Lメモへーのき番外編9『Dシリーズの観察記録』  投稿者:へーのき=つかさ
────────────────────────────────────────
<G箱>
────────────────────────────────────────


「待ちなさいっ!」
「待てるかぁぁぁぁぁぁ!!!」

 ある日の放課後、YOSSYFLAMEは広瀬ゆかりに追われていた。
 道ゆく生徒達はYOSSYの悲鳴を聞いて一瞬振り返るが、広瀬の姿を見とめると「ああ、ま
たいつもの事か」と興味を失い去ってゆく。

「2年の女子更衣室を覗いた罪は大きいわよ!」
「違うっ! 俺が覗いたのは1年……って、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 思わず事実をぶちまけてしまうYOSSY。

「今日という今日は、鎖でがんじがらめにふんじばって反省房に蹴り込んでやるわよ!」
「いやじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 YOSSYは逃げる。
 ひたすら逃げる。
 広瀬も必死で追うが、流石は鬼のような俊足を誇るYOSSY。
 ふたりの距離は目にみえて離れてゆく。

(このままじゃ逃げられる…!)

 広瀬はなんとかYOSSYの足を止めようと辺りを見回す。
 すると、ちょうど廊下をのてのてと歩いて(?)いるDボックスが目に入った。

(ちょうどいいところに!)

 広瀬はDボックスを掴み上げ、投球フォームに入った。

「モチアガッテマス、モチアガッテマス」
「ごめんねぇ〜 怨むんならYOSSYを怨んでね☆」
「ちょっと待て! なんで俺を…」

 YOSSYが思わず立ち止まって振り返ってしまった。
 その隙を逃さず、広瀬は華麗なフォームでDボックスを投げつける。
 女優の演技力炸裂。

「ピッチャー投げました! それぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 唸りをあげ、DボックスがYOSSYに迫る。

「トビマス、トビマス」
「どわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 ガツンッ!

 着弾、そして…

 ちゅどぉぉぉぉぉぉぉぉん!!!

 爆発

「……って…」
 もうもうと立ち込める爆煙を前に、広瀬の額に一筋の汗が流れた。
「なんでいきなり爆発するのよっ!」
「──まあ、自爆装置がついてますから」
「わわっ!?」
 いきなり後ろから話し掛けられ、広瀬はザザッと飛び退いた。
 そこにいたのは、ご存知破壊の女神ことDセリオ。
「──自爆装置がついてるんですから、爆発したりしても何の不思議はありませんよね」
「そ、それはそうだけど……あれってあなたの同僚でしょ? いいの?」
「──大丈夫です。ホラ」
 広瀬はDセリオの視線を追う。
 だんだんと晴れていく煙の中心、そこには…

「ヤレヤレデス」

「なんで無事なのぉぉぉぉぉぉぉ!?」
 Dボックスが、平然と佇んで(?)いた。
「今爆発したわよね? 木っ端微塵に爆砕したわよね!?」
「──しましたよ」
 平然と返すDセリオ。
「ならなんで…」
「──簡単な事です」
 Dセリオがぴんと人差し指を立てる。
「──理論的には金太郎飴と同じなのです。どこで、何度切っても同じ顔」
「んな原理があるかいっ!」
 思わずマジツッコミを入れてしまう広瀬。
「──でもちゃんと機能してますし…」
「原理を言いなさいよ! 原理を!」
「──原理?」
「どういうメカニズムで再生してるの!? ちゃんと説明してよ!」
「──えっとですね…」
 手を組み、心持ち顔を上に向け天井を見詰める。
「──…」
「………」
 そのまま、時間だけが過ぎてゆく。
 ややあって。
「──アレ?」
「アレ? ……じゃなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!」
 とうとう広瀬がキレた。
 ジャブ、ジャブ、ストレート。
 懐に入ってボディーブロー。
 とどめは顎へのアッパー。
 まともにくらったDセリオは、ひゅるるるる……と吹っ飛び、頭から地面にぽてりと落ち
た。
「──何するんですか」
 地面に倒れたまま上半身だけを起こし、意識的では無いだろうがしなを作り顎に手をあて
るDセリオ。
「うるさいわねっ! もう私は帰る!」
 広瀬はズシズシと大股で去って行ってしまった。
「──怒られてしまいました……まあいいです。Dボックスさん、帰りましょう」
「カエリマショウ、カエリマショウ」

