Lメモへーのき番外編4『来栖川警備保障新人研修の巻』後編 投稿者:へーのき=つかさ
「OLHさん、OLHさん・・・」
 何処からともなく自分を呼ぶ声が聞こえる。
 暖かく優しい、少女の声
「起きてください・・・」
 頭の後ろに、すべすべとした柔らかい感触がある。
 自分が今、どんな状況にあるのかは分からないが、なんだかとても心地よかった。
 すりすりすり・・・
「あ、あの・・・」
 頭をこすり付け、その感触を堪能する。
「そんな・・・」
 そのまま、両手を広げて暖かいものを抱きかかえる。
「や、やめてください・・・」
 そして・・・

「だ、駄目ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

「はっ!?」
 少女の叫び声に、OLHは正気を取り戻した。
「お、俺は一体何を?」
 四つん這いになった自分、そして、その下には自分に組み敷かれた琴音の姿・・・
 琴音は真っ赤な顔をして、目には溢れんばかりの涙を溜めていた。
「???」
 いきなりの展開に、何がどうなっているのか分からないOLHは、まだぼーっとしている頭で
必死に考えた。
 そして、その結果出た答は・・・
「これは夢だ」
「え"・・・?」
 琴音の顔がひきつる。
「なんの脈絡もなく琴音ちゃんと愛し合っているなんて事があるわけない。だからこれは夢だ!」
 言い切るOLH
 ちなみに、この状態を『愛し合う』と言っていいのかははなはだ疑問だ。
 普通は『襲う』とか言う。
「だから琴音ちゃんに(18禁)しても(検閲済)しても全然オッケェェェェェェェェェ!!」
「きゃああああああああああああああああ!!!」

 ブンッ!

 その結果サイコキネシスをまともにくらい、OLHは頭から壁に突っ込む事になった。
「痛い・・・夢じゃなかった・・・」
 だくだく血を流しながら、やっと気付くOLH
 マイペースもここまで来ると困り物だ。
「ひどいですOLHさん、折角介抱してあげたのに・・・」
 琴音はとうとう声をあげて泣き出した。
「ご、ごめん琴音ちゃん! 俺が悪かった〜〜〜〜〜!!」


「ところで琴音ちゃん。俺を介抱してくれたって言ってたけど・・・」
「はい?」
 OLHの必死の謝罪で、琴音は泣きやみ、落ち着きを取り戻していた。
「俺がどうしてここで倒れてたのか知らない?」
「え? 自分がどうして倒れていたのか知らないのですか?」
 さっきのちび琴音×20は精神的にかなりのショックだったらしい。
 彼は美術室に入ってからの事を綺麗さっぱり忘れていた。
「私は・・・学校に忘れ物を取りに来て、ここを通りがかったらOLHさんが倒れているのを見つけ
たんです」
「そうか・・・俺が倒れた原因は見てないのか・・・」
「すみません、お役に立てなくて・・・」
 心底申し訳なさそうな表情で俯く。
「いや、琴音ちゃんは悪くない。それより、琴音ちゃんが不審人物役じゃなくて良かったよ。もし
そうだったら倒さなくっちゃいけなかったからな」
「実は私もDセリオさんに誘われたんです。でも断りました。そういう事は苦手なので」
「・・・・・・・・・」
(OLHのDセリオポイント−80)


「じゃあ、俺は行くから。琴音ちゃん気をつけて帰るんだぞ」
「大丈夫です。いざという時はテレポートで逃げますから」
「そう? じゃあまた・・・」
 OLHは手を振ると、榊とへーのきを探しに廊下へと消えた。
 美術室には、琴音がひとり残された。
「さてと、私は早く卵を探さないと・・・一体どこにいっちゃったんだろう。20個ぐらいあった
はずなのに・・・」

                    ★★★

「ふう・・・助かった・・・・・・もう少しで薔薇の道に引きずり込まれるところだった・・・」
「流石だね、へーのき。セバスチャンを倒すなんて・・・」
「や、やあ、佐藤君・・・」
「ふふっ、他人行儀だなあ。僕のへーのき」
「オレは物になった覚えはない!」
「冷たい事いうなよ。さあ、一緒に楽しもうよ」
「いい加減にしろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 ぐしゃっ!!

