シネマLメモ「フェイス/オフ」前編 投稿者:beaker
いよいよ始動しました、シネマLメモ。
設定上は「Leaf学園内でSS使いやリーフキャラで映画を撮影している。」
事になっています。
だから何をやろうが自由!!(おひ)
ってな訳でここでどんな事になってもLeaf学園内には直接関係していない
事を予めお断りしておきます。
えーっとつまりはまあただの映画ですから(^^;;

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<登場人物>
OLH・・・来栖川警備保障特殊追跡班のリーダー、beakerを追うことに人生の全てを賭けている
beaker・・・ソシオパス(反社会的精神病質者)。金と暴力と女の欲望に満ちたサイコ野郎。
勇希・・・OLHの妻。外科医。娘を自分のせいで亡くしたと思っているOLHに心を痛めている。
笛音・・・OLHの娘。三年前にbeakerに射殺される。
坂下好恵・・・beakerの女。娘が一人いる。
ティーナ・・・好恵の娘
沙留斗・・・beakerの実弟、爆弾テロのプロ。beakerが信頼するただ一人の人間。
YOSSYFLAME・・・坂下好恵の兄。麻薬ディーラーにしてbeakerの友人。
へーのき=つかさ・・・OLHの上司
榊宗一・・・OLHの同僚
広瀬ゆかり・・・フェイス/オフ計画発案者


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――三年前   遊園地「フェアリーテール」

遊園地は平日と言うこともあり、閑散としていた。
普段は賑わうはずのメリーゴーランドには一組の親娘しか乗っていない。
乗っているのは父親と娘らしく、母親は少し離れたところで彼らの姿を見つめている。
父親は娘を抱き上げて、自分の馬に移させる。
それから娘の顔に優しく手をかざして、ゆっくりと顎まで手を下ろす。
彼女はくすぐったそうに笑うと、父親に抱き着いてキスをした。
母親の方はそんな二人を笑いながらカメラに写している。

と、そのメリーゴーランドから少し離れた草むらに一人の男が潜んでいた。
手元のケースからゆっくりとライフルを取り出して組み立てる。
組み立てが終わると照準に眼を当てる。
メリーゴーランドに乗っている父親の心臓に狙いをつけると、口元を幽かに歪めて・・・引き金を引いた。

突然娘の眼が見開いた。
ほぼ同時に父親も自分の胸に猛烈な熱さを感じた。
何が起きたのかを考える暇も無く、二人は互いにもんどりうってメリーゴーランドから転げ落ちた。
慌てて母親が駆け寄ってくる。
父親は自分の胸の痛みも考えずに必死に娘の名前を叫んでいた。
娘は泣くでもなく、ただ驚いている。
ただ自分に降りかかった死に呆然としていた。
それを見ながら父親も次第に意識が遠のいていった。
意識を失う瞬間、自分を嘲笑っている誰かの姿が目に見えたような気がした・・・




――現在

「笛音ッ!!」
OLHはベッドから飛び起きた。
自分の状況を落ち着いて確認する。
・・・夢だ。またいつもの悪夢だった。
もう何百回とこの夢を繰り返しただろう。
あの時、笛音の体が盾となり、
自分の胸に突き刺さった銃弾は心臓をそれたのだった。
だが笛音はその代償に死んだ・・・自分のせいで死んだ。
今日はもう眠れないだろう。
煙草に火を付けようとテーブルに手を伸ばした時、
ふとOLHは自分の隣で眠っている勇希を見た。
(今ので起きていなければいいのだが・・・)
勇希はこちらに背中を向けて眠っている。
ため息を吐いてOLHはベッドに潜り込んだ、眠れないことは分かっていてもそうするしか無かった。
無理にでも眼をつぶって明日に備えようとする。
・・・勇希は起きていた。
OLHが叫んだ事も、何を叫んだかも、叫んだ理由も分かっていた。
もう何回彼は夜中に飛び起きただろう?
何回苦しめばいいのだろう?
勇希はすすり泣き始めた・・・せめて泣き声がOLHに届かない様に祈りながら。


――Leaf学園教会
よほどのイベントが無い限り普段は使われることがないこの教会だが、
今は合唱部が讃美歌を唄っている。
一人の男がそれに聞き惚れていた。
神父の格好をしているが、そうではないことは確かだろう。
なぜなら床にはかつて神父だったらしい男が首の骨を折られ、横たわっている。
・・・神父の格好をした男、beakerは讃美歌を聞きながら爆弾をセットしている。
「ハレルヤ・ハレルヤ・ハレルヤ・ハレルヤ・・・」
狂ったように繰り返される歌を聴きながら爆弾をセットし終わると、
床の’元神父’を一階に突き落とした。
「・・・?キャアアアアアーーーーーーーーー!!!!!」
たちまちパニックと悲鳴が辺りを支配する。
「何だ、もう唄わないのか?それは残念だ。」
beakerはそれを満足げに眺めると悠々と教会から脱出した。


