Lメモ、テニス大会外伝「必殺・気砲弾!」  投稿者:岩下 信
Lメモ、テニス大会外伝「必殺・気砲弾!」

「…結構人が居るね。」
L学園のテニスコートに瑞穂と共に練習をしに来た岩下がつぶやいた。
「えぇ、学園を挙げてのイベントですから…この前SOSさんと練習をした
ときも混んでいましたし。」
隣に居た瑞穂が岩下のつぶやきに答える。
「…みたいだね…」
普段だと、このテニスコートに人が居ることは授業でなければほとんど皆無
であった。
しかし、今はテニスコート空きがないほど人がいる。
そのうえ、L学園のテニスコートは狭いほうではない。
そのテニスコートがすべて埋まってしまうこの事態は異常とも言える。
「…今回のイベントは学園の方がほとんど参加しているみたいですよ。」
ため息混じりに言った岩下に瑞穂がくすっと笑って答える。
「だろうね…でなければここまで人が集まらないだろうし…」
「で、どうします?」
岩下の言葉に瑞穂が問う。
「うーん…とりあえず入ってみようか。」
「あ、はい。」
二人はテニスコートの中へと入っていった。
辺りを見渡しながら、空きコートを探す岩下。
『それにしても…本当にこれがテニスなのか?』
テニスコートで練習している人達を見て、岩下はふと思った。
プレイヤーにうなりをあげ一直線に伸びて行くボール。
時折聞こえる悲鳴。
どう見ても岩下の記憶しているテニスとはかけ離れたものが展開されている
コートもある。
『…まぁL学園(ここ)ではいつもの事か…』
このL学園においては、普通の競技も格闘・戦闘の場となることが多い。
魔術使い、格闘家、使い人、魔王と様々な人が集まっているのだからしょうが
ないと言えばそうなのだが…
ちょうど体育祭などがいい例であろう。
「…藍原君、ちょっと聞くんだけど…」
辺りを見渡しつつ、岩下が瑞穂へと問う。
「はい?なんでしょうか?」
「この前の練習の時もこんな感じだったのかい?」
「えぇ、皆さん頑張っていましたよ。」
岩下の問いかけににこやかに答える瑞穂。
「なるほどね…」
『これは一波瀾ありそうだ…暗躍の狙いはこれか?』
岩下の頭にふとひとつの考えが浮かぶ。
「やぁ、信じゃないか。」
そのとき、急に岩下に声がかかった。
「…やぁ、セリスも練習かい?」
声をかけてきたセリスに岩下が答える。
「うん、まぁね…で、信はここで何をしているんだい?」
「私も同じだよ、練習をしにね。」
岩下が右手に持っていたラケットをセリスに見せつつ言う。
ちなみにこのラケットは岩下のものである。(なぜ持っているかは不明だが)
「ということは…信も出るのか…」
「まぁね。」
セリスに向かって岩下が答えたその時、
「あ、岩下さん!。」
と、岩下に声を書ける者が居た。
「…おや、ひなた君も一緒か。」
「えぇ、今までセリスさんと練習していたのですよ。」
岩下にひなたが答えた。
「なるほどね。」
「じゃあ、信、いっちょ僕達とやらないか?」
「セリスさんと、岩下さんの試合ですか?…ぜひ見てみたいものです。」
セリスとひなたが岩下に言う。
「うーん…藍原君、どうする?」
二人の言葉に岩下が瑞穂へと聞く。
「そうですね…空きコートも無いことですし…やりましょう、岩下さん。」
「ということだ、お願いするよセリス。」
「よし、やろう…手加減はなしで行くよ。」
「ははは…お手柔らかに…」
そのやり取りを見ていたひなたがポツリと
「岩下さんって、絶対に尻にしかれるタイプだな…」
とつぶやいた。
「でも、幸せそうですよ。」
いつのまにか隣に居た美加香がひなたに言う。
「…そうかもね…」
ひなたが微笑みながら続けた。