                    ★★★

 OLHは、榊とへーのきを探して三千里していた。
「どこ行っちまったんだ・・・」
 その時、何処からか叫び声が聞こえて来た。
「榊か?」
「うわああああああああああああ!!」
 廊下の向こうから、芹香を抱えた榊がドタバタと駆けて来た。
 ちなみに、がくがく揺さぶられている芹香は既に目を回している。
「何やってんだあいつ・・・」
 呆れた顔でその様子を眺めていたOLHだったが、榊の後ろに巨大な炎を見て青ざめた。
『ご主人様を離すにゃ〜〜〜!!』
「エーデルハイド・・・?」
「あっ、OLHさん! 助けてくださ〜〜〜い!!」
 よく見ると、榊は体の至る所から煙を噴いている。
 このままじゃ巻き添えを食う・・・
「くっ、ダークミスト!」
 OLHはエーデルハイドの目の前に霧を発生させた。
『こんな霧、わけないにゃ〜!』
 しかし、エーデルハイドは霧を蒸発させながら突っ込んでくる。
「ならこれでどうだっ!」
 OLHは霧を一気に冷却した。
 ダイヤモンドダストと化した霧がエーデルハイドを襲う。
『にゃにっ!?』

 ジュゥゥゥゥゥゥゥゥ・・・

『うにゃぁぁぁぁぁ・・・』
 激しい冷気にさらされ、エーデルハイドの姿がじわじわと縮んでゆく。
 不死鳥なのにどうしてダメージを受けるのかという疑問は却下だ。
 そして、その後には一匹の猫が残された。
 こちらがエーデルハイドの真の姿である。
「助かった・・・」
 エーデルハイドが猫に戻ったのを見て、榊は芹香を抱えたままへたり込んだ。
 榊がぐったりと座り込んでいると、意識を取り戻したのか、芹香がゆっくり頭をもたげた。
「・・・エーデルハイド?」
 彼女は、ぐったりと倒れているエーデルハイドを見つけ駆け寄った。
「・・・エーデルハイド、エーデルハイド、しっかりして!」
『うにゃぁ・・・』
 力なく答えるエーデルハイド。
「・・・どうして、どうしてこんな・・・」
 愛猫を抱きかかえ、芹香はOLHと榊をキッと見据えた。
「うっ・・・」
 その迫力に、ふたりは後ずさった。
「・・・誰がこんな事を」
「こいつ」
 間伐入れず、OLHは榊を指した。
「え?」
 次の瞬間、榊は紐なしバンジージャンプを初体験していた。

                    ★★★

「もう薔薇はいやだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

                    ★★★

 その後いろいろあったが、ふたりは再び見回りに戻っていた。
「あーあ、後何人不審人物いるんですかねぇ」
 榊が愚痴をこぼす。
 それはOLHも思っている事だった。
「次はやりやすい相手だといいけどな・・・」
「ヒッ!」
 OLHが答えた瞬間、近くの教室から息を飲む声が聞こえた。
「誰だ・・・」
 周りに細心の注意を配りながら、ゆっくりと教室に入っていく。
「へっ、マルチ?」
 そこにいたのは、勇ましくもモップを構えたマルチだった。
 しかし、目は涙で潤んでいるし、足はがくがく震えている。
「やれやれ、やっと楽な相手が出て来たか」
 OLHはマルチの肩に手を伸ばす。
「み、みのがしてくださいぃぃ」

 ドガシャーン

 マルチは必死にその手をかわしたが、勢いあまって後ろの机に突っ込んだ。
「大丈夫・・・?」
 榊が優しくマルチに話しかける。
「あうあう」
 マルチは慌てて起き上がると、あたふたとふたりから離れた。
「ひいぃ・・・こ、来ないでくださぁい」
 ふたりは顔を見合わせた。
 そんなに自分達は恐ろしい風貌をしているだろうか?
 確かに、OLHは服がボロボロになっているし、榊は至る所が焦げている。
 でも、それが原因ではないようだ。
「マルチ、なんでそんなに俺達を怖がるんだ? お前が大人しくしてくれれば手荒な事はしないぞ」
 OLHは、できるだけマルチを刺激しないように近づいた。
「ち、違うんですぅ」
 マルチは後ずさりながら震える声で答える。
「何が違うんだ?」
 立ち止まり、問う。
「おふたりに捕まってしまうと、Dセリオさんにおしおきされてしまうんですぅぅ」

 おしおき・・・?

