偽典Lメモ『大戦』第十話 投稿者:Fool
 折り返し地点到着ぅ〜(笑)。
 やっと半分来たか……。
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               ▼あらすじ▼

 学園本校舎跡地に出現した魔物――ビボルダー。
 ティリア、サラ、エリアの混合魔法すら弾き返すその力の前に、耕一達は一
瞬にして打ちのめされる。
 やがて、ビボルダーは新たな獲物を求めて旧校舎へと向かった。





           偽典Lメモ『大戦』第十話

               −羅刹−






 旧校舎を取り囲む様にして魔物達が群をなしていた。
 しかし、魔物達はある場所を境に、それから先に進む事が出来なかった。
 オーロラの様な淡い燐光を放つ光の幕が、旧校舎や第一体育館を守るよう展
開されていたからだ。

 それは先日、魔物の侵入を察知した芹香とルミラが張った結界だった。

 光の幕の内側では、梓と千鶴、それとお粗末な手製の武器を携えた何人かの
生徒達が魔物の群と対峙していた。

 キシャァァァ!!
 痺れを切らした魔物が、梓達めがけて躍りかかってきた。
 だが光の幕に触れると、その魔物は一瞬で消滅する。

「ヤツら、どうやってもコレを越えられないみたいだね…」
 校舎を覆う光の幕を顎で指しながら梓が言った。
「ええ…」
 千鶴が相づちを打つ。
 だが、彼女の表情は重たかった。

 ――魔物達は入って来られない筈なのに…何故だか胸騒ぎがする…。

 彼女の中に眠るエルクゥの本能が危険を知らせていた。
 千鶴は横目で梓を見る。
 彼女の表情も暗い。恐らく、妹も自分と同じ不安を感じ取っているのだろう。
 そう千鶴が思った時、
「なんだ、あれ?」
 生徒の中から声が上がった。
「魔物だ!」
 誰かが遠くを指さした。
 全員の視線がそちらへ集中する。

 鉛色の空をバックに、球状の物体が空に浮いていた。
 それは先程、耕一やティリア達を一瞬で倒した魔物――ビボルダーだった。



 ビボルダーは、その大きな一つ目で旧校舎を覆う光の幕を睨み付けると、聞
く者を不快にさせるおぞましい叫び声を上げた。
 すると、ビボルダーの目の回りに光の粒子が集い始め、まるで蛍の様に舞い
だす。
 やがて粒子は一つに集まり、ある臨界を越えた時、一本の光線となって光の
幕めがけて放たれた。



 光線と光の幕とがぶつかり合い、激しい火花を散らす。

「梓! 見て!」
 眩い光に目を細めながら、千鶴が光線と幕との接点を指さす。
「くっ!?」
 同じ様に目を細め、姉の指さした方を見た梓の口から驚愕の呻きが漏れた。

 自分達を守ってくれている光の幕は、光線に押され歪み始めていた。しかも、
歪みはその周囲の幕をも引き込んで拡大していく。

 もし、この結界が破られればどうなるか? 答はとても簡単だった。
 今、自分達の周りに溢れている魔物達が一斉に襲いかかってくるだけだ。
 彼我の戦力差が脳裏をよぎる。
 そこにいる全員、喉が乾いてゆくのを感じた。

 まずい! と梓が胸の内で叫んだ瞬間、ビボルダーの放った光線は遂に光の
幕を破り、校舎をも貫通して虚空へ消えた。





「つっ!」
 突然、ルミラの右のこめかみ辺りから赤い血が流れ出し、頬を伝って地に落
ちた。
「…芹香嬢ちゃんのだけならまだしも、私の張った結界を破るなんて…」
 流れ出た血を拭いもせず、信じられないといった感じに呟くルミラ。

