「Lメモ・セリオ涙を知る」 投稿者:dye
  「人間を見ること。それも、より多くの・・・」

  2限目の休み時間、セリオに『感情』について尋ねられたdyeのアドバイス。
「見る事によって自分が何を感じるか」と続かなかったのは、単に睡眠モード
に突入した為である。小さく礼を述べ、セリオは相手を起こさぬよう静かに
「騒がしい」教室を出た。

  神岸あかりが知る人ぞ知る「犬チック」なら、彼は「メカ・チック」と呼べる
身体をしていた。その男、ジン・ジャザム。

  「ヒーローには仲間がいる。悪役には組織がつく。分かるか、ジン。個より集団
  の力だ。より多い数を得た者が有利なのだよ」

  柳川の訓示を受けたジン。早い話、今回の作戦は勧誘である。ターゲットは・・・。


  「我々の仲間になれ。そうすれば、もれなく可愛いメイドさんが付いてくる!」
 
セリスの前には、お約束でマルチを人質に高笑うジンの姿があった。
猿ぐつわにフゴフゴするマルチの姿が愛らしい。

  「くっ!」
  歯噛みするセリス。彼を知る者は、即答でイエスと言わないのを奇跡である
と思っただろう。

  「マルチに部屋を掃除してもらえ・・・」
  「や、やめろ〜!」
  「御飯はお口にアーンとくらあ〜」
  「あああ・・・・」
  「24時間なでなで出来るんだぞ」
  「ぐおぉぉぉぉぉ!」

  精神攻撃を充分楽しんだジンが再び問い掛ける。勝利は目前だった。
 
  「答えを聞こう。おとなしく我々の軍門に下れ!」

  「・・・・断る」
  「何ィィィィィィィィィ!」

   信じられないもの見るジン。
  「セリス・・・・それは・・・・血の涙・・・・」

  「いいかジン。確かに俺はマルチファンだ。なでなでしたいし、ミート煎餅も
  食ってみたい・・・・だけど、それは俺の気持ちで・・・・」

   涙をぬぐうセリス。拳についた血に心配するマルチの視線が注がれる。

  「俺が・・・・俺が最優先するのは・・・・マルチの幸せだ!!!」

  衝撃に停滞した空間で、まず動いたのはジンだった。
  「・・・・・・・・」
  「・・・・・・?」
  無言でマルチの縛めを解放し始めた相手に戸惑うセリス。

  「ふん、白けちまったぜ。お前みたいな奴はコッチから願い下げだ!」
  「ジン・・・・」

   マルチに駆け寄るセリスに背を向け、その場を去る男の目には光るものがあった。
 ジン・ジャザム。彼は即興コーナーにおけるダークな「熱血漢」である。

  「あっ、ゆきさん。こんにちわです〜」
  「セリスさん、また抜け駆けですか・・・・(冷)」
  「ゆき君、これは違うんだ・・・・って、何だいその手の物は?」
    通りかかった後輩の手には、リボン付きの金属があった。

  「フフッ、いいでしょう〜。これこそ当学園に伝わる四秘宝の一つ、初音ちゃんの
  おたまです。柳川先生から科学部への入部と引き換えに頂いたんですよ」

  「・・・・もう少し詳しく説明してくれる?」

  「楓さんの秘宝は西山先輩が『守護者』ですから、まず入手不可能ですよ。今なら
  『ハート・オブ・ナイン』という9枚のカードが狙い目です。これを全て集めると
  願い事が一つだけ・・・・」

  「違う、柳川先生の話!」
  「そっちですか。科学部の部員が一人転校したんで、部の存続が危ないとか。柳川
  先生を始め、部の連中が勧誘に走ってるそうですよ」

    セリスを襲う疲労感。(ジン・・・・あれが部への勧誘だったのか?)