「さぁ、行くぜ信っ!」
コートで準備が出来たセリスが叫ぶ。
「では、はじめましょうか…。」
セリスの声に応じて、岩下が腰を低くした。
「うりゃ!」
しゅばっ!!
一球入魂とばかりにセリスがサービスを打つ。
「信さんっ!」
「わかっているっ!」
その動作を見た瑞穂が岩下に向かって合図かのように声を上げ、それに答える岩下。
「むっ!」
岩下のラケットが見事にボールを捕らえ、相手コートに的確に返した。
「はわわわわ…」
そのボールをマルチが追いかけ、無難に返す。
「えいっ」
マルチの打った弾を瑞穂が同じく無難に返した。
「やるな…では、これでどうだっ!」
セリスが体の回転をつけ、ボールを岩下の逆サイドをついて打ち返す。
「……。」
瑞穂が岩下に目で合図を送った。
「こっちかっ!」
岩下が瑞穂の合図を受け、ボールの落下点へと飛び…
「ぬうぅぅん!」
まるで「闇払い」を放つかのようなラケットの軌跡をのこしてボールを打ち返す。
「あぅぅぅ〜」
それをマルチがどうにか打ち返す。
へろへろとしたボールが瑞穂へと向かう。
「えっと…えいっ!」
瑞穂がその弾を打ち返す。
マルチが打った弾に威力が無いため、少々の余裕を持ってである。
「ふっ…ならばこれでっ!」
スパーンッ!
「……。」
「了解っ!」
またもや瑞穂の合図を受けた岩下がうなづき走る。
セリスが放った弾は先より威力があり、上手く逆サイドをついていた。
が、弾筋を予想していたかのように岩下がその場に立っている。
「…弾筋を読んでいるのか!?」
岩下の動きにうめきをもらすセリス。
「はっ!」
こちらも、気合を入れつつ、ボールを返す。
「はぅぅぅぅ〜〜」
マルチがぱたぱたとボールを追いかけて…
「そりゃあぁ〜」
パコーン!
と打ち返す。
「えいっ」
同じように瑞穂はボールを打ち返す。
「…岩下さん達も、やるものだねぇ…」
セリスらの練習試合を見ていたひなたがぽつりとつぶやいた。
「えぇ、藍原さんと岩下さんのコンビネーションは最高です…」
隣で同じように見ている美加香が言う。
「コンビネーション?」
「え?ひなたさん、見ていて気がつかなかったのですか?」
ぼこっ!
「ひぇぇぇ…」
「わかっていたさ…で、参考までにお前の意見を聞いてやろう。」
美加香を一発殴りつつひなたが言う。
「本当ですか?ひなたさん。」
殴られた頭を押さえつつ、ジト目でひなたを見る美加香。
「…もう一発行くか?」
「遠慮します。」
きっぱりという美加香。
「まぁいい…で、美加香お前の言うコンビネーションとは?」
ひなたが美加香へと問う。
「はい…藍原さんがセリスさんの打つ弾の軌道を読み、岩下さんに伝える。その藍原さん
の合図と共に、岩下さんが動き、的確に打ち返す…というものです。」
「ほぅ…」
「ここまでは普通ですけど…あのお二人はそれをすべてアイコンタクトで行っているところが
特徴です…以心伝心というべきでしょうか…お互いに信頼していなければ出来ない技だと思い
ます。」
美加香はここまで言うと一息ついた。
「なるほど…ってやけに説明口調なのは気のせいか?」
ひなたが、あきれたように美加香に言う。
「気のせいでしょう。」
しれっと美加香が言った…

