Lメモ異聞録vol.2「Foolの悩み事相談室」(およびおまけ超駄文) 投稿者:悠 朔
「それで、悩みって何です?」
 学園の近くの喫茶店。
 悩み事を打ち明けるにはどちらかというと周囲が明るすぎる嫌いがあるが、打ち明ける
当人は別に気にしてはいないようだった。
 放課後。
 授業から開放されたという気分が生み出す気だるい雰囲気。
 その雰囲気とはどこかミスマッチなこの喫茶店。
 落ち着いた雰囲気と流れる荘厳なバックミュージック。
 格調高い調度品の数々。
 どこか浮世離れ、現実離れした店の雰囲気に、Foolは落着かない面持ちを崩せないでい
る。
 しかし相談したい事があると呼び出したその人にとっては馴染みの店であるらしい。
 悠然と紅茶を口に運び、その味わいを楽しみながら目を細めている。
 これではどちらが悩みを相談しようとしているかわからない。
「あのさ……」
 このままでは埒が明かない。
 そう思って口を開こうとしたところで、相手の女性の瞳に憂いが走った。
 何故か判らないままに、口を開いたその姿のまま固まってしまうFool。
「実はねFool。最近わたし、つけられてるみたいなの」
 ・・(音声はプライバシー保護のため変えられています)・・


「Foolの悩み事相談室」


「つけられてる? それで……」
 『心当たりは?』と聞こうとして、Foolはそれを思いとどまった。
 心当たりなど考えなくても判る。
 まずは容姿。
 文句無しに美人だ。
 やや吊目がちなところは可愛い系を好む人々から敬遠されるかもしれないが、彼女の纏
う明るく元気な雰囲気がそれさえもチャームポイントに変えてしまっている。
 プロポーション。
 色気に欠ける制服の上からでもほぼ完璧である事が知れる。
 それは先程紅茶を運んできたウエイトレスが羨望の眼差しを向けた事でも、おそらく証
明されているだろう。
 彼女がそのプロポーションを保つための努力を何もしていないと知ったら、どれだけの
女性が殺意を向けるだろうか?(特に千鶴さんとか……)
 その姿に、付け回す犯人が劣情を抱いたとしてもなんの不思議も無い。
 それに加えて彼女の家庭はかなりの資産家だ。
 営利目的の誘拐。
 ならば刑事事件に発展する可能性すらある。
「すぐ警察に相談した方が……」
「え? 警察? ……そうね。でも……」
 頭の良いこの娘がその可能性に気付かないはずがない。
 しかし彼女は警察への通報を躊躇した。
 その理由にもFoolはすぐに気付いた。
 "大企業の令嬢、変質者に付け回される"
 ……マスコミに知られたりしたら、どう考えてもイメージはマイナスだ。
 できれば表沙汰にしたくないのだろう。
 でなければ相談を受ける理由がない。
 風紀委員の指揮下にあるとはいえ、いやそれだからこそ、切り込み隊は遊撃部隊として
機能する事もまた可能だ。本来の任務は暴動鎮圧だが、ここで世間の風紀を正すのも一興
だろう。
「わかったよ。俺と保科さんでなんとかする。……それでどうしよう? しばらく護衛に
でもついたほうがいいのかな?」
「え……そういうんじゃなくて、それとなく注意してくれないかな」
 別にわたしはそういうの特に必要ないし。
 そう言ってその女性は握り拳を作って見せる。
 確かに彼女の格闘の腕、そして魔法を使えば、大抵の者は倒せるだろう。
「注意って言われても……とりあえずは犯人を捕まえないと」
「あれ? 言ってなかったっけ? 犯人は判ってるのよ」
 Foolは目を丸くして相談を持ち掛けた相手を見詰めた。
 ・・(キャラクターの性格、喋り方、設定と、Foolさんの友好関係からこの女性が誰
 なのか解りそうなものかもしれませんが、プライバシー保護のため音声は変えられて
 います)・・