――来栖川警備保障特殊追跡班分署
「・・・まだ奴の居所は掴めないのか?」
OLHが榊宗一に問い掛けた。
「すまん、図書館のコンピュータで洗ってみたが消えちまった。」
「最後に奴の確認が取れたのは・・・」
「中国だ。・・・奴の生まれ故郷でもある。」
「奴め。中国で何を手に入れたんだ?クソッ!!」
OLHはホワイトボードに手を叩きつけた。
「分からん。だが、またここに何かをやりに来たのは確実だ。」
榊がお手上げのジェスチャーをした。
「この来栖川警備保障に入って以来、奴を追い続けている。」
「知っているさ、同期だからな・・・・・・コーヒー飲むか?」
無言でOLHはコーヒーを受け取った。
それから何十回も更新された’彼’に関しての報告書を読む。

beaker・・・反社会的精神病質者(ソシオパス)。
      現在は金で特定団体の雇われテロをしている。
      殺人・麻薬売買・武器売買・爆破テロ・・・超A級凶悪犯etc、etc・・・

そして・・・・・・俺の娘を射殺した男。
OLHは娘の・・・笛音の最後の顔を思い出した。
かっと全身の血が逆流する。
ふと気がつくとコーヒーの紙コップを握り潰していた。
「・・・・・・・・・」
「娘さんの事を思い出していたのか?」
「ああ・・・・・・俺はあの男を絶対に許さない・・・許すものか・・・」
OLHはディスプレイに映し出されたbeakerの顔を睨んだ。
と、突然OLHの携帯に連絡が入った。
「俺だ・・・・・・何ッ!?そうか、分かった!!」
「どうした!?」
榊が電話を受けるなり、駆け出したOLHに慌てて問い掛ける。
「・・・奴が使う偽名の一つで飛行機が予約されたらしい!!飛行場に向かうぞ!!」
それを聞いた榊も飲み干したコーヒーのコップを投げ捨てると、
走り出した。


――数時間後、アクア飛行場


「・・・兄貴、遅いなあ。」
沙留斗は腕時計を見ながらイライラ愚痴をこぼした。
「もたもたしていると、警備保障だって動くってのに・・・」
「・・・・・・到着なさったようです。」
側にいた部下の一人が沙留斗に囁いた。
「ん?来たか・・・時間にルーズな奴は困る・・・」
沙留斗がそう愚痴りながら、数メートル先に停まった彼の車を見た。

男が車から降り立った。
黒いコートがマントのように風に煽られる。
「おい、兄貴!!モタモタしやがって、爆弾はちゃんとセットしたんだろうな!?」
沙留斗が呼びかけた。
ゆっくりと歩いてきたbeakerは無言で手を左右に突き出した。
沙留斗の後ろに控えていた部下二人が無言で彼の黒いコートを脱がせる。
背中にはホルスター、二挺の金色の拳銃が突き刺さっている。
beakerは沙留斗を抱きしめて耳元で囁いた。
「こんな口を聞く奴が弟じゃなかったらブチ殺しているところだ。」
そしてニヤリと笑い、沙留斗を解放した。
「心配するな。爆弾はセットしてきたさ・・・はて、スイッチを入れたかどうか思い出せないが?」
「お、おい兄貴!!」
「冗談だよ、冗談。さて、俺達は飛行機でこの場からとっととオサラバだ、予約した飛行機はこれか?」
beakerは目の前の飛行機を顎で指し示した。
「ああ、兄貴の予約した通り、中にはシャンパンもあるぜ。・・・美人のスチュワーデスもな。」
沙留斗はニヤリと笑った。
「さすが我が愛する弟!!、ちゃんと俺の事を分かっている。」
そう言って彼は笑いながら飛行機に乗り込んだ。

