Lメモ私的外伝3「月下の獣、再び」前編 投稿者:ハイドラント

  彼は走っていた。
  どこかの建物の中を、ただひたすらに。
「緊急事態発生! 実験体弐型『紫音』が逃走した! 発見次第殲滅せよ! 繰り
返す・・・」
  薄暗い廊下に、放送が響いた。
  彼は気にも留めず、走り続ける。
  その時、十メートルほど先の曲がり角から、警備員らしき男たちが三人、現
れた。
  警備員達は彼を見るや、腰から拳銃を引き抜いた。
  すぐさま引き金を引く。
  パァーーーン!! パァーーーン!!
  銃声が立て続けに響いた。
  一瞬、彼の姿がゆらめく。
  ・・・そして、何事も無かったかのように走り続けた。
「馬鹿な!」
「かわしたのか!?」
  うろたえる警備員達に向け、彼は腕を一振りした。
  手首から先が無数の触手に変化し、警備員達に飛ぶ。
「がはっ・・・」
  三人は胸、喉、腹をそれぞれ触手に貫かれ、ばたばたと倒れ伏した。
  それには目もくれず、彼はそこを走り抜ける。
  だが。
「いたぞ! こっちだ!!」
  再び、警備員達が彼の前に現れた。今度は十人あまり。
  彼は走りつつ、両手に力を集中させる。青白いエネルギーが手の中で弾けた。
  両腕を前方に向けつつ・・・彼が叫ぶ。
「どけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」


  それは、Runeとハイドラントの・・・そして柏木教室と吉川教室の対決
が行われていた時と、ほぼ同時刻の事であった。


  ・・・そして、数日後。                     


  暗い部屋の中に、男がいた。
  椅子に座っている。
  いや、「座らされている」と言った方が正しい。
  数十キロはありそうな鋼鉄製の椅子に、鎖でがんじがらめに縛り付けられて
いる。
  口には猿轡。
  この男が持つ、魔術の力を封じる為のものだ。
  他には誰もいない。
  男だけが、その光の差さぬ部屋の中にいる。
  男は動かない。何も動かない。
  ここでは、時間が止まっていた。
  ・・・やがて、一人の人間がこの部屋を訪れるまで。
  光が差し込んだ。
  縛り付けられた男の姿が、光の中に照らし出される。
  時が動き出した。
  男の眼がゆっくりと開き、来訪者を見上げる。
「元柏木教室ナンバー4。現所属吉川教室教室長代理、ハイドラント・・・」
  来訪者の無感動な声が、部屋に響く。
「君は、今回の私闘事件の最高責任者の一人と認定された。」
  男は、反応を見せない。
  来訪者の方も、男の反応など気にしていないようだった。そのまま続ける。
「判決は、『絶対停学』。」
  絶対停学。
  それは、「塔」及び関係施設からの永久追放であると、「塔」内部規則に明
記されている。
  だが、この刑はそれだけのものではなかった。受刑者は、「塔」の屋上から、
外へと直接追放されるのである。
  早い話が死刑だ。
  ・・・それを聞いても、男は身じろぎ一つしなかった。
「しかし・・・」
  来訪者・・・執行部員は続ける。
「減刑嘆願があった。君のかつての仲間達からね。」
「・・・・・!」
  初めて・・・男の顔が、ぴくりと動いた。
「久々野君、梓君、綾香君・・・それと、Rune君からもだ。」
「!!」
  最後の名を聞いたとき、男の目が燃え上がった。
  執行部員は構わずに続ける。
「よって執行部は、条件次第では今回の君の処分を軽くしてもいい、と思って
いる。条件とは、君の手で裏切り者を一人処分する事だ。」
  聞いているのか、いないのか・・・男は小さく体を震わせている。
  鎖が軋み、小さな音を立てた。
「・・・・・条件を受諾するか、ハイドラント君? 受諾するなら、首を肯かせ
たまえ。」
  その姿に悪寒めいたものを感じながらも、執行部員は平静を保って尋ねた。
  その時・・・・・。
  ぴしり。
  何かにひびが入るような音がした。
  執行部員が思わず後ずさる。
  次の瞬間、鎖が弾け飛んだ。
  縛められていた男が立ち上がる。
「・・!! ひかり・・・」
  咄嗟に魔術の構成を編もうとした執行部員の喉を、男の右手が掴んだ。
  呪文が止まる。
  声が出せなければ、魔術を行使する事は出来ない。
「・・・・・安心しろ。」
  右手で執行部員を捕らえたまま左手で猿轡を外し、男が低い声で言った。
「執行部の条件は受諾した。裏切り者とやらは俺が始末してやる。
  ・・・だがその後は、俺の好きなようにさせてもらう。こんな『塔』になど
もう用はないし、どうせすぐに卒業するはずだったしな。」
(だが・・・)
  失神した執行部員をゴミのように投げ捨てつつ、男は胸中で呟いた。
(あいつから受けた屈辱は・・・晴らしておかねばな・・・)
  ハイドラントの双眸が、ぎらりと輝いた。
  