「あなたもよく知ってるはずだけど、一人はハイ……」
「わー! わー! わー!」
 慌てたように両手を振るFool(別に洒落のつもりはない)。
「なによ?」
「どこで誰が聞いてるかわんないし、誤解の可能性だってあるから実名を出すのは避けた
方がいいと思うんだけど」
「そう? じゃあ特徴を言いましょうか?」
「そうして下さい」
 彼女の語ったところによると犯人は二人。
 それぞれが協力している姿勢は見られず、どちらかというと反目しているらしい事が数
回の喧嘩騒ぎから推測される。
 ただ、二人とも彼女の行く先々で現われるため、何人かのグループで追い掛け回してい
る可能性もあるようだ。
「じゃあ一人目ね。身長は平均より5cmほど高い程度。ちょっと痩せ型。いつも黒系統
の服を着てるわね。黒いコートとか、シルクハットをかぶってる事もあるわ。でも一番の
特徴は、左手が義手だってことかしら」
 Foolの顔に青い縦線が入った。
「性格は悪い意味でマイペース。人の話は聞かないし、話に脈絡もないわ」
 聞くまでもない事であった。
「もう一人は身長180くらい。やや痩せぎみ…かしら。背が高い以外は特に特徴と呼べ
るような所はないんだけど、白衣が好きみたいでよく着てるわ。理由を聞いたら洗濯が楽
だからって言ってたけど」
 確かに特徴としてあげるには決め手に欠ける。
「他には……何かないかな? それだけじゃちょっと……」
「そうね……」
 その女性はしばらく顎に手を当てて考えていたが、
「そういえば、あなたと同じでガンマニアのはずだけど……話した事ない?」
 ガンマニア……。
 ――誰だろうか?
 Foolには思い当たる人物が一人いる。
 しかし彼はそういう追っかけやストーキングという行為とは縁遠い人物に思える……。
「まさかとは思うけど…beaker?」
 実名は伏せておいた方がいいと自分で言っておきながら、思わず名前を出してしまう
Fool。
 だが、幸いな事に正解ではなかった。
「ハズレ。ゆーさくのことよ」
 ――ゆーさく? ゆーさく……ゆーさく……ゆーさく!?
 数回その名前を繰り返し、Foolは愕然とした。
「え…SS使い……二人ともSS使いじゃないか!」
 ・・(くどいようだがプライバシー保護のため…以下略…)・・

 一方その頃。
「ハイドラントに葛田? こんな所で何をしている?」
「よう敵!」
 葛田は悠朔を認めるや、勢いよく片手を上げそうのたまわった。
「……私は別に、お前と敵対した覚えはないんだがな」
 少々うんざりした表情を浮かべる悠。
「導師の敵は俺の敵だ!」
「なるほど……ダーク十三使徒だったか? 貴様が組織していたのは」
 それなりに納得はしたものの、悠は葛田を無視してハイドラントと話す事にした。こう
も敵対心を表に出されてはイマイチ話しにくい。
 だがハイドラントは普段ならば普通に話す事が難しい相手ではない。要は相手の話を聞
かず、自分の言いたい事を言っていればいいのだ。その中でたまにまともな返答が返って
くるからそれを拾い上げればいい。
「そうだが?」
 ハイドラントが平然と答える。
 珍しく今日は普通に会話が出来そうだ。悠はそう判断した。
「このすぐ先に旨い紅茶を出す店がある。おごるから一杯付き合え。組織の運営について、
少々聞きたい事がある」
「フン! 導師が貴様なんかと付き合うと思ってんのか? ね、導師?」
「よかろう。案内し給へ。手前味噌でよいのなら、だがな」
 吠える葛田の期待を裏切り、あっさりそう答えるハイドラント。
「え? あの、導師?」
「いいのか? 今日は……」
 誘っておいて、逆に困惑する悠。
 ――会うたびに思うんだが、もしかして俺相手にされてないんだろうか?
 こちらが敵意を剥き出しにしていれば対応はガラリと変るのだが、普段どうかと言われ
れば、特に他と差はないように思える。
「どうした?」
「いや、またガセネタに踊らされただけのようだ。……それじゃ行こうか。こっちだ」
 後に残された葛田は呆然と去りゆく二人を見送っていたが、正気を取り戻すと二人を追
いかけて駆け出した。
 手に持った手紙を敬愛する導師に手渡すために。

