Lメモ、超私的外伝・岩下編 投稿者:岩下 信
    Lメモ超私的外伝「出会い」

〜時はSGY対戦より前、まだ、拓也等が二年生の時の話である〜

L学園の校舎裏で、一人の男が何者かと対峙していた。
人の姿に似ているものの、人手はない。
その証拠に口には牙、背中には、羽が生えている。
通称、妖魔とか、化物と呼ばれる輩である。
「…やはり、居たようだね…」
男は静かにその何者かを見つめて言った。

男の名は岩下信。
火使いの家系に生まれながらも、なぜかオロチの血を引く者である。
彼の家は代々、人々を脅かす魔物を幾度なく封印、浄化してきた。
L学園になぜか入学し、ここでも何回も魔物達を浄化してきた。
今日も、不穏な気配を感じて妖魔らしき者と対峙していた。

「………」
その妖魔は岩下の問いかけに対し答えない。
ただ、岩下を威嚇するように唸るだけである。
「…どちらにしろ、ここは君の居ていい居場所ではない、おとなしく帰るの
ならみのがしてあげよう……」
岩下のその言葉にその妖魔は大きく吠え、殺気をむき出しにして向かってく
る。
「……それが答えか…。」
岩下は妖魔の殺気に反応して自らも気を解放する。
『大気に宿りし炎の精霊達よ!すべての力を解放せよ!』
岩下の手から青く燃え立つ炎が飛び出す。
そして、岩下は向かってくる妖魔を睨み付けると…
「…楽には…死なさんっ!」
と、一吠えして妖魔に向かって炎を放つ。
刹那、一筋の炎が地を妖魔に向かって走り、当たると同時に巨大な炎の
柱と化す。
通称、"八酒杯"と呼ばれる技である。
悲鳴を上げ、炎に包まれる妖魔。
岩下はそのまま、手を緩めずに妖魔に仕掛ける。
『…炎の精霊達よ!怒れる鳳凰の羽ばたきとなり、我が意志の命ずる者
を焼き尽くせっ!!』
岩下が低く詠唱する。
「…烈火蒼炎柱蓋!!」
岩下の伸ばした手から、巨大な炎が生まれ、妖魔を囲むように燃え上が
る。
「大人しく、土に返れ…」
炎に包まれる妖魔を睨みつつ岩下は言った。
断末魔の叫びを上げながら炎の中で妖魔の影が融けて行く。
妖魔の影が融けたのを確認すると、岩下は炎を取り払った。
「…ふう、終わった…あの人も後始末をちゃんとしていないから…忘れ
ているだけかも知れないけどね……」
空を見上げてつぶやく岩下。
ちなみに、岩下の差す『あの人』とは、来栖川芹香の事である。
魔術を扱う彼女は召喚魔法にも長けている。
今、岩下の焼き払った妖魔も芹香が呼び出したものであろう。
呼び出したものの、そのまま放っておく事が多いので、このように岩下
が追い払っているのである。

「今日も一日が終わる…。」
屋上に上がった岩下は燃えるように赤い夕日を見ていた。
一日の終わりに、岩下は必ずここに来る。
「…たいした事件は起こっていないし、平穏に近い一日だった。」

そう、このL学園には騒動が尽きない。
セリスとジンの宿命の戦いに始まり、拓也の暗躍、久々野の陰謀…等な
ど、騒動の種には困らない。
そう言った騒動に岩下は頭を痛めていた。
彼の望むもの、それは平和な学園生活…平穏な生活だった。

岩下はあらかじめ買っておいたミルクティーの缶を開け、飲み始める。
その時、誰かの泣き声が聞こえた。
『…泣き声?』
岩下はその声の方へと歩き出す。
自分の居た位置と反対の所に一人の女子生徒がしゃくりあげるように泣
いている。
「どうしたんだい?」
その女子生徒が気になって、その女子生徒に岩下は声をかけた。
女子生徒はビクッと体を震わせて顔を上げる。
くせっ毛で、眼鏡をかけた童顔の女子生徒だ。
夕日に頬の涙の雫がきらりと光っている。
「すまない、脅かすつもりはなかったのだが…」
慌てて言う岩下。
「いえ…いいんです。人が居るとは思わなかったので驚いただけですから…」
涙を拭いながら女子生徒は言う。
「…失礼だが、泣いているようだけど何かあったのかい?」
涙を拭う女子生徒に岩下は聞いた。
「…あなたは?」
岩下の問いにそう答える女子生徒。
「あっ私は岩下信という者だけど…」
「岩下さんですか…あっ私は藍原瑞穂と言います。」
瑞穂と名乗った女の子は少し微笑んで答えた。
『…可愛い娘だな…』
瑞穂と目が合ったその時、岩下は思った。
「藍原君だね?…で、泣いていたようだけどどうしたんだい?良ければ
訳を聞かせてもらえないかな?」
岩下は瑞穂にやさしく問い掛けた。
 「いえ、別にたいしたことではないので…。」
健気にも微笑んで答える瑞穂。
「…そうか…もし、困った事があるならいつでも相談に乗るから…。」
岩下は、なぜか瑞穂の笑顔に胸が痛くなった。

