Lメモ恋愛趣味レーション「桜の花の、散る下で」  投稿者:ギャラ
 桜の花が、散る。
 ただ一本、他に先駆けて咲いている桜が。
 風に吹かれて――ただ静かに、散っている。
 その足下に、一人の男を抱えたまま。
「――ああ、来ていただけたんですね」
 ふと。
 男が目を上げる。
 その先で、赤い髪の少女が。
「うん……」
 息を沈めるかのように、胸に手を当てて。
「それで、用事は……?」


「好きです」


 ざうっ。
 風の吹く中で。
 桜の散る中で。
 少女の時は――動きを止めた。
 夢の終わりを、告げるように。


      Lメモ恋愛趣味レーション「桜の花の、散る下で」


 息が、止まる。
 言われ慣れていたはずの言葉だった。
 折りに触れて。
 冗談にまぎれて。
 貴方が好きだと――そう聞かされていた。
 けれど。
「いやいや……初めてでしょうか。こんな風に言うのは」
 その眼は。
 見慣れていたものとは違う、眼だった。
 何かを湛えて。
 何かに飢えて。
 何かを求める。
 そんな、眼だった。
「ですが……もう、私も卒業ですから」
 だから。
「最後の機会に、足掻いてみるのも一興かと思いまして」
 だから。
 何も、言えなかった。
 何も、考えられなかった。
 そんなあかりを前に、男が――ギャラが、つと目を細める。
 笑うように。
 哭くように。
「いやはや……何も、答えてはいけないのですか?」
 ――泣き顔だ。
 不意に、そう悟った。
 ――泣いているんだ。笑ったまま。
 ――笑うことしか、出来ないんだ。
 それは思い込みであったのかもしれないが……
 あかりには、そう思えた。
 だから。
 ――何か答えてあげないと、そうしないといけないんだ。
 そう、強く感じた。


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選択!

1:「……ごめんなさい」
2:「わたしも……好きだよ」
3:「天翔熊閃!」

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1の場合:

「……ごめんなさい」
 ようやく、それだけを口にした。
「ごめんなさい……」
 ぼろぼろと、涙がこぼれる。
 悲しくはないはずだと、思ってみても。
 ただの偽善だと、思ってみても。
 涙は、止まらなかった。
「……理由を、教えていただけますか?」
「え?」
「……私のことが、嫌いですか?」
「う、ううん。そうじゃないけど……」
「では、何故です?」
「……」
「他に、好きな方がいるんですか?」
「……」
 言葉が、途切れる。
 無言のままに、時が流れていき――
 こくり。
 やがて、あかりの首が、僅かに倒れた。
「……わたしは。
 わたしが好きなのは――」


 暫くして。
 あかりが去り、人もいなくなった桜の下に、ギャラは一人佇んでいた。
「いやはや……ありがとうございました」
 ざわり。
 呟きが漏れると同時、桜の枝が揺れる。
「……馬鹿だよ、きみは」
 不満そうな声とともに、一人の男が落ちてきた。
「……」
 さらに、一人。
 怒りの形相で枝から飛び降り――

 ごすっ!

「ぐっ!」
「……これで、勘弁したげるわ」
 ギャラの腹部に拳をめり込ませて、少女が告げる。
 そして、その手に握られた縄は。
「……」
 一人の男に、つながっていた。
 猿轡をはめられた、男に。
「いやいや……藤田さまにも、乱暴なことをしてしまいましたね」
 苦しげに腹を押さえながら、ギャラが猿轡を外す。
「……」
「いやはや……お怒りですか?」
「……お節介、って言葉知ってっか?」
 浩之の問い返しに、何も答えずにギャラは笑いを浮かべた。
「卒業生の、最後の思い出づくりですよ……」
 その身体が、桜の陰へと回っていく。
 誰からも、顔の見えない場所へ。
 そして。
「――それでは、ご機嫌よう」
 足音は、遠く去っていた。
 微かな、笑いだけを残して。
「……」
「ま、終わったことは仕方ないかぁ」
 吹っ切るように、四季が身体を伸ばす。
「まあ、一歩リードされたってところかな」
 雅史も、浩之に背を向けた。
「お前ら……」
「だけど!」
 浩之の言葉を遮るように、雅史が声をあげる。
「まだ、諦めたわけじゃないからね」
「わたしたちには、まだ時間はあるもんね」
 四季の手が、ひらひらと振られた。
「だから……
 だから、また明日ね、ダーリン」
 その言葉を最後に、二人が別々の方向に歩み去っていく。
 もしも、それを見ていたなら、その背中が震えていることに気づいたかもしれないが……
 結局それを見送ることなく、浩之はごろりと寝転んだ。
「……まったく」
 風に舞う、花びらが目に映る。
 その中に、誰かの笑い顔が見えた気がして――
「お節介なんだよ……」
 そう吐き捨てて、浩之は目を閉じた。
 顔に当たる桜の花弁が、眠気を誘う。
 ――そんな、三月の昼だった。


 BAD ENDING……?


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2の場合:

「わたしも……好きだよ」
 目を伏せたまま、あかりが告げる。
 驚きと、喜びと、寂しさと。
 それらが混じり合った複雑な表情を浮かべるギャラにも気づかず。
 そして、あかりの言葉は続けられた。
「だって……わたしたち、友達でしょ?」


 ぴぱしっ!