「なんだ? それは」
「ダーク十三使徒からの報告書だ」
 葛田から受け取った封筒を無造作に破り開きながら、ハイドラントは答えた。
 ――まぁいいけどね……。俺が横から覗き見る事とか考えんのか? こいつは。
「ん?」
 手紙を読み進むうちに、ハイドラントの顔色が変った。
「どうした?」
「……読め」
「いいのか?」
「いいから読め」
 悠は躊躇したが、ハイドラントは差し出した手紙を引っ込める気はないようだ。
 本人が良いと言っているのだから断る理由は特にない。
 手紙を受け取り、目を通す。
「こ、これは……」
 目的地の喫茶店はもう目の前。
 そしてその喫茶店から、ちょうどFoolと例の女性が出てくるところだった。

 Foolは頭が痛かった。
 SS使い。
 強者、キワ者が揃う試立Leaf学園の中でさえ、その存在は恐れられ、畏怖される存在
だ。
 特に戦闘技能に秀でた者の破壊力は想像を絶するものがある。
 ――それが二人……。
「それじゃよろしくねFool」
「これからどうすんだ?」
「わたし? 今日はお父様が真剣に相談したい事があるからって、早目に帰るように言わ
れてるのよ」
「なるほど。それじゃまた明日」
「じゃあね!」
 花が咲いたような笑顔をFoolに向けて、その女性は去って行った。
「よろしくって言われてもなぁ」
 姿が見えなくなったところで、Foolは盛大に溜め息を吐く。
 気が重いのはどうしようもないが、友人としてこの依頼は是非とも果たしたい。
 ――話せば解ってくれるだろ。
 楽観的すぎるかもしれないが、取りあえずそう思えば少しは気分も楽になる。
「さ、帰るか……」
 そして、振り向いたその先に、彼らは居た。

 ――いつから居たのだろうか?
 二人はFoolを睨み付けたまま、微動だにせずに佇んでいる。
 ――どうすればいい?
 さっき決めた事だ。話せば判ってくれるだろう。
 ――ほんとにそうか?
 ここで無視を決め込む事は簡単だ。
 けれど、それでは状況は改善されない。なにより『何とかする』と約束した。その約束
を破るような事はできない。
『例えば姉さんとショッピングしてる時とかに会って、挨拶して別れるでしょ。その後ち
ょっと混んでる喫茶店に入ったら相席になるとか……。姉さんを呼びにオカルト研に行っ
たらそこい居るとか。一度や二度なら偶然かなって思ったけど』
「3度偶然が続けば、その偶然は偶然じゃない」
 Foolはさっき喫茶店の中で言った言葉を、もう一度繰り返した。
 覚悟を決める。
 こういう緊迫した空気には脱力ギャグでもかましたい気分になるが、自分だけの事では
ない。
「君たち、彼女の後を付け回すのは止めてくれないか?」
 その瞬間、二人の脳裏に二つの情報が交錯した。
『志保ちゃんニュース! 例のお嬢様、ついに愛の告白か! 私が苦心して入手した情報
によると……』
『導師へ。――様のことなのですが、今日なにか重要な相談事があるとかで、大切な方と
会うという情報が入っております。それが誰なのかは確認出来ませんでしたが恋愛関係に
ついての……』
「気砲暗黒通!」
「封神九十九式滅光流星乱舞!」
 勘違いから来る嫉妬に狂った男達は、日ごろのいがみ合いからは想像出来ないほど見事
な連携攻撃を繰り出した。
 己の持つ最強クラスの攻撃方法で……。
 無残になったFoolさんに……合掌。

 後にハイドラントや悠朔と行く先々で出会ったのは本当にただの偶然であった事が判明。
 しかし大事な友人を襲撃した咎により、彼女は1週間彼らと口をきかなかったらしい。

