男女混合テニス大会L 『熱血ぼーるぼーい物語 完結編』 投稿者:軍畑鋼


          ちゅんちゅん・・・・

「・・・・・・」

ついに運命の日の朝がやって来てしまった。
いや、『残酷にも』という言葉を間に挟んでおくべきか。
とにかく転校早々にして鋼の生命にかかわるピンチがやってきて
しまったのであった。

「すぅ・・すぅ・・・」

隣ではそんな鋼の危機感を煽るかのようにルームメイトの弥雨那
希亜が安らかに寝息を立てていた。


  男女混合テニス大会L 『熱血ぼーるぼーい物語  完結編』


『男女混合テニス大会にボールボーイとして参加』

最初はこんなはずじゃなかった。
鋼の中ではごく一般的なテニス大会がイメージされていた。
まぁ、鋼はこの学園の凄さを耳にしていたのだから一般的とはい
え、ウィンブルドン級の試合をイメージしていたかもしれないが。
当然ながら結果はそれ以上の凄さであった。
事実を知ったのが災難だったのか。
いや、その凄さを知らないまま試合に臨んだのなら確実に鋼の机
の上に花が置かれている事になったであろう。

「・・・・・はぁ」

だからそうならないように鋼はこの1週間を特訓漬けで過ごした。

放課後の校庭でダッシュしたり、
授業中さりげなく電気イスしていたり、
昼食のおかずにプロテインを加えてみたり、
ロッキーのように卵10個をいっき飲みしてみたり、
バキを読み漁ってみたり、
柳川先生のところでちょっと改造してもらおうと思ったが、結局
どちらにせよ危険なので止めといたり・・・。

「・・・・・・・・・・・はぁ」

まぁ、今更どうこう言ったって現状は変わらない。
結局、何事も変わらなかった。
もう鋼には素直にボールボーイをする以外、何も策は残されてな
かった。
何も残されていなかったはずだった。
しかし鋼は究極とも言えるテニス大会参加回避手段を時間ギリギ
リで発見したのであった。
この策のリスクは大会参加と同じレベル。
だったら死んでしまうかもしれない大会参加より、体験済みで8
割は生き残れるこの策を選んだのであった。


          こんこんっ!

『どうぞ』
「失礼しまっス」

           がちゃっ!

「あら、軍畑君。どうしたの?」

鋼がやってきたのは試立リーフ学園校長室。
校長の柏木千鶴は爽やかな笑顔で鋼を迎える、しかし鋼は体中に
冷や汗とあぶら汗をかきにかきまくっていた。
鋼をよく見ると足元がかたかたと少し震えているようにも見える。

「・・・軍畑君、どうしたの?」
「あぁ、ええと・・・そのですね」

校長室に入ってからずっと黙ったままの鋼に千鶴校長は少し心配
そうな表情で鋼をのぞきこんだ。
それに気付いた鋼は言おうと思ってた事を言おうとしたが言った
後の恐怖と緊張しているせいか、うまく口がまわらなかった。

           ごきゅり・・・

口に溜まった唾をのどに押し込みようやく鋼はこころなし色の抜
けた面持ちで口を開いた。

「その・・なんかここからなにやら美味しそうな匂いがして・・
 ・んで、腹減ってたんでちょっとごちになろうかなぁ・・と」
「・・なんだ、そうだったの!」

鋼がそう言うと千鶴校長の瞳がぱっと輝きだし、そして鋼からす
さまじい後悔のオーラが立ち昇りはじめた。

「そうなの、さっき新しい料理を思いついたの。んで、さっそく
 作ってみたんだけど・・・ちょっと待っててね(はぁと)」

千鶴校長はいそいそと、そしてとても嬉しそうに校長室の奥へと
消えていった。
そして残された鋼から色が消え白くなっていたいた。
しかし、その表情にはこの世の全てを解脱したような微笑みが浮
かんでいた。



10分後、鋼の策は成功した。
鋼の全てに大きな痕を残して。

(BGM  終わり、そしてはじまり)
                     〜BAD END〜