夏休みLメモ「……ごめんなさい(土下座)」 投稿者:ひげ4



 夏、真っ盛り。
 照りつける太陽! 途切れることのない蝉の声ッ!! 雲一つない青空ッ!!
 そして、透き通るようなガンマル(背景化)ッ!!
 いやむしろ透き通っているぞガンマル(背景化)ッ!!

「はぁ…俺の出番ってば、こんなんばっかかい…」

 なにやら人生に疲れた様な声を出すガンマル。

「そんな事は放っておいてッ!!」

 ガンマルのつぶやきなんかまるで聞かなかったように、ひげ4。
 というか、ガンマルは背景化しているから見えていないらしい。

「んで、ひげ。 このクソ暑い中、わいらを呼んだのには意味があるんやろうな?」

 そんな夢幻来夢の問いに、ゆき&初音も頷く。
 相変わらず唐突に呼んだようだ。

「はっはっは、別に寮の中でも良かったんですけどねぇ…でもほら、夏ですし」

「……どうして夏だと外なの……?」

 暑さでぐったりとしたゆきの質問にひげ4はにこやかに答える。

「いや、なんとなくですが?」

 …思わず三人の拳とかハリセンとかスリッパが炸裂したのは、言うまでもないと
いうか既に日常。



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 Leaf学園男子寮。

 とりあえず、食堂に4人は座っている。

「んで、結局なんの――」
「うぉぉぉぉぉぉッ!! ちゅるぺた×2ぃぃぃぃッ!!!
 ぴぴぴぴぴぴ…ピーッ!! ロックオンッ!! 突撃じゃあぁぁぁッ!!」

 来夢が先ほどの話を再開させようとしたところに、口でターゲットをロックオン
しつつ迫り来るのは言うまでもなく平坂蛮次。

「なんてお方だっ!? 口で『ぴぴぴぴ…』なんて言っているぞ!?
 …ぶふーっ!(吹き出し)」

「わらっとる場合か、ひげッ!? 何とかせいやッ!!」

 既に逃げ腰になってる来夢。
 自分が逃げると初音に行くと思って、逃げるに逃げれないらしい。
 ちなみに、ゆきが初音の前で必死に守ろうとしているが、蛮次の前では台風の中
のティッシュ(クリネックス)みたいな物だろう。

「しょうがない…分かりましたッ!! 僕のひげコレクションを見せるときが来た
 ようですねッ!!」
「ンなもん見せんでええわッ!!」

 すぱぁぁぁぁぁぁんッ!!

 思いっきり炸裂する来夢のスリッパ。
 ちなみにエルクゥ同盟の紋章入り。ゆきから貰ったらしい。

「いや、でも…蛮次っちの暴走というか妄想というか、むしろ両方を止めるには僕
 のひげを使うしかッ!?」

「止められるのかッ!? というか蛮次っちはやめいッ!」

「そりゃもうバッチリとッ!! 近所の奥様方にも評判なんですからッ!!
 詳しくはこの『使用者の喜びの声大全集』を見て下さいッ!!」

「怪しさ爆発じゃぁッ!!」

 スパーンッ! と小気味いい音を立てて、再びスリッパ炸裂。
 そんな事をしているうちに、蛮次はすぐ側にッ!
 そんな蛮次にひげ4は――


  ぺたり、とひげを張り付けた。


  一瞬沈黙。




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「だぁぁッ! おのれは最後までそれかぁッ!? ゆきッ! せめて初音だけでも
 逃がしてくれッ!!」

 ひげ4の首を絞めつつ、来夢が叫ぶ。既に錯乱状態。
 しかし、ゆきは呆気にとられた顔をしつつも、ゆっくり首を横に振る。
 その態度を来夢は不審に思って、ゆっくりと蛮次の方を向く。

 そこには、ひげをつけた平坂蛮次がいるだけ――と言ってもひげを付けただけで
 も奇妙だが―― …だが、 様子がおかしい。
 うつむいて小刻みにふるえているのだ。

 そしておもむろに、がばッ! と顔を上げ――

「巨乳萌えぇぇぇぇぇぇッ! これからの時代はボン・キュッ・ボーンじゃぁッ!
 ダ・ダーン…プルプルプルじゃああぁぁぁッ!! オ、オクレ兄さんッ!!」

 などと叫びつつ、走り去った。
 あっけに取られる三人+ひげを撫でている者。
 場に静寂が訪れる。

 いや、夏なのに北風の音が聞こえているのかもしれんが。


 そして、ひげ4がゆっくりと口を開く。


「ほら、ご近所の奥様方の評判もあながち信用出来なくもないでしょうッ!?」
「その前に何をしたおのれはッ!? はっきり言って気持ち悪いわぁッ!!」
「なんか最後に危ない単語が混じっていたような気もするけど…」