                          Lメモ私的外伝3
  



  この話は、私的外伝2の続きですが、久々野さんの超外伝SP13の続きで
もあります。時間的にみて。
  簡単にあらすじを説明しておきます。


「Lメモ超外伝SP13『お前はいったい何様なんだ!?』あらすじ」

「塔」最高の教室、柏木教室に招聘された男、Rune。柏木教師の彼に対す
る特別扱いに不満を持った同教室のハイドラントは吉川教室に移籍、吉川教師
の陰謀に荷担する事になる。
  その陰謀を封じるべく行動を起こしたRuneの前に、ハイドラントが立ち
ふさがる。激戦の末、ハイドラントを倒すRune。
  吉川教師の元に乗り込んだRuneは、彼の陰謀の全てを知る。そして吉川
とその部下がRuneに襲い掛かろうとした時、彼らが現れた。
  久々野彰、柏木梓、来栖川綾香。柏木教室の三人。
  久々野とRuneの連携プレー(?)の前に倒れる吉川。
  かくして、陰謀は打ち砕かれたのであった。


  今回の話はRuneさんが主役・・・になる予定。(ちなみに前回の主役は
綾香。裏の主役は前回も今回も紫音さん。)
  実際にどうなるかは、書き上げてみないと作者にも分からない!
  なんかプロローグはシリアスだが、今回はギャグはないのか?
  一体結末はどうなるのだろう?
  ちゃんとオチがつくのだろうか!?
  様々な不安を感じつつ、他人事のようにそれを無視して、いざ開幕!!

  


                         「月下の獣、再び」




  夜、とある森の中。
  Runeは川のせせらぎを聞きながら、火を見ていた。
  焚き火の火だ。
  Runeを始め、四人の人間がそれを囲んでいた。
  全員、「爪の塔」支給の黒い戦闘服を着ている。
「魔術武器を盗み出して逃走した男を発見し、処分せよ」という執行部の命令
を受けた者達だ。
  その魔術武器というのがどんな物なのか、Runeは何も聞いていない。た
だ犯人はその武器の力で肉体を変質させているから注意するように、とだけ言
われている。
(妙な任務だな・・・・)
  妙といえば、討伐隊の人選もだ。
  まず、Runeの右隣にいる、斎藤京一郎。執行部所属の男で、Runeも
今回の任務の前から名前だけは知っていた。若くして執行部員に名を連ねた男
であるから、実力は相当のものを持っている。この討伐隊の隊長でもあった。
  そして左隣にいるのが・・・誰だったろうか。
  Runeは、その男の名を忘れていた。
  無理もない。これといって特徴の無い、どこにでもいそうな男だ。RPGに
登場すれば、役はさしずめ「村人A」、主人公に話し掛けられるたび「ここは
OO村だよ」と繰り返すだけのキャラ・・・そんな奴だ。
  ただの穴埋め要員である。(断定)
(この二人はいいとして・・・)
  問題は、残りの一人だった。Runeの向かい側に寝転がっている。
  −−−ハイドラント。
  今はもう解体された吉川教室の教室長代理・・・そしてかつてはRuneと
同じく、柏木教師の教えを受けた者。
  そして先日、Runeの技の前に敗れた男。
  共にこの任務に就いてから、ハイドラントは別に何も言ってこなかった。
  だが・・・・・
(あの目を見れば・・・奴が俺に復讐しようとしているのは一目瞭然だな。)
  Runeは、任務に出る時彼を見送ってくれた三人の先輩の言葉を思い起こ
した・・・。


