長すぎたよ…てな、わけで続きです。 ………………………………………………………………………………………………………… #(ナンバー)15『×−change(ばつ−ちぇんじ)』 「日輪の力を借りて、今、必殺のサン・アタァァァァァァァァッッッッッックゥゥゥ!」 「プロヴァ=ディ=セルヴォ! 契約完了!!!!!!」 今日も今日とて、ジン・ジャザムvsDセリオ。 もはや日常となった、この光景。 「グレートタイフーン!」 「クライムレイザー!」 「ハイパーオーラ斬り!」 「ガードキャンセル、スプレジオ!」 「計都羅喉剣! 暗剣殺!」 「咎首晒し!」 そう、これは日常。 戦いのとばっちりを受けた、へーのきやら(「もう慣れたよ……。」)、きたみちやら (「僕のメインテーマーは『それは…現実』さ……。」)、その他の一般生徒やら(「俺 は主人公……って、もういいや、どうでも……。」)が黒焦げになっていたが、それもや はり日常であった。 「シャイン・スパーク!」 「ゲルデンハイム3!」 「サンダーブレイク!」 「ファラオマジック!」 「大雪山おろし!」 「プリーズヘルプミー!」 戦いはますますヒートアップしていく。 荒野もますます広がっていく。 ……いつものことだ。 そう、これは日常…… の、はずだった。 「シャイニングフィンガーソード! メン! メン! メェェェェェェェェェェェン!」 「くっ……やりますね。なら……!」 だが日常は突然、崩れ去る。 何の前触れもなく。 「なっ!? お、おい! その技は……!!」 これはジン・ジャザムの身に降りかかった、ある災難の物語。 ジンはその大半を、悪夢の中でしか回顧できぬであろう。 ――夕食時、柏木家。 ぴんぽ〜ん 玄関のチャイムが鳴った。 夕御飯の手伝いをしていた初音は、自分の仕事を梓にあずけ、玄関に出た。 「は〜いっ! どちら様ですかぁ?」 引き戸を開ける。 そこには、 「あっ……初音か?」 「えっ……?」 見知らぬ女性が立っていた。 年齢は……だいたい17、18といったところか。 身長は女性にしては高め。 妙にトゲトゲしたショートヘアの、勝ち気そうな印象を与える女性だった。 その女性が馴れ馴れしく、自分の名前を呼んでいる。 初音の頭上に?マークが浮かんだ。 「あ、あの〜、どちら様でしょうか?」 至極、当たり前な質問をする初音。 それを聞いた女性は、ばつが悪そうに頭を掻いた。 「……やっぱ、分からないか……いや、分かるわけねぇよな……。」 「?」 そのとき、初音は女性の頭を掻く手に、視線を向けた。 そして驚く。 「えっ……金属の手?」 そう、その女性の手は金属で造られていた。 さらによく見れば、身体の至るところがメタリックである。 初音の知っている中では、こんな身体を持つ人物は1人しか存在しない。 そう、初音の幼い頃からの知り合いで、『エルクゥ兵器』の異名を持つ…… 「……えっ? えっ? えっ?」 初音の額に冷や汗が浮かんだ。 いや、まさか、いくらあの人が異常だからって、そんな…… 一瞬、浮かんだ答えを必死で否定する初音。 だが現実の、女性の台詞は残酷だった。 「あの……俺……ジンなんだけど……。」 ……初音は本気で気を失った。 ――柏木家、茶の間。 「……いくら、あんたが非常識でも女になるとは思わなかったわ……。」 「……黙れ。」 初音が何とか意識を取り戻した後。 女になったジンを中心に、柏木姉妹たちは神妙な面もちで集まっていた。 「……で、ジンお兄……いやジンお姉ちゃん……」 「……『お兄ちゃん』にしてくれ。頼むから。」 「……じゃあジンお兄ちゃん……どうして女の子になっちゃったの?」 「ああ……説明するとだな……」 ・ ・ ・。 「何で元に戻らないんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」 ジンの絶叫が響き渡った。 いや、違う。 あっ、いや、やっぱり違わないのだが、肝心な部分が違った。 ジンの叫びは、女の声だったのだ。 ……時間は放課後、ジンvsDセリオの戦いに遡る。 Dセリオが、ジンのシャイニングフィンガーソードの反撃に繰り出した技。 それは…… 『ミッドナイトブリス』 だった。 『ヴァンパイア・セイヴァー』を知らない人に説明すると、これはデミトリのEX必殺 技で、敵を女に変えてから生気を吸い取ってしまう技である。 ……っていうか、こんな技を使えるDセリオって何者? まあ、それはともかく、普通なら女になるのは一瞬で、すぐに元に戻るはずである。 だが、ジンは戻らなかった。 「答えろ、Dセリオ! お前が使った技だろーがっ!!!!」 中途半端にアニメのヒロインとロボットを足して2で割ったような、スパロボシリーズ をプレイしている人に分かるように説明すると『ヴァルシ○ーネ』っぽい外見で、ジンは Dセリオに詰め寄る。 「さあ……私にも分かりません。Dマルチさん、何か分かりませんか?」 Dセリオもワケが分からず、隣りに控えた、Dシリーズ最高の頭脳を持つDマルチに尋 ねた。 「分かりません。仮説を述べるにも、情報量が少なすぎます。」 Dマルチの回答を聞いて、ジンはがっくりと項垂(うなだ)れた。 「あの……これからどうするつもりです、ジンさん?」 さっきまで黒焦げだった(笑)へーのきが、ジンに話しかける。 ジンは苦悩しながら答えた。 「ああ〜! こんな時に柳川先生は、学会だか何かで出張しているし、どうする俺ぇぇぇ ぇぇぇ!? ……とりあえず帰って、千鶴さんにでも相談してみるか……。」 それで問題が解決するとは思えないが、何もしないよりマシだ。 ジンは溜め息を吐いた。 「ところで、ジンさん……」 Dセリオが落胆のジンに話しかけてきた。 「何だよ?」 「私、ジンさんをブリスしたら、アフ■ダインAみたいになるとばかり、思っていました ……(にやり)」 邪悪な笑みを浮かべるDセリオ。 「………………。」 「………………。」 しばしの沈黙。 しばらくして『ぷつんっ』という音が聞こえた。 「上等だぁぁぁぁぁぁ! Dセリオォォォォォォォ! 今すぐに貴様との決着をつけてや るぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!」 どうやらジンがキれたらしい。 再び、戦いを再開する2人。 ジンがこの戦いの無意味さに気付くのは、へーのきが本日2回目に黒焦げになって、さ らに焦土が1キロメートル広がってからだった……。 (注・アフ■ダインA……マジ○ガーZに登場した、『おっぱいミサイル』を撃つ、女性 型ロボットです。) ・ ・ ・。 「……というワケなんだが……何だよ、みんな。さも非常識な物体を見つめるような目で ……。」 「非常識な物体を見つめているから、こーゆー目になってるんだよ……。」 梓が毒づく。 とにかく説明を聞き終えた一同は、途方に暮れていた。 当たり前だけど。 「で、千鶴さん……どうしましょう、俺?」 どうして欲しいのだ。 思わず梓がツッコミそうになったその時、千鶴は、のほほんとした口調で答えた。 「まあ、柳川先生が帰ってきたら詳しく調べてもらうしかないわね……それはともかく、 大きな問題が一つあるわ、ジン君っ」 「へっ……問題?……いや、既に立派に完璧に大きな問題だと思いますけど……」 冷や汗を垂らしながら答えるジンに、千鶴はNON NON☆と首を振った。 妙に楽しげな表情である。 「一番の問題は、ジン君のその格好ね♪」 (あっ……やっぱり、そういう展開ね……。) 千鶴の答えに、妹たちは全員、悟った。 分かっていないのは、鈍いジンだけである。 「格好……ですか? いや、別にいつもと同じ……」 「やっぱり、恋する乙女のデフォルト・スタンダートは『セーラ服』よっ!☆」 ジンの台詞を途中で遮る千鶴。 さすがのジンも「……えっ?」ってな表情になって青ざめる。 「確かここに替えのセーラー服が……」 おもむろに畳をひっくり返し、セーラ服を取り出す千鶴。 ……何故、そんなところに。 