「どうした?」
 ルミラの異変に気付いた西山が声をかけた。
「まずい事になったわ」
 先程までの浮ついた感じではなく、真面目な口調で話す彼女に少し戸惑う西
山。
「エビル、イビル、一緒においで!」
 彼女は下僕の二人に命じると、自らの身体を宙に浮かせた。
「了解」
「あ、待ってよルミラ様」
 主人の命を受けたイビルとエビルがそれに続く。
「西山、ここはアンタに任せる。メイフィア達は彼に従う事、いいね」
 それだけ言うと、ルミラ達は旧校舎に向かって飛んでいった。



「どうしたんでしょう? ルミラ様のあんな真面目な顔、久しぶりに見ました」
 首を傾げるアレイ。
「…なんか、向こうがヤバイ事になってるみたいね」
 メイフィアは額に手をかざしながら、ルミラ達が飛んでいった方向を見る。
「英志君…」
 不安げに眉を寄せて西山の腕を掴む楓。
「楓ちゃん…今は彼女たちに任せよう」
 彼女の不安を取り除こうと、西山は楓の手に自分のそれを重ねた。

「うにゃにゃにゃ! うにゃぁん!」
 その時、たまがいきなり騒ぎ始めた。一斉にたまの方を見る四人。
 遠くを指さしながら喚くたま。そこには、新たに出現した魔物の群れが、西
山達に向かって来ている途中だった。
「この程度の雑魚! 俺一人でも十分だ!」
 駆け出す西山。

「超級覇王デンパ弾ッ!!」
 彼は紫に輝く光球と化し、魔物の群れに突っ込んでいった。





 横殴りの衝撃が旧校舎を襲った。
 臨時生徒会室の中、端末を操作していた生徒会役員達から悲鳴が上がり、何
台かの端末が机から転げ落ちた。

「状況は!」
 けたたましく鳴り出したサイレンよりも大きな声で拓也が叫ぶ。
「は、はい」
 辛うじて生き残った端末を使っていた瑞穂がキーを叩く。
「こ、これは…」
 CRTモニターに映し出される情報に、彼女の顔から血の気が引いていった。
「…旧校舎の南側半壊! 火災が発生しています! それと…ええっと、旧校
舎及び第一体育館を覆っていた結界消失! 魔物が侵入を始めています!」
 瑞穂の報告が終わると同時に、久々野が扉に向かって駆け出した。
「久々野!」
「魔物の方はこっちが引き受ける! そちらは生徒の避難と消火活動を頼む!」
 それだけ言うと、久々野は部屋から飛び出していった。





 ルミラ、エビル、イビルの三人が旧校舎上空に着いた時、地上では梓や千鶴、
それに一般の生徒達が魔物の群と乱戦状態に陥っていた。

 ルミラの視界に、空に浮いている球状の魔物が入った。
「あれは……ビボルダー!?」

 ――くっ! ある程度は予想していたけど…少し厄介ね…。

 苦々しく爪を噛むルミラ。そしてその場に滞空すると、下僕の二人に向き直
る。
「エビルとイビルは下へ降りて雑魚の掃除!」
「は〜い」と高度を下げるイビル。
「ルミラ様は?」
 エビルの懐からフランソワーズが顔を出し、ルミラに尋ねる。
「私? 私はアイツとタイマンさ…」
 そう言ってビボルダーを顎で指すルミラ。その顔は笑っているが、目は真面
目そのものだった。





「てやぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
 力を開放した梓の右腕が、迫ってきた魔物の身体を真横に薙ぐ。
 断末魔と体液を巻き上げながら地に伏す魔物。
「はぁ、はぁ、はぁ…こ、これで何体目…だ?」
 大きく肩で息をする梓。その姿は魔物達の返り血と、自分の汗と砂埃にまみ
れていた。
「ッ!!」
 背後に殺気を感じ咄嗟に身を捻る。同時に、魔物の手にした得物が梓の背を
掠める。
「こんのぉぉぉぉぉぉっ!!」
 すかさず反撃の鉄拳を食らわす梓。彼女の拳は魔物の腹を突き破り、相手を
瞬時に絶命させた。
「くっ、息付く暇も無いのかよ…」
 ズルリと魔物の腹から手を抜き出す梓。見れば彼女の周りには、まだ無数の
魔物達が取り囲んでいた。
 乱れた息のまま構えを取る梓。そんな彼女にジワジワと迫る魔物達。

