Lメモテニス企画、エントリー二番手!(あれ?(笑))  投稿者:ハイドラント
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【1 緑葉帝○月×日】
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>3 緑葉帝#月%日


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「と、ゆー訳で!」
 昼休みのテニスコート。
 びしりとポーズなど決めながら、ハイドラントは来栖川綾香と悠朔を前に、
自信満々の顔で告げた。
「もはや昨日までの私とは違う! 男子三日会わざれば即ち刮目して見よ!
岡目八目とは全然関係無いからして悪しからず! てなもんで極秘授業を受け
た私は既にテニスの全てを極め尽くしてしまった感じであるからして綾香よ私
とペアを組むのださあさあさあ!!!」
「……なんかいつにも増してテンション高いなー」
「たまにこーなるのよ。たまに」
 傍観者の口調で呟く悠に、綾香は溜め息をつきながら答えた。
(……そして大概、ロクでもない目に会うのよねー。主に私が)
 そう思いながらも気を取り直し、ハイドラントの方を向く。
「ま、取り敢えずテストしてみましょーか。
 今から言う質問に答えてね」
「おう!」
「第一問。テニスコートの広さは?」
「3.5寸!」
「第二問。世界的に有名なテニスの大会と言えば?」
「グランドキャニオン!」
「第三問。試合は何ゲーム取れば勝ち?」
「電波少年的ゲーム!」
「帰っていーわよ、あんた」
「何故だぁぁぁぁぁ!! 弥生さんの嘘つきぃぃぃぃぃ!!!」
「……気付けよ。教えられた時に」
 がっくりと膝をつくハイドラントに、悠が呆れた口調で呟く。
 と、彼はふと、妙な表情になった。
「……なあ綾香。これと同じよーな会話、以前にもしたよーな気がしないか?」
「え? 私は覚えがないけど……」
「気のせいか? うーん、なんかこの後にロクでもない事が起きそーな予感が
……」
 悠が首を傾げている間に、ハイドラントは復活した。
「止むを得ん。かくなる上は、行動によって私がテニスを極めたことを証明す
るしかあるまい」
「行動によって、って……試合でもしようって言うの?」
「ふっ……」
 綾香の問いに、ハイドラントは小さく笑うと、ポケットに手を入れた。
 そしてその手を出した時、そこにあった物は一本の瓶。
「……『ミ○カンのリンゴ酢』……?」
「これが、何?」
「ふふふ……分からんか?」
 ばさり、とジャケットの裾を翻し、ハイドラントは勝ち誇った声で言った。












「手に……」
「導師、あぶないぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」


 ごす。


「……はふほふほふぃふぁ? ふふふぁ(何のつもりだ? 葛田)」
「その先を言ってはいけません、導師!」
 いきなりマッハ3の速度でテニスコートに飛び込んで来るや否や、ハイドラ
ントの口にパイナップルを突っ込んで言葉を封じた葛田は、彼の問いに慌てた
口調で答えた。
 ばりばり。
 ごきゅん。
「……何がだ?」
 口の中のものを処理したハイドラントが、爪楊枝を取り出してシーハシーハ
しながら重ねて尋ねると、葛田は持っていたノートパソコンを広げて見せた。
「これです! このページを見て下さい!」
「ん……?」


http://www.atnet.ne.jp/~toshit/tenis.html


 ハイドラントは愕然とした。
「こ、これは!」
「そうです。導師のその技は、既に他の人間によって使われていたのです!」
「馬鹿な……!」
 真っ白に燃え尽きるハイドラント。
 ちなみに、うっかり覗き込んでしまった悠と綾香も矢吹丈になっていた。
(……手に酢……)
(……しかも、こんなのを思い付いて他人に聞かせる人間が、一人だけならま
だしも二人いるなんて……なんかすごくイヤ……)
 三人を見渡しつつ、葛田が苦渋の表情で頷く。
「僕もXY−MEN先輩から聞いた時は、まさかと思いました。よもや導師に
匹敵する使い手が野に潜んでいようとはっ!」
「くっ……この俺が、負けたと言うのか?
 俺は、この程度なのか? 俺は、ここまでの男だったのか!?」
 ハイドラントは、奥歯をぎりりと噛み締めた。
 だがすぐに、彼はかっと目を見開く。
「……いや! 俺はまだ戦う!」
「導師!」
「そうだ……この技が駄目ならば、新たな技を編み出せばいい!」
「頼むからお願いだから後生だからやめろ」
「そこまでの男でいてっ!」
 かなり切迫した表情で訴える悠と綾香に、しかしハイドラントは寂しげにか
ぶりを振った。
「すまん、二人とも。俺はこの道を歩む……」
「歩むのは勝手だが俺達のいない所にしろっ!」
「出来れば別の宇宙でやって欲しいんだけど……」
「お二人とも、心配なさるのは分かりますが、導師は一度決めた事を曲げる方
ではありません。
 さあ導師、さっそく修行を始めましょう」
「うむ」
「うむじゃねえ! 聞けよ人の話! ぷりーずてるまいぼいすっ!」
「だが修行をするにしても、何か取っ掛かりが欲しいところだな……」
「それでしたら導師、拙いながら私の技を一つご披露しましょうか?」

「えーい、逃げるぞ綾香! この空間にいたら命が危ない!」
「分かったっ! ……って、何時の間にか周りを超ペンギソでくまなく包囲さ
れてるっ!?」

「おお、それはいい。さっそく見せてくれ」
「はい!
 ……と、いきたい所なのですが、実は少々怪我をしてしまいまして……」

「おい葛田、このペンギソどかせよっ! 貴様のペットだろっ!?」
「ゆーさく……もう、駄目みたい」

「怪我? どこにだ?」
「それは……」
 葛田は、言った――











 ・・ ・
「手にっす」











『彼女の言葉一つで、僕の家は春にもなれば冬にもなる』
                       ――ある劇作家の言葉




「どーです導師! テニスと掛けて『手にっす』と解く!
 これこそまさに最終奥義って感じではないですかっ!?」
「素晴らしい! 素晴らしいぞ葛田!
 今日からお前は支配の大使徒改め『百点満点の大使徒』と名乗れ!!」
「をを! まるで出来杉くんの答案のよーな栄えある名前をありがとーござい
ますっ!」
「うむ、では修行を続けるぞ葛田!」
「はい、導師!」
 ……死の世界と化したテニスコートに、二人の騒ぐ声だけがいつまでも響い
ていた……。




                               完。


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 XY−MENさん、あんたが悪い(笑)
 俺はこーゆー男なんだ(笑)