とにかくジンは、ようやく身の危険を察した。 「さてと……そろそろ『ベルセ○ク』が始まるから、家に帰らないと……」 「あれは深夜番組でしょ?」(しかも北海道は未放送。) がしっ 逃げようとしたジンは、千鶴に捕まった。 「さあ、これでジン君も最強女子高生ヒロインに、くらす・ちぇんじっ!☆」 「そんな最強は要りませんっ! ちょ、ちょっと、千鶴さんっ! 勘弁して下さいっ! いや、その、笑ってないで!……た、助け……ぎゃあああああああああああああああ!」 抗うジンは千鶴に組み伏せられ、無理矢理セーラ服に着替えさせられようとしていた。 妹たちは気の毒そーに、ジンを見守っている。 誰も助けようとしない。 「もうジン君たら、こんなところまで改造してっ♪ 女の子だから、もっと自分の身体を 大事にしないとダメだぞぉ☆」 「俺は男ですっ!……って、ちょっと、そんな無理矢理……痛ぁぁぁぁっ! ち、千鶴さ ん! そこには、ちゃんと痛覚があるんですから、もっと優しくっ! だああああああ! ヴェスパーは取らないでっ! せっかく10段階まで改造したのにぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」 なんだか装甲を剥がされたり、兵器を外されたりしながら、着ているものを剥かれてい るジンだったが、端から見るとなかなかに羨ましい光景であった(女同士だけど……) かくいうジンも、落城寸前だったりする。 (はあああ……柔らかい、千鶴さん……何かもう、このままで良いかも……って、待てぇ ぇぇぇぇいっ、俺!) しかしジンは、最後の理性を総動員して、自分を取り戻した。 (ここで受け入れてどうする俺!……このままでは負けてしまう! なんか、こう、魂的 にっっっっ!!!! 俺は俺であるためにこの戦いに負けるワケにはいかんのだぁぁぁ!!!!!!) ジンの瞳に光が戻った頃、千鶴はついにセーラ服への着せ替えに移っていた。 「だあああああああ! 千鶴さぁぁぁぁぁん! ホントに勘弁して下さぁぁぁぁぁい!」 涙ながらに訴えるジン。 「だ〜め☆ いい加減、観念しちゃいなさい、ジン君♪」 「観念できませんっっっっっ!! そ、それに無理ですよ! 俺と千鶴さんとではサイズが 全然、違いますし! 特に『胸』の辺りなんか……!」 ……慌てるジンは、思わずとんでもないことを口走ってしまった。 「ヒィ……!」 そんな悲鳴を洩らしたのは、ジンなのか、梓たちなのかは分からない。 とにかく次の瞬間、 べぐおぉぉんっ!!!! 低く、重い爆音が響いた。 ・ ・ ・。 「……ジン……お兄……ちゃん?」 初音が、恐る恐る、声をかける。 返事はない。 ただの鉄塊のようだ。 ――次の日の朝。 ジンは真面目に登校していた。 ……セーラ服姿にギブス、眼帯という『私が死んでも代わりはいるもの』的な格好で。 どうやら結局、千鶴に逆らえなかったらしい。 ジンの女性化のニュースは、もう全校中に広がっていた。 「何だよ……アフ■ダインAじゃねぇじゃん。」「ビュー○スAっていう線も有りだと 思ったけどな……。」などと噂話する一般生徒を片っ端から粛正したが、それでも気分は 晴れない。 というワケで、ジンは朝っぱらから憂鬱であった。 「硬派なのに……硬派なのに、俺……」 そんなことを小声でぶつぶつ呟いている。 そのとき、俯きながら歩くジンの耳を突然、何かが覆った。 「!?」 何事かとジンが振り返ると、そこにはDセリオが微笑みを浮かべて立っている。 彼女がジンの耳に何かを取り付けたらしい。 「な……何だよ……」 と、ジンは自分の耳を覆うものを確かめる。 ……メイドロボ用の耳カバーだった。 「………………何のつもりだ、Dセリオ?」 ひきつった笑顔で尋ねるジンに、Dセリオは邪悪な笑みで答えた。 「お・な・か・ま☆(にやり)」 「………………。」 「………………。」 しばしの沈黙。 このパターンはマズイ。 このままでは昨日と同じく…… 『ぷっつん』 ・ ・ ・。 現世に具現化した煉獄。 