「気を付けることだ、Rune。前の敵より、後ろの味方にね・・・。」
(久々野先輩・・・。)
「あいつは、キレると他の事が何も見えなくなる奴だから、注意するんだよ。」
(梓先輩・・・それはあなたも同じだよ・・・・)
「根っから悪い奴じゃないんだけど。ま、また馬鹿やったら死なない程度に叩
きのめしてやってちょーだい。」
(簡単に言ってくれるね、綾香先輩・・・)


(・・・なぜ俺は、わざわざあいつの減刑嘆願なんかしたんだろう?)
  自分を怨んでいる事は分かりきっているのに。
  Runeは、しばらく考えて・・・苦笑した。
  分かっていた事だ。
  所詮自分は、他人を押しのけ、踏みつける・・・他人を完全に否定するとい
う事が出来ない人間なのだ。
  例えハイドラントのような男であっても、自分が原因で死なせてしまうのは
耐えられなかった。
(それに・・・・)
  Runeは眠っているハイドラントの顔を見た。
  うなされている。
  苦しそうに顔を歪めながら、時々「綾香・・・セバス・・・・」とか呟いて
いた。
  溜息をつくRune。
(俺がしたことを思えば、怨まれて当然かもしれないしな・・・・)


(Runeがハイドラントに何をしたか、詳しく知りたい方は、図書館にて久
久野さんのLメモ超外伝SP13「お前は一体何様なんだ!?」を参照してく
ださい(笑))
(大した事じゃないだろ、とか思った方は、西山さんやセリスさんにあの呪文
を使ったらどうなるか、想像してみるよーに(汗))


  一人の男が、その四人の様子を物陰から窺っている。
  名は、紫音。
  彼が、自分について知っている事といえば、それがほとんど全てだった。
  紫音の意識が目覚めた時、彼は「塔」で強化手術を受けた暗殺者(スタッ
バー)となっていた。
  それ以前の記憶は、無い。
  自分の過去というものについて考え始めたこと自体、ごく最近の事だ。
  それまで、彼は必要以外の事は何も言わず、何も考えず、ただ命令を受けて
人を殺すだけの殺人機械だった。
  だが、ある任務中、彼はミスを犯し、あと一歩で死ぬという所まで追い込ま
れた。
  その時、彼の中に「死にたくない!」という思いが生まれたのだ。
  その場はなんとか窮地を脱したが、それ以来、彼は次第に感情を取り戻して
いき、今の自分について疑問を持つようになっていった。
  そして先日、ついに脱走という挙に出たのだ。
  当然、追手がかかった。
  だが、彼は可能な限り強化された戦闘能力でもって、その全てを撃退してき
た。
  ・・・今までは。
(今度は、勝手が違うな・・・)
  四人を見つつ、紫音は内心で舌打ちした。
  一目見れば、彼らが高度な戦闘訓練を受けた者達である事が分かる。
  これまでの連中とは段違いの強さを持っているに違いない。
  ここは逃げるか、と紫音は思った。
  だが、地の利は向こうにある。いずれは見つかるだろう。そうなれば不意打
ちを受けるかも知れない。
  ならば・・・・・
(こっちから仕掛けてやる!!)
  紫音は腹を決めた。


