テニス大会練習L「コートの上は戦場なんだろうなあ」 投稿者:水野 響
        テニス大会練習L「コートの上は戦場なんだろうなあ」



  更衣室にて……

「これでテニスコートに入ることは出来るようになりました〜〜」
  ラケットを握り締めながら響が言う。
  もちろん、半袖、短パンのテニス装備は完璧だ。
  ラケットは普通のよりも一回り小さ目のお子様用ラケットを持っている
  より、子供に見えるが本人は気にしてはいないだろう。

「さて……作戦を立てるです!」
  瑠璃子は「いい電波がきそう」と言い残して行ってしまったので、響は自主練習という
ことになっていた。
  響にはすでに練習をするつもりはないようだが。

  早朝のコートで響は準備にとりかかった。





「どうしました?  練習はまだ終わってませんよ?」
  篠塚先生こと、レディー・Yが淡々と言い放つ。

「はぁはぁ……い、いや、マジできついんですが……」
  コートに倒れ伏したまま、XY−MENは呟いた。

  参加表明をした直後から、XY−MENは地獄の特訓にみまわれていたのだ。
  海岸の砂浜をうさぎとびで1万往復、毎日ジョギングでフルマラソンもした。
  漫画のように、崖から落ちてくる岩を打ち返しもやらされた。
  そして今は通常のコートの半分の位置からサーブを打ち返させられている。

  そのかいもあって、かなりテニスの腕も上達はしたのだが、体力的にきついのだ。

「泣き言を言わないでください。さあ、練習を続けますよ」
  レディーはあいかわらずの口調で淡々と続ける。
  そしてラケットを振りかぶり、見事なフォームで打つ。
「くぅ……これも西山の優勝を阻止するため……」
  全力を振り絞ってXY−MENが立ち上がる。
  原動力は台詞のとおりだ。

「……うらぁああああ!」
  ほとんど条件反射で振りかぶり、XY−MENのラケットが見事にボールを捉えた瞬間
、ボールが眩く輝いた。
「……?」
  XY−MENが不思議そうな表情をしたその瞬間。

  ドゴォオオオオオオオオオ!

  ボールが爆発した。

「……なんでだぁああああ!?」
  XY−MENは思わず絶叫するが、それほど威力はなかったようで煤塗れで真っ黒にな
っただけだった。
「……おかしいですね?  火薬なんて仕込んだ覚えはないのに……」
  不思議そうな顔をするレディーだった。



「はやや〜〜仕込む場所を間違えたです〜〜」
  少し離れたコートで、響は冷や汗を流していた。





  テニスコートにさまざまな仕掛けをしたのは響であるのは一目瞭然だが、どのコートを
風見が使うのか分からなかったため、あちこちに仕掛けた結果、どこに何を仕掛けたのか
忘れてしまっていた。
  つまり、色々なところに何かがあるのだ。
  選手のなかには爆発があったのに気づいて練習場所を変えていく者達もいたが、何組か
はそのまま続けていた。



「うらぁああああ!!!  こいつでどうだぁああ!」
  風見はすでに暴走モードが入っているようだ。
  美加香の顔面を狙って思いっきりサービスを打ち出そうとした。


  ボムッ!


「あぁ! ラケットが爆発!?  ひ、ひなたさん!?」
  美加香は驚いて風見のほうへ駆け寄った。

「おかしいなぁ、今日はボールに爆薬いれてなかったのに?」
  煤塗れになった風見が不思議そうに呟く。
  特にダメージはなさそうだ
「今日は!?」
  美加香は呆れたような驚いたような妙な表情をした。



「(失敗っ!?)」
  その様子を見て響はちょっと悔しがっていた。





「ほらほら、どうしました?  柳川先生、球が弱くなってますよ?」
「ふん、貴様のほうこそ弱くなっているようだが?」
  軽口を言いながら、すさまじいパワーテニスを繰り広げているのは四季と柳川先生だっ
た。
  一撃の球が重い上にスピードも半端ではないボールを二人は軽々と打ち合っている。

「それじゃあ、少し本気でいきますよ!」
  四季の打つ球が変わった。今までよりも早いボールが柳川に襲い掛かる。
「じゃあこちらも少しだけ威力をあげてやろう!」
  その球を軽々と返す柳川。こちらも先ほどまでとは段違いの威力だ。
  リターンを続ける二人の間には球の勢いで砂煙さえあがり始めていた。

「負けませんよ……ぁ……ぁ……はっくしょん!」
  球を返し続けていた四季は砂煙に耐え切れなくなったのか、おもわずくしゃみをしてし
まう。
  柳川の打った球が先ほどまで四季の頭があったあたりを轟音とともに通過していった。
  ダムッ!

  球はそのままコートの端ぎりぎりに突き刺さった。
  瞬間、


  ゴォオオオオオオオオンンッッッッッ!!!


  二人は驚いて振り向くと、球が突き刺さった辺りが爆発していた。

「……面白い趣向ですね」
  四季が柳川に向けてある種、壮絶な笑みを浮かべた。
「ふっ……面白い。まさに死合いというわけだ。」
  柳川は四季に向けて狩猟者の笑みを浮かべた。
  どうやら爆発が二人の中の闘争本能に火をつけたらしい。

「潰すっ!!」
「散れぇい!!」
  四季と柳川が吼え、さきほどとは比較にならない凄まじいラリーが始まった。



「あぅあぅ〜〜あんなとこに地雷があったんですね……忘れてました〜〜」
  テニスの本を見ながら素振りをしていた響は、冷や汗と共に呟いた。






「行きますよ美加香ぁあああ!  SS不敗流庭球術奥義!  虎牙弾撃翔!」
  風見がサービスエースとばかりに、憶えたばかりの必殺技を繰り出している。
「みきゃぁぁぁぁぁ!  だからテニスでそういう技使わないでぇえええ!!!」
  泣きが入りながらも、必死に打ち返そうとする美加香。

  ボムッ!