 OLHと榊はその光景を思い浮かべた。
 光の入らない、じめじめした暗い地下室。
 そこで猿ぐつわを噛まされ逆さ吊りにされるマルチ
 傍らには、スタンロッド(電磁ムチ)を構えてニヤリを笑うDセリオの姿が・・・

 ブンブンッ
 ふたりは首を振ってその考えを吹き飛ばした。
 まさか・・・いくらDセリオでもそこまでは・・・
 しかしそれと同時に、Dセリオだからやりかねないという考えも浮かぶ。
 ふたりはマルチに近づけなくなってしまった。
 ファンでは無いといえ、あの優しくかわいいマルチをそんな目にあわせるわけにはいかない。
 しかし、それでは自分達の研修も終わらない。
「う〜む・・・」
 ふたりはしばらく考えていたが・・・
「「すまんマルチ! 後でセリスに助けを求めておくから〜〜〜!!」」
「きゃああああああああ!!」
 がっしりと捕まえた。
「ああぁ、つかまってしまいました・・・」
 泣き崩れるマルチ
 ふたりは耐えられずに全速力で逃げ出した。
 胸にDセリオへの殺意を秘めて・・・
(ふたりのDセリオポイント−120)

                    ★★★

「えぐっ、えぐっ・・・」
「?・・・マルチさん、どうしたの?」
「ああっ、へーのきさん。実は・・・」
「なるほど・・・・・・分かった、じゃあオレがセリオさんにいじめないように言っておくよ」
「ほんとうですか!? ありがとうございますぅ!」
「その代わりに・・・」
「え?」
「膝の上でなでなでされてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「ど、どおしたんですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「・・・・・・・・・」(なでなでなでなで)<薔薇をロリで中和中(笑)
「んふぅ、気持ちいいですぅ〜」

                    ★★★

「これで見回りは終わったかな?」
「不審人物ももういないみたいですね」
 ふたりが全ての施設を見回りおわった時、太陽は既に沈みかけていた。
「やれやれ、やっと家に帰れる・・・」
 へーのきの存在を忘れているような気がするが、今まで頑張ってきたのでいいとしよう。
「──おふたりさん、全施設の見回りご苦労様です」
 校内放送により、Dセリオの声がふたりの耳に入った。
(これだけやっといてご苦労もあるか!!)
 ふたりはひくついていた。
 でもまあ、これで帰れるのだから今日のところはよしとしよう。
 だが、それは甘かった。
「──それでは、最後の試験です」
「へ?」
 Dセリオの言葉に、ふたりは唖然とする。
 それはそうだろう、ここまで死ぬ思いをしてきたのだから。
「おいおい! 約束が違うだろ!!」
 OLHが叫ぶが、聞こえるわけない。
 それ以前に、見回りが終わったら家に帰すという約束などしていないのだが。
「──体育館に行ってください。そこの試験が突破できれば研修は終了です」


「最後の試験・・・一体どんな試験なんでしょうね」
「さあな、とりあえずとんでもない物なのは確かだ」
 ふたりは雑談で恐怖と不安を紛らせながら、体育館へと向かっていた。
 できるだけ最後の試験を先延ばしにしたいという気持ちが足を止めるが、早く家に帰って寝たい
という気持ちが足を速める。
 やがて、体育館に着く。

 ズズズズズズ・・・

 重い鉄の扉を引く。
 ふたりは慎重に体育館へ入り・・・・・・絶句した。

「「なんだこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」

 体育館中には極細のワイヤーが張り巡らされていた。
 そう、まるでクモの巣のように。
「なんなんだ、こいつは・・・」
「ちょ、ちょっとOLHさん!」
 放心しているOLHを榊が呼んだ。
「これ・・・Dマルチさんの超硬質ワイヤーですよ」
「え"・・・?」

