学園祭Lメモ「楓祭’98/カップルコンテストPART2」 投稿者:beaker
「体育祭の次は学園祭…………ホントに行事が多い学校だな、ここ」
ぼそっと幻八が呟いた。
「ま、気楽でいいんじゃないですか?」
ふと見ると岩下信が藍原瑞穂を連れて幻八に話し掛けてきた。
「幻八先輩、はいパンフレットです」
ニッコリ微笑んで瑞穂はパンフレットを差し出した。
礼を言って受け取るとぱらぱらとめくる。
「今年は楓祭…………か、何か名前があの子みたいだな」
幻八がさりげなく言うと何故か二人はギクリとした。
と言うのも…………
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「ああ、今年の学園祭の名前はどうしようか?」
岩下信が頭を抱えて悩んでいる。
「そうですね、去年は…………紅葉祭、だったんですよね?」
「うん、この学園は毎年学園祭の名前を変えるからなあ、一度使ったものはもう使えないんだよ」
「困りました…………ねえ」
「うん…………」
こんこんこん
誰かが生徒会室の扉を控えめにノックしている。
「あ、はい、どうぞ…………」
がちゃり
柏木楓だった、何か書類のようなものを持っている。
「あの、頼まれていた資料お持ちしましたけど…………」
「あ、どうもありがと…………」
楓の顔をふっと見上げた瞬間、二人に電撃が走った。
思わず同時に手を叩いてしまう。
「「これだっ!!」」
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こうしてほとんどただの偶然で、今年の学園祭は「楓祭」となったのである…………


で、学園祭当日。
いくつかのイベント会場である体育館。
バンドコンテストの惨劇(?)の残骸を強引にどっかへ放りこみ、見た目だけは元に戻っている。
やたら派手に飾り付けられた花や風船、外では花火がポンポンと打ち上げられている。
そして体育館の裏では参加するカップル達が牙を研ぎ澄まし今か今かと出場を待ちうけていた(何か違わないか?)