それまではお互いにいいラリーを続けていたのだが、ここでちょつとした異変が起こった。
「えいっ!」
マルチからのボールを瑞穂が打ち返した時のことである。
「あっ…」
打った後で瑞穂が声を上げる。
瑞穂が打った弾は、セリスにとってむ絶好球と言えるものだったからだ。
「…もらったぁ!いくぞ!SS不敗流奥義っ!!」
ボールを捕らえて、ラケットを振りかぶりつつセリスが叫んだ。
「はい?」
セリスの叫びに呆然とする岩下。
「虎牙弾撃翔!!」
叫びと同時にラケットを凄まじい勢いでボールに叩きつけるセリス
「ちぃっ!」
牙をむくかのごとく一直線に伸びてくる弾に岩下は舌打ちをしつつ身構える。
「信さんっ!それは危険ですっ!」
セリスの一撃を受けようとする岩下に瑞穂が警告を発する。
「やるしかあるまいっ!」
腰を低くして、刀を扱うように身構える岩下。
「そこだっ!」
岩下は一瞬の間の後に刀を引き抜くようにラケットを振るった。
ばしっ!
………がしゃっ!
ボールはセリス達の頭上を超え、後方の金網にぶつかった。
………から〜ん…
岩下の足元にラケットが落ちる。
「くっ…まさかここまでの威力があるとは…」
ラケットを手にしていた方の手首を押さえつつつぶやく岩下。
「信っ!」
セリスがその様子を見て叫んだ。
「信さんっ!大丈夫ですかっ!」
瑞穂が岩下に駆け寄る。
「あぁ、ちょっと手がしびれただけだから…」
手を押さえつつ、答える岩下。
「すまない、思わず…」
岩下に駆け寄り、詫びるセリス。
「いや、気にすることは無いよ…それよりいつの間にそんな技を?」
岩下がセリスへと問う。
「この技は……SS不敗流の技らしい…覚えた記憶は無いんだけど」
「なるほどね…」
「で、どうする?まだやるかい?」
「あぁ、大丈夫だよ、怪我をしたわけではないからね。」
セリスの問いかけに笑いながら答える岩下。
「よし、はじめよう。」
セリスがそう言いながら、自分のコートに戻っていった。
「…あれを返すとなると…あれしかないか…」
岩下は自分のラケットを見ながらつぶやいた。
「いや、多分出来るだろう…原理はあれと一緒…」
「信さん?」
つぶやいている岩下に瑞穂が話し掛ける。
「…ん?なんだい?」
「何を言っているのですか?」
「うん…さっきの技の返し方だよ。」
「返し方ですか?」
「あぁ、返し方だけでなく、その他にも応用できるけどね」
「?」
岩下の言葉に首をかしげる瑞穂。
「まぁ、見てのお楽しみということで…さあ、はじめよう。」
このやり取りの後、岩下と瑞穂がお互いの位置につく。
「サーブ権の移動で、今度は信達からだね。」
ボールを岩下たちの方へと投げつつセリスが言う。
「うん…では、藍原君お願いするよ。」
前衛・後衛の入れ替えを済ませ、岩下が瑞穂へとボールを渡す。
「はい、では行きますね…えいっ!」
ポコンッ!
瑞穂がサーブを打つ。
再び、試合が始まった。
「甘いよ、瑞穂ちゃん。」
瑞穂のサーブをたやすく打ち流すセリス。
「これで、終わりだっ!」
セリスの打った弾を岩下が気合を入れて打ち返す。
「あぅぅぅぅぅぅ…間に合いません〜〜」
ぽーん…
岩下の打った弾がセリス側のコートへと落ちた。
「…む、うちの弱さがみえてしまったな…」
セリスがつぶやいた。
「あぅぅぅ〜すいません、セリスさんお役に立てなくて…」
マルチが涙声になってセリスに言う。
「え?いや、マルチは悪くないよ…悪いのは、マルチに取れないボールを打った信なんだし…」
「…なぜ私が悪者に?」
セリスの台詞を聞き、岩下は額に大きな汗を浮かべた。
「まぁ、しょうがないですよ。」
瑞穂がくすっと笑って岩下をなだめる。
「さて、マルチの敵討ちと行こうか…」
「おーい…」
岩下がセリスの台詞に突っ込む間も無く次のゲームが始まった。
セリス側の前衛・後衛が入れ替わる。
「あわわわ…えーいっ!」
ぽこんっ!
マルチがサーブを打つ。
「行くぞ、セリスっ!」
マルチのサーブを力一杯返す岩下。
「まだまだぁ〜」
岩下の一撃を返すセリス。
その弾には今まで以上の勢いがあった。
「えっと……えいっ!」
瑞穂がどうにかセリスの弾を打ち返した。
「あっ…」
どうにか打ち返したものの、瑞穂が打った弾はあさっての方に向かって飛んでいった。
「ふふ、これで一点入ってサーブ権が移動だね…」
セリスがうれしそうに言う。
「そうだね…今度はこっちの番だ。」
岩下がひなたから投げられたボールを受けとりつつ答えた。
「さて、こちらも行くよ…本気でね…」
岩下が言い終えると、周囲の温度が3℃程下がる。
「そうこなくてはね…」
セリスがそれに答える。
そして、岩下が後衛となり、サーブを打つ体制に入る。
“我が気よ、この木に宿りて力を与えよ…”
岩下が詠唱すると、ラケットが光を帯びて輝き出した。
「何!?」
それを見てセリスが声をあげる。
「マルチ!配置を代わるんだ!」
「ええ?でも…」
「いいから!あれはマルチでは受けられないから!」
セリスが、マルチとすばやくポジションを替える。
「…そろそろ良いかい?」
セリスに向かって岩下が言う。
「来いっ!受けて立つぜっ!」
腰を落として、構えるセリス。
「では…行くぞっ!『気砲弾っ!!』」
叫びつつ、光輝くラケットでボールを打つ岩下。
打った弾は、光り輝く彗星の如く、セリスのコートへと延びる。
「…止めて見せるっ!SS不敗流っ!」
セリスがボールを追いかけながらラケットを振りかぶる。
「虎牙弾撃翔!!」
バチッ!!
セリスのラケットからいくつかの紫電が迸る。
そして、セリスの手からラケットがはじかれる。