 そして、その場には誰もいなくなった…



「お、俺の存在を……忘れる…げはっ」
 全治1週間。



────────────────────────────────────────
<∀〜〜〜!>
────────────────────────────────────────


 朝起きると、ヒゲが生えていた。

「──って、なんでヒゲがっ!?」

 Dセリオは鼻の下に手を伸ばし、それを触った。
 硬かった。
 白かった。
 三日月型だった。
 つまり、世間一般で言うところの∀ヒゲだった。
 どこから見ても、ヒゲだった。
 誰が見ても、ヒゲだった。
 見紛う事の無い、見事なヒゲだった。
 彼女はそれを、ヒゲと認めざるを得なかった。
 しかし、紫でなかったのが幸いだった。
 紫は、ヒメカワの色だからだ。
 ヒゲな上にヒメカワだったら、大変だ。
 何故なら、ヒメカワはアフロに抵抗を感じないからだ。
 つまり、ヒゲアフロだ。
 そう、ヒゲな上にアフロなのだ。
 しかもヒメカワなのでヒゲもアフロも紫だ。
 そんな恐ろしい事に耐えられるであろうか、いや無い。

「──ああっ!? 何ワケの分からない事を冷静に考え込んでるんですか私はっ!」

 どうやら少し錯乱しているらしかった。
 これではいけない。
 Dセリオはベッドから立ち上がり、壁に向かって大きく深呼吸した。

 すぅ〜っ、はぁ〜っ、すぅ〜っ、はぁ〜っ、

「──よし」

 鏡を見る。
 ヒゲはまだ付いていた。
 あたりまえの事であるが。

 とにかくこのヒゲをなんとかしなくてはならない。
 このままではこの部屋──武器庫兼隊長室から出る事ができない。
 それでは困る。
 Dセリオは考えた。
 邪魔なヒゲはどうすればいい?
 剃ればいい。
 だったらこのヒゲも剃ればいいのでは?
 しかし、このヒゲは剃るのにはあまりにも硬すぎた。
 ではどうする?
 ひっこぬいてみるか?
 両手をヒゲに沿える。
 そして、引っ張った。

 さくっ

 手が切れた。
 幸いな事に、表皮が浅く切れただけで内部への損傷は無かった。
 さすがホワイトドールをホワイトドールたらしめているヒゲ。
 一筋縄ではいかないようだ。

 困った。
 彼女は手と足を組んでベッドに座り込んだ。
 もう一度鏡を見て、そもそもどうしてヒゲが生えたのかという疑問が思い浮かんだ。
 そう、何故ヒゲが生えたのか。
 もともとヒゲは、センサーやシールドとして生物達が生み出した器官だ。
 もしかして、このヒゲは何かのセンサーなのだろうか?
 環境に適応するため進化したのだろうか?
 もちろんロボットがそんな進化など起こしたりするはずはないのだが、この時の彼女は
冷静なようでいて、実はオーバーヒート寸前のマジでブキチレ5秒前な状態でまともな思
考ができていなかったのだ。
 良く見ると目がドロリと濁っているようにも見えるし。