「はい、これで出来あがり〜〜♪」
勇希がぽんぽんと手をはたく。
理緒は呆然と自分が写っている鏡を見つめていた。
「これ…………私、ですか?」
理緒には目の前にいる薄化粧をした人間が自分とは思えなかった。
あは、あははと照れ笑いして「わ、私じゃないみたいですね」
と皆のほうに向き直った。
「いいや、単に理緒さんの魅力が充分引き出されただけですよ」
ニッコリとbeakerは笑った。
「あ、相変わらずそんな台詞臆面も無く…………」
勇希がデカ汗を流している。
「そーゆーヤツですよ、この人は」
冷たい目で恋が睨む。
「はい、そーゆーヤツです」
さらりとbeakerは受け流す。
「…………にしても、やたら変わったと言うか変なカップルが多いような…………」
勇希がきょろきょろと辺りを見回して言った。
まあ、浩之とあかりは極普通だし、
川越たけると電芹コンビも(出るのか)通常の組み合わせだ。
ちょっとだけ、目が虚ろな耕一先生とやたらロリぶった衣装の千鶴先生のカップルもいつもの事だろう。
それにはなぢを出すのを何とか堪える(事前に大量の血抜きをしたらしい)西山英志と
恥ずかしげにドレスを着ている柏木楓もまあ、通常我々がすんなり認識できるカップルだ。
だがまず目の前に居るこのカップルが変だ。
「ねえ、坂下さん。…………何かあったの?」
「賞金に目が眩んだとか?」
「ううむ、恐ろしいほど似合うな」
「まったく」
「……………………う、うっさいうっさいうっさああああい!!!」
「ちょっと、今の好恵は『好雄』君なんだからその辺忘れないでよ」
「誰が『好雄』よっ! わたしは某ときメモの主人公のおちゃらけ親友かっ!?」
好恵はタキシードを実に見事に着こなしていた。
結局、あの後綾香に頼まれ、説得され、なだめすかされ、パートナーになる事を承知したのだ。
割りと大き目の胸を強引にコルセットで締め付け、タキシードを着た好恵と、
さすがお嬢様だけあって完璧にドレスと一体化している綾香とはまるでどこぞの王子様と王女様の
ようだった。
「僕はそっちよりもあっちのカップルのほうが物凄い異彩を放っていると思いますが…………」
beakerがハンカチで汗を拭きながら向こうを向く。
「「「「「「そうだね」」」」」」
勇希、理緒、綾香、好恵、デコイ、沙留斗と言った面々が一斉に頷いた。
そこには葵がいた。
葵も髪の色に合わせ、ライトブルーを基調にしたドレスを着ている。
それはまあ、いい。
問題はその隣にいる人間である。
「まさか、アレがパートナーになっているとは思わなかったわ…………」
「うーむ、僕はRuneさんに夏目漱石賭けていたんですが」
「私はディアルトくん辺りじゃないかと思ったのに……」
「いや、俺は佐藤昌斗だと思っていたぞ」
「これじゃああの賭けは無効よねえ」
「肝心の胴元まで外しているからなあ、俺もさすがに分からなかった」
葵の隣に居たのは真っ黒な衣装を着たハイドラントだった。
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葵のパートナーがハイドラント…………である。
どうも、綾香のパートナーに『好雄』くんが決まって、トレーニング場を叩き出されたハイドラントは
例の’黄昏丘’(ジン・ジャザムや沙留斗が例のアレで黄昏に来るところだ)で黄昏ていた所を
通りかかった葵に同情され、慰めていたところ、突然「綾香を見返しちゃるううう!!!!」と、
葵にカップルコンテストに出場するよう頼み込んだのだ。
で、生来この手の話しに弱い(実はディアルト・佐藤昌斗・T-star-reverseと言った面々は互いに
牽制しあってまだ一緒に出るよう頼んでいなかったりする)
葵はハイドラントの心意気に打たれて一緒に出る事を承知した…………という訳である。
「わははははは、綾香ヤキモチか?」
ハイドラントが実に可笑しそうに笑う。
「誰がヤキモチ焼くかっ!!!」
綾香は怒鳴り返した。
「わはは、まあそう言う事にしておいてやるよ」
「あんたは関西の芸人かっ!!」
「あ、綾香さん、すいません、こんな事になってしまって…………」
ぺこりと葵が頭を下げる。
「あ、いいのよ、葵は。それより葵もそのドレス似合っているわよ」
綾香がそう言うと葵はパアッと表情を輝かせた。
「ありがとうございますっ!」
もう一度頭を下げる。
「綾香さんも、好恵さんもとってもお似合いですぅ!」
「あたしもお似合いってどーゆー事よおおおおお!!!!!」
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結構な観客が懲りずに集まったイベント会場。
喧騒の中、舞台裏からこっそりと観客席を覗く理緒。
「ああ、あんなに人が集まってる…………どうしよう、beakerく〜ん?」
怯えた瞳でbeakerを見る理緒。
beakerはそんな理緒の頭をぽんぽんと軽くはたいた。
「あうっ」
「大丈夫ですよ、先程も言ったように理緒さんの魅力は僕が保証します、ハイ」
「ほ、本当に私…………大丈夫?」
大丈夫? と言う言い方にbeakerは苦笑した。
いかにも理緒らしい言い方だ。
「ま、今更どーこー言っても始まりませんよ。やるべき事はやりましたから」
「そ、そうよね。後は頑張るだけだよね」
「そうですそうです、さて僕等の順番のようですし、行きましょうか?」
「ああ、ちょっと待ってまだ心の準備が〜〜〜」


「それでは次のカップル、エントリーナンバー三番。購買部代表beaker&雛山理緒カップルでぇ〜す」
イベントの司会、志保が紙に書かれた名前を読み上げた途端、周囲が喧騒に包まれた。
「うっそだろ、beaker先輩と坂下先輩だと思ってたのに〜」
「まさか雛山さんだなんて〜」
「あの二人別れたのかしら?」
あちこちでそんな声が飛び交う。
その中でも大声で辺りを気にせず喋る男子生徒二人の話はかなり過激だった
YOSSYFLAMEは苦々しくその話を隣の席で聞いている。
「賞金目当てじゃねえの〜? ほら、あいつって家がアレだし」
「ああ、そう言う事か。でもそしたらbeakerは…………」
「…………」
ぐぐっと木刀を握り締めるYOSSYFLAME。
だが、ふざけて友人と言葉を交わしていた男子も、YOSSYFLAMEも入場してきた二人を見た途端、
動きが止まった。
いや、観客全員がbeakerの隣に腕を組んでついていく理緒に注目していた。
普段は簡素に縛っているだけの髪の毛は紐を解かれ、良家のお嬢様のようにさらさらなロングヘアに
なっている。
さらに髪には緑葉をあしらったグリーンのヘアバンド。
そして漆黒の髪とまったく正反対の純白なドレス。
胸元には赤い宝石のブローチがワンポイントとして添えられている。
勇希が最大限に力を振り絞ったとは言え、まるで妖精のような美しさに観客はただ戸惑うばかりだった。
司会である志保も思わず言葉を失ったが、ハッと気付くと咳払いをして次のカップルを呼び掛けた。
「そ、それでは次のカップル、エントリーナンバー四番。坂下好雄&来栖川綾香〜」
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「「「「「「「さかしたよしお?」」」」」」」
ドスドスドスと足音も荒く’彼’はやってきた。
女子生徒の黄色い声援がたちまち飛び交う。
「カッコイイ〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!」
「す、素敵!!」
「だ、誰誰々?」
「坂下先輩だってえ」
「ああん、すっごく似合ってる〜〜」
そんな女子生徒の声援をとっても苦々しく聞きながら歩く好恵。
「ああん、梓先輩も素敵だけど好恵さんもス・テ・キ(はぁと)」
日吉かおりが二階から双眼鏡で怪しげな瞳を光らせている。

