Lメモ超私的外伝「風が吹くとき−北風の章−」 投稿者:戦艦冬月
キーンコンカーンコーン・・・・・・・・・・。

午前中の授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。
「ふう・・・。やっと終わりましたね」
ため息をつきながら冬月が後ろに向かって延びをしながら言った。
「これからどうするんです?冬月さん」
ちょうどそこに同じクラスの沙留斗が声をかけてくる。
「え?特に何もありませんが・・・。とりあえず学食でお昼でも食べますかね」
首をコキコキ鳴らしながら冬月が答える。
「それなら・・・・・」
沙留斗が何かを言いかけたとき、けたたましい人物が教室に駆け込んできた。

ドバン!!
乱暴に開け放たれた扉から入ってきた女子生徒は、入ってくるなりこう叫んだ。
「ちょっとー!!ニュースよ!ニュース!!トシいる!?トシ!!」
いわずとしれた長岡志保だ。彼女は冬月のことを「トシ」と呼ぶ。彼女に何をいっても無駄
なことは冬月もよくわかっているので自分の呼び方については何も言ってはいないが。
「相変わらずうるさいですねぇ、長岡さん」
「あっ、いた!!ちょっと何よ、その心底イヤな物を見るような顔は!?」
「何を言っているんです。心底イヤだからこういう顔をしているんじゃないですか」
「うきぃぃぃぃぃ!!なぁんですってぇ!!!」
「冬月さん、何もそこまで言わなくても・・・・・」
あわてて沙留斗が止めにはいるが時すでに遅かった。
「だいたい、長岡さんが持ってくる情報は大半がガセネタじゃないですか。そんなことだか
ら『制服を着た東○スポーツ』なんて呼ばれるんです」
「言ったわねぇぇぇ!!この志保ちゃん情報をあんな宇宙人の記事をどうどうと載せるやつ
と一緒にするなんて、許せないわ!!」
すると冬月は急に真顔で、
「全く同じじゃないですか」
などと言ってのけた。
「このぉぉぉ!!そんなことを言ってると校内にあることないこと言いふらすわよ!!!」
さすがに頭にきたらしく、さらに大きな声で騒ぎ出す志保。
「それはさすがに嫌ですね・・・・・」
ちょっと困った顔で冬月がつぶやく。なんだかんだ言っても志保の交友関係の広さは冬月も
認めているのだ。その副産物である情報ネットワークにも。
「だったらありがたく今回の志保ちゃん情報を拝聴しなさい」
冬月のつぶやきをしっかりと聞いていたらしい志保は得意げな顔で冬月に言った。
「あ、あんたも聞くのよ」
しっかりと沙留斗も捕まっていたりする。(笑)
「わかりました。わかりましたよ。いったいなんだって言うんです?」
沙留斗と二人して苦笑しつつ冬月が言う。
「ふふん。実は今度転校生が来るんだけどね、その転校生がなんとモノホンの天使を連れて
いるって話なのよ!!」
『天使!?』
冬月と沙留斗の声がハモる。
しかし、沙留斗の声は驚いたような声だったが、冬月の声は訝しげな声だった。
「天使って、あの羽の生えてる天使ですか?」
「当たり前じゃない。ほかにどんな天使がいるって言うのよ」
思わず訊ねる沙留斗に小馬鹿にしたような口調で答える志保。
「なんでも、今までいた学校に居づらいからって此処に転校してくるらしいわよ」
「へえ。まあ、ある意味ここは特殊な学園ですからね」
「そうよねー」
うんうんと頷く沙留斗と志保。
「それで?」
「え?」
冷めた様子で問いかける冬月に志保はあわててくってかかる。
「『それで?』って・・・。天使よ!天使!!滅多にお目にかかれない代物じゃないの!!」
「沙留斗さん、彼女の言うことを信じます?」
志保を無視して沙留斗に問いかける冬月。
「まあ、この学園に転校してくるぐらいですから、天使を連れていてもいいんじゃないですか?
私としては長岡さんの話は信用してもいいんじゃないかと思いますけど。特に根拠はありません
が。でも、本当だったら友人としてつきあえる人だといいですね」
にこやかに笑う沙留斗。
「そうですか」
そういって安心したように冬月は笑った。
「ちょっと!!なんでトシは驚かないのよ!!」
「なんでって・・・。その転校生は私の友人ですから」
『ええっ!?』
驚く二人を見て、くすくす笑う冬月。
「私がこの学園に転校するように薦めたんですよ。ここなら天使を連れていても大丈夫だと思
いましたから」
「まあ・・・・・。たしかに・・・・・」
「言われてみればそうよねー」
普段の生活を思い出し、みょーに納得してしまう沙留斗と志保。
「で?今回の志保ちゃんニュースはそれだけですか?」
「え?ええ。まあね」
「そうですか。そういえば、沙留斗さんも何か私に言うことがあったんじゃないですか?」
「ええ。どうせなら一緒に学食でお昼でも、と思ったんですが」
「いいですね。いきましょうか」
「あっ、私もいいでしょ?わたしも」
「この際ですからね。みんなで行きましょう」
苦い物が混じった笑いを顔に浮かべた冬月は廊下で待っていた綾波麗と合流すると、四人で学
食へと歩いていった。


