テニス魔球Lメモ「夕暮れの死闘」  投稿者:トリプルG
 テニス大会まであと数日となった頃。
 トリプルGは、橋本にテニスコートへと呼び出されていた。
 時間はすでに遅く、練習している生徒達の姿はもう無い。
「・・・・・・」
 橋本の姿はまだ見えない・・・が、無言で辺りに視線を走らせる。
 感じるのだ。殺気を。
 ややあって、彼は近くの木の陰で視線を止めた。肩から提げていたスポーツバッグ
の中からテニスボールを取り出し、そこへ向かって投げつける。
 ぱしっ。
 木の陰から伸びた手が、それを受け止める。
「・・・えーと、何の用ですか?」
 コンディションを戦闘状態に保ったそのままで、手の主・・・橋本に問う。
「いや、別に大した用じゃないんだが・・・」
 言いながら、橋本が木の陰から姿を現す。
「テニス大会・・・2人と組むっていうのは、芹香にとっては厳しいことだと思わな
いか?・・・なあっ!」
 素早く手を背中に回し、何か黒光りするものを取り出す橋本!
(・・・M−16A2アサルトライフルっ?!)
 慌てて近くのテニス部倉庫の陰に飛び込むトリプルG!
 ががががががががっ!!
 彼のすぐ横を、弾丸が走り抜ける!
「あ・・・あなた、本気で私を潰すつもりですねっ?!」
「芹香のためだ、悪く思うなよっ!」
「・・・それなら・・・」
 術を組み立てつつ、トリプルGが倉庫の陰から飛び出す!
「あなたが辞退して下さいよっ!・・・ラナクラフトっ!!」
 トリプルGの手の平の数p上の空間に浮かび上がった魔法陣から、数十発のビーム
が発射される!それらは真っ直ぐに上空へと昇っていくと、途中で向きを変え、まる
で追尾ミサイルのように橋本へと向かう!
「ふっ・・・ハシモトビイイイイムッ!!」
 橋本の言葉と同時、彼の側頭部からもビームが発射され、ラナクラフトのビームと
衝突、相殺する!
 よく見れば、橋本の側頭部・・・髪の毛の下には、小型のCCDカメラのような物
が取り付けられていた。ビーム兵器通の間ではなかなか有名な小型ビーム砲で、身体
にベルトなどを使って取り付けるタイプである。
「・・・よくそこまで揃えましたね・・・」
「第二購買部に結構揃ってたぜ?」
 言いながら、トリプルGはビームライフルを、橋本はどこからか取り出したロケッ
トランチャーを構える。
 ・・・テニスコートに爆発の花が咲いた。


