ドラマにならない人生 投稿者:ガンマル
テニスエントリーL&背景脱出計画第一弾「ドラマにならない人生」
「ふんふふんふ〜ん♪」
 昼休み、恒例の学食バトルに参戦したガンマルは運良く、学食メニュー四天王のひと
つ『ろめキャベツ定食』を胃袋に納めることが出来、いつもの2.5倍(当社比)ほど
の食後の幸せをむさぼっていた。
「うむ、さすが四天王と呼ばれるだけある。あのまったりとしていて、それでいてしつ
こく無いさわやかな風味……あぁ、思い出すだけで3日はメシが食えそうだ…」
 ちょっとイッちゃった目で先程激闘の末口にした定食の味をモゴモゴと反芻する

「ねぇ、ちょっと」
「はぁ……朝から授業をサボってまで並んだかいが有ったぜ」
「そこの二年の人、あなたよ!!」
「次は昼休み限定10個の『二次弁』だな。学食メニュー制覇まで、あと3つ!!」
 勢い良く拳を振り上げたガンマルの頭上に一筋の赤い閃光が走るっ!!


ゴメスッ!! ガスッガスッガスッ!!


……訂正、四筋の赤い閃光が走った!!

「はぁはぁはぁ……人が何度も呼んでるんだから、振り向くぐらいしなさいよね!!」
 荒い息を付き、少女は手にした消火器をどこへともなくしまい込むと、ひくひくと
 痙攣してぶっ倒れているガンマルを怒鳴りつけた。
「お、太田? てめぇ、いきなり何しやがる!?」
「あら? 意外と頑丈ね」
 香奈子は、抗議の声を上げるガンマルに確信犯まるだしなセリフを吐く。
「ほらほら、そんなとこにいつまでも寝てたら迷惑でしょ。 さっさと立ちなさいよ」
「誰のせいだ、誰の!!」
「あのね、ちょっと頼みたいことが有るんだけど……」
「てめぇ……人の話は無視か コラ」
 青筋を立てて引きつった笑いを浮かべるガンマルを無視して、香奈子は壁に立てかけ
ていた紙筒を手渡した。
「あん? 何だコレ?」
「今度のイベントのポスターなんだけど……貼るの手伝ってくれない?」
「またなんかモメ事を起こすのか? 相変わらずロクなこと考えてないな暗躍は…」
 手渡されたポスターを弄びながらブツクサ呟く。
「………(じーーー)」
「ん? なんだよ、何か付いてるか?」
「その割には、嬉しそうな顔してるみたいだけど……?」
 ガンマルは、その言葉にハッとにやけた顔を引き締めるが既に遅く
「ふふん、素直じゃないんだから……それじゃ、手伝ってね」
 香奈子はしてやったりという顔で画鋲を箱からつまみ出した。

「あ、上押さえててくれる?」
「よ…っと、コレでいいか?」
 ビタッと壁に張り付くようにしてポスターの上端を押さえると
 香奈子がガンマルと掲示板の間に潜り込み、ポスターの下端をっと引っ張る。
「うん、そんな感じ もーちょっと押さえててね」
 必然的に目の前にポスターが広がるわけだが……
「ふ〜ん、テニス大会か。むぅ〜〜〜」
「どうかしたの?」
 うなるガンマルを見て、香奈子は訝しげな視線を向ける。
「せっかくのチャンスだけど、テニスやったこと無いんだよな、オレ」
「別にいいじゃない。ルールなんてっ、難しくないわよっと」
 ぐいっと画鋲を押し込みつつ返事を返す
「ん〜、でもなぁ……綾香の足手まといになるのはイヤだし」
「はい次、さっきと同じように押さえてね。…それじゃ、来栖川さん以外と組めばいい
じゃない。それでカッコイイとこ見せたら?」
 新しいポスターを受け取り、再び上端を押さえる。
「綾香以外? ……………なぁ、ペア組もうか?」
「私は会長と出るんだからダメよ」
 唐突なガンマルのセリフはあっさりとかわされる。
「へ? 主催者なのに出るのか?」
「主催者だから参加したらいけないってこと無いでしょ?」
「んまぁ、そーだけど……」
「なにか文句ある?」
「いや、別に…ただ、お前らが自発的に参加するのなら裏はないのかなって思ってな」
 皮肉っぽく笑うガンマルを不思議そうな顔でしばらく見つめると、やがてポンッと手を打った。
「あなた、ポスターちゃんと見てないでしょ。ほら、ここ」
 香奈子がポスターの一点を指す、その先には『優勝賞品:ペアで鶴来屋温泉郷二泊三
日の旅』という文字が見えた。
「温泉旅行ぉ?! ホントの温泉か?」
 ガンマルの訝しげな視線を受け流し
「当たり前でしょ、疑り深いわねぇ」
「温泉の素を渡して『さぁ、どこにでも旅行に行け』とか、銭湯の近くに寝袋用意し
て『此処が宿泊場所だ。好きなだけ満喫しろ』なんてオチじゃないんだな? ホントに
本物の温泉!?」
「あ、あのねぇ…あんた、ウチをなんだと思ってるのよ」
「……言って欲しいか?」
「いや、やめとくわ。なんか怖いし……」
「そーか? ま、いいや んで、この温泉旅行はちゃんとしたヤツなんだな?」
 少し残念そうな顔しながらも念を押すようにして尋ねるガンマル
「大丈夫よ、千鶴先生にも許可とってあるし。100%ホンモノよ」
「むぅ……となると参加しない訳にはいかないな」
 眉にしわを寄せて考え込むガンマル
「でしょーねぇ、来栖川さんと誰かが優勝したら、さぁ大変」
 ニヤニヤ笑いながら香奈子はガンマルの耳に口を寄せ
「ふたりっきりの温泉旅行はハプニングがいっぱい、いつもと違う環境が二人を急接近
させる。そして二人は……」
 なにやらマンガか小説の見出しのようなことをささやきだした。
「ぬぅぅぅ……(妄想中)……いっかぁぁぁぁぁぁぁぁん!! そんなことはお天道様
が許しても、オレが許さねぇ!!」
 突如、大声で叫ぶガンマルを見てわずかに微笑むと、香奈子はポンッとガンマルの
背中を叩いてトドメの一言を放った。
「それじゃあ、とっとと走る!! 来栖川さんのところに行ってペア組んできなさい!!」
「よっしゃぁぁぁぁぁ!! 綾香ぁぁぁぁぁぁぁぁ今行くぜぇぇぇぇぇ!!」

 熱血モードで走り去ったガンマルを見送ると、一息ついて
「これでワンペア確保っと………あっ!? ポスター貼り、どうしよう……」




		オマケ

「綾香ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ん? どうしたの、そんなに息切らして?」
「あのな、あのな、オ、オレとテニス大会のペア組んでくれぃ!!」
「え? あちゃ〜、ごめんねぇ。もうゆーさくと組んじゃったんだぁ」


ちゅどぉぉぉぉぉぉぉぉん!!


「そ、そんなぁ〜〜」


めでたくなしめでたくなし……


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 やっとのことで初Lメモが完成しました(書くって言ってから半年くらいか?(笑))
 これでもう『背景』だの『書き割り』だの『人だか木だか石だかわからん様なモノ」
などと言われる日々ともお別れです(笑)
 内容に関しては・・・ようは綾香と組まなかっただけです。
 おそらく、あの手この手で綾香&悠ペアを優勝させないよう目論んでいるでしょう(笑)


 では、2作目が早くできればいいなぁと、お星様に願いつつ …………再見!!(笑)