テニス大会Lメモ番外編「想いを胸に・・・・」  投稿者:FENNEK



 テニス大会Lメモ番外編「想いを胸に・・・・」












 君は負けた。
 君たちは負けた。
 校内男女混合テニス大会、その第一試合。
 華々しい開幕試合を、君たちは勝利で飾ることはできなかった。



 君は闘った。
 精一杯闘った。
 ぼろぼろになりながらも、パートナーと共に闘った。
 君なら勝てる見込みは十分あった。
 全力を・・・全能力を使えば勝てるはずだった。



 だが、君はそれをしなかった。
 自ら、持っている能力を封印して試合に臨んだ。



 なぜ?
 どうして?



 俺の問いに、君の生みの親はこう言った。

「・・・・マルチのように笑いたいから、と言っていたよ」

 君が、答えを求めるためについた我が儘。
 それは今、辛く、厳しく君を苛んでいた。
 一方的な試合展開。
 誰の目にも明らかな敗北の色。
 それでも君は闘った。
 一生懸命闘っていた。
 そして、それを認め、支え、一緒に闘う君のパートナー。
 痛々しいまでに、それでも闘う君たちを見て俺が出来たことは・・・・・








「せめて1ゲーム取ってみせろ。彼女の願いを叶えるためにも!」








 闘い終わって。
 君は笑っていた。
 試合には負けたのに。
 自嘲とか、自棄だとか、そんな笑いではない。
 満足した。楽しかった。
 そんな笑いだった。
 いや、実際に楽しかったのだろう。
 それは試合後、パートナーと共に会場を去るときに呟いた君の言葉にしっかりと現れて
いる。

「ーーー私も、楽しかったです・・・」

と。
 この試合を通じて、君は何を得ようとし、何を手に入れたのか?
 今なら、なんとなくではあるがわかるような気がする。
 俺にもそれは掴めるだろうか?
 なんとなくではなく、しっかりと、確かな手応えで。








「FENNEKさん、そろそろ行きましょう」

 ちびまるが・・・・・いや、正確にはガーネットタイプのボディをフレームとしたテニ
ス大会特別仕様となっているちびまるが声をかけてくる。

「・・・ん・・・ああ!」

 俺は力強くちびまるに頷いた。
 いよいよ試合時間だ。



 俺も君と同じ場所に立つ。
 そこで俺は何を見つけるのだろう。
 何を手に入れるのだろう。
 募る不安と、それ以上に膨らむ期待とともに、俺はコートという名の舞台に向かう。



「ちびまる・・・・」

「はい?」

「・・・・・悔いの残らない試合にしような」

「・・・はいっ!」



 君と対等になるって決めたんだ。
 君が何かを手に入れたなら、俺も何かを見つけよう。
 そして、自分自身を見つけよう。
 未来を見つけよう。
 俺が・・・・俺達が、しっかりと前を向いて、自信を持って歩んでいくために。



 ラケットを握りしめ、俺とちびまるはコートに向かった。








 そして。

 わああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・っ!!

 会場内に轟き渡る、割れんばかりの大歓声と共に今・・・・。

『第四ブロック、一回戦第二試合。FENNEK&ちびまるペアvs八塚崇乃&観月マナ
ペア・・・
 ーーーーープレイッ!』

 闘いの幕が、上がる。





               ー本編に続く(かも?)ー