 などと一通りまくし立てた後に、思い出したかのようにゆき&来夢のスリッパが
 スパーン! と炸裂。

 げふりと空中に血をまき散らしながらスローモーションで倒れていくひげ4の手
は親指を立ててグッ!だ。

 まるで、「お前達に教えることは、もう何もない…」とでも言うかのような感じで。
 ゆきは止めどなく流れる涙を止めようともせずに、ただ叫んだ。

「し…師匠ォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!」

「……誰や、師匠って」

 と、ここで来夢のツッコミ。

「んで、結局さっきのは何や?」

「ああ…ただの『セイカクハンテンヒゲ』ですよ?」

「なんて、お約束かつご都合主義なッ!?(がびーん)」

 ゆき、驚愕。

 初音、とにかくこの空間から逃れようと、ふらふらと外へ向かう。
 しかし、何かにつまづく。
 ガコンッ! と言う音共に足下の床が割れる。

「危ないッ! そこは――」

 と言うひげ4の声も遅く、初音は落とし穴に落ちた。


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「うぅ、これ取れないよ……」

 初音、半べそ状態。
 無理も無かろう、『全身にひげがついている』となれば。
 むしろ初音というかひげだ、既に。

「…ひげ、どうなるか分かってるんやろな…?」
「ひげ君、今日という今日は……本気でやるよ?」

「はっはっは……いやほら、真藤君も悪いわけですし…………ゴメンナサイ」

 二人の目が据わってることに冷や汗を掻きつつ、ひげ4。
 どうやら、初音の落ちた穴は、真藤の作った落とし穴をひげ4が勝手に改良した
ものらしかった。
 さしずめ、ひげトラップ。…いや、そのまんまだが。

 二人はそんなひげ4の言い分なんて聞く気もないらしく、じわじわと詰め寄る。
 そして、いざ拳とビームモップを振り下ろそうとした瞬間。

「ガンマル君ッ! 出番のチャンス到来ですよッ!!」
「なにぃッ!?」

 ひげ4の叫びと共に現れるガンマル。どうやらその辺で背景化していたらしい。
 そして――



              べきッ!!



 来夢の拳と、ゆきのビームモップは、案の定というかなんというか…ガンマルに
当たった。
 げふぅ…と空中を落ちるガンマルは、地面に付く前に背景化で見えなくなる。
 ここまで来ると凄いとしか言いようがない。

「………………」
「………………」
「………………」

 …一同、とりあえず沈黙。

 沈黙を破ったのは来夢。

「……いや、さすがに今のはまずいと思うんやけど…」
「……なんていうか、とりあえずご冥福をお祈りするしかないけど…」
「……まあ、彼も出番が増えてらっきー♪って所じゃないでしょうか?」

 いや、全然らっきーじゃないだろうが。
 とりあえず、三人はそれで納得することにした。
 ちなみに、その後方では初音がひげを剥がそうと必死になっているのが涙を誘う。

「納得したところで、次は……ひげの番やな」
「ええッ!? さっきので終わりじゃ無いんですかッ!?」
「阿呆かッ! おのれは殴られてないやんかッ!!」

 後ずさるひげ4を追いつめる来夢。
 それをゆきが止める。

「まあまあ、来夢君。…もっといい方法があるよ?」

 そういってニヤリと笑う。
 びくりッ!! 思わず来夢とひげ4が縮こまる。

「うふふ…このことをさぁ、千鶴さんに言ったらどうなるか…分かる? うふふー」

 完全に遠いところに逝ってしまった口調で言うゆき。

「ハッ!? ゆき君、それだけはッ!?」
「ぬっはっは、もう遅いわぁッ!! 既に伝書鳩は飛ばしておいたッ!!」
「いつの間に伝書鳩をッ!? というかキャラ変わってるッ!?」
「その前に、伝書鳩と言うところには疑問をもたないんか…」

 飛び去っていく鳩が窓の外に見える。
 そして、いざ見えなくなりそうになった瞬間。

 鳩が、落ちていく。
 視力の良い来夢は何か矢の様な物が当たったと判断した。

「……今の、見ました?」
「……あれは…多分レミィの仕業やな」
「………………」

 ゆき、あっさりと作戦失敗。

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「それで、話がそれましたが――」
「って、何事もなかったかのように話を進めようとしてるッ!?(驚愕)」
「ゆき、放っておけや。どうせこのままやってたら日が暮れてしまうやないか」
「まあ、そうだけど…」

 と言いつつも、不満げなゆき。とりあえず狂気の扉は閉めたらしい。
 それはともかく、ゆきは、話が終わったらとりあえず殴ろうと思った。

「んで、続きは?」
「ああ…えーと……なんでしたっけ?」

                ――以下、惨劇。



 −了−