「悠ぁぁぁ!! 貴様のせいで嫌われちまっただろうがぁぁぁ!!」
「やかましい! 貴様も便乗した結果だ! 俺だけのせいにするなぁぁぁぁ!!」
 私刑執行三日目にして、ハイドラントと悠朔が涙を流しながら校庭で激しく争うのが確
認されたとか、されなかったとか……。
                                  「おしまい」

======++++++======
 ☆Fool様の作品『鈍色の青い春』爆笑記念(って随分前の作品だぞ)☆
「主よ。SS使いの方々は、私が書くと大抵、ほぼ間違いなく不幸になりますこと。Leaf
のキャラクターが一人(一応二人か? でも片方名前最後まで伏せたしな)しか登場して
いない事を、お許し下さい」
 などと殊勝な事ほざいても信仰心が毛ほども存在しない身では、ありがたみがありませ
んな。
 しかし……我ながらアホなネタをよくここまで引っ張ったもんだ。
 特に犠牲となったFool様。言葉遣いが変だったり、俺こんな性格じゃない、という感想
を抱いたら……申し訳ありません。笑って許したって下さい。

>「Lメモ俺的外伝5『…何があった、俺?』(ホントにな)」前・後編
                                ジン・ジャザム様
 アトミック・バズーカ回避成功!(1だと思った)
 >薔薇もまた良し!! 
 ……こないだEDGEさんの猛威に晒された。凄い人だと思った。
 数学的詭弁は数学的に説明出来る気がする。とくに『アキレスと亀』。この理論は微分
を永遠に繰り返す結果だから、時間間隔は限りなく0に近くなる。数学ではある一定量以
下は0と見なす事が出来るハズだから、つまりミサイルは必ず君に追いつくのだよ空君!
 救いになってない?
 3本目……ジンさん……貴方は本当に硬派か? 途中からしっかり女言葉になっている
気がするのは私の気のせいか?
 しかし……柳川の猛威から30行ほどで復活を果たすとは……。見た瞬間死にそうにな
ったよ私は……。

>「Lメモ私的外伝追憶編(今回は少しダークで真面目な話)」 きたみちもどる様
 あう。お、重い。でもある意味(ほんのちょっとだけ)設定私と似てる……。
 いつか押え込むではなく、受け入れられる時が来ますか?
 追記:その剣…譲る気ない?

>「Lメモ悲話・料理に優る武器はなし」 dye様 
 前半と後半のギャップが……。どうしたんでしょうね? 源一郎先生黄昏ちゃってます
よ。そういえば雅史の性格って……いくつあるの?

「『Lメモ〜健やか過去編〜』」 健やか様
 美咲の楼閣……なんか、入ったらめっちゃ切ない思いをしそうなとこですね。

「Lメモ私的英雄伝1」 春夏秋雪様
 でも浩之ってLF97じゃ無敵なキャラだと思う。
 エルクゥ持ってるし、前世はエディフェルだし、ヨークも呼ぶし、電波も使うし……。
 春夏さんが浩之を利用するだけなのか、それとも本当に友情を結んだのか、注目させて
貰いますね。

「Lメモ外伝「風上日陰過去編−黙って一発殴らせろ!」」前・後編 風見ひなた様
 ……グワァァァン。おお……。泣ける……。
 なんか「何故なんだぁ!」って叫びたくなった。
 でも現在は鬼畜……WHY?

「Lメモいんたーみっしょん2「日常、あるいは平穏な日々」」 ハイドラント様
 耕一さんを巡る争いは、いつも熾烈ですな。
>…俺達って虫けらだ…(泣)
 っていうチャットでの言葉が忘れられません(笑)
 虫けら仲間として頑張っていきましょう(乾いた笑)

「Lメモへーのき番外編5『機動姉妹の徒然日記』」 へーのき=つかさ様
1.Dガーネットさん、いったいどうやってDマルチさんを見つけたんだろう…?
2.Dセリオさんの性格って…そんなに簡単に変ってしまうの? そりゃそれで怖い…。
3.Dガーネット! 君の挑戦待ってるぞ! …御免嘘です。