「ひなたさん…私達、テニスの練習を見ていたのですよね?」
その光景を見ていた美加香が額に大きな汗を流しつつひなたへと聞いた。
「…すごい…」
「え?」
「やっぱり師匠の言葉は合っていたんだ!テニスとは格闘技だったんだ!」
目をきらきらとさせつつひなたが叫ぶ。
「あぁぁ…」
そんなひなたを見て頭を抱える美加香。
ひなたの誤解はしばらく解けそうに無かった事をここに付け加えておく。

一方、岩下たちはと言うと…
「…さすがだよ、信。」
セリスが弾かれたラケットを拾いつつ岩下に言う。
「すまない、こんなに威力があるとは思わなかったんだ。」
岩下はセリスへと頭を下げる。
「いや、いいって事だよ…楽しかったしね」
セリスが笑いながら岩下に答える。
「そう言ってもらえると気が楽だよ。」
「さて、良い汗も流した事だし…そろそろあがろうか。」
「そうだね…本部で一息入れようか…ひなた君はどうする?」
岩下がひなたへと問う。
「あ、僕も行きます。」
「では、行こうか…」
岩下らは、テニスコートを後にした。

岩下らが去った後、この様子を見ていた藤田浩之が、
「…今のはテニスじゃないって…」
とつぶやいた…

                       END
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どうも、岩下です。
テニス大会の練習L(?)を書いてみました。
やっぱり、必殺技が無いと寂しいですし←なぜ!?(^^;;

ちなみに技の詳細は…
「気砲弾」…自分のもつ「気」をラケットに通わせる事によってラケットを硬質化し、
鋭く、威力のあるスマッシュ等を打つことが出来る。
…となっております。

それでは、失礼します…