サバイバルホラーLメモ『大長編 イクサバ☆サーガ〜ラストエスケープ〜』 導入編 投稿者:軍畑鋼

「・・・わかったっス、そのネタに関してはもう少し探ってみるっス」
「んじゃそれは頼んだわよ、バタ子」
「むぅ、カチワリ売りながらさりげなく聞いてみるっスよ」

ここは昼時のリーフ学園、校舎屋上。
そこには二週間に一回の情報交換会をしている鋼と長岡志保の姿があった。
志保の『志保ちゃん情報』と鋼がカチワリの行商で聞き出した情報『週間軍畑』の足りない情報を
互いに交換しているのである。

「あ、そうだった。長岡ちゃんに聞いとく事があったっス」
「え、何?」

ふいに聞き手に回っていた鋼が志保に質問した。
最近、鋼の頭の中に引っかかっていた事を思い出したからである。

「いや、この前ちょいと耳にしたんスけどね」
「ほうほう」
「一般生徒Aって誰の事なんスか?」

「・・・・・・・・・」

しばらくの間、重苦しい沈黙が場を支配した。
そして沈黙の後、志保は哀れみに満ちた表情をしつつ口を開いた。

「・・あのさぁ、バタ子・・」
「何スか?」
「その言葉さ・・・あまり言わない方がいいよ」
「むぅ、どうしてっスか?」
「あ〜ほら、その言葉ですごく傷つく人がいたりするじゃん?」

志保らしくない言葉だった。
んじゃ、いつもの他人に迷惑かけまくりの情報収集はどうなるっスか?、と鋼は思っていた。
しかし志保が言うのをためらう位のことだから聞かないほうがいいのかも、と考え方を変えた。

         ガチャン・・・

ふと屋上の扉の開く音がした。

「なんだ・・ここにいたのか、志保」

開いた扉から志保の名を呼びながら少年がひょいと頭を出した。
鋼は少年と直接の面識はなかったが志保と一緒に話をしているところを見かけた事がある

「あれ、ヒロ?どうしたの」
「ん・・いや、なんか呼ばれた気がしてな」

ヒロこと藤田浩之は志保となん言か、かわすと鋼の方に向き直った。

「・・・んで、こいつっていつもカチワリ売ってる奴だよな?」
「うん、そうよ。あたしの専属情報屋の軍畑バタ子って言うの」
「専属情報屋、ねぇ・・」
「なによ、なんか文句あるっていうの?」
「いいや、別にぃ〜」
「・・まぁいいわ。あ、バタ子、紹介しとくわね。こいつはあたしの・・・」

                   ジリリリリリリ・・・・・・

突然非常ベルがけたましく鳴り出した。
そう、まるで浩之の名を鋼に明かす事を止めるかのように。

「えっ?な、何っ!?」
「ぎにゃにゃっ?!」

リーフ学園とはいえ滅多に鳴らない非常ベルの音に鋼達はひどく狼狽した。
鋼が校庭の方を振り返ると同じように狼狽する生徒の姿が見えた。

                       ぴんぽんぱんぽーん!

ベルがおさまると今度は放送が入った。

『えぇ、全校生徒の皆さんにお知らせします』

「・・・・千鶴先生・・ね」
「・・そうだな」
「・・・・・・・・・・むぅ」

スピーカーから聞こえてきた声は千鶴先生のものだった。
その声を聞いた瞬間、学園を支配していたざわめきは沈黙へと変わった。
みんな理解しているのだった。
こういう展開で千鶴先生が出てくると大体の場合、かなり危険な展開になる事を。

『今から抜打ちで避難訓練を行います(はぁと)』

「・・・・・・・・・・」

深い沈黙。

『今回はオカルト研究会の協力で敷地内にゾンビを配置してありますが・・』

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

悲痛なまでの沈黙。

『皆さんがんばって脱出してくださいね(はぁと)』

                           ぴんぽんぱんぽーん

そして放送が切れた。
春の陽気によく合う千鶴先生のさわやかな声がとても憎らしかった。

「ぎにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

そして物語は絶叫と共に始まった。



サバイバルホラーLめも『大長編イクサバ☆サーガ  〜ラストエスケープ〜』
                                                      導入編・・・了