて男は逃げ出そうとしていた。
素早く背中のホルスターから、拳銃を抜くと、足元に乱射した。
ズキュン!!ズキュン!!ズキュン!!
男には傷一つ無かったが、彼をその場に立ちすくませるには十分な効果があったようだ。
「ひ・・・ひぃ!!」
情けない悲鳴を上げて、男はへたり込んだ。
beakerと紫音は彼に近寄った。
男の方は恐怖に凍り付いたまま、こちらを見つめている。
「・・・強化人間という殻が無いと、こんなものですかね?・・・さて、紫音さん彼はどうします?」
「どうするって・・・、こいつは元に戻るのか?」
「ええ、半日もすれば元の強化人間に戻ってしまいますよ。今のうちに始末しますか?
どうせ、この様子だと元に戻ったとたんに襲い掛かってくるのは目に見えてますが。」
そう言うと、デザートイーグルを男の頭に当てた。
「止めておいてください・・・弾丸のムダです。」
強化人間という殻が無いと、こいつもそこらにいる一般生徒と変わりはない・・・
紫音はこの男にも哀れみを感じた。
一瞬の強さに惑わされ、自分を見失った人間に待つものは・・・残酷な結末だけだ。
「失せろ。・・・それから二度とここに来るな。」
その言葉に慌てて、男は立ちあがり脱兎の如く逃げ出した。


「さて、僕も購買部が心配なのでそろそろ失礼させて頂きますよ。それでは・・・」
「待ってくれ、後一つ・・・」
「何でしょうか?」
「俺の・・・カードにはどんな力が?」
「さあ・・・あなたにしか分からないと思いますよ。・・・光さんによろしく、それでは。」
そう言うとbeakerは去っていった。
紫音も無言のまま、今ごろ肉体を待ちくたびれているはずの光の元へ向かった。


「――beakerさん、遅いですね。今日は新しい武器が入ったから知らせてくれるはずだったんですが・・・」
「新しい武器・・・なんですか、それって?」とへーのきがDセリオに尋ねた。
「――知りたいですか?(ニヤリ)」
「いえ、全然(0.0001ナノ秒)」
「ちっ」
・・・「ちっ」って何だ、「ちっ」って・・・


「beakerさん・・・遅いですね。」
水禍が不安そうに言った。
「もうそろそろ帰ってきますよ・・・ホラ、足音がします。」
「?。デコイさん、足音で誰が来たか分かるんですか?」
「ええ、まあ・・・これぐらいはストー・・・忍者として、初歩の初歩。」
「そうなんですか、すごいですねえ」
「いや、どうも・・・(照れるな・・・)」
微笑ましい光景かもしれないけど、デコイさん、あなたはアフロ。

カランカラン
冴えない鐘の音が鳴り響いた。
「ただ今、帰りました・・・」
「beakerさん、遅いです・・・(ジト目)」
「いや、すいません。ちょっとゴタゴタがありまして・・・(汗)」
「・・・知りません。」プイッ
「そ、そんな〜(泣)」

この後水禍の機嫌が直るのに、数日かかったとか、かかっていないとか。




カードの話はこれにておしまい




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「・・・まさか、これでお終い?」(好恵)
「・・・・・・ごめん!!いや、マジで!!
タロットを渡されて人は、それぞれ自分で使い道を考えてみてください。
いずれにせよ、使ってさえくれれば、うれしいです。」
「渡した人は誰だっけ?」(好恵)
「後で、掲示板にでも書込みいたしますです。今日はもう疲れました・・・へろへろぉ」
「情けないわね、そんなんじゃ、次回予定の作品もちゃんと出来るか怪しいものね。」(好恵)
「次回はセバスチャンを準主役(久々野さんが言った設定を生かして)にして書きたいな〜」
「校内エクストリーム大会も開きたいのよね。」(好恵)
「これはやっておきたい。”修羅の門””鉄拳チンミ””グラップラー刃牙”元ネタで
既に何試合かのプロットは完成しているし」
「期待しないで待つわね〜♪」(好恵)
「そんな〜(涙)」

http://www.s.fpu.ac.jp/home/s9712056/www/koubaibu.htm