テニスエントリーLメモ『彼女(だけ)の事情』 投稿者:デコイ







                 エントリーLメモ
               『彼女(だけ)の事情』







 「上等上等。んじゃ、さっそく聞き込みに行こうかしらね〜。新たなニュースが、こ
 の志保ちゃんを呼んでるわ〜」
  そう言い残してあたしはさっさと部室をあとにした。
  部室、と一口にいってもあたしの場合2つの場所を示す。
  一つは放送部。
  毎日お昼休みに活動している、あたしの晴れ舞台。
  もう一つは情報特捜部。
  今出てきた方だ。
  随分と厳つい名前だけど、要は校内新聞部。
  昔は結構な人数がいたらしいけど、今はあたしを含め4人だけの寂しい部活だ。
  と、まぁそれは良いとして、今回は最近この学園で話題になってるテニスについて
 特集を組むことになった。
  あたしは出場宣言した生徒達に取材をするため、『善は急げ』とばかりに部室から
 出てきたわけである。
  廊下を歩きながら、さっき手下A(注:シッポの事らしい)から受け取った参加者
 のリストをざっとみる。
 「へぇ〜、結構な人数が出るのねぇ………こりゃ、シッポと手分けした方が良かった
 かなぁ」
  リストに載っているチームの数を見て、あたしは1人でさっさと出てきてしまった
 ことをちょっぴり後悔した。
 「ま、とりあえず上からざっと行ってみますか」
  が、今から戻るのもなんだか面倒くさいので一人で始めることにする。
  ああ、なんて前向きなのかしら。
  使えない男達に代わって部のために身を粉にして働く。
 「ああ、志保ちゃんってばなんて健気なの!」
  思わず口走ってしまった。
  しかも”しな”を作るのを忘れてないなんて志保ちゃんてば完璧ね!

  ………。
  …………。
  ……………。

  何処からもツッコミが来ない。
  寂しい。
  もうちょっとだけ待ってみる。

  ……………。

  やっぱり来ない。
  来たら来たで嫌だけど。
  っていうか、そんな奴には志保ちゃんキックお見舞いするけど。

  ……………。

  それでもしつこく待ってしまう自分がちょっと可愛い。
 「はぅ………」
  脱力感と無力感に思わず溜息が漏れる。
  バカなことやってないでさっさと仕事にかかることにしよう。
 「さて、まずは、と………ん?」
  心を入れ替えてもう一度リストに、今度は参加者の名前を確認するために目を落と
 した私は、あることに気づいた。
 「悠に………和樹まで………いつの間に!!」
  そう、そうなのである。
  本来ならこういったイベントを中継し、この無意味にでかい学園の全ての生徒に状
 況を報告しなければならない我が『情報特捜部』の部員が、しかもお飾りとはいえ部
 長までもが参加を発表しているのである!!
  あたしは廊下をマッハで戻り、部室のドアを蹴り開けた!
 「部長! 和樹! どこいった!!??」




  ………しいいいいいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃん………




 「くやしいぃぃぃぃっ!! この志保ちゃんを差し置いて自分たちだけ参加しようだ
 なんて!!」
  だんだんだんだんっっ!!!
  悔しさのあまり、蹴った拍子にはずれて倒れたドアを力いっぱい踏みつける。
  しばらくそのまま怒りをぶつけ、ドアの薄さが2mmになろうかという頃、
 「ふっふっふ。この志保ちゃんを出し抜こうなんて17年早いって教えてあげるわ」
  あたしは復讐を誓った。壊れたドアに。
  そして、あたしはパートナーを求めて、ある場所へと赴く覚悟を決めた。
  そう、普通の人間では決して耐えられない場所。
  悪魔と、悪魔に魅入られた者たちの巣くうあの場所へと………!!




 「と、いうわけで! 協力しなさい手下B!」
 「なんでだぁぁぁぁぁぁっっ!!!??」
 「HAHAHAHAHAHA!!!」
 「あーあ」
 「早業だね」
 「よくこれましたねぇ」
  弛みきった部員の根性をテニスで叩き直すべくあたしが選んだパートナー、それは
 のぞキング1号にしてアフロブルーの手下Bである。
 「せめて名前くらい出せええぇぇぇぇぇぇっっ!!」
 「んじゃ、これ借りてくから」
 「OKOK!! ご自由にお使いくだサーイ!! HAHAHAHAHA!!」
 「本人の意思は無視かあぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」
 「(何も言わず十字をきっている)」
 「(なんか電波が届いたらしい)」
 「(自分は誰と出ようかまた悩み始めた)」
 「てめえら後で覚えてろおおぉぉぉぉぉぉっっ!!」
  同族の許可も出たので、あたしは簀巻きにした手下Bを引きずりながら、その悪魔、
 では無くアフロの巣窟を後にした。




 「見てなさいよぉ、あたしを仲間外れにして自分たちだけ楽しもうなんて、絶対許さ
 ないんだからっ!!」
  エントリーを済ませながら、あたしは一人夕日に誓った。見えないけど。


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  初投稿がテニスエントリーか、自分(笑)
  というわけで、手下Bです(笑)

  とうとうやっちまいました。
  いきおいだけで書くとどうなるかっていう良い例な気がします(汗笑)
  志保、なんか違うし。どことなくリナ・インバース入ってるし(笑)

  あ、アフロ同盟の皆様ちょい役でごめんね(笑)
  それから、情報特捜部の皆様、がんばってねぇ(無責任・笑)

  そしてよっしーさま、無理にならない程度に頑張ってください。
  出来るだけ協力させていただきます(作品は……このレベルだけど・笑)

  それでは。

      05/18/1999