 【超硬質ワイヤー】Dマルチの武器、極細で非常に強いワイヤー
  軽く引くだけでワイヤーソーのように物を切る事ができる。

「ちょっと待て! それじゃあうっかりこれに倒れ込んだりしたら・・・」
「首と体がさようならですね」

 ゾォ〜〜〜

 ふたりは真っ青になった。
 なんとなく、クモに襲われる昆虫の気持ちが分かったような気がした。
「あ! OLHさん、あそこ!」
 再び榊が叫んだ。
「ど、どうしたんだよ」
「見てください。あのワイヤーが一番密集してるところ」
 言われた通りにそこへ目を向ける。
「え?」
 一瞬、思考が止まったような気がした。
 そのワイヤーが密集したところは、ハンモックのような状態になっていた。
 そして、そこには赤い座布団が置かれていた。
 さらに、その上ではDマルチがちょこんと正座しており・・・
 お茶の代わりに、湯飲みに入れたオイルをすすっていた。
「・・・・・・・・・」
 のどかで微笑ましい、実に日本的な光景だった。
 周りにワイヤーが張ってなければ。
「・・・・・・・・・」
 ふたりが放心していると、Dマルチはオイルを飲み終わってほっと息をつき、湯飲みと座布団を
傍らにあった箱にしまった。
 箱をワイヤーにしっかり固定すると、光の無い目をOLHと榊に向けた。
「──それでは、最終試験を始めます」
「最終試験・・・」
 榊が息を呑む。
「──いかなる手段を用いても構いません。私とガーネットさんを屈服させてください」
「く、屈服!?」
「その前にどこにDガーネットが・・・」
 真後ろにいた。
 超硬質ブレードに手をかけ、無表情な顔で・・・
「「ぎょぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」


 ダッ!

 Dガーネットが榊に突進する。
 榊も刀を取り出し応戦しようとするが、Dガーネットのスピードは尋常ではない。
 榊は、その強さに驚愕していた。
 天明一刀流の力を持ってしても、攻撃を防ぐのが精一杯なのだ。
 嵐のような連続攻撃
 ロボットである彼女は、息もしなければ疲労も無い。
 そのため、攻撃の流れに全く途切れが無いのだ。
 彼女は普段のボケた態度からたいした奴では無いと思われがちだが、戦闘時においてはDセリオ
に次ぐ攻撃力を誇っている。
 ちなみに、戦闘方法などの必要最低限な事は直接ROMに焼いてある。
 だから忘れる心配はない。
「このままじゃやられる!」
 榊はDガーネットの大振りな横切りをギリギリでかわすと、一気に踏み込み起死回生の突きを放った。
「くらえ、牙突!!」

 スッ

 が、その横切りは誘いだった。
 Dガーネットは刀を振る勢いに任せて体を回転させ、その突きを難なくかわしたのだ。
(しまった!!)
 榊は心の中で叫んでいた。
 自分は体が伸びきってしまっていて動けない。
 だがDガーネットは、背を向けてはいるものの、すぐに動ける体制だ。
 榊はなんとか体制を立て直そうとしたが、Dガーネットの方が早かった。
 右回りに榊の方を向く。
 体は左90°に向けており、刀は鞘に納められている。
(居合いか!?)
 そう認識した瞬間、榊の意識は飛んだ。


「ダークウィンド!!」
 OLHの手から、瘴気の烈風が放たれる。
 しかしDマルチは、張り巡らされたワイヤーの上を器用に動き回り、OLHの攻撃をかわしてゆく。
(なんであいつはワイヤーの上にいるのに体が切れないんだ?)
 もっともな疑問だが、それこそがDマルチの持つ、Dシリーズ最高の頭脳と器用さの賜物である。
 彼女はすいすいとワイヤー上を走り、接近してはスタンロッドで攻撃し、すぐに離れるというヒット
アンドアウェイを繰り返した。
 一方OLHは、張り巡らされたワイヤーのためにヘタに動く事ができない。
「ダークミスト出しても逃げられるしな・・・だからってあまり大規模にやりすぎると自分が巻き込まれ
ちまうし・・・」
 もう八方塞がりだった。
 有効な手段が全く思いつかない。
 その時、何か弾けるような音がした。

 ビシッ!!

