まほうのちから 投稿者:ひめろく

 えと、芹香さんの話。一応第2話って事になります。
 ちなみに第1話は(http://home.att.ne.jp/orange/tohkon/L/lmemo/2000/0
402213813.htm)にあります。(←載っけて下さってありがとうございます!!
(土下座涙))
 でも、1話読んでなくても全然問題ないです(笑)。
 あ、で、題名は…


             Lメモ『まほうのちから』

                  姉妹



 『全然似てねーな』と言われたことがある。
 もちろんそんな事はない。
 食べ物や服装の好み、その他もろもろ。そして好きな男性のタイプまで。似
ている所はたくさんある。
 『外見だけは似てるな』と言われたことがある。
 確かに、腰まで伸びた艶やかな黒髪や整った目鼻立ち。典型的な『美人』タ
イプである。
 『そこら辺は、さすが』…と、ここまで考えて、彼女はくすりと笑う。
 『私の姉だけの事はある』。
 ともすれば周囲の通行人に埋もれてしまいそうになりながら立っている姉の
――芹香の姿を見て、来栖川綾香はそう思った。
 誰かを捜しているのだろうか? 彼女はちょっと困ったような顔で、辺りを
見回している。
 傍目に見ても、2人はそっくりだった。お互いに入れ替わる事だってできて
しまうのではないかと言うほどに。
 もっとも綾香の、いたずらにキラキラと輝く瞳が、すぐにばれてしまうだろ
うが。
 授業と授業の合間の短い休み時間。教室から溢れ出してきたばかりの生徒が、
廊下を埋め尽くしている。
 そんな人の波を器用によけながら、綾香は芹香の肩に手を伸ばしかけ…ちょ
っと甘やかしすぎかな? と思って苦笑いをした。
 あまり人付き合いが得意でない芹香の為には、確かによくないのかもしれな
い。でも、綾香は姉の『ちょっと困ったような感じでうろうろする姿』にとて
も弱いのだ。
 …でも、ま、いいか。
 あの時、私は誓ったのだから。たとえどんな事があっても、必ず、守る、と。
初めて心が通じたと思ったあの時に…
「やっほー、姉さん。どうしたの?」
 言って、軽く肩にふれると、艶やかな黒髪がゆっくりと振り返った。天使の
輪がくずれないくらいにゆっくりと。
 その目が綾香を確認し、そして、その口が小さく動く。
「……」
「…え? 私に用だったの?」
 …こくこく。
「……」
 芹香が言う。ちょうど聞き取れるか聞き取れないか位の小さな声。芹香はい
つもこんな風に話をする。綾香にはもう、慣れっこになっていたが。
「…ふんふん。で、人手が必要なのね?」
 …こくこく。
「んー、そうねぇ…」
 少しだけ考えるようなしぐさをする。
 頭の中に、数人の顔を思い浮かべながら。綾香は心の中だけで、また、苦笑
いをする。
 やっぱり、少し甘やかしすぎだとは思いつつ。
「いいわ、心あたりがあるからついてきて」
 綾香は笑顔で歩き出した。