ゾクリ

「ん? 好恵どしたの?」
小声で綾香が話し掛ける。
「いや、今何か殺気みたいなのが…………」


「ではエントリーナンバー五番っ!! ハイドラント&松原葵!!……ってえええーーーーっ!?」
志保が読み上げながら驚く。
観客も全員驚いた(当たり前か)。
「あの、ハイドラント先輩。何かすっごく驚かれてますね」
「はっはっは、こうなりゃ自棄だ。腕でも何でも組むぞ」
露骨に腕を絡ませるハイドに顔を赤らめる葵。
その二人を苦々しく見つめるのは二階にいるT-star-reverse・佐藤昌斗・ディアルトと言った面々。
ついでに悠 朔も。
「おのれ、葵ちゃんを人質にしやがって…………」(←曲解してますね)
「ハイドめ…………綾香が断ったなら二人で黄昏るのがお約束だろうが…………」(←確かに)
「「「「ふっふっふ、このイベントぶち壊す…………」」」」
何か怪しい企みを始めている男達である。


「では続いては私の大親友、神岸あかりとそのオマケよ〜ん」
「てめえ、志保!! 誰がおまけだっ!!」
「ま、まあまあ浩之ちゃん…………」
例のしょうがないなあ笑いで浩之をなだめるあかり。
「あら、あかりのドレスピンクで似合ってるわね〜」
「あ、そう? アリガト」
マイクのまま世間話を始める志保。
「あたし、てっきりあかりの事だから熊の着ぐるみで来るかと思ったわよ〜」
「え? あはははははは」
志保は知らなかった。
先程まであかりが熊の着ぐるみを着て出ようとするのを浩之が泣いて止めてくれと頼んでいた事を。
そしてその二人を二階で睨む(二階は復讐者専用席)四季と面白がってついてきたギャラ。
「ふふふ、ダーリンと組むのは私…………」


「では続いてこれカップル? 川越たけるちゃんと電芹〜〜」
腕を組んで仲良く歩く二人。
衣装は何と二人ともまったく同じモノを着ている。
そればかりでなくたけるの方は電芹に合わせて耳カバーまで付けていた。
知らない人間から見れば二人ともメイドロボに見えたに違いない。
まあともあれ仲が良い事は良い事である。
「コミックパーティ(仮)」のキャラが漫研として出たら真っ先にこの二人の同人誌が
出てきそうだなあ。
や○いモノはありなんだろうか?

閑話休題

「以上のカップルで最強トーナメントを争います! 違った以上のカップルでコンテストは開催されます。
なお、審査員はこちらでぇ〜す」

審査員として選ばれたのはデコイ(プロの目から見て)、足立教頭(良心というスキルで)、
それに初代beaker(女好きのスキルで)、それにやはりその目が買われた緒方英二。
男子生徒を審査するのは澤倉美咲、相田響子、篠塚弥生、セリオ、河島はるかと言った比較的
冷静に物事を見れる女性達が選ばれた(セリオも比較的中立なスタンス)。
それに一つだけ空席があり、そこには「特別審査員X」と札が立てられている。
ちなみに方式は各自10点ずつカップルを採点し、最高の合計は100点になるまあよくある方式である。


色々と水面下で動く二階の復讐者たち。


それにこれを開催したbeakerの狙いは?


さらに特別審査員とは誰なのか!?


謎を残しつつ次回へ続く(あれ? これで終わる予定だったのに)