  「ところで秘宝の情報って、お前よく知ってるよな・・・・」
  「情報を買ったんです。『無知なる灰色』から」

    セリスは眉をしかめた。『無知なる灰色』それは当校でバイトまがいの活動を行って
  いる謎の人物である。敵・味方関係なく情報を売るその行為は、ある意味、志保ちゃん
  ニュースより質が悪いと言えた。


  「dyeさん、起きて下さい」
  「・・・・セリオ? ああ、もう授業開始かい・・・・」
  「違います。もう御昼休みです」

  この男が寝過ごすのは珍しくない。新幹線・岡山で降りるのに、目が覚めたら姫路だった
とか、試験当日に「ちゃんと起き、朝飯を食べて教室で試験を受ける」夢を布団の中で見て
いた等、数々の実話を持つ男である。

  「で、何か収穫があったかい?」
  「涙って、悲しい時だけに流れるんじゃないんですね・・・・」
  「いい事を知ったようだね」

  赤い涙は違うと思うが・・・・。

  「そう言えば『無知なる灰色』って、どんな方なのでしょうか?」
  「彼は・・・・自分がどんな人間か知らない・・・・哀れな人らしいよ」
  「・・・・・・・」
  「それより、マルチとお昼(充電)の約束してるんだろう。さあ、行ってらっしゃい」
  「dyeさんは?」
  「私?・・・・私は、ちょっとバイトかな」

 (己ヲ知ラヌ。ダカラ感情ヲ知ラヌ「せりお」ニ親切ナノダロカ?)
  どちらにせよ、多少の矛盾は構わない。いつもの結論で思考を止め、dyeは教室を出た。
 

                                                   −了−
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               <あとがき>

  お名前を拝借した皆さん、非礼をまずお詫びします。
  これ連載じゃないです。
  セリオが各作者を訪れるのは、おもしろいと思うけど。

  久々野さんの『自己紹介SS』の勧めで書いてみましたが・・・・。
  ギャグはちゃんと入れたのに、なぜシリアスで終わる(泣)。
  こんなの『Lメモ』じゃないとRuneさんにお叱りを受けそう。

 「無知なる灰色」は皮肉を込めた通り名です。健やかさん・Runeさんに
 自分の性格についての答えが、それぞれ違ってたという意味で。
 一応、各友人に尋ねた答えとはいえ皆バラバラだったとは(汗)。
 正直なところ、自分でもまとまらなかったです。お二人とも、ご迷惑を
 お掛けしました。
 なお「灰色」はライト・ダーク両サイドのSSを読むという意味も含みます。


   今回の裏設定を少し。

 四秘宝:千鶴さんは包丁(Lファイト97)です。これは梓が料理をさせない
         ために隠してます。

ハート・オブ:幻の10枚目(綾香)が存在します。カードは守護者達が保有。
・ナイン      今まで全て集めようとする者はいませんでした、が。


 ・・・・って、紛争の種を作ってどーする自分(汗)。

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                 『遅れている感想レス』

>久々野さん
私は先輩ファンです。アルルさんのSSや『Lファイト97』のED等の影響
で綾香ファンも入ってますが(笑)。セリオですが応援しますよ。私は『心』は
あると思ってますので、『感情』とさせて頂きました。

注)こんなSS作っておいて説得力ないですが・・・・。

>Foolさん
「おはよう・・・瑞穂」。スパンクには気づきませんでしたけど(笑)、本編の瑞穂
ハッピーEDがTrueに思えてくる話でした。この後、月島さんを挟み三角関係に
・・・・というのは冗談で、月並みな言い方ですが「終わりそして始まり」ですね。

>ジャザムさん・セリスさん
お二方の『Lメモ』で人物関係の知識を得て、そして登場して頂きました(笑)。
『Lメモ』を読んで思ったのがセリスさんの立場。ゆきさんが相手にいる分、
不利のような気が・・・・。でも、ゆきさんには初音ちゃんでUMAさんが居るし。
結構、複雑な人物関係ですね。もっとも同盟組んだら変わるけど。
  セリスさんが対ジャザムさんに千鶴さんor柳川を人質・・・不可能に近いか(汗)。
想像が膨らんで、面白いです『Lメモ』。


それでは、また。