季節限定 イクサバ☆サーガ 〜夏色七夕狂乱スイカ味編〜 投稿者:軍畑鋼


七夕、それは星の川に隔てられ一年に一度しか会う事のできぬ恋人同士が出会う日。

それは昔から続く美しい恋物語を後世に残すために作られた日。

それは今も昔もかわらず恋人達にとってなにか素敵なロマンスが待ってる日。

それはいつもは値段が高い商店街の商品が意外(無意味に)と安くなる日。

そして・・・

なにかにブチ切れた女と男達が血の雨を降らす日(場所限定)。









『ぎにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』









季節限定 イクサバ☆サーガ 〜夏色七夕狂乱スイカ味編〜




7月7日 午前1時6分 試立リーフ学園男子寮管理人室

「ほらほら、きりきり折らんかいっ!」
「「「「・・・へ〜い」」」」

真夜中に鬼の管理人、そして七夕祭り実行委員長こと猪名川由宇に
折り紙を強制的に作らされてる男4人。
右から順に、平坂蛮次、山浦、隼魔樹、そして軍畑鋼といったピンキリ揃いのメンバーである。
なぜこんな事をさせられているかというのは
『みんなで作った七夕飾りを駄目にしてしまった』の一言で済ましておこう。
で、男4人と由宇は飾りを作り直してるわけなのだが・・・

「見ろ、バタ子。これが『ちゅるぺた飾り』じゃっ!!」
「・・・ちゅるぺた・・スか」

と言って手に握られているのはボロボロになった
折り紙の『やっこさん(?)』だった。
ちゅるぺた魂ここに極めり、と言ってもいいかもしれないが
七夕には全く関係ない代物だった。
ちなみに鋼もまともな飾りは作ってなかった。

「あ、アニキ見てっス、これが『ぷに飾り』っス〜っ!」
「ボケッ!これが『ちゅるぺた飾り』じゃぁっ!!」

・・・ペット(舎弟鋼)は飼い主(番長)に似るとはよく言ったものだ。

「これは・・ここをこう切るのか?」
「違いますよ、ここはこうするんです」(ちょきちょき)
「ほほぅ、なるほど・・っておい魔樹っ、ちょっと待て?!」
「え、なんですか、山浦さん?」
「じぇりーずには手伝わせるなっ、紙がしけっては元も子もないだろうがっ!!」
「なっ!?」

ぺたぺたぺたぺた(しおしおしおしおしおしお・・・・)

「うわぁぁぁっ!?」

こちらの方も向こうとやってる事は大差なかった。
魔樹と山浦は一応まじめに飾りを作っていたが結果は向こうと同じであった。


ぴく・・・


・・この・・・・役立たずがぁ・・・・


ぴくぴく・・・ぷちっ!


「こぉぉぉンの役立たずがぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

ただ黙々と飾りを作っていた由宇はついにブッチンと切れた。

ずっぱぁぁぁぁんっ!!(×4)

「ぎにゃっ!!師匠?な、なにす・・」
「黙れやっ、この役立たずがッ!!」

ずっぱぁぁぁぁんっ!!(往復ビンタ)

「へひっ!?」(ばたっ!!)
「あんたらちゃんと責任感じてやっとるんかいっ!?」

由宇は鋼をハリセン3発で仕留めると、今度は残りの3人を捲くし立てだした。

「おうっ、ちゃんと責任くらい感じてやってるわいっ!」
「まぁ、当然責任は感じてるけどな・・・」

山浦は由宇に反論しつつちらりと魔樹に視線を送った。
なにかをオレのかわりに言ってくれという意味だった。

「たしかにオレらは七夕飾りを駄目にしちまった
 責任をとらなくちゃいけないのはわかってます、けど・・」
「なんや、なんぞ文句あるんかい」

魔樹は山浦と蛮次の方を振り返って言っていいか、と確認をとった。

こくこく(言ったれ言ったれ!!)