 その音と共に、OLHもまた、意識を失った。

                    ★★★

「ここは・・・?」
 榊が意識を取り戻した時、始めに目に入ったのは白い天井だった。
 どうやら寝かされているらしい。
 消毒液の臭いなどがする事から、病院かどこかなのだろう。
 少なくとも学校の保健室ではない。
 胸の辺りが痛むのを我慢し右を向いてみると、OLHが隣のベッドで眠っていた。
(無事だったのか・・・)
 安心して、再び上を向く。
 その時、不意に声をかけられた。
「──大丈夫ですか?」
「!?」
 その声に、榊はビクッと体を縮み込ませた。
「せ、セリオさん・・・」
 そう、その声の主はDセリオだったのだ。
 一瞬怯んだ榊だったが、あの非人間的な研修を思い出し、無謀にも文句を言ってやろうと彼女の方に
振り向いた。
 しかし、
「え・・・?」
 そこには、救急箱を手に、心配そうな顔で椅子に腰掛けているDセリオの姿があった。
 榊は戸惑っていた。
 少なくとも彼は、今まで彼女が人を心配しているところなど見た事がない。
 だが今、目の前にいる彼女は自分達を心配してくれている。
「──榊さん、どこか痛い所はありませんか?」
 そう言うと、Dセリオは榊の頭に手を伸ばしてゆっくりと撫でた。
「え? そ、その・・・な、無いです・・・」
 いきなりのなでなで攻撃に動揺していた榊だったが、その優しい感触を味わっているうちに落ち着き
を取り戻していった。

 なでなでなでなで・・・

「──榊さん、あなたは研修の事で怒っていますね?」
「え!?」
 図星の事を言われ、榊は固まった。
「──あなたはひどい研修だと思ったでしょう。でも、私はあなた達ならできると思っていました」
「私達にならできる?」
「──そうです」
 Dセリオは、滅多に人に見せない優しい笑みを浮かべて榊の目を見詰めた。
「──この学園は修羅場です。ここを警備しようと思ったら、並大抵の腕では務まりません」
「・・・・・・・・・」
「──その為、どうしても戦闘能力が重視されてしまうのです」
「でも、私達はその戦闘に負けてしまいました」
 榊が言うと、Dセリオは首を振った。
「──もともとあの研修は、やる気と根性を見るための物だったのです。例え途中で倒れても、全力を
尽くしていれば合格なのです」
「やる気と根性?」
「──はい、だからおふたりは合格です」
 Dセリオは、椅子を立つと、後ろへ下がった。
「──・・・では、明日からビシバシ行きますよ」
「ええっ!? 明日から?」
 彼女は、いつもの銃火機をぶっ放す破壊の女神の顔に戻っていた。
「──気合入れて頑張ってくださいね。気を抜くと・・・・・・死にますよ?」

 ニヤリ・・・

 そう言い残すと、例の悪魔の笑みを浮かべて部屋から出て行った。
「・・・やっぱりセリオさんはセリオさんか」
 そう言いながらも、彼はDセリオに抱いていたイメージが変わっていくのを感じていた。


「あ、セリオさん・・・先輩達は?」
 何時の間に戻ってきたのか、メインルームでお茶を飲んでいたへーのきが介護室から出てきたDセリオ
に話しかけた。
「──おふたりとも大丈夫です。ガーネットさんにはなまくらな剣を持たせていましたし、スタンロッド
は捕獲用の非殺傷武器ですから」
「ならいいんだけど・・・」
 そう言って、意味ありげな視線をDセリオに向ける。
「──? なんですか?」
「いや、なんでもないよ」
「──気になります。上官としての命令です、教えてください!」
「じゃ、オレは帰るから」
「──へーのきさん!」
 本部のメインルームには、納得のいかない顔をしたDセリオと、へーのきの飲んでいたお茶を片づけて
いるDマルチだけが残された。
「──一体何なのでしょうか?」
「──・・・さあ?」
 そっけない答えを返してはいたが、Dマルチには分かっていた。
 へーのきは、セリオさんは優しいね、と言いたかった事を・・・
 そして、その言葉を良く思わないDセリオの性格も・・・
(──人付き合いとは難しい物です。Dシリーズ最高の頭脳を与えられた者として、私がしっかりしな
ければ・・・・・・頭脳といえば、プロトマルチさんの感情システムはすばらしいですね。あれをセリオさんに
入れたらどうなるのでしょうか? やっぱり今まで通りなのでしょうか? それとも・・・・・・興味深い
ですね、早速シミュレーションしてみましょう・・・)
 そんなこんなで、Dマルチはまた自分の思考に暴走していた。