「!」
  ぼんやりと焚き火を眺めていたRuneが、ふと顔を上げた。
  一瞬遅れて、ハイドラントがさっと起き上がる。
「? どうしたんです?」
  名も無い穴埋め要員が、そう呟いた時。
「シャアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
  奇声。
  そして、四人がいる空間に青白いエネルギーの波が押し寄せた。
「ぎゃああああああああああっ!!!」
  悲鳴は、一つだった。
  Runeとハイドラントは、咄嗟にその場を飛びのいて躱している。
  斎藤はなんとか防御魔術が間に合ったらしい。それでもダメージを受けてい
たが。
  ただ一人、穴埋め要員の男は攻撃をまともに受け、光の中に消滅していた。
  かくして、彼は穴埋め要員としての生を全うしたのである。(合掌)
「Rune、ハイドラント、攻撃は任せた! 私は援護する!」
  彼の事は気にも留めず、斎藤は素早く指示を出した。
  それに応じ、Runeとハイドラントが目標を迎え撃つ位置に展開する。
  そして、ハイドラントは敵の姿を見た。
「あれは・・・!」
  その眼が、驚愕に見開かれる。
  彼は、その姿に見覚えがあった。
(あの時の人型魔術兵器! だがなぜ!?)
「間違い無い、あれが標的の『紫音』だ。殲滅せよ!!」
  彼の後ろで斎藤が叫ぶ。
  その声が合図であったかのように・・・紫音が、ゆらりと動いた。
  次の瞬間、無数の触手が飛ぶ。
  標的は・・・Rune!
「ちっ!」
  横っ飛びに躱しつつ、Runeは魔術の構成を編み上げた。
「我は放つあかりの白刃!!」
  偽あかりとともに押し寄せた光熱波が、紫音を覆い隠す。
「やったか?」
  Runeが呟く。
  だがその時、熱波の渦の中から、何かが飛び出して来た。
  紫音。
  火傷一つ負ってはいない。
「死ね!!」
  彼はRuneに向けて左手を突き出した。
  その手が・・・一瞬にして、剣に変化する。
「我は踊る鬼の楼閣!!」
  Runeは咄嗟に空間転移の魔術を使い、その場から逃れた。
  紫音の剣が空を切り、僅かにバランスを崩す。
「爆炎よ!!」
「プアヌークの邪剣よ!!」
  その隙を逃さず、斎藤とハイドラントの魔術が炸裂した。
  しかし。
「無駄だよ・・・。」
  炎と熱波が消えた後、そこにはやはり無傷の紫音が立っていた。
「馬鹿な!?」
「なんで効かないんだ!?」
(あの時と同じだ・・・。並みの魔術では効かない・・・!)
  斎藤とRuneが驚愕し・・・ハイドラントは内心で呟いていた。
(なら・・・こういう手は?)
  ハイドラントが魔術の構成を編み始める。
「シャアアアアアアアッ!!」
  それが見えたか、紫音が剣と触手を彼に向けて突進してきた。
  だが、魔術の完成の方が早い。
「ヤスランの樽よ!!」
  空間圧縮魔術。
「!」
  紫音の体が、がくん! と止まった。
「今だ、Rune!」
「分かった!」
  腰から大振りのナイフを引き抜きつつ、紫音に向けて走るRune。
  一瞬後、ハイドラントが魔術を解いた。
  たたらを踏む紫音の脇腹に、Runeのナイフが深々と突き刺さる。
  ・・・筈だった。
「なっ・・・!?」
  Runeは、思わず我が目を疑った。
  刺さっていない。
  紫音の脇腹から生えた第三の腕が、Runeのナイフを掴み取っていた。
「無駄なんだよぉぉぉぉぉぉっ!!!」
  紫音は叫びつつ、全方位に青い衝撃波を放った。
  Runeとハイドラントは咄嗟にその場に伏せる。
  だが、魔術で防ごうとした斎藤は、間に合わずに直撃を受けた。
「がぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
  絶叫。