放課後。
家に帰るために冬月は麗と二人で廊下を歩いていた。
「・・・俊範様。今日はまっすぐ帰るのですか?」
「そのつもりだよ。特に予定もないしね・・・・・。おや?」
きょろきょろと周りを見渡して誰かを捜している様子の見知った女子生徒を見かけた冬月は、
柔らかい笑みを浮かべながら声をかけた。
「どうしたんです?神岸さん」
「あっ、冬月君に綾波さん。今帰り?」
「・・・ええ。誰かをお捜しですか?」
「うん。浩之ちゃんを見なかった?」
「藤田君?いいや、見ませんでしたけど・・・。彼何かしたんですか?」
「ううん。ただ一緒に帰ろうと思っただけだよ」
「そうですか。なら、ちょっと待っていてくださいね」
そういうと冬月は目を閉じて意識を集中し始めた。
オレンジ色の西日が窓から射し込んで、三人を照らしている。
「冬月君?」
「・・・お静かに。神岸さん」
しばらくすると冬月は目を開け、ほほえみを浮かべてあかりに言った。
「わかりました。彼は屋上にいますよ」
「・・・え?なんでわかったの?」
「私たち風使いは自分の知っている人物や、あらかじめ自分の風をまとわりつかせていた人物や
物の居場所を風を使って探知することが出来るんですよ」
「・・・あくまでも『そこにいる』事が判る程度ですけどね」
「ふーん・・・・・。あ、どうもありがとう。教えてくれて」
「いえいえ。これくらいおやすいご用ですよ。転校してきた初日にはお世話になりましたからね」
「そんなこと・・・。あっ、そうだ。時間があるなら二人も一緒に屋上に行かない?」
「えっ?どうしてです?」
「今行くと夕日がきれいだよ、きっと。せっかくだからその後みんなで一緒に帰ろうよ」
「ふむ。どうします?麗」
「・・・たまにはいいんじゃないでしょうか」
「それもそうですね・・・・・。じゃあ、行きましょうか。神岸さん」
「うん!」


そのころ浩之は一人屋上で暮れゆく空を眺めながら、ぼけっとしていた。
特に理由はない。ただ単に夕日が見たかったのである。
きれいな夕日が暮れゆく町並みを照らしている。
そんなとき、あかり達三人が屋上にやってきた。
「・・・・・浩之ちゃん」
「ん?・・・あかりか。それに冬月に綾波さんだったな」
「こんにちは、藤田君」
「・・・・・こんにちは」
「本当にいたね」
「・・・なにがだ?あかり」
「こっちの話ですよ。それにしてもきれいですね・・・・」
茜色の空と赤く染まった家の屋根を見ていると、なんだか吸い込まれそうな気分になってくる。
「・・・そうだな」
「浩之ちゃん、なんで屋上にきたの?」
「別に。ただ何となくだよ。あかりは?」
「わたし?わたしは、浩之ちゃんと一緒に帰ろうと思って・・・・・」
「ふーん。・・・冬月達は?」
「私達ですか?私達は神岸さんに今、屋上に行くときっと夕日がきれいだろうからって言われま
してね。その後は四人で一緒に帰ろうって誘われたんですよ」
「なるほど。あかりらしいや」
二人でふっ、と笑うと再び暮れていく町並みに視線を戻す。
あかりと麗もじっと同じ景色を眺めている。
「たまにはこういう時間の過ごし方もいいもんだね」
「・・・そうですね。あたしもそう思いますよ、神岸さん」
そのまま四人は何も言わずに、夕日が完全に沈んでしまうまで屋上にたたずんでいた。
いつまでもこのゆったりとした時間が続くように願いながら・・・・・。


了


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はい。冬月のLメモ第二段をお届けいたします。
いかがだったでしょうか?
とりあえず、冬月の普段の日常の1ページを描いてみたかったので、こんな感じになりました。
この作品で冬月の人となりを少しでもご理解いただけたら、幸いです。
しかし、こんなので理解できるのかな?
自分で書いてて不安になってきた・・・・・・。(^^;
戦闘もギャグもないLメモっていうのもいいかなって思ったんで・・・・・。
さすがに志保との掛け合い漫才みたいな代物は入れましたけどね。(笑)
いまだ試行錯誤の段階なので、皆さんどうかご勘弁を。(笑)
それでは今回はこの辺で。ではでは〜〜。