「手ぇ貸してやるよ」
 ふと、そんな声が頭上からしたと思うと、なんの前触れもなく魔物の輪が業
火に包まれた。
「これは!?」
 突然の出来事に慌てふためく梓の隣に、空からボーイッシュな格好した少女
が降りてきた。
「あんた…イビル!?」
「へっへっへっ、助っ人参上」



「エビルちゃん、あのボールみたいな魔物は一体…」
 迫り来る魔物の群を鬼の力で切り裂きながら、千鶴が後ろのエビルに訊く。
「あれは、ビボルダーっていう魔物なんです。強力な魔法と、頑丈な魔法障壁
を持ってる少し厄介な相手ですね」
 手にした斬首鎌で魔物と闘っているエビルの懐から、フランソワーズが顔を
出して彼女の代わりに答える。
「そんな手強い相手に彼女一人で大丈夫?」
 千鶴の一閃が魔物の胴を横に裂く。
「大丈夫ですよ、ルミラ様も強いですから」
 フランソワーズの言葉に、エビルは魔物を袈裟懸けに斬り裂きながら頷いた。





 空中で対峙するルミラとビボルダー。
「mars! jupiter! saturn!」
『mercury…moon…sun……』
 ルミラとビボルダーは同時に呪文詠唱に入った。
 美貌の魔界貴族は澄んだ良く通る声で、おぞましい魔物は地の底から響いて
来る様な不気味な声で。

「遅いっ!」
 先に詠唱を終わらせたのはルミラだった。
「LIGHTNING!!」
 ルミラの前に生じた魔法陣から、雷撃がビボルダーへ向けて放たれた――が、
それは相手の目の前で弾け飛んだ。
「チッ! この程度のヤツじゃビクともしないか…」
 ルミラが舌打ちした時、ビボルダーの呪文詠唱が終わった。

『…FIRE…FOX…』
 身の毛のよだつ声で、魔法の発動を告げるビボルダー。
 するとビボルダーの身体の周囲に、たくさんの青く揺らめく鬼火が出現した。

 鬼火は尾を引きながらルミラに迫る。
「甘いっ!」
 難なくそれをかわすルミラ。しかし、鬼火はまるで意志があるかの様にルミ
ラの後を追う。
「追尾性質!? ふん、味なマネを!」
 空を縦横無尽に飛びながら鬼火の追撃をかわしつつ、呪文を詠唱していくル
ミラ。
「IRON−BULLET!!」
 詠唱が終わると、彼女の周囲に鈍く輝く鋼鉄の球が次々と出現し、それらは
ビボルダーの作りだした鬼火めがけて飛んでいき、対消滅させていく。

 だが――。

 全ての鬼火を処理し終わった時、ルミラはビボルダーの姿を見失っている事
に気付いた。
「しまった! 囮!?」
 頭を左右に動かし、ビボルダーの姿を探すルミラ。

「上か!」
 頭上に気配を感じ、慌てて上を見るルミラ。
 そこには、呪文を紡いでいる敵の姿が――。

 大きな一つ目の周囲に光が集まり始めている。
 先程、結界を破ったあの魔法だ。
「ッ!!」
 短く舌打ちし、ルミラも呪文詠唱を始めるが、今度はビボルダーの方が早か
った。

 巨大な一つ目から、膨大な破壊エネルギーがルミラめがけて放たれた。
「TURN−SPELL!!」
 刹那、彼女の魔法が発動し、ルミラの前に幾何学的な光の模様が出現した。

 二つの魔法はぶつかり合い、激しく火花を散らし、やがて爆発した。

 爆発した地点がルミラのすぐ側だった為、彼女は爆風で吹き飛ばされる。
 バランスを失い、重力に引かれて地面に落ちていくルミラ。
「あうっ!」
 彼女は仰向け状態で地面に叩き付けられた。