これが、岩下と瑞穂の出会いである。
その後岩下と瑞穂は必ずといって良いほど放課後の屋上で話をしていた。
互いの事や、他愛の無い世間話。
そして、たまに瑞穂から簡単な相談を持ち掛けられた。
話の時折に見える瑞穂の笑顔に岩下はどんどん引かれてゆくと同時に、
同じように時折覗く瑞穂の憂いの表情が気になっていた。
その表情の訳を聞き出そうとしても、瑞穂ははぐらかすだけだった…

それから、数ヶ月後。
屋上での事が日常と化して、二人の心理的距離が近づいた頃、岩下は瑞
穂の口から瑞穂の苦悩を聞く事となる。

「信さん…私には力が無いのでしょうか?」
いきなりの瑞穂の台詞に戸惑う岩下。
「どうしたんだい?いきなり…」
瑞穂を見て言葉を続けようとした岩下だが、瑞穂と目が合ったその時、
岩下は言葉を失った。
瑞穂の瞳に光る涙。
「私には…月島さんも、香奈子ちゃんも、…そして祐介さんも救えなか
った!私には力が無いから!」
子供のように泣きじゃくりながら言う瑞穂。
そんな、瑞穂を見て岩下の胸がひどく痛んだ。
自分の無力さを恨み、自己嫌悪に陥っている瑞穂。
しかし、瑞穂の救おうとしている相手は普通の相手ではなかった事も付
け加えておく。
「…それは、藍原君のせいではないよ。」
岩下の言葉に顔を上げる瑞穂。
「えっ?」
岩下はふと、過去を思い出した。
過去に岩下は魔に魅入られし者を救おうとして救えなかった過去がある。
そのものは自ら進んで魔の物を受け入れた為だった。
その為、魔とその者自体が同化してしまい、仕方が無くその者ごと封じ
た事があった。
「…本人にその意志が無ければ、その人は救えない…だから、藍原君の
せいではないと思うよ。だから…」
岩下の言葉が不意に途切れる。。
瑞穂が岩下にすがるように体を預けてきた為だった。
「…藍原君?」
突然の事に動揺する岩下。
「…う…うわぁぁ……。」
一瞬の沈黙の後、瑞穂は岩下の胸に泣き崩れた。
岩下は瑞穂を抱き留めながら、
『藍原君は自分が支えてやらなければ…』
と思い始めた。

しばらく、岩下の胸に顔を埋めて泣いていた瑞穂は落ち着くと、岩下か
らそっと離れた。
「…すみません…いきなり泣き出してしまって…。」
涙を拭いながら瑞穂は岩下に言う。
「…あ…いや…いいんだよ、気にしなくても…。」
動揺を隠しきれない岩下。
「…やっぱり、ご迷惑でしたよね…」
岩下の反応を勘違いしてうつむく瑞穂。
「…いや…そんな事はないよ。」
岩下は自分の動揺を押さえ、優しく瑞穂に言う。
「…信さんって…優しいのですね………。」
瑞穂は岩下を潤んだ目で見つめる。
瑞穂に見つめられ、岩下は真っ赤になる。
そんな二人の上には、焼ける様な夕焼けが広がっていた…

                                    〜『出会い』END〜

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どうも、岩下です。
私がLメモを書くと、こうなります。(個人的にギャグは苦手…)
滅茶苦茶シリアス(?)です。

……あぁっ石を、刃物を……N2爆雷を投げないで……(逃げる)

次回の予定は、SGY大戦と、岩下の副会長就任の話を予定しています。
では、またお会いしましょう!