日常の一コマのはずだった。 ――エルクゥ同盟と十三使徒の争い―― それは、L学園における、ありふれた光景の一つに過ぎない。 これまで何度も繰り返してきたように、今後もずっと繰り返していく……そ の筈だった。 ……だが、この日、それは終わりを告げた。 「はあっはははははは!! 温い! 温すぎるわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 「ぐはっ!?」 ハイドラントの拳の一撃を受け、ジンが吹き飛された。 ガァン!! 壁に叩き付けられ、彼の鋼鉄の体が悲鳴を上げる。 「くっ……貴様ぁっ! 死にやがれ!! ナイトメア・オブ・ソロモン!!!」 ドドドドドドドドドドドド!!!!! ジンの全兵装が火を吹いた。 無数の砲火がハイドラントを襲う。 ――ハイドラントは動けない。……いや…… ドォォォォォォォォン!!!!! 爆発。 余波の爆風を浴びながら、ジンは勝利を確信した。 「生身の人間が、これに耐えられる訳が……何ぃ!?」 勝利の呟きが、驚愕の叫びと化す。 噴煙の中に立つ、一つの影を見て。 「温いと言ってるんだよっ!!!」 影が、消える。 刹那の後、ハイドラントはジンの目前にいた。 「てっ…」 「遅い!!」 ガスッ! ハイドラントの肘が、ジンの側頭部にめり込む。 「……!」 声もなく、倒れるジン。 彼の頭が、ハイドラントの足の前に落ちた。 「ふっ……これが学園最強と言われた貴様の力か? 下らん!」 ゴッ! その足が持ち上がり、ジンの後頭部を踏みつける。 「っ…」 口の中に鉄錆の味を感じつつ、ジンは呻いた。 (…何故だ?) 彼の知るハイドラントは、ここまで強力な存在ではなかった。 今まで実力を隠していた……とも思えない。 (…まさか!) ジンはそれに思い当たった。 「魔王の力かっ!」 「ふっ…」 だが、ジンの意に反して、ハイドラントはかぶりを振る。 「違うな。 今の俺の力は、魔王のそれすら超越したものだ」 「何だと!?」 「冥土の土産に教えてやろう。 俺は、手に入れたのだ。……究極の力をな!」 「究極の…力…?」 「そう…… これだ!」 ばっ! 叫んで彼が懐から取り出した物を見て―― 「…………………………………………………………」 ジンは、宇宙が崩壊する音を聞いた。 http://ha7.seikyou.ne.jp/home/hagane/game/beaker01.html 「これこそは、通りすがりのおっさんに貰った『書いたことが現実になる魔法 のノート』! これを手に入れてしまった俺はもはや無敵無敵無敵と三回繰り返してもなお 足りない最強のヒーロー! もう誰も俺を止められん! 綾香もこの力で手に入れてやる!!! だーっはっはっはっはっは!!!!!」 ハイドラントの馬鹿笑いを聞きながら―― (滅んじまえ……こんな世界……) どーしよーもない絶望を抱え、ジンの意識は闇に落ちた。 最強の力を手に入れたハイドラント。 だが彼は、人間として最も大切な何かを失ってしまった事に、未だ気付いて はいなかった…… 何もかもが完。 *********************************** >ジンさんへ はっはっは、俺は逃げんぞ。 さあ、戦え(笑) にしても。 最強のジンさんに勝つ、最も説得力のある展開を考えていたら……何故だか こーなった(笑) ……なんか最近の俺、こんなんばっか(笑)