「『Lメモ超外伝SP20「死に目に付き合う義理はねぇ!」』」 久々野彰様
 これを読んでいろいろ真剣に考えてしまいました。
 大した事じゃないかもしれませんし、大切な事かも知れません。できれば、次にシリア
スを書く時に、その考えた事を生かしていきたいです。
 ぎりぎり登場出来たみたいですね、私(笑)。並べられた作家陣を見て笑いました。


======++++++======
おまけ超駄文「命の刻印・その後」


  これはハイドラントさんが書かれた「命の刻印」の後日談です。あの話はあれで終わ
  った方が、あそこで終わったから良いのだと思う方。読み飛ばして下さい。実のとこ
  ろ私もそう思います。これは他の方のLメモに初めて出してもらった男が喜びにトチ
  狂った挙げ句に書き上げた代物です。


 悠朔は瞳を開いた。
 ――生きているのか……俺は……。
 ぼんやりとそう思う。
 しばらくそのままの姿勢で動かないでいた。否、動けなかったのだ。
 息を吸う。
 吐く。
 吸う。
 吐く。
 独特の呼吸が"気"を丹田に貯える。
 そしてその"気"が、傷ついた身体を癒していく。再び命の炎が息を吹き返す。
 そして悠は頭を振りながら身体を起こした。
 ――そうだ…綾香は?
 綾香は……いた。数mほど離れてうつぶせに倒れている。
「綾香……」
 意識を失っているのだろう。声をかけても返事はない。
「綾香……?」
 ふと違和感を感じた。何かが変だ。何がどうという訳ではなく、何かが。何かが狂って
いる。
「綾香!」
 握った手は冷たかった。それは生ある者のぬくもりを、すでに宿していない。
「嘘だ……」
 胸に手を当てても鼓動は感じられない。
「嘘だ!」
 首から胸元までの大きな裂傷。そこから流れ出た血液の量。これだけ失血して、人は生
きてはいられないと、冷静な頭が無情に告げる。
「嘘だ! 嘘だ! 嘘だぁ!!」
 喚き散らす。
「返事をしてくれ! 嘘だと言ってくれ。綾香ぁ!!」
 彼に出来たことはただ、涙を流す事だけだった。

 ――何故俺達を裏切った? ハイドラント……。
 裏切り……だろうか?
 ――何故綾香を殺しておいて、俺を殺さなかった?
 答は簡単だ。彼はこれで綾香を手に入れた。
 もうこれで他の誰にも――例えばお前だ――彼女を奪われる事はない。
 ――そして殺さなかったのは、恐らく俺に無力感と絶望を与えるため……。それとも、
あいつにとって俺は殺す必要もないほど取るに足らない男だったのだろうか?
 お前は心の何処かで、奴を信じていたのだろう。
 それは愛する者を同じくした者同士の共感だったかもしれないし、綾香が時折見せる彼
に対する信頼に感化されての事だったかもしれないが。
 ――それでも俺は、あいつなら綾香を守れると…そう思っていた……。認めないと叫び
ながら、心の何処かで彼なら…と。

 ハイドラントがあの後どうしたか、どうなったのかは私は知らない。
 調べたとしても答えは出なかっただろう。
 それに綾香がいなくなった今、私にとって彼はどうでもいい存在だ。
 敵討ちを考えなかった訳ではないが、そんな事をしても綾香が喜ぶとはとても思えなか
った。むしろ怒るだろう。
「そんな無駄な事してんじゃないわよ」
 と。
 涙がまた頬を伝って、床に流れた。

 私は寮の自室を整頓し終えると、一度だけ学園を訪れた。
 ダーク十三使徒の仕業だろうか? 所々崩れた校舎を見上げる。
 なんの感慨もわかなかった。
「まずはSS不敗流だな……。そして次が……」
 ――次? 次などあるのだろうか?
 それこそどうでもいい事だ。生き残ってから考えればいい。SS使いに喧嘩を売り歩く
など正気の沙汰ではないのだから。
 もう一度校舎を見上げ、そして悠は歩き出した。
 ――もう一度ここに帰ってこれたなら……そうしたら、私は愛する者を守る力を得てい
るだろうか?
 そんなことを考えながら。
                                      END