Lメモ:『私を薔薇部に連れてって!!』  投稿者:でぃるくせん
「浩之っ、なんで僕の愛を受け取ってくれないんだよ!?」
「そうっス、大人しく佐藤の真摯な愛を受け取るっスよ、藤田!!」
「絶対お断りだぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!」
「雅史ちゃんっ、浩之ちゃんにそっちの方で手を出さないで!!」
  そんな絶叫が飛び交う二年B組の昼休み。いつもの事でもあるので、みな無
関心に食事や会話を進めている。それは、二学期が始まった今も大して変わる
事はない。
  唯一違う事があるとすれば、夏休み中にこのクラスに新しく転入してきた少
女が風紀委員になったというくらいの事である。しかし、それは浩之にとって
最強の味方になるように思われた。なぜなら。
「おいっ、松原、助けてくれ、あいつら確実に風紀を乱してるだろーが!?」
  新しい風紀委員、松原美也の兄は、薔薇嫌いで有名な生徒指導部長、ディル
クセンなのだから。
「藤田、卑怯っスよ!」
「浩之、なんで逃げるのさ!?」
  美也の影に隠れるように移動した浩之に対し、矢島と雅史が非難の声を上げ
る。
「そっちこそ二人がかりで追い回してきて、卑怯もくそもねーだろーが!!」
  あいかわらず美也の身体を盾にしたまま、浩之も負けずに怒鳴りかえす。あ
かりはと言えば、さすがに精神的に疲れたのか、
「もう、浩之ちゃんも雅史ちゃんもしょうがないんだから」
  と早くも傍観を決め込んでいた。
  その時。
「くっ!?」
「な、何っスか松原、やるっスか!?」
  美也が静かに椅子を引き、すっくと立ち上がったのを見て、薔薇二人組が身
構える。美也は浩之と薔薇二人組をそれぞれ一瞥すると、矢島に敵意に満ちた
視線を送り、
「はい、どうぞ」
「へ?」
  何を思ったのか浩之の腕を掴んで薔薇二人組へと引き渡した。
「…………へ?  あれ?  えーっと、これは?」
「それを引き渡して欲しかったんでしょう?」
  あまりに意外な展開に全員の動きが硬直する中、何でもない、当然の事をし
たかの様に、美也はさっさと自分の席に戻る。引き渡された者も受け取った者
も傍観していた者も、身動き一つ許されない沈黙が続いたのは実に十数秒の事
だった。
  だがやがて、呪縛から解き放たれる者が現れる。
「浩之…………」
「藤田…………」
  雅史と矢島の言葉がきれいにハモった。満面の笑顔とともに、
『さぁ、行こうか☆』
「どこにだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!??」
「…………!!  ひっ、浩之ちゃんを返して!!」
  どどどどどど、と土煙をあげながら藤田座一行退場。結局事の顛末がいつも
と大差無い終わり方を迎えたのを確認して、クラスの雰囲気もいつものそれに
もどった。
  そんな中、今まで傍観者に徹していた保科智子が呆れたような声で美也に話
し掛ける。
「松原さん……あんた、薔薇部嫌いなんとちゃうかったん?」
「……?  なんでわたしが、薔薇部を嫌いだと思うの?」
  美也が不可解な事を言う、と言わんばかりの表情で智子の顔を凝視した。
「うーん、そうやなぁ……ディルクセン先輩の妹って聞いたら、誰でもやっぱ
り薔薇嫌いの子連想するで」
「ふーん、そういうものかな?  けどわたしは薔薇も百合も好きだから」
  さらっととんでもない事を言う美也に、智子をはじめ周囲の女子がざざっと
退いた。それに気付いたものの、美也はどうでもよさそうに一瞥しただけで、
とりたてて弁解しようとはしない。
「え、ええと……冗談……やんな?」
  恐る恐る、と言った様子で智子が尋ねる。だが、美也は首を横に振った。
「別に。冗談のつもりはないけど」
  その言葉にさらに退きかける一同を制するように、「ただし」とすかさず一
言付け加える。
「見ているだけなら、という一言が付け加わるけどね」
  つまり、本人は百合ではないらしい。その言葉で遠巻きになりつつあった人
々(主に女生徒)が、安堵の表情も露わに再びもとの場所に戻ってくる。だが、
そこでもう一度美也が余計な言葉を付け足した。
「わたしに直接被害が及ぶような事になれば、相手を殺してでも身の安全を確
保するけどね」
「……やっぱりあの兄にして、この妹ありやわ」
  にこりと微笑んで放たれた言葉の内容に、智子が場の全員の想いを代表して
呟いた。