  美加香が打ち返そうとラケットを振った瞬間、ボールが爆発、霧散した。
「うっきゃぁああああ!!!」
  美加香は見事に爆風を食らうが、黒っぽくなっただけでほとんどダメージはなさそうだ。

「…………おかしいな。またボール間違えたか。家に置いてきたのになぁ」
  やっぱりふに落ちないとばかりに首を捻る風見。
「あなたは家にそんな危険なもの無造作においてるんですかっ!!」
  黒くなった美加香は風見に向かってちょっと怒ったように言った。



「(動じてない!?)」
  響はやっぱり悔しそうだった。





「……なんだか騒がしいですね」
「そうだね」
  九条とはるか先生はのんびりと休憩中だった。
  はるか先生はコートの中なのにお茶を飲んでいるほど、くつろいでいた。

「と、そろそろ練習をしましょうか?」
  九条がお尻についた砂を払いながら立ち上がる。
「ん、おけ」
  はるか先生も湯飲みを置いて立ち上がった。
  湯飲みは置いた瞬間消え失せていたが、九条は特に気にしなかった。

「じゃあ……行きますよ!」
  九条が綺麗なフォームでサーブを打った。
「ん」
  はるかはのほほんとしたままだが、やはり綺麗なフォームで返す。
  経験者だけにいろいろな位置にボールを打ち込んだり、取り難いスピンをかけたりと違
いの技を磨くための打ち合いを続けていた。

  

「あれ?」
  九条はラリーを続けながら、目がおかしくなったと感じた。
  ボールが分裂して、二個あるように見えたからだ。
  などと思っているうちに、今度は三個あるように見え出した。

「はるか先生?  ボールが……」
  ラリーだけは続けながらも九条ははるか先生に問いただす。
「うん。ボール、増えてるね」
  はるか先生は、それがどうかした?といった感じで返答を返す。
  表情も変わっていないし、ラリーはそのまま続けている。

「いや……増えてるねって……どうします?」
  九条は困ったなぁという感じで聞き返す。
「ん、めんどうだし続けよう」
  しかし九条の予想に反してはるか先生はそう言っただけだった。

「はぁ……」
  ため息をつきながらも、とりあえずいくつものボールをラリーを続ける九条。
  はるか先生は汗ひとつかかずにいくつものボールを的確に返していく。

  結局二人がラリーを止めたのは、ボールが20個を越えたときだった。



「はぅ〜〜アメーバ分裂ボール、こるばる君……あんなところにあったんですね〜〜」
  壁打ちをしていた響は、冷や汗とともに呟いた。



「あれやったのは……水野君ですね」
  突然の声に驚いて振り替える響。
  しかし壁打ち中に振り返ったため、戻ってきたボールが頭にジャストミート。
「うきゅぅ!?」
  こてん、とその場に響は転がった。
  薄れいく意識の中、何人かの見たことのある人物達の姿が見えていた。





「はや!?  こ、ここは!?  それになぜわたしが逆さ吊りに!?」
  これが目が覚めた響の第一声だった。
  男子更衣室の真ん中で響はロープでみのむしみたいにぐるぐる巻きにされ吊るされてい
た。
  そして周りにはテニスコートにいた面々、そして最初の爆発で移動した面々、全てが集
まっていた。

「はぁ……水野君、とりあえず単刀直入に聞きます。テニスコートでのいたずら騒ぎ……
あなたの仕業ですね?」
  猫町がため息をつきながら聞いた。
「うきゅ!?  な、なぜそれを!?」
  おもいっきり正直に反応する響。

「……これで決定だな」
  誠治が呆れたように言った。
  さすがにここまで正直に白状するとは思ってなかったのだろう。
「はぅ〜〜」
  響はさすがに観念して落ちこんだ。

「どうします?  先生?」
「どうしよっか?」
  誠治が聞いてるのにはるか先生は反対に聞き返した。
「とりあえずはこれ以上いたずらされても練習が出来なくて困るんで……なぁ?」
  聞き返された誠治は周りに向かって言った。
  周りのみんなもうんうんと肯いている。

「ん。分かった。じゃあ、大会までコートはいっちゃだめ」
「はぅ〜〜、ひ、ひどいですぅ〜〜」
  いきなり出された結論に響は抗議の声を上げる。

「まぁ、仕方ないだろうね」
「うん、いきなり爆発されてもいやだしね」
「そうそう」
  周りのみんなも邪魔されないための意見としては最高なので特に反対はしない。
「はぅ〜〜」
  響は体をよじるが、ぶらんぶらんと揺れるだけでどうにもならない。

「じゃ、そういうことだから……ま、自業自得だよ」
  誠治がそういって更衣室から退室していった。

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「ふぇ〜〜そういえばわたし、どうなるんですかぁ〜〜〜
  ほどいてくださいぃ〜〜〜〜」

結局、響は次の日までみのむしにされたままだった。



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あれ?
練習Lだったのに……いつのまにか自爆Lに変わってる(笑)

ということで、響&瑠璃子ペアは練習まったくしてません。
ある意味では野望が達成されてます(笑)<練習をまったくしないという野望

変な設定でごめんなさい。よっしーさん(笑)