 瞬時に石と化したギャラに、巨大なひびが走る。
 それにもやっぱり気づかないまま、あかりは決定的な一言を放った。
「ギャラちゃん……橋本先輩と、お幸せにね」


 ずがばしっ!!


「それじゃ、浩之ちゃんが待ってるから……」
 たたた、と軽い音を立ててあかりが走り去る。
 後には、ただ砕け散った石の欠片と。
「……哀れな奴……」
 木の陰で涙する、橋本の姿だけがあった。


 そして、五年後……
「浩之ちゃん、浩之ちゃん!」
「あかりぃ……大学生にもなって、浩之ちゃんはよせって」
「あ、うん……そうだ、そんなことより、これ見て!」
「ん? なんだ……葉書か?」
 あかりから渡された葉書を裏返す。
「げ……」
「結婚かぁ……羨ましいなあ……」
「……」
「ね……浩之ちゃん。わたしたちも、いつか……」
「こういうのは嫌だけどな……」
 夢見るようなあかりの横で、げんなりと呟く浩之。
 その手に握られた葉書には、「私たち、結婚しました」の文字と――


 幸せそうに微笑む、二人の花婿の姿があった。


 HAPPY ENDING.(断定)


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3の場合:

「天翔熊閃!」
「はああああああああああっ!?」
 緊張に耐えかねた身体が、思わず奥義を放っていた。
 悲鳴をあげて、ギャラの身体が吹っ飛んでいく。
「あ……ご、ごめんなさい!」
 はっと気づいて声をあげたが、時既に遅く。
「卒業記念のシャインスパーーーク!!」
「ぎおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!?」
 通りすがりのジンの必殺技に巻き込まれて、ギャラの身体は視界の彼方に消えていた。
 さすがに、あかりの頬に冷や汗が流れる。
 だが。
「……まあ、いいかな?」
 死んだりはしないだろうし。
 あっさりとそう判断して、あかりは帰ることにした。
 ……まあ、世の中、そんなものではある。


 一方、吹き飛ばされたギャラは。
「はあっ……はあっ……さ、さすがに死ぬかと思いました」
 ぼろぼろになりながら、瓦礫の中から這い出ていた。
「それにしても……」
 今の一瞬。
 あかりの必殺技を喰らった瞬間を、思い出す。
 ジンのロケットパンチにも、ハイドラントの光熱波にも、岩下の炎にもなかった感覚。
「あれはいったい……」
「ついに目覚めたかっ!」
 瞬間、日が陰る。
 見上げたギャラの目に、忍装束に身を包んだ大柄な身体が映った。
「秋山さまっ!?」
「見事だ、ギャラよ!」
 腕を組んで木の上に立ったまま、秋山の双眸から涙が流れる。
「愛する者に打たれる快感! それが、それこそが真の愛だっ!!!」


 ずがーーーん!!


 稲妻のSEが鳴り響く!
「こ、これが……真の愛!」
「そうだっ!」
 くわっ!
 秋山の目が見開かれる!
「よくぞ悟った、我が弟子よっ!」
「し、師匠!!」
 ギャラの目からも、滝のように涙があふれ出す!
「よしっ、ギャラよ! もう一年、学園で修行を積むぞ!」
「で、ですが! 私はもうそつぎょ……」


「留年だっ!!」


 ずががががーーーん!!


 秋山の背後に、一際高く炎が燃え上がった!
「俺を見ろ! 留年など、何恥じることもないわっ! それよりも真の愛を極めることが
 人生の大事と知れぇ!」
「は、ははっっっ!」
「そも、梓や神岸に殴られながら一年が過ごせるのだぞっ! ここで何を躊躇うというのかぁ!」
「あかり様に……ぎょ、御意っ!」
 ギャラの目に、恍惚とした光が浮かぶ。
 そして!
「ならば、行くぞ! まずは、その卒業証書を突き返してくるのだっ!!」
「御意にございます、師匠!」
 二人の男は、風と化して校舎へと駆け抜けた。
 ふと、いつの間に師弟関係が出来たのかなーという疑問が脳裏に浮かんだが、その場の
雰囲気は、そんな疑問を消し去るに十分な力を持っていた。


 そして。
「魔法老女セバスゥナガセ改め、マゾっ娘セバスゥちゃん惨状です!」
「来るな触るな近寄るなああああっ!」
「ぬうっ、梓! そっちばかりでなく、俺にも一撃!」
「来ないでぇぇ!」
「ぬはあっ! あかりさま、ようございますぞぉ!」
 今日も、りーふ学園に阿鼻叫喚の悲鳴がこだまする。
 二人の変態を、中心として。


「ぬははははっ! このセバスゥナガセ、真の愛に目覚めましたぞぉっ!」


 NEVER ENDING……

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いやはや、一発ネタのはずが妙に長くなってしまったギャラでございます。

何やら恋愛趣味レーションというより未来編風味ですが、まあ卒業式ネタがやりたかった
もので(笑)
「あかりと結ばれる」選択肢がないあたりが私らしいとゆーか何とゆーか。
本当はもうちょっとSS使いの方が出せるとよかったんですが……

それでは。