ざわざわざわざわ・・・ 「軍畑さ〜ん」 「に?」 ここは放課後のリーフ学園。 廊下でカチワリの行商をしていた軍畑鋼は誰かに呼び止められた。 鋼が振り返るとルームメイトかつ共に猪名川由宇にこき使われる仲間、弥雨那希亜がこっちに向かっていた。 「や、弥雨那ちゃん」 「軍畑さん、ちょっと時間あります?」 「んで、こんなとこで何のようっスか、弥雨那ちゃん?」 場所は変わって毎度おなじみの学園某所。 とどのつまり『機会がなければ一生知ることはない』場所である。 なぜか鋼は希亜にここに連れてこられていた。 「それは・・・」 さわさわさわさわ・・・ 初夏の風がふたりの頬を優しく撫でる。 この状況から発展する展開ははがねの頭の中に二つあった。 そのひとつ、男同士の熱いガチンコ対決。 しかし希亜と鋼の性格からしてこういう展開は考えられない。 もうひとつは・・・ 「これを・・声を出して読んでもらえます?」 希亜はふところからやけに乙女チックな封筒を出した。 そう、オタ姉さんが泣いて喜ぶ、アンジェな展開だった。 「・・・・・・・・・」 鋼は沈黙した。 予測できる展開のひとつだったとはいえ、この展開になるとは思っていなかった。 ばくん・・・ばくん・・・ばくん・・・ばくん・・・ ・・・・落ち着け鋼、オイラには理緒ちゃんがいるじゃないっスか! 鋼の鼓動が大きくなる。 しかし鋼はそれを否定する。 それを否定しなければ雛山理緒を想う自分が自分でなくなってしまう気がするからだった。 「あ、と、とにかくそれを読んで欲しいんです」 「そ、そうっスか・・・」 思いっきり焦る鋼と希亜。 そして焦りつつ封筒を開ける鋼。 ・・・・そ、そうっスよ。弥雨那ちゃんにかぎってそんな事はないはずっス 妙な事を期待しつつ、しかし希亜にはそうであって欲しくないと鋼は感じていた。 封を開けるのに妙に手間取ったが、どうにか中身を取り出した。 「えっと・・・」 そして鋼は言われた通り手紙を読み上げた。 「『さて、同人誌でも描いてみようかな!』・・・・・・・何これ?」 「・・・・軍畑さん、ごめんなさい」 なぜか希亜は本当にすまなそうに鋼に謝った。 「え?え?ええっ?!」 混乱する鋼。 ・・・・・ひゅんひゅんひゅんひゅんすっぱぁぁっぁん!! 「へぴっ!?」(ばたっ) 「本当にごめんなさいぃぃっ!!」 どこからともなく飛んできたハリセンに打ちのめされ、鋼は泡を吹き吹き失神した。 希亜は鋼の意識が完全に落ちていることを確認すると校舎の方を振り返った。 「・・・・由宇さ〜ん、成功で〜すっ」 「いいんですか、由宇さん?」 「なにがや?」 ・・・外から何か声が聞こえてくる 「だって勝手にこんな事したらさすがに軍畑さんでも・・・」 「あぁ、気にすんなや、鋼やったら何したって怒らへん」 ・・・猪名川の姉さんと・・弥雨那ちゃんか? 「ウチはアイツの師匠や、師匠に逆らう弟子なんてド○ンくらいしかおらん」 「はぁ・・」 「それにな、鋼はこういう事は慣れっこやねん」 ・・・うそだ、姉さんと九品仏の師匠が勝手にオイラを捕まえていじめてるだけだ! 「でもさすがは由宇さん、同人のネタの為にここまでするとは」 「・・それ、誉めとるんか?」 「あ、え〜と」 ・・・そうか、弥雨那ちゃんはオイラを裏切ってくれたのかっ?ガッデム!! 「ま、ええわ。こないな事で時間費やすわけにはいかん、締め切り近いんや、さっさとやるで!」 「はいっ」 ・・・おい?さっさとここから出さんかい!おいコラ!? がんがんがんがん・・・・ 「あかん、もう目を覚ましよった!希亜、きちんとビデオに収めとけな」 「あ、はいっ、由宇さん!」 「んじゃ、いっくでぇ!!」 しゅっ・・・ぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢ・・ ・・・のぉぉぉぉぉっ!!またこういう展開っスかっ!?希亜ちゃん、ここ開けてっ!? 「軍畑さん、今度なんかおごりますんで許してくださぁぁいっ!!」 のぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!!! どっこぉぉぉぉぉぉん!!!! 「まぁぁぁた『北○の拳』ネタかいっスぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ・・・・・」 ひゅぅぅぅぅぅぅぅ・・・・・・・・きら〜ん! 「・・・・希亜、撮れたかいな?」 「はい、ばっちり。やっぱ『南○人間砲弾』はすごいですね」 「ま、テレビ版オリジナルの大技やからなぁ、 さて、いい資料も手に入ったことだし執筆作業にはいろうかな?」 「・・・あの」 「なんや?」 「軍畑さん・・・・大丈夫ですかね?」 (30分後、学園内第二保健室) がららららっ 「先生〜っ、オキシドールあるっスか?」 「あら?軍畑君、またなの?」 本日の実験・・・失敗(完全なる) 〜おまけ L学男子寮・鋼&希亜部屋、朝の光景〜 がららららっ!(窓を開いた音) 鋼「むぅ・・・」(窓の前に立つ鋼) 希亜「すやすや・・・」(静かに寝息を立ててる希亜) 鋼「すぅぅぅぅ」(深呼吸) 希亜「すやすやすやすやすや・・・・」(爆睡中) 鋼「ウゥラララララララララララララララ・・・」(朝一番のアパッチの雄叫び) 希亜「うぅ、軍畑さん・・うるさいです」 鋼「・・・ぐぅぅぅぅ」(崩れるように窓辺で爆睡開始) 希亜「・・・すうぅぅぅぅぅぅ・・・」(爆睡再開) つづく