 続いてビボルダーが落ちて来た。

 ズシンと大地を響かせながら、ルミラの上にその身体を落とすビボルダー。
「がはっ!」
 彼女の口から鮮血が飛んだ。

「ぐっ…や、やるじゃない…目玉…お化け…のクセして」
 口から血の泡を吐きながらも唇の端を釣り上げるルミラに、ビボルダーはま
るで嘲笑っているかの様にその目を細めた。





「いやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃっ!!」
 古びた校舎に響き渡る悲鳴。

 ビボルダーによって結界の破壊された旧校舎内に、魔物の群が入り始めてい
た。
 たちまちパニックに陥る生徒達。それは六日前の再来だった。



「祐くん! 祐くーん! 何処にいるのー!!」
 逃げまどう人々に揉まれながら、必死に祐介の名を呼ぶ沙織。
 しかし、祐介の返事はない。
 代わりに、生徒達の流れの最後尾から断末魔が上がった。

「っ!!」
 自然とそちらへ目がいく沙織。そこで彼女が見た物は、壁と壁の間を器用に
飛びながら迫ってくる数匹の小鬼達だった。
 小鬼達が一回跳躍すると、何人かの生徒達の首から深紅のシャワーが迸る。

 キキキッ!

 甲高い鳴き声を上げて、その中の一体が沙織に迫る。皺の刻まれた小鬼の顔
を間近に見た時、沙織はぎゅっと目を瞑り、心の中で祐介の名を呼んだ。
「沙織ちゃん!!」
 同時に、沙織の良く知っている声がして、その声の主が彼女の身体を包み込
んで押し倒す。

「あうっ!!」
 斬肉の音と、短い悲鳴が沙織のすぐ側で聞こえ、彼女は恐る恐る目を開けた。

 眼前にあったのは探し求めていた祐介の顔。彼は苦笑を浮かべて沙織を抱き
しめていた。
「ゆ、祐くん!!」
 一瞬驚いた表情を浮かべた沙織だが、やがて泣き出しそうな顔になると祐介
に抱きつく。
「ううっ、祐くーん」
「沙織ちゃん、泣くのは後だ。今は逃げないと…。立てる…ね?」
 幼子を諭すような口調で言いながら、祐介は沙織の身体を起き上がらせた。
 コクンと無言で頷き立ち上がった沙織だが、自分の周りの光景を見て思わ
ず息を呑んだ。
「ヒッ!」

 つい先程まであれだけいた生徒達は、廊下の上で、まるで水揚げされた鮪の
様に横たわっていた。皆、一様に首の所を斬り裂かれて。
「っ!! …モガ」
 思わず悲鳴を上げそうになった沙織の口を、祐介の手が塞いだ。
「シッ! 静かに! …まだヤツらは僕達に気付いていない」
 そう言って、廊下の奥を顎で指す祐介。目だけを動かしそちらを見る沙織。
 小鬼達は、自分達の仕留めた獲物を物色している。

 ゆっくりと、小鬼達とは反対の方へ逃げ出す祐介と沙織。
 しかし、小鬼の一体が二人に気付いた。

 キキキッ!

 その小鬼の鳴き声で、他の小鬼も祐介達に気付いた。
 一斉に二人に向かって駆け出す小鬼達。
「急ぐんだ!」
「祐くん!」
 沙織の背中を押す祐介。走る沙織。



「祐くん?」
 数メートル走ったところで、後ろに違和感を感じ振り返る沙織。
 自分の後ろに祐介はいなかった。彼は先程と同じ場所に立っていた。
「祐くん!」
 その時、沙織は祐介が背中に怪我をしているのを初めて知った。
 慌てて自分の手を見る沙織。先程、祐介の背中に回したその両手は赤く染ま
っていた。
 彼の傷が、自分を庇った時に負った物だとすぐに判った。そして、その傷が
決して浅い物では無い事も。
「祐くん!」
「来るな! 沙織ちゃん!!」
 自分に向かって駆け出そうとする沙織を祐介は止めた。
「こいつらは僕が引き受ける! だから今の内に逃げるんだ!!」
「そんな! 怪我をしている祐くんを放っては行けないよ!!」
 首を何度も横に振る沙織。
「僕の事は大丈夫だから」
「でも!」
「行くんだ!!」
 祐介の激しい一喝を受け、ビクッと身を竦める沙織だったが、彼女は溢れ始
めた涙を拭うと、
「誰か呼んでくるから! それまで頑張って!!」
 そう言って祐介に背を向けて駆け出す。

 ――死なないで! 死なないで祐くん!