beakerは口笛を吹き鳴らした。
「こいつは豪華だな!・・・いいねえ、このソファー!この内装!!」
ソファーによりかかると、側にいたスチュワーデスを指を鳴らして呼びつけた。
スチュワーデスはそんな彼にも笑顔を向けると言った。
「何かご入用ですか?」
「ああ、そうだな・・・とりあえずシャンパンを持ってきてくれ。冷えているよな?」
「ええ、もちろん。」
「そうだな・・・それから・・・」
突然beakerは側のスチュワーデスを自分に引き寄せた。
「きゃっ」
小さく悲鳴を上げてスチュワーデスはbeakerの隣に倒れ込む。
「それから君が欲しいんだが?これからの長旅の為にもお互いもっと親密になる必要があると
思わないかい?」
そう言いながら髪を撫で、腰に手を回す。
「シャンペンをお持ちしますわ。」
彼女はくすりと笑って、beakerの手からすり抜けた。
「兄貴、久しぶりに振られたな。」
ニヤニヤ笑いながら沙留斗が言った。
(ふん、まだ旅は長いしチャンスはあるさ。)
そうbeakerが言おうとした時だった。
車のサイレンの音がけたたましく響き始めた。
「何ッ!?」
慌てて二人は窓の外の状況を確かめる。
何台もの警備保障の車が彼らの飛行機に迫っていた。
「くそっ!!あいつら嗅ぎ付けてやがったか!!」
沙留斗が忌々しげに怒鳴った。
「飛行機を発進させろ!!俺の銃をよこせ!!」
beakerが側の部下に命令した。
だが、スチュワーデスが素早く動くと拳銃を抜いてbeakerに突き付けた。
「動かないで・・・警備保障のものよ。」
全員の動きが硬直する。
beakerは頬に銃を当てられたまま、彼女を睨みつけた・・・


榊が拡声器で怒鳴りつける。
「そこの飛行機!!動くんじゃねえぞ!!」
「よし!!後二分もすれば追いつける距離だ・・・畜生、飛行機が動き始めた!!」
「中にいる捜査員は無事か!?」
運転しながらOLHは榊に言った。
「・・・おい、あれを見ろ!!」
榊が飛行機のドアを指差した。
beakerがドアを開けて、女性を無理矢理引きずり出してきた。
銃を頭に突き付けている。
彼が手を放せば今にも落ちそうな状態だ。
「くそ、あの野郎!!」
beakerは銃を頭に突き付けながら何事かを怒鳴っている。
おそらく人質を盾にして交渉しようと言う腹だろう。
榊が拡声器を使ってbeakerに叫ぶ。
「もうお前は囲まれている!!大人しく降参しろ!!」
OLHは運転しながら榊に言った。
「そんな寝言は奴に通じない!!」
beakerは少し首を横に振ると、頭に突きつけていた銃を下ろした。
「おい、まさか・・・」
榊はそんな彼を見てほんの一瞬期待をかけた。
甘かった。
beakerは捜査員の腹に銃弾を二、三発撃ち込むと、彼女をドアから投げ落とした。
グシャリという音がして地面に彼女が激突する。
「な!?」
beakerはニヤリと笑うと肩をすくめた。
「!?ヤバイ!!」
慌ててOLHはハンドルを切って、ブレーキをかけた。
すぐに側の彼女を調べる。
「・・・駄目だ、死んでる。畜生!!」
榊は走行する飛行機を睨み付けた。
「彼女は後から来る車に頼めばいい!!早く乗れ!!」
OLHは車に飛び乗って再び発進させた。


「おい、もたもたしないでさっさと飛べ!!」
beakerは操縦室に乱入してパイロットに銃を突き付けながら怒鳴った。
「そ、そんな事言ってもこの状態で飛ぶ事は出来ないんだ!」
「出来ないじゃない、やれ!!」
「このまま飛ぼうとしたら墜落しちまう!!あんたが操縦してみろよ!」
パイロットはそう叫んだ。
迷わずbeakerは彼の頭を撃ち抜いて、操縦席から引きずり出す。
だが間に合わない。
飛行機は離陸する事無く、飛行機の格納庫に激突した。
格納庫を破壊しながら突き進み、しばらくして完全に停止した。

完全停止した飛行機が突き刺さった格納庫に警備保障の車が何台か追いついた。
OLH達の車もようやく到着する。
「おい、beakerは出てきたか!?」
OLHは一人の捜査員に聞いた。
「いえ、まだです!!」
ライフルを構えながら彼は答えた。
と、その瞬間飛行機からbeakerが飛び出しながら拳銃を乱射した。
たちまち数人の捜査員が悲鳴を上げて倒れ込む。
そのまま転がってbeakerは格納庫の中に入り込んだ。
「沙留斗、来い!!」
沙留斗もショットガンを撃ちながら飛行機から飛び出した。
部下もマシンガンで彼を援護する。
OLHは車の上に飛び乗りながら銃を連射した。
たちまち部下の二人が銃弾を撃ち込まれて吹き飛ぶ。
「全員突入するぞ!!」
車の上から滑り落ちながらOLHは叫んだ。
beakerの方は沙留斗の援護の為に両手の拳銃を乱射している。
だが一人の捜査員の放った弾丸が沙留斗の脚を貫通した。
たまらず沙留斗は倒れ込む。
「沙留斗!!」
「・・・があ!!畜生!!」
沙留斗は悲鳴を上げて転げまわった。
「兄貴、行け!!先に逃げろ!!」
beakerは名残おしそうな顔をしながらも格納庫のさらに奥へと逃げ出した。
「よし、沙留斗は確保した!!おい、お前達は俺と一緒に来るんだ!!」
OLHは側の何人かに声をかけると、beakerを追った。