二人から一目で理解できるGOサインが出たので魔樹は思い切って由宇に言った。

「けど・・・オレらにも金の折り紙使わしてくださいよ〜っ!」

そう、こいつらはさっきから由宇が金の折り紙を独占してた事を妬んでいたのだった。
当然ながら金色の折り紙はトレカのレアカードと同じくらい価値があるものである。

今、これがくだらないなんて思った人は考え方が甘い。
グループ内の調和の崩壊とはこういう事からはじまっていくのである。
だから・・・

「ふんっ、誰があんたらなんぞにこの金の折り紙くれてやるもんかい!」
「なんじゃとっ!?」
「へへ〜んだ、あんたらなんか普通の色折り紙、しかも人気のない茶色で十分や!」
「くっ、こ、このっ・・!」

ぷっち〜ん(理性というものが飛んでいく瞬間の音)

「うおぉぉぉっ、ワシがそれで金の『ちゅるぺた飾り』をつくるんじゃぁぁ!!」
「金折り紙はストロングでシドニーが一番近いオレが使うんだよっ!!」
「ともかくそれをこっちによこせっ!!」
「へへん、金を使うんは関西人の専売特許や、それを簡単に渡せるかい!」

と、このようにグループの和の崩壊が起こってしまうのである。


『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』
「ぎにゃっ!?」(ぐしゃっ!)

どたばたどたばたどたばたどたばたどたばたどたばた・・・

『うっきゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』
「おごわっ!?」(めりっ!!)

びしばしびしばしびしばしびしばしびしばしびしばしびしばし・・・




この騒ぎは明け方近くまで続き、寮生の安眠を妨げた。
しかもタチが悪い事に騒いでた連中は騒ぎの原因など騒いでる間に
すっかり忘れてしまっていたという。
結局、多少ボロでも飾れば目立たないだろうという事で
一度は駄目になった七夕飾りを使う事になった。
結果として周りに多大なる迷惑をかけた割にはムカツクくらい、
あっさり丸く収まったのである。




7月7日 放課後の夕暮れ時

「うわぁ・・・」
大きな笹(っていうか竹)が昇降口の前に立てられると生徒達は歓声を上げた。
七夕飾りと短冊に身を飾った笹が夕暮れ時の風に揺れていた。
なんだかんだでボロボロになってしまった飾りも笹を彩るのに十分だった。

ざわざわざわ・・・・

七夕といえば短冊、そして他人の短冊は気になるもの。
という事で七夕の飾り付け功労者の山浦と魔樹も他人の短冊を見てまわっていた。


(まずは和み系からいってみよう!)

『父上がげんきでいますように』  靜
『しずかちゃんともっとなかよくなれますよおに』  良太
『・・・・・・』  芹香
『学園が平和になりますように』  冬月
『パパとママがもうちょっと仲良くなりますように』  悠綾芽
『世界が、幸せでありますように』  悠はじめ
『世界が平和でありますように』  神海



「和むなぁ、こういうのって」
「俺もそう思いますよ・・・って山浦さん」
「んっ?」
「来栖川先輩の短冊、盗もうとしないでください」
「・・・・」


(次は切実系にいってみよう!)

『こけませんように』  マルチ     
『こけませんように』  千紗
『こけませんように』  理緒
『おおきくなりたい』  マナ
『おおきくなりたい』  千鶴
『おにいさやんがうれきおしないよおに』  笛音
『・・・出番を』  瑞穂


「・・・切実だねぇ、こういうの」
「俺もそう思いますよ・・・って山浦さん、これ・・」
「ん?なんだ、この破片・・・えと・・『おおきく・・なりたい』 理緒・・・?」
「・・番長・・ですね」
「・・・ここまでしてちゅるぺたを望むとは・・・」


(お次はお約束系でいってみよう!)

『は〜れむは〜れむ〜』  YOSSYFLAME
『琴音ちゃんと(以下血痕で読めず)』  OLH
『学園総性別反転コスプレ化』  玲子
『打倒!グエンティーナ!!』  ティーナ
『あたらしい実験体』  柳川
『女体の神秘ぷりーず』  霜月祐依
『健康(血文字)』  くま

「まぁ、この辺はお約束というか大体の推測ができてたな」
「そうですね」 
「個人的にはこれ(は〜れむ〜)を破っときたいんだがな」
「止めときましょ、オレも気持ちは同じですから」


(んで、お約束といったらこの人を忘れては!)