 沙織は走りながら、心の中で必死に祈り続けた。



 祐介は沙織が視界から消えるのを確認すると、小鬼達に向かって仁王立ちに
なり、電波を練り始める。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…」
 祐介の身体から滲み出る異様な雰囲気と紫電に怯んだ小鬼達は、お互いに合
図をしあい、その場から逃げ出そうとした。

「逃がすか!!」
 祐介は練った電波を放出した。彼から放たれた濃密な紫色したプラズマが小
鬼達を貫く。

「壊れろッ!!」
 そう彼が言い放つと、小鬼達はまるで糸の切れた操り人形の様に、パタリ、
パタリとその場に倒れていく。
 最後の一匹が倒れるのを見た後、祐介は側の壁にもたれ掛かり、そのままズ
ルズルと崩れ落ちた。

 ――は、はは…。今度は護れた…よね……。

 壁に血の絵を書きながら。





「ルミラ様ッ!!」
 エビルとイビルは、ビボルダーに押し潰されたルミラの救出に向かう。
 しかし、二人の行く手を魔物達が遮る。

『…moon…mars…mercury…jupiter…』
 ルミラの上に乗っかったまま、ビボルダーはおぞましい声で呪文を紡ぎ始め
た。
「くっ! ここまでか…」
 覚悟を決め、固く目を瞑るルミラ。

 肉を貫く生々しい音がルミラの鼓膜を震わす。合わせて、顔にかかる生暖か
い液体の感触。――そして、不気味な断末魔。

 ぎしゃあぁぁぁぁぁぁッ!!

 そこで、ルミラは何かがおかしい事に気付いた。
 ゆっくりと目を開ける。最初に視界に飛び込んできたのは、ビボルダーの目
玉を突き破って生えている太く荒々しい獣腕だった。

「耕一!」
「耕一さん!」
 梓と千鶴が叫ぶ。

 ビボルダーの身体を背後から突き破っているのは耕一の腕だった。
 彼は身体にたくさんの刺し傷を負ってはいたが、その全身からは、怪我が嘘
ではないかと思える程の凄まじい闘気を放出していた。

「調子に乗るなよ、この目玉野郎…」

 耕一は残されたもう一方の腕を同じ所に突き刺すと、そこからビボルダーの
身体を開いてゆく。

 肉が少しずつ裂けていく音がした。苦しげに身悶えるビボルダー。
 しかし、彼は情け容赦なく腕に力を込める。

 ごるぁあぁぁぁぁぁぁぁッ!!

 やがて、くぐもった叫び声と共に、ビボルダーは二つの肉片と化した。





                              ――つづく





               ▼次回予告▼

 曇天の向こうの太陽が茜色に染まる頃、魔物達の攻撃は止んだ。
 戦いを生き抜いた人間達は、命を落とした者達を荼毘にふす。
 炎の揺らめきの向こうで、芹香は死者を慰める呪文を静かに紡いでいた。

 次回、偽典Lメモ『大戦』第十一話−鎮魂−。

 生者には希望を、死者には安らぎを――。

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 しまったぁぁぁぁっ!!
 前回と前々回、メイフィアの名前を間違えてたぁぁぁぁぁっ!!(爆)
 ゴメンよ、メイフィア……(汗)。

 それと今回、第四話で“へなちょこ”だった祐介のフォローはしたつもり。

 これで脱線しまくりの戦闘シーンはお終い(笑)。
 次回から、再び対SGY戦の話に戻ります。