Lメモ/VSアフロ「工作部エンド NO.2」 〜口は災いのモト?〜 投稿者:FENNEK
Lメモ/VSアフロ「工作部エンド NO.2」 〜口は災いのモト?〜











「何!?緒方理奈先生と森川先生がアフロ同盟に入っただとおっ!?」
 連絡を受けた菅生誠治の驚きの声が、昼下がりの工作部部室に響き渡った。



 がたっ!



 その言葉を聞いた部員達が、泡を食ったように立ち上がる。
「そ、そんな・・・・。理奈先生達がアフロになるなんて・・・・・・」
 顔面蒼白で呟く赤十字美加香。
「んなあほな・・・・」
 保科智子も信じられない様子だ。
「ああ・・・・・この世はお終いなんですね・・・・・」
 両手を合わせ、天に祈りだす八希望。・・・・まあ気持ちは解らんでもないが。
「何とかしなければ・・・・。このままでは学園が滅ぶぞ」
 真顔で言い切る誠治。・・・・いや、そこまで言うのもアレだと思うけど。
「よしみんな、俺達工作部でこの事態を解決するぞ!
 学園の平和の・・・我々の明日のために!!」
「「「おおっ!!」」」
 誠治の決然とした科白に、部員達は拳を振り上げて応じる。
 と、そこへ。
「あの〜・・・・盛り上がっているところ大変すまないんですけど・・・・」
「なんだ?FENNEK」
 自らの決意に浸り切る誠治に、FENNEKは本当にすまなそうに聞いてくる。
「ええっと・・・・・・・・・・理奈先生って、誰です?
 それとアフロ同盟っていったい・・・・・?」



「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」
 その一言に、盛り上がっていた工作部の空気が止まった。



「・・・・・・・あ、そうか。FENNEKはまだ来たばかりだから知らないのか」
 ようやくFENNEKが何を言いたいのか飲み込めた誠治が、事の次第を説明する。
「理奈先生というのは・・・・・」



「あたしのことよっ!!」



 突然。
 凛然とした女性の声が、部室に響き渡る。
「誰だっ!?」
 誠治の誰何が、声のした方に投げられる。
 全員の視線がそちらに向くと、その先の工作部入り口には、なぜか逆光に照らされた人の
シルエットがふたつ。
 シルエットの片方が、誠治の誰何に応え名乗りを上げる!



「出番がないとバカにされ、忘れ去られて幾星霜!
  出番があったと思ったら、必ず兄とワンセット!!
   そんなあたしに巡ってきたは、目立ちまくれる大チャンス!!!
    Lメモ出演できるなら、アフロだろうとなってやる!!!!」



 そこまで一気に喋りきると、部室の中央に歩み寄る。
 逆光が消え、シルエットの正体がはっきりする。
 そこにいたのはマイクを握ったアフロ・・・・そう、アフロだ。
 



「今日からあたしはアフロ・・・・・・・アフロなアイドル、緒方理奈よ!!!」
「え、ええと・・・・森川=アフロ=由綺・・・・です」



 ばば〜〜〜〜〜〜んっ!!



 どっからかSEまで流れてくる。
 びしっとポーズをつけて、決め台詞を吐くアフロ・・・ってゆ〜か緒方理奈。
 隣には、同じくアフロ・・・・じゃなくて森川由綺がいた。とても恥ずかしそうだ。
 二人ともアイドルなだけにかなりの美人の筈。なのに、今の彼女たちの特徴として上げ
られるのは『アフロ』のただ一点だけだった。
「くそ、すっかりアフロに毒されてしまっている・・・・」
 理奈と由綺を見て、悔しげに呟く誠治。
「ど、どうしましょう、誠治さん!?」
「どうするんや!?」
「誠治さん!」
 うろたえる美加香、智子、望。・・・・・ま、当然か。
「ああ・・・・あたし今、最高に目立ってる・・・・・」
 理奈はスポットライトを浴びる自分に(どこから当ててるんだ?)すっかりご満悦だ。
「理奈ちゃん・・・・・・・」
 隣の由綺は、そんな理奈を涙混じりに見つめている。・・・・アフロだけど。
 その様子をきょろきょろと眺めていたFENNEKだが・・・・
「ああ、なるほど!」
 やがて、ぽんっと手を叩いて一人頷く。
 FENNEKは理奈の方を指さし、誠治に言った。
「つまり、理奈先生って・・・・・・・・・アフロ好きの変態教師なんですね!」



 びきっ!



「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」
 FENNEKの言葉に、完全に固まる一同。
 その瞬間、工作部部室の時間は確かに静止した。
 う〜ん、ざ・わーるど。
      ・
      ・
      ・
      ・
      ・
      ・
      ・
      ・
      ・
 『そして時は動き出す』こときっかり九秒後。
「・・・・ふぇ、FENNEK先輩っ!いくらなんでもそれはひどすぎます!!」
 いち早く硬直から脱した美加香が、あわててFENNEKをたしなめる。
「たとえ、出番がないからってよりにもよってアフロに手を出してしまうような見境無し
で常識知らずな人だとしても、言っていいことと悪いことがあります!」
「そうや!
 いくらうちでもそんな、頭のネジが一本どころか百本以上ぶっ飛ばななりそうもないよ
うな頭してる奴に対して、安っぽい塵に等しいヤワなプライドを傷つける様なこと絶対言
わへんっ!!」
「その通りです!目立つためなら手段を選ばないような、どうしようもないバカに対して
そんな本当のことを言っては失礼です!!」
 美加香に続いて、智子、望もFENNEKにまくし立てる。
「お、おい・・・・」
 そのやりとりを、冷や汗垂らしながら眺める誠治。
「「「・・・あっ」」」
 三人、あわてて口元を塞ぐがもう遅い。
 横を見やると、理奈がうつむいている。背中が小刻みに震えていた。
「・・・・・・・・・・」
「理奈ちゃん・・・・」
 由綺が恐る恐る呼びかける。
 と。



「う・・・・・・
 うえええええええええええええええええええええええええええええええええんっ!!」
「理奈ちゃん!?・・・・・待ってよ理奈ちゃ〜ん!」



 泣きながら工作部から走り去る理奈。・・・・・こぼれる涙が後引いてるよ。
 その後を由綺があわてて追いかけていく。
「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」
 走り去る二人を黙って見送る工作部一同。
 誠治が一言だけ呟く。
「おまえ達・・・・・・鬼」
 いやまったく。








 結局。
 理奈と由綺は、翌日にはアフロカツラを脱ぎ捨てアフロ同盟からの脱退を宣言した。
 だが、情報特捜部の取材に対し、その決断に至るまでの経緯についてはいっさい答える
ことはなかったという・・・・・・。



            めでたくもあり、めでたくもなし。