 パタン

 突然、戸が開いた。
 鍵がかかっていなかったようだ。
 そこにはDガーネットが静かに佇んでいた。
 もちろん、鼻の下にはヒゲ。

 その姿を見て、Dセリオは安堵の息を漏らした。
 自分だけではなかったのだ。
 そして、一緒だという安心感から頬が緩み…

 ぷるぷるぷるぷる

 ヒゲが回った。

 ぷるぷるぷるぷる

 目を再びDガーネットに向けると。

 ぷるぷるぷるぷる

 彼女のヒゲも回っていた。

 ぷるぷるぷるぷる

 回っている。
 ヒゲが回っている。
 白くて三日月型の硬いヒゲが回っている。

 Dセリオは、なんとなく幸せな気分になっていた。
 そしてこの回転は、なかなか表に出てこないので不信がった警備保障アルバイト達がこ
の部屋に踏み込んでくるまで続いた。


 なお余談だが、実はこのヒゲは柳川がジンのパワーアップパーツとして開発した『人工
頭脳搭載全自動扇風機兼ジューサー兼たらいに水を張れば洗濯機にもなる鋭いヒゲ君スペ
シャル』である事が判明。
 ジンが装着するのを嫌がったため、倉庫に適当に突っ込んでおいたのが野性化して逃げ
たの事。
 もちろん、被害に遭った全校のロボット、サイボーグ達が決起したのはいうまでもない。
 後年、『ムーンレイスの惨劇』と呼ばれる戦いの始まりであった。



────────────────────────────────────────

−後書き−

 HM…
 人間──主に少女の姿をしたロボット達。
 彼女達は普段何を考えているのだろうか?
 自分達を作り上げた人間達を、どのように思っているのであろうか?
 私達人間は、彼女達をどのように思っているのだろうか?
 道具? 召し使い? 伴侶?
 愛する者? 憎むべき者?
 どうすれば知る事ができる?
 頭の中を覗けばいい?
 どうやって?
 彼女達は学習する。
 物と、人と、動物と、
 触れ合う事で、無限に近い多様な『人格』を得る。
 できるであろうか?
 そのような、複雑に絡み合った記憶を手繰っていく事が。
 たとえ記憶を引き出す事ができたとしても、それらがどのように『人格』に作用してい
るか、わかるであろうか?
 不可能だ。
 それは、人の脳を解析するのと同義だ。
 人の頭の中を覗き、理解する事は不可能だ。
 覗くだけならできるであろう。
 最新の機器なり、電波なりを用いれば。
 だが、『理解』できるか?
 断片的に得られた情報だけで、その人物の心を真に理解できるか?
 できないであろう。
 では、彼女たちを理解する事はできないのだろうか?
 所詮は創造主と創造物の関係なのだろうか?
 否。
 直接見る事はできない。
 だが、想像する事はできる。
 彼女達の行動を観察する事で、彼女たちと触れ合う事で。
 私達はHM達と共に暮らしている。
 彼女達と助け合って暮らしている。
 難しく考える事は無いのだ。
 普通に、人間と同じように付き合っていえばいい。
 私達が誠意を持って当たれば、きっと彼女達も誠意で返してきてくれるはずだ。
 まだまだ書き足りないが、紙面も尽きたようなのでこのあたりで切り上げる事にする。

 この物語が、彼女達を知るための手助けになる事を願って…

                           Written by Tukasa He-noki



Dセリオ「──なんですかこれは?」
へーのき「る〜る〜る〜」
Dマルチ「──ロボット工学の授業のレポートだそうです」
Dセリオ「──これが?」
へーのき「こばえ〜、こばえ〜」
Dマルチ「──ちなみに、ここ3日間寝てないそうです」
Dセリオ「──…」
Dマルチ「──…」
Dセリオ「──これは……単位落としますね」
Dマルチ「──そうですね」
へーのき「志保15枚目〜」


────────────────────────────────────────

−本当の後書き−

 オレ、何書いてるんだろう…(笑)
 別に黄色い救急車のお世話になったわけではなくて、ただ単に思いつくまま書き綴った
だけなんです。
 ……って、なんでこういう事が思いつくかな? 意味不明だし。