OLH達はバラバラに別れてbeakerを探し始めた。
銃を構えながら慎重に辺りを調べる。
と、一人の捜査員が彼を見つけた。
「う、動くんじゃない!!」
震えながら銃を彼に構える。
beakerは背中を向けたままゆっくりと手を上に挙げた。
それからすっと滑らかに背中のホルスターから銃を二挺抜き出すと、
転がりながら銃を撃った。
「馬鹿、伏せろ!!」
二階にいたOLHは捜査員にそう叫んだ。
beakerの銃弾は捜査員の膝を撃ち抜いた。
「くそっ・・・よし、これだ!!」
OLHは一階までの階段の手すりから滑り落ちてbeakerに体当たりした。
さすがにbeakerも避けきれない。
だが両者ともすぐに立ち直ると、互いに銃を突き付けた。
自分の顔の数十センチのところに相手の銃が突き付けられている。
beakerとOLHは互いの顔を見つめた。
「ワオ!!結局のところ、お前さんとの激突になるわけだ!!」
「・・・・・・・・・」
ゆっくりと二人は円を描くように動いている。
一瞬たりとも相手から眼を離す事はない。
「なあ、俺とお前は似ていると思わないか?互いに戦闘に熟知していると言う点で。」
「・・・俺とお前は違う。」
「それにだ。憎しみを持ちながら生きていると言う点でもだ。」
「・・・・・・」
「俺は社会に。お前は俺を憎む事によって生きている・・・どうだい、そっくりだろ?いっそ俺達の仲間にならないか?
雇われテロは楽しいぞ!!」
「だが、俺は捨て身だがお前は命が惜しい。」
「ああ〜くそっ、いつまで死んだ娘の事を考えているつもりだ!?このヤロウ!!」
そう言いながらbeakerは引き金を引いた。
カチリ。
(弾切れ!!・・・・)
beakerの顔が青ざめた。
「ダークウィンド!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
OLHは叫んだ。
「!?」
beakerは魔法の風により吹き飛んで金網に叩き付けられる。
「ガッ・・・・・・・・・・・・・・・・」
少し呻いてbeakerは崩れ落ちた・・・


OLHはゆっくりと彼の元へ近づいて行く。
拳銃に弾倉を込めると、気を失っている彼に銃を構えた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
目の前に殺しても飽き足りない男が無力に横たわっている。
今殺したところで誰に見咎められるという事もないだろう・・・
(こいつが俺の全てを奪っていきやがった・・・こいつが笛音を!!)
一抹の理性だけが必死に引き金を引こうとする自分を自制している。
(殺してやる殺してやる殺してやる殺してやれ殺してやれ殺してやれ殺してしまえ殺してしまえ・・・)
か細い理性が吹き飛ぶ寸前だった。
ふとOLHの頭にいつものメリーゴーランドの情景が浮かんだ。
そして笛音の笑顔も。
(終わったんだ・・・これで何もかも終わったんだ・・・)
OLHはすっと銃を下ろした。


・・・数分後、榊がようやくOLHに追いついた。
沙留斗、beakerは救急車に乗せられた。
何人かの捜査員は殉職、数人は重軽傷を負っている。
だが
「・・・・・・終わったな。」
榊が救急車を見送ったOLHに言った。
「ああ、終わった・・・」
「あいつを逮捕したら・・・引退するんだったな。」
「現場からな。後はデスクワークでのんびりとやっていくつもりだ・・・」
「残念だが・・・お前の意志ならしょうがないか。」
「後はお前らに任せる・・・頑張ってくれ。」
そう言って榊の肩を叩くと、OLHは自分の車に乗り込んだ。
車の中には家族の写真が置いてある。
妻の勇希。
自分と勇希。
笛音。
そして家族三人で写したもの。
「勇希、笛音・・・今から帰るよ。」
OLHはそう写真に呟いて車を発進させた・・・


<続く>










<次回予告>
これでだれもが全て終わったと思っていた・・・
だが、Leaf学園のどこかにセットされた爆弾はまだ動いている!!
この居場所は沙留斗・beakerの二人しか知らない。
だがbeakerは昏睡状態、沙留斗はbeakerにしか心を開こうとしない。
爆発時間は刻一刻と迫っている。
方法はただ一つ。
beakerの事を沙留斗と同じくらい知り尽くしている人間・・・OLHにbeakerの顔を移植すること!
OLHは迷った末、沙留斗から情報を聞き出すために彼になることに・・・


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OLHさんへ。・・・すまん
黒いOLHさんへ。お楽しみいただけましたか?(笑)
次回はもう少し後になってからの発表になる予定です。
なぜならお盆休むから(^^;
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