  斎藤の肉体がひしゃげ、弾け飛ぶ。
「斎藤さん・・・!」
  Runeは奥歯をかみ締めた。
  確かめるまでもない。即死であろう。
「あと・・・二人・・・・。」
  紫音の唇が、にやりと歪んだ。
「くっ・・・!」
「Rune・・・」
  紫音から距離を取ったRuneの背中に、ハイドラントが声をかける。
「・・・しばらく、奴を足止めしてくれ。」
「・・・・何を考えている?」
  疑いを込めたRuneの言葉に、ハイドラントは笑みを含んだ声で答えた。
「安心しろ。俺一人では奴は手に余る。だからお前の背中を狙ったりはせん。
  ・・・奴を倒すまでは、な。」
「・・・・・・・」
  数秒の沈黙の後、Runeは肯いた。
「あまり長くはもたないぞ。」
「分かっている。」
  そう言うと、ハイドラントは奇怪な呼吸を始めた。
「Fuuuuuu・・・・・・・」
  それを背後に、Runeが一歩前に出る。
「次はお前か・・・。」
  紫音は楽しそうに呟くと、右手を振った。
  ヒュン!!
  触手がRune目掛けて飛ぶ。
「我が指先に瑠璃の楯!」
  魔力の楯がそれを弾いた。
  それが消える前に、Runeは次の呪文を完成させている。
「我は駆けるレザムの銀嶺!」
  跳躍。
  十メートル以上も跳んだ彼の姿を、一瞬紫音は見失った。
  紫音がRuneの姿を捉えた瞬間、三番目の魔術が発動する。
「我は見る混沌の姫川!!」
「!?」
  超重力の波が、紫音の体を地に押し付けた。
  それを見ながら着地したRuneは、間を置かず更に呪文を解き放つ。
「我は放つあかりの白刃!!」
  光熱波。
  だがそれは、紫音に向けて放たれたわけではなかった。
  彼の横にある大木。
  根元を打ち砕かれたそれは、Runeの狙い通り紫音の上に落ちかかる。
「!」
  避ける暇はない。
  ドォォォォォン・・・!
  轟音とともに、紫音の体は大木の下に消えた。
「はあ・・・はあ・・・はあ・・・」
  荒い息をつくRune。
  強力な魔術を四つも連発したため、体力の消耗が激しい。
(でも・・・これで、仕留めた筈だ・・・ハイドラントには悪いが・・・)
  Runeは確認するため、倒れた木の所に行こうとした。
「これで生きてたら、人間じゃないよな・・・。」
「・・・人間じゃないよ。俺は。」
「!」
  大木の下からの声が、Runeの呟きに答えた。
  びくりと足を止めるRune。
「うらあっ!!」
  バァァァァァン!!
  衝撃音が響き、倒れた木が粉々に吹き飛んだ。
  紫音がゆっくりと起き上がる。
「んな・・・馬鹿な・・・・」
  Runeが呆然と呟いた。
  紫音が、ふっ、と笑う。
「言ったろ。俺は人間じゃないって。
  ・・・もっとも、今のは流石に堪えたが・・・!」
  口の端から零れる血を拭いもせず、紫音は脇腹に生えた第三の腕をRune
に向けた。
「礼をしてやる。
  ・・・受け取れ!!」
  その腕に、青いエネルギーが集まっていく。
  Runeは咄嗟に身構えた。
  ・・・その時。
「Rune、どけ!!」
  背後から響いた声に、Runeは反射的にその場を飛びのいた。
  直後、ハイドラントの叫びが轟く。
「いっけぇぇぇぇぇ!! 『ダークの虎』!!!」
  轟!!!
  黒い炎が渦巻き、紫音に向けて襲い掛かった。
「シャアアアアアアアアアアッ!!!」
  同時に、紫音が青い衝撃波を解き放つ。
  黒い炎と、青い波が、正面から激突した。
  強烈な閃光に、Runeは思わず目を閉じる。
  二つの力は、しばしの間せめぎ合い、やがて・・・・
  爆裂した。
「我は紡ぐ光輪の壁!」
  辛うじて、魔術の障壁で身を守るRune。
  それでも強烈に感じる爆風の中、彼は見た。
  ・・・爆風に吹き飛ばされ、川に落ちていくハイドラントの姿を。