戦っている本人たち以外に無事なのは、M.A.フィールド内のセリスとマルチだけだ った。マルチがジンを見ながら、嬉しそうにセリスに話しかける。 「わあ〜、ジンさんも私たちのお仲間さんですか〜。嬉しいですぅ〜」 「…………嫌だ、あんなメイドロボ。」 大丈夫。俺も嫌だ。 あんなメイドロボ。 ――午前の授業中。 とてつもなく、例えるなら『イデ○ン発動編』を見たときのように、ブルーになったジ ンは、結局、授業をサボることにした。 「でぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇい! ロケットパァァァァァァァァァァァァンチッ!」 ふごぉぉぉぉんっ! 岩が砕ける。 砕けた岩と自分の腕とを交互に見ながら、ジンは溜め息を吐いた。 「ちっ……やっぱりパワーが落ちているな……。」 ジンは全ての武器を、エルクゥの力でブーストさせて、戦っている。 そして純粋なパワーでは、女のエルクゥは男のエルクゥより劣る。 その影響が出ているのだ。 「こんなことではDセリオに勝つことなど、夢のまた夢……くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!! ロケットパンチ・メテオぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」 ヤケクソになって、辺り構わず、ロケットパンチをぶちかますジン。 周囲の地形がどんどん変わっていく。 ふと、そのとき…… 「あっ……」 がぎぃぃんっ! 「ふぐぉぉぉっ!?」 ロケットパンチを直撃を受けた通行人が、ヤバメな悲鳴をあげながら倒れた。 地面に血が広がっていく。 「………………。」 しばらく、それを気まずそうに見ていたジンだが、すぐに気を取り直した。 「まっ……いいか。いつものことだし。……悪いけどコレって戦争なのよね。」 いつから戦争になった? 「さて……そろそろ昼休みの時間だし……飯でも食いに行くか……」 ジンは、どう見ても重体な通行人をそのままに、学食に向かおうとした、そのとき。 「ドラマチックな出会いは、新しい恋の始まり……」 そんな台詞を宣いながら、重体の通行人は立ち上がった。 「なっ……」 びっくりして、ジンは通行人の方に振り返る。 その人物は男だった。 頭から大量の血を流しながら、それでも何故か、恍惚の表情で佇む男。 「秋山……登?」 そう。 元『草』の構成員、秋山登だった。 彼はゆっくりとジンに近付いてくる。 「お嬢(ぜう)さん……今のロケットパンチは、貴女ですね?」 血塗れのまま、微笑む秋山。 ちょっと恐い。 「だ……だから、どうした? やる気か、おいっ?」 ジンは身構える。 だが、秋山の返答はジンの想像を超えていた。 「もっと……やってくれ……」 「…………………………へっ?」 秋山は恍惚の表情で近付いてくる。 かなり恐い。 「俺をもっと……ロケットパンチで殴ってくれ……」 「ちょ……ちょっと待て……(後ずさり)」 「俺をもっと……ズタボロにしてくれ……!」 「いいいいいっ!?」 突然、ワケの分からないことを頼み出す秋山に、ジンは戦慄する。 「そう! 俺をもっと痛めつけてくれ! ロケットパンチの衝撃と冷たい感触を楽しませ てくれ! お前のその拳で! 俺の! 劣情を満たしてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」 「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!?」 完全にイっちゃっている表情で、咆哮する秋山。 絶対に恐い。 「苦痛は最高の快楽ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」 「うあああああああ! ロケットパンチィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!」 どこぉぉぉぉんっ! ロケットパンチは、秋山の顔面をクリーンヒットした。 大地に崩れ落ちる秋山。 「はあ……はあ……な、何だ、こいつはぁぁぁぁっ!?」 ジンは涙目で叫んだ。 も、もしかしてマゾって奴か? 今までにないタイプの人間に、ジンはすっかり混乱してしまう。 「こ……この場はさっさと逃げた方が良さそうだな……って、ヒィィィィ!」 むくっ 秋山が再び、立ち上がった。 その表情に、さらなる恍惚を浮かべながら。 「そう……この感触……この痛み……最高だ……!」 「ちょ……直撃を受けて無事だとぉぉぉ!?」 秋山の瞳が、驚愕するジンを捉えた。 「さあ……お嬢さん。もっと、俺を悦ばせておくれ……お前の躰を使ってなぁ!!」 まるっきりエロゲーの悪役ってな感じの台詞を吐きながら、ゆっくりジンに歩み寄る。 ジンはすっかり恐怖の虜になっていた。 「嫌……嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! ナイトメア・オヴ・ソロモンっっっっっっっっっっ!!!!!!」 ジンは全身から、ありったけの武器を出現させて一斉掃射した。 ジンの最強奥義のひとつ、『ナイトメア・オヴ・ソロモン』である。 全ての武器をエルクゥの力でブーストさせて放つこの技は、連邦軍1個師団にも相当す ると言われている(←まぢ?) ぶごおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおん! 攻撃は見事に全弾、秋山に命中した。 十字架型の爆発が天を貫く。 「はあ……はあ……これで……」 全エネルギーを使い果たしたジンが、その場で膝を突こうとしたとき、 「!!!?」 ジンは信じられないモノを見た。 そう。 十字架の爆炎を背景に、ゆっくりとこちらに近付いてくる人型の影を。 その瞳は悦楽に爛々と輝き、更なる快楽を求めてジンの姿を捉える。 ――秋山登。 まさに、煉獄の修羅。 「……嫌……もう嫌……堪忍してぇ……」 ジンは後ずさった。 いつもの大胆不敵なジンは、もう、そこにはいない。 今の彼……いや彼女は、恐怖に震える無力な少女に過ぎなかった。 しかし秋山は容赦ない。 「くふ……くふふふ……くふ……もっと……もっと殴ってくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」 「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ☆!?」 『暴走えば』の如く、走り出す秋山! 悲鳴をあげるジン! ジンは覚悟を決めて、瞼を閉じた。 所詮、俺はこの程度で終わる男だったのか……!? 絶望が彼の胸に飛来する。 だが、そのとき。 「いー加減にしろよ、この変態マゾ男さんっ! でっけートンカチで撲殺し殺すぞぉ☆」 微妙に日本語を間違えている、幼い声が聞こえてきた。 「「!!!!!?」」 刹那。 ぐしゃっ!☆ 滑稽な音を立てて、秋山が宣言通り、巨大なハンマーに殴り殺された。 (し・あ・わ・せ♪) ――秋山、最期の思考。 そして秋山の頭部が、潰れたトマトのように、辺りに散らばった。 「へっ……?」 その様を呆然と見届けるジン。 やがて、そんなジンにハンマーの使い手が話しかけてきた。 「うんしょ……っと。大丈夫、ジンさん?」 「あ……ああ……って、ティーナ?」 そう、ハンマーの使い手は、ちびHM姉妹の一人。 OLHの養女でカレルレンの通い妻のティーナだった。 ……その小さな身体で、身の丈の2倍を超すハンマーを扱えるのか? ジンはちょっぴり戦慄した。 「良かった、無事で☆」 ティーナが屈託のない笑顔で答える。 ジンも思わず、こくこく頷いた。 「ああ……ありがとう。助かったよ……。」 「そう、良かった! じゃあ、コレ……はいっ!」 ティーナは笑顔のままで、何を思ったか、手に持ったハンマーをジンに渡した。 「えっ……何?」 戸惑いつつも、ハンマーを観察するジン。 そのハンマーは、一見、ゴルディ○ン・ハンマーに似ていた。 だが、色はピンク。 槌の中央には大きくハートマークが描かれ、柄の部分はリボンで結ばれている。 ……魔法少女のステッキを無理矢理、ハンマーに変えたような感じだった。 ジンは、女になってから何度目かの、嫌〜な予感に襲われる。 そして、こういう勘は決して外れない。 ティーナが答えた。 「あなたは選ばれた女の子なの! さあ、このステッキで魔法少女に変身して、みんなの 夢と希望を……」 ティーナが全て、言い終わらない内にジンは逃亡を試みた。 だが、そのすぐ横を、波動ガン(←世界、崩壊するって)がかすめていく。 「人の話は最後まで聞きやがれ、この核廃棄物っ☆」 「もう嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 ティーナに胸ぐらを掴まれながら、泣き喚くジン。 「そんなに嫌がらなくても……せっかく、魔法少女ものには欠かせない、可愛いマスコッ ト的な小動物も用意したのに……」 「……小動物?」 そのとき、ティーナの後ろから、ひょいっと、その『小動物』が現れた。 『いよ! ジン!』(CV=石○博也) 「てめえかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! マ○ンガーァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」 なんか、ピカ○ュウな格好の超合金魂マジン○ーZだった。 ……小動物の定義って何? 「とにかく! さっさと諦めて、魔法少女に変身するのよ!☆……その首の烙印が刻まれ た時から、すでに決まっていたことだ……人間(ひと)の力では!! 『神の摂理』は曲げ られぬっ☆!」 「ぎゃわわっ! どれだけ歩いても貴様の元へは辿り着けませんか? グリ○ィスぅぅぅ ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」 何故か昨夜と同じ状況に追い詰められるジン。 女になってから、いいトコ無しである。 そしてジンが魂的敗北を喫しそうだったそのとき、救いの手が訪れた。 「……何をやっているんだ、ジン?」 眼鏡に白衣姿の優男、ジンの師匠にて同志にして博士、柳川である。 「センセぇぇぇぇ!!!! こっちに戻っていたんですねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!?」 地獄に仏、と言わんばかりに、柳川に縋ろうとするジン。 しかし、そのジンをティーナが止めた。 「待って! あの人の様子、おかしいよ!?」 「……えっ!?」 ジンは寸のところで立ち止まり、柳川の方を見た。 確かに……様子がおかしい。 この瞳は、梓シナリオで本性を現すときと同じ、肉食獣の瞳。 そう、狩猟者に覚醒するときの…… 刹那。 「うるぐぁぁぁぁぁあああああ!!」 柳川が苦しみ始める。 「!?……センセ!!!!」 「こ……これは……!?」 そして、柳川の躰が見る見るうちに変貌していく! そう……本来あるべき究極の姿へと! 「うるぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」 「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!?」 「エルクゥユウヤ☆ 強制的に登場ですっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 「やっぱり、それかよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」 ジン、吐血。 しかし、今日のエルクゥユウヤはひと味違った。 「な、何?……この悪意に満ちたオーラ力は!?」 同じ魔法少女のティーナですら戦慄する、その圧倒的エネルギー! エルクゥユウヤに何があったのか!? エルクゥユウヤは……エルクゥユウヤは!!!! 「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!?」 ――スクール水着だった。 「ああっ! ジンさん! 何、15行たっぷり死んでいるの!? 目を覚ましてよぉ!!」 白目を抜いて倒れたジンを、揺さぶるティーナ。 しかし、ジンの魂は既にイデの導きによって、メシアの元へと旅立っていた。 「♪たった一つの〜 星に捨てられ〜 終わりない旅〜 君と歩むと〜♪」 「ああ〜ん!! ジンさんが壊れちゃったよぉぉぉぉぉぉ!」 おろおろするティーナ。 ちなみに○ジンガーも、とっくにジンと同じ世界へ旅立っている。 恐るべし、エルクゥユウヤ。 ティーナと倒れたジンの元に、エルクゥユウヤが近付いてくる。 そして、エルクゥユウヤはステッキを振り上げた。 「!!!?……きゃあああああ!!!!」 ――魔法の閃光と爆音が、世界を包み込む……。 「くっ……俺はいったい……こ、これは!!!?」 ジンが復活したとき、辺りは炎の海だった。 しかし、ジンは無事だ。 ジンを庇うように、17、18歳の少女が倒れている。 マジカルティーナ――変身したティーナだ。 エルクゥユウヤの魔法攻撃が発動する瞬間、ティーナは変身して、魔法障壁を張った のだ。 しかし、その反動でティーナは傷つき、倒れてしまった。 「ティーナ……。」 ジンはボロボロのティーナを呆然と見つめている。 そこにエルクゥユウヤが勝利の微笑みを浮かべながら、近付いてきた。 ――まさに、ピンチ。 しかし、ジンは動かなかった。 ……俯いているジンの表情は、エルクゥユウヤの位置からは読み取れない。 「うふっ☆ 魔法の力で、街中に薔薇と恐怖を振りまくのっ♪」 上機嫌なエルクゥユウヤ。 そして、最後のトドメを刺そうとティーナに手を伸ばす…… そのとき。 バシュッ!!!! 「痛ッ!!!?」 ティーナに触れようとしたその手を、光が弾いた。 「何だ?……なっ!?……ジ、ジン……!」 見れば、ジンの身体が金色に輝いている。 ジンがゆっくりと面を上げた。 彼(彼女)の瞳には、いつもの輝きが甦っている。 その表情に哀しい決意を秘めて、ジンが叫んだ。 「柳川センセっ!!!! こんな形で争いたくはなかった!!!!!!」 そりゃ、そうだろう。 色んな意味で。 「ふっ……貴様に何が出来る、ジン?」 エルクゥユウヤが嘲るような表情で言った。 ジンは……答えない。 かわりに 「ぞんだーどぐーがべへりっと! 熱血!必中!魂!閃き!……召!」 ジンを包み込む光が爆ぜる! エルクゥユウヤはあまりの眩さに、視線を背ける。 そして光が収まったとき、そこにジンの姿はなかった。 「ちっ……何処だ!?」 叫びつつ、辺りを見渡すエルクゥユウヤ。 やがてエルクゥユウヤは、太陽を背に、宙に浮かぶジンの姿を見つけた。 その姿はファンタジーに出てくる女騎士のような、甲冑姿。 そして、両手に握られたマジックハンマー。 ジンが叫ぶ! 「世のため、人のため、薔薇の野望を砕くマジックナイト・ジン!! この日輪の輝きを恐 れぬならば、かかってこい!!!!」 同時にマジックナイト・ジンは急下降して、エルクゥユウヤに殴りかかる! 「嘗めるな!」 ハンマーの一撃を、爪で受け止める柳川! 交差するハンマーと爪から、激しいオーラが吹き荒れた。 「柳川センセ! 憎しみばかりがパワーアップしているぞっ!!」 二度、三度、攻撃を繰り出すマジックナイト・ジン。 「……エルクゥユウヤ☆」 マジックナイト・ジンの間違いを訂正しつつ、その全てを防ぐエルクゥユウヤ。 両者の力は互角だった。 何度目かの競り合いの後、弾かれたように飛び退く2人。 「柳……エルクゥユウヤ! お前はその怨念で何を手に入れた!!!?」 「魔力と……快感だ!!!!」(←やめれ) ――マジックナイト・ジンはマジックハンマーを正眼に構えた。 ハンマーにありったけの魔力を集める。 「俺は人は殺さない……その怨念を殺すっっっっっっ!!!!!!」 「!!!?」 