Lメモ半分過去外伝「何で僕はやーみぃなんだ!?」 投稿者:Hi-wait
「やーみぃ」
 後ろから呼ばれ、窓の外を見ていたHi-waitは、ゆっくりと後ろを振り返った。
「保科さんか……」
 それだけ呟き、また窓の外に視線を戻す。
「やーみぃ。あんた、あのときから一体、何があったん? いきなり、別人みたい
になってもて……」
 Hi-waitは、智子のその言葉に、自嘲気味に、
「当たり前だ。僕は、やーみぃとは別人なんだから……」
 と答える。
「……え?」
「僕は、所詮は奴に作られた存在……『やーみぃ』の影に過ぎない……」
「やーみぃ……」
 智子は、そんなHi-waitを見て、一瞬言葉に詰まったが、かろうじて次の言葉を
発する。
「じゃあ、何でやーみぃはあんたを作ったん?」
「……わからない」
「?」
「僕は、自分が作られる以前の記憶は全くない……奴は、僕に必要以上のことを知
られたくなかったんだ。僕は、奴が意識の奥で僕に伝えてくることだけを知識とし
て得ている……」
 そこまで言って、Hi-waitは席を立ち、
「それで説明は十分かな? ……じゃ」
 と言って、教室から出ていった。
 後には、呆然とした智子が残されていた……

「やーみぃ」
 後ろから呼ばれ、Hi-waitは振り返った。
「……ひなたか」
「やーみぃ。僕と戦って欲しい」
「何を今更……」
「違う。……昔の『やーみぃ』と戦いたいんだ」
 ひなたのその言葉に、Hi-waitの動きが止まる。
「やーみぃ……頼む。戦わせてくれ」
 Hi-waitは、目を閉じたまま答えない。
 自分の中にいる何かと、話しているかのように。
 そして……
 突如、Hi-waitの持つ雰囲気が変化する。
 ひなたの昔の記憶、自分を守って戦っていたやーみぃのものに。
「……いいだろう。ひなた、かかってこい!」
 Hi-wait……否、やーみぃが言う。
 同時に、やーみぃの全身から、噎せ返るほどの闘気がほとばしる。
 ひなたは、戦慄と共に思い出していた。
 自分が力を欲しいと思った原因。
 気功術士、やーみぃの事を……

 あのころ、ひなたは今とは違い、いじめられる存在であった。
 そして、そんなひなたを守っていたのが、やーみぃと智子であった。
 しかし、個人の力では、限界がある。
 ひなたはある不良グループに、空き教室に呼び出され、そこで屈辱的な暴行を受
けていた。
 やーみぃに関わらないことを誓わされ、金属バットで殴られ、裸にさせられ、さ
らに殴られる。
 やーみぃと智子がそれを知り、その教室に飛び込んできたとき、ひなたは既に何
発も殴られ、虫の息であった。
「ひなた!」
 やーみぃは一声叫んで、ひなたの下に駆け寄る。
「保科さん、ひなたを!」
「わかった!」
 やーみぃは、ひなたを智子に預けるため、出口に向かった。
 その時だった。
 不良達が、背後からやーみぃに向かって金属バットを振り下ろしたのは。
 やーみぃは、あわてて鉄身功を使う。
 それで、金属バットによるダメージは受けなくなったものの、背後からの攻撃は
さらに続く。
(こいつらは……ひなたをこんな目に遭わせたばかりでなく、こんな卑怯なマネま
で……!)
 やーみぃは、無言でひなたを智子に託し、二人を背にして立ち上がった。
 そして、怒りのこもった言葉を吐き出す。
「貴様らのようなクズは……生きている価値はない……!」
 やーみぃの憤怒の形相に恐れをなしたか、不良グループは少しでもやーみぃから
離れようとする。
 しかし、所詮は教室内。大した距離はとれない。
 そして、彼らに死の宣告が下った。
「百歩神拳……翔星乱打!」
 刹那、教室の中が光に包まれる。
 その光が消えたとき……そこには、何もなかった。
 人間も、教室さえも……
 それを見たやーみぃは不意に正気に返り、無念の表情をする。
 そして、やーみぃもゆっくりと倒れていった。

 そのやーみぃが、今再びひなたの前にいる。
 あれから、やーみぃは自らの『百歩神拳・翔星乱打』を禁じ手とし、二度と使う
ことはなかった。
 そして、自らの人格までも封印してしまう。
「どうした、ひなた? かかってこないのか?」
 やーみぃのその言葉に、不意にひなたは正気に戻る。
「いくよ……やーみぃ!」
 そして、思い切り跳躍する。
「外道メテオ!」
「気功術・重繰功!」
 とたん、ひなたの体が重くなる。
 為すすべもなく、ひなたは落下した。
 あわてて立ち上がる。
 しかし、その時には既にやーみぃの左手がひなたに向けられていた。
「……お前の負けだ、ひなた」
 静かに宣告する。
「……僕は……強くなったんだ!」
 叫んで、ひなたは手にしていた錐を投げようとした。
「気功裂波!」
 しかし、それより早く、やーみぃの攻撃がひなたの右腕を打ち抜いていた。
「なぜだ……何故勝てないんだ!」
 ひなたは泣いた。昔に戻って。
「僕は……やーみぃと別れてから、必死で修行した。力が欲しかった、やーみぃと
同じぐらい! なのに……なのに……!」
「ひなた……」
 やーみぃは、そんなひなたをじっと見て、
「……今の俺は、昔よりも強くなっている」
 と呟いた。
「……え?」
「俺が深層意識に潜ったのは、力を溜めるため。そして、お前の中に眠る、風上 
日陰に対抗するためだ」
「やーみぃ……」
「分かっている。どんなに力を溜めたところで、奴にはかなわないかもしれない。
けど、お前が日陰を作ったのは、俺の責任だからな。きっちり決着を付けたいん
だ」
 そして、ひなたの右手を取り、傷を治療しながら、
「Hi-waitはこのことを知らない。俺は、日陰が覚醒したら、すぐにHi-waitを消去
するつもりだ。そんなことを知ったら、かわいそうだからな……」
 そして立ち上がり、
「じゃあ、俺はまたHi-waitの陰に隠れる。けど、お前のことはいつでも気にかけ
ているからな……」

 こうして、やーみぃは再び消えた。
 彼は、Hi-waitとして、日常を送っている。
 しかし、Hi-waitは知らない。
 自分の存在が、そう長い間持たないであろう事を。
 ひなたは、やーみぃがそうしたように、自分の旨の中にその事実をしまって、今
日もHi-waitと相対する。

「……やーみぃ!」

                          <完>
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 お久しぶり、なHi-waitです。
 ……何なんだ一体これは……
 まあ、いいか。
 眠いんで、この辺で。