  ギャラは困っていた。海より深く、山より高く困っていた。どんな困りかた
かと聞かれると、要するに形容できない困り方なのである。
「薔薇部にマネージャーとして入部したい、でございますか?」
  いつものふざけた様な笑みも無く、やや疑念の篭もった視線で目前の人物を
眺める。人を騙すのは好きだが、騙されるのは大嫌いだ。彼女が何を考えてい
るのか、それをはっきりさせるまでは迂闊な返事は出来ない。
「ええ、そうです。ギャラ先輩」
  ギャラの念押しに、彼女、つまり美也は微笑み一つ見せずに事務的に頷く。
「そこにある入部届けにあるとおり、マネージャーとして入部を希望します」
「動機は、なんでございますか?」
  生徒指導部からのスパイかなにかのつもりだろうか?  いや、それならばな
にもこんなに回りくどい真似はせず、適当な校則を盾に、正面から干渉してく
るだろう。だが、それでは一体何が目的なのだ?
「そこにある通り、薔薇や百合に興味があるから、ではいけませんか?」
「納得いたしかねます」
  あくまで無表情かつ事務的な美也の言葉に、ギャラは即答した。
「伺いますが、もし私が『学校の風紀を護るため、生徒指導部に参加したい』
と申し上げましたとして、美也様はそれに納得なさいますでしょうか?」
「なるほど、確かにそうですね」
  納得したかのように頷いて、美也は初めて微笑を浮かべた。
「けれど、嘘でもないのですよ。興味が無い訳ではないですから……確かに本
当の理由ではありませんが」
「その本当の理由を、お伺いしたいのでございますよ」
  ギャラの追求もどこ吹く風とばかり、美也の表情は変わらない。
「別に、難しい事ではないんです」
  そう前置きして、いったん言葉を区切る。やや表情が赤らんだような気がし
ないでもない。ほんのわずか、視線を宙にさまよわせ、それから先を促すよう
なギャラの視線に気づいて表情を引き締めた。そしてようやくおもむろに口を
開く。
「橋本先輩って、ご存知ですよね?」
「ええ、彼も薔薇部の部員でございますから、もちろん」
  何を言い出すのか、さらに相手の意図がわからなくなり、ギャラは困惑する。
「それで、そのですね」
  再び言葉が途切れる。だが、今度はそれほど間も置かず、すぐに次なる言葉
を口にした。
「橋本先輩を……ノーマルに戻すために、入部させていただきたいんです」
「…………は?」
  あまりに思いもよらぬ、論評不能の彼女の入部理由に、ギャラはただただ絶
句するほかなかった。




「……………と、言う訳なのですが、いかがいたしましょう、お兄様方?」
  とりあえず『明日、あらためて返答させていただきます』と美也を追い返し、
ギャラは薔薇リアン’sに伺いを立てていた。さすがに、自分一人で断を下せ
る問題ではない。ちなみに、この場に橋本と矢島の姿はない。交わされる会話
の内容を考えれば、それも当然の事だろう。
「風紀は我ら薔薇の敵……」
  薔薇リアン’sの一人が重々しい口調で告げる。
「然り、然り。薔薇の未来を閉ざそうとする許されざる敵」
「しかも、我が薔薇部の者を寝取ろうとは……」
  彼らの口から漏れる言葉は当然の如く、否定的なものばかりだ。だが、最終
的に下された結論は、その会話の流れからは正反対のものだった。
「だが、その者を我ら薔薇部に取り込む事で、生徒指導部の追求が和らぐ事に
もなろう。ギャラ、その者に薔薇部への入部を認めると伝えよ」
  その言葉に、ギャラがわずかな懸念を示す。
「よろしいのですか?  逆に、獅子身中の蟲ともなりかねないと存じますが」
「よい。その程度の蟲、抱え込めぬようでは我らも程が知れるというもの」
「橋本の件に関しては、彼奴を両刀使いとすれば何の問題も無い」
  しかし、薔薇リアン’sの態度は変わらなかった。ならば詮方無しと、ギャ
ラは深くひざまずいて了承の意を示す。


  かくして、薔薇部に新たな部員が誕生した。








  そんな訳で、
「橋本の兄貴ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ………………へぶぅっ!?」
「矢島君、あなたはわたしと一緒に藤田浩之薔薇化作戦に行くの。橋本先輩に
近寄ったら…………殺すからね?」
「ひぃぃぃぃぃぃぃ!?  俺の周りに出てくる女性って、こんなのばかりっス
かぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!?」
「俺の熱狂的なファンの女の子の存在は嬉しいけど…………なんつうか、恐い
よなぁ…………」
「ぐっ…………胃酸が…………」
  新たな騒動の種が学園に蒔かれたのだった。



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  ども、ディルクセンです。
  そんな訳で、薔薇部です(意味不明:笑)  オリキャラ作ってしまったから
には、きちんと学園で生活させてやらんと、と言う訳で、なにはともあれ、薔
薇部の皆様(ギャラさん限定:笑)よろしくお願いします〜


  風紀を乱さない程度に薔薇を広めるっていうのは可能なのかな?(笑)