 三十分後。
「ぜえ・・・ぜえ・・・ぐっ・・・なかなかやるじゃないか・・・」
「はあ・・・はあ・・・そ、そっちこそ・・・そろそろあきらめてくださいよ・・・」
 2人は疲弊していた。あまり体力のない橋本と、魔術を連発しているトリプルG。
三十分も戦えばこうなる。
 トリプルGの方にはもうあまり手札がなかった。魔力はすでに残り少なく、ビーム
ライフルはエネルギー切れ。格闘戦に持ち込むこともできるが、次から次へと出して
くる橋本の秘密兵器が怖い。
 橋本も、実は武器が残り1つとなっていた。懐に隠したバズーカで、残弾数は1。
これを撃てばもう彼に残された攻撃手段は殴ることだけである。
 しばし2人は無言で睨みあう。
 先に行動を起こしたのは、橋本だった。
「くそがっ!」
 懐からバズーカを取り出すと、それを構える。
「うっ・・・?!」
 一瞬たじろぐトリプルG。しかし、あることを思いつき、右手を高々と掲げる。
「庭球剣っ!!」
 残った魔力を総動員して、召喚魔術を発動させる。一瞬彼の手の平が光を発し、そ
れが収まったときには、彼は一本のテニスラケットを握っていた。
 庭球剣。オカルト研究会の技術力をもって作られたものであり、トリプルGがテニ
ス大会で使用する予定のラケットである。ちなみに召喚魔法で出現させることに意味
はない。トリプルGの趣味である(笑)。
 そして次に、彼は左手に付けているリストバンドに意識を集中させる。すると、リ
ストバンドの下に仕込まれた魔法陣が彼の意識を読みとり、あらかじめ込められてい
る魔力を使い、1つの魔術を発動させる。
 トリプルGと橋本の頭上が暗くなり、空一面に雨雲が発生する。これはその魔術が
作り出した幻像である。更に魔術は辺りの空気を振動させ、勇ましい音楽を演奏し始
める。
「な・・・く、このっ!!」
 茫然としていた橋本だったが、我を取り戻すと、トリプルGに向かってバズーカを
発射する!
(来た・・・!)
 トリプルGはひたすらに魔術の発動を待った。
 さて、初めに発動した魔術の役割は音楽を演奏するまでで終わりである。次に、発
生した幻像と音楽を『条件』とし、二つ目の魔術が発動する。この魔術はトリプルG
の足元の空気に作用し、15CM程地面から浮かせる。空中に浮いたトリプルGは、
足元の空気を操ることができ、ホバークラフトの要領で空中を動く事が出来るように
なる。そして最後にラケットを魔力強化して、二つ目の魔術はその役目を終了する。
 二つ目の術が発動してから、その役目を終えるまで、僅か一瞬。
「必殺!」
 発射された弾に向かい、トリプルGはラケットを構え、空中を滑る!
「庭球剣!縦、一文字切りいいいいいっ!!!」
 ぱこーーーーん!!
 トリプルGが弾を打ち返す!
「んなあっ?!」
 驚く橋本。無理もない、バズーカの弾を打ち返したのだから。ホバークラフトでの
移動速度と、常にビームを目で追うことにより鍛えられたトリプルGの動体視力を合
わせて初めて出来る芸当である。
 さらに打ち返した弾はラケットから加えられた魔力により、空中で右に曲がり、そ
れから下に落ちる。
 勇ましい音楽が鳴り響く中、バズーカの弾は丁度トリプルGと橋本の中間地点で爆
発した。


「ち・・・」
 痛む体に鞭打って、橋本は体を起こした。
「う・・・ぐ・・・いたた・・・」
 トリプルGもなんとか体を起こす。
 橋本はしばし無言で佇んでいたが、やがてテニス部倉庫へ向かうと、ラケットとボ
ールを手に戻ってくる。
 橋本のしようとしていることを読み、トリプルGも庭球剣を構える。
 橋本はボールを軽く放り上げると、強烈なラケットの一撃を加える!
 プロにも匹敵するのではないかと思われるほどの、強力なショット。
 トリプルGが追いつくより早く、ボールはワンバウンドしてコートから飛び出して
いった。
「・・・試合で当たったときは・・・手加減無しだ」
 それだけ言って、橋本はその場を立ち去った。
 残されたトリプルGは、仰向けに倒れ込む。もう体に体力が残っていなかった。
「・・・こちらも・・・全力でいきますからね・・・」
 ぽつりと呟く。
 空には、一番星が出ていた。

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なんとか間に合ったのでしょうか・・・?(汗笑)
とりあえず、魔球Lです・・・では効果などを・・・

魔球・『庭球剣 縦一文字切り』
見た目:空が暗くなったかと思うと雨雲が出てくる。そして辺りに音楽が鳴り響き、
トリプルGが中に浮く(高さ15CM位)。その状態でボールを打つと、右に曲が
って落ちる球か、左に曲がる球を打ち出すことが出来る。全体の雰囲気は某勇○シ
リーズの必殺技(笑)。
効果、長所:ホバークラフト式の高速移動が可能になる。軌道が変化する魔球が打
てる。トリプルGの動体視力とホバークラフト時の移動速度を合わせることにより、
大体の球は打ち返すことができる。
短所:発動までに5秒ほどかかり、この間は芹香に頼り切りに。浮遊中の高さは
15CM程で固定されている。一度打ち返すと術の効果は切れ、リストバンドに
込めることの出来る魔力量の関係で、使用できるのは一試合中一回まで。

>よっしーさんへ
「今更そんな物だしても遅いっ!」と思われるようでしたら、魔球は無視して下さ
いませ・・・。