右手には、ステッキ代わりの傘。 左手には、(空の)ティーカップ。 そして顔には、カイゼル髭&片眼鏡。 「おおっ、素晴らしい! まさに英国紳士…ヂェントルマンではないかっ!!」 「えーと…」 思考中。 「とりあえず、空のカップは要らないんじゃないかな…?」 控えめに言ってみる。 どこから突っ込むか迷っていたらしい。 「ふむ。ゆき君はこのティーカップが要らない、と」 ちなみにティーカップの発音がトゥィークァップに近いのだがこの際気にしない。 「というか、全部変だよ」 言うときは言う漢、ゆき。 さすがはエルクゥ同盟と言ったところ。 「なんと、このひげも変ですとなッ!?(驚愕)」 「うん。(即答)」 …こんな悲しいことが待ってるなんて、ぼくはしらなかった。 …彼女は言った。「えいえんはある―― 「帰ってこぉぉぉぉいッ!!」 すぱぁぁぁぁぁんッ!! と気持ちのいい音をたてて、ツッコミを入れる。 ゆきの手にはエルクゥ同盟の紋章入りスリッパ。 結構レア物らしい。 それはともかく、3分ほどだろうか、そのまま静寂が訪れる。 ちなみに片方は床に倒れたままだが気にしない。 むくり。 「それはともかくッ!!」 …何事もなかったかのように立ち直る。 「ほら、あれだ! 季節は春っ!! 出会いと別れはシーソーゲームな感じ で千血面樽倉腐茶!(読み方は任意に) こんな時こそ意中の彼女にマッハ2くらいで急接近して空気との摩擦で燃 え尽きる感じだッ!!」 「………なんだかいろいろ問題がありそうな気がするけど、とりあえず頷い ておくよ」 「ありがとうまいふれんどッ!! で、ここで取り出したるは、相変わらず というかなんというか『ひげ』だぁっ!!」 「要らない(きっぱし)」 …というか、何故ひげなのかは気にしないのか。 「………………………」 「………………………」 「それはともかくッ!!」 「それ、さっきも言ってたよね」 「ああッ!? 我が友人がさりげなく毒の含まれているツッコミをッ!?」 「……………まあ、いいや。それでその髭がどうしたの?」 「うむ、この辺の対応で親友か友人かが決まってくる感じですな」 「…ちなみに僕は?」 「親ゆ…」 「あ、やっぱり言わなくていいよ」 「何故ッ!?」 「何故って…思いつかないの?」 「僕には何の事だか札幌ピーマンパーマンシーマン〜♪な感じで分かりませぬ」 「じゃあ、ヒントを出すね。主に髭」 「ぬぅ、難問ですな」 「というか、そのまま答えなんだけど」 「なんとォッ!?」 「…………はぁ……」 変な人にかかわっちゃったよぅ…と、ゆきは、心の中なんて狭い事は言わずに、 思いっきり目から滝のように涙を流す。 『加持さん、あたし汚されちゃったよぅ…』な感じと思っていただきたい。 「ふふ、どうしたんだい、まいはにー。ボクに悩みを打ち明けてご覧よ!」 「気持ち悪いから止めて」 「………むぅ、必殺爽やかヂェントルマンアタック(仮)が効かぬとは、越後屋、 主も悪よのぅ…」 「いえいえ、お代官様にはかないませぬは…ふぉっふぉっふぉっふぉっ………って 何やらせるのさママンッ!!」 一通りやってからツッコむ律儀なゆきに、物陰で初音がほろり。 「…ところで。」 急に素に戻るひげ4に、ゆきくんはいつも振り回されて大変です。 初めは迷惑がっていたゆきも、彼の愛にめざ… 「って、そこ何モノローグ書き換えてるッ!?」 『ちっ』 そんな声と共に気配が消えていきます。 どうやら、さきほどの必殺爽やかヂェ(略)によって薔薇リアン'sが召還されてし まった模様です。 侮りがたし、薔薇リアン'sというかむしろ薔薇部。 「で、続きなんだけど…」 さっさと終わらせたいのか、まわりに誰もいない事を確認するとゆきが聞いてくる。 どがぁぁぁぁぁぁぁぁぁんッ!! お約束、だよ。 な感じで壁が吹っ飛んで中に入って来ますは熱血サイボーグことジン・ジャザム。 壁の向こうには当然Dセリオ。 いつもの光景である。いつもの。 しかし、今日のジンはどこかが違った! 「ジ、ジン先輩…なんで、なんで……」 ふるふると肩を振るわせながらゆきはジンに問う。 「なんで手がリモコンなんですかぁぁぁッ!?」 「ちっくしょうッ!! 誰だ昨日柏木家食卓にて『ジン君の手がリモコンだったら 便利なのにね♪』なんて言ってたヤツはぁぁっ!? って千鶴さんだって分かってるんだけどなッ!!」 血の涙を流しながらぶんぶんと、手…もといリモコンを振り回すジン。 迫り来るDセリオ。 ジン・ジャザム、絶体絶命!! しかし、その時奇跡は起こった。 ピッ、と言う妙に軽い音と共に。 「ニュースの時間になりました。昨夜、アフロを被った幽霊がいるとの住民の――」 声は、Dセリオの、声。 呆然としつつも、ジンがもう一度、手を振る。 ピッ。 「じゃーざえも――」 ピッ。 「コンバ――」 ピッ。 ピッ。 ピッ。 ………。 「えーと、俺は勝ったのか?」 ピッ、ピッ、とチャンネルを変えつつ、頼りなさげにゆきに聞く。 「……さあ、勝ったと思っておけば良いんじゃないですか?」 「…ああ、そうだな」 バックは、唐突だが場面的には自然に夕日&砂浜に。 「なあ、ゆき…勝利ってモンは、時として虚しいモンだな…」 「ええ」 ゆきは、噛みしめるように短く頷く。 ちなみに後ろでDセリオが一人音楽番組をやっていることは抜群に秘密だ。 「終わったんだ、全て。きっとやり直せるよな?」 「ええ、ジンさんならきっとできます!」 その後ろでは一人野球中継。 バットの打った音から司会者の解説、観客の声まですべてこなしている辺りがさすが Dセリオ。 「走ろう、あの夕日まで!!」 「ええッ!!」 そんな二人の後を、日曜でもないのに一人笑点をやりながら追いかけていくDセリオ。 試立Leaf学園は、一部を除いて今日も平和だった。 . . . 「…なんてパクリオチはおいといて。」 「ねえ、どこから夢なの!? ねえっ!?」 「はっはっは」 ひげ4は笑った。 可笑しいから笑ったのではない。 笑いたいから笑ったのだ。 夕日を受けたカイゼル髭が、ふさふさと揺れる。 今日も、Leaf学園に日が沈む。 「ねえ、どこから夢なのぉぉぉぉっ!?」 少年の叫び声は、自分の顔にカイゼル髭がついていることに気が付くまで続いたと いう。 了。