 Dセリオの全てを知り、理解した男、へーのき
 絶対的な力と、未熟な心を与えられたロボット、Dセリオ
 そして、新たな仲間として迎えられたOLHと榊

 彼らの行く先には、何があるのだろうか?
 希望か?
 絶望か?
 その答えは、まだ誰も知らない・・・

                   〜終わり〜

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へーのき「終わった・・・やっと・・・」
綾香  「随分と時間かかったわね」
へーのき「仕方ないでしょ。オレ春休み無いんだから(泣) 本当は、最後の対決の時ジンさんと柳川
    が乱入してきて、Dセリオが駆けつけるも返り討ち、ついにDマルチとDガーネットのツー
    プラトンが・・・ってな事も考えてたんだけどね。無理です、これ以上は。それに毎回Dセリオ
    VSジンさんじゃーねぇ」
綾香  「まあ、それはそれで・・・今回のLメモはシリアスな部分が多いわね。どうかしたの?」
へーのき「まあ、一応新人研修だし・・・」
芹香  「・・・」(OLHさんと榊さんにDシリーズの皆さんの本当の姿を知ってもらいたかったのでは
    ないですか?)
へーのき「そう! そこだけはシリアスにしたかった」
マルチ 「じゃあ、Dセリオさんは本当は優しい方なんですね?」
へーのき「いや、それは間違い。まれに優しい時もあるよって事。それも来栖川警備保障の一員でないと・・・」
マルチ 「ええっ! じゃあわたしはあの後吊るされて鞭打ちなんですか!?」
へーのき「そ、それは流石にやらないと思う・・・(セリスさんも恐いし(笑))」
葵   「そういえば、Dセリオさんは知ってましたけど、DマルチさんとDガーネットさんも強いんですね」
綾香  「そうそう、私も初めて知った」
へーのき「大抵の人はそう考えてると思う。だからあえてシリアスな戦闘シーンを入れたってわけ」
葵   「じゃあDボックスさんも・・・」
へーのき「彼女は別、ホントに役に立たない」
葵   「そ、そうですか・・・」
へーのき「さて、OLHさん、榊さん、おふたりはこんな感じでいいでしょうか?」
瑠璃子 「・・・何かあったら電波(メールか伝言板)でね」



     特別企画(笑)来栖川警備保障Leaf学園支部の施設(の一部)案内

武器倉庫
 別名Dセリオの心のオアシス(爆)
 古今東西のあらゆる武器が仕舞い込まれている。
 Dセリオは、暇になるとここへ来てニヤニヤしている(笑)

休憩所
 別名Dマルチの憩いの間
 畳に座テーブル、障子と、古き良き日本の居間を再現している。
 冬は当然こたつにストーブだ。
 設計・建設全てを担当した、Dマルチの好みがモロに反映されている。
 台所も再現されており、お茶やコーヒーはもちろん、料理を作る事もできる。
 (OLHさん、託児所替わりに笛音ちゃんおいといても大丈夫ですよ(笑))

介護室
 学校で言うと保健室にあたる。
 しかし、何故か手術室まで・・・
 ちなみに、Dマルチが主治医をしている。
 腕は確かなので安心して怪我してきてください(笑)

掃除用具入れ(ただのロッカー(爆))
 この本部は、最新技術が大量に導入されているにかかわらず、何故か掃除だけは全部手作業。
 本部にいる間、掃除担当のDガーネットはひたすら掃除し続けている。

メインルーム
 天井まで届きそうな巨大コンピューターや、壁を覆いつくす大スクリーンのある、宇宙戦艦の司令室
を思わせるような部屋。
 明らかに金の使いすぎ、宝の持ち腐れである。


あかり 「ねえねえへーのきちゃん、ところでその肝心な本部はどこにあるの?」
Dセリオ「──それはトップシークレット、私達関係者だけの秘密です」
へーのき「OLHさん、榊さん、ばらしたらマジで殺されますからね。注意してください(爆)」