ひらひらひら・・・(短冊が初音の足下に落ちてきた音)

「あれ、誰の短冊かな?」(やさしい初音は結び直そうと短冊を拾い上げる)


『目標:喰う』  蛮次


「・・・・・・・・・・・・・・・・・」(かたかた震えつつ短冊を笹に結び直す)

きら〜ん!!(鋭い眼光)

「ちゅるぅぅぅぺぇぇぇたぁぁぁぁ・・・・」
「えっ?」
「萌えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!」(がばっ!!)
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

ちゅるぺた番長、平坂蛮次には当然ながら七夕のロマンスもへったくれもなかった。
初音ちゃん、明日はきっといいことがあるさ!


(さて、とどめはコメントしようがない系でしめてみよう!)

『もきゅもきゅもきゅ、もきゅもきゅ』  水野響
『すべての使い人がくたばりますように』  神凪
『・・・めそ』  琴音
『旅に出ます。かしゅになりたいんです。探さないで下さい』  悠朔
『食われたり消えたりしません様に』  沙留斗
『あなたに、あ痛い』  よっしー

「・・・このへんになるとほんとにコメントしずらいよな、特に『もきゅもきゅ』」
「・・犬さん犬さん、赤犬さんはおいしいんですよ・・・(訳)」
「なにっ!?そういう意味だったのか?!」



「そういえばお前は短冊になんて書いたんだ、魔樹?」

七夕の夜も過ぎ寮に戻る途中、山浦は魔樹にたずねた。

「ん、オレは『玲子さんともっとなかよくなれますように』って書きましたけど」
「なんかまともだなぁ」
「そういう山浦さんはなんて書いたんですか?」

今度は魔樹から山浦へ質問が移った。

「オレか?おれは『松原、一緒にシドニーへ行こう!』と書いた」
「あれ?『来栖川先輩と・・・』ってやつじゃなかったんですか?」

魔樹は自分が想像してた山浦の答えとは違ってたことに驚きつつ笑った。

「あぁ、いや、恋は自力で勝ち取らないと・・なんてな」
「・・恋は自力で勝ち取らないと」

今度はどっちからともなく笑い出した。
そんなこんなで七夕の夜は更けていったのであった。

「ただな・・・」
「はい?」
「短冊にあんな事書いといて青い六人衆がどう動くのか、それが怖いな」
「・・・確かにそれは言える」













ふよふよふよふよ・・・・

「ふい〜、随分とおそくなっちゃったな〜」

夜の学校を駆け抜けるメタリックな箒。
当然それに跨っているのは鋼のルームメイト、弥雨那希亜である。
多分忘れられてると思うだろうが鋼は夜中の騒ぎの最中の由宇の一撃、
そして激闘のとばっちりにより生死の境をさまよっていたのだった。
その鋼を希亜は看病していたのだが、鋼の意識が先ほど戻ったため
自分の短冊と鋼の短冊を学校まで持ってきたのである。

「・・・ここでいいかな?」

希亜の箒が笹の先端付近で止まった。
笹の先端にはもうすでに短冊やら飾りやらアフロやらが飾られていた。
しかしちょうどよく空いたスペースがすぐ見つかった。

「・・・っしょ、と」

器用に箒でバランスを取りつつ、希亜は二つの短冊を結びつけた。

『楽しいこと、いっぱいありますように』

『ネプチューンマン変身セット、っていうかマグネットパゥワー』

当然ながら前者が希亜で後者が鋼の短冊である。
まぁ、お互いらしいといえばらしい短冊であった。

「・・・・」

希亜は黙ったまま笹を見下ろしていた。
しばらくして少しだけ微笑を浮かべて希亜は寮へと帰っていった。


・・・・・・・楽しいこと、いっぱいありますように














ひらひらひらひら・・・・

「んっ?」

今日も実験の為、遅くまで学校に残っていた柳川裕也。
彼が窓を開けて気分転換しているとどこからともなく短冊が飛ばされてきた。


『ネプチューンマン変身セット、っていうかマグネットパゥワー』  鋼


「・・・・」

短冊を見て柳川の顔に笑顔が浮かんだ。

「こんなに早くも願いが叶うとはな・・・」

そして柳川はいそいそと実験室を後にした。



                   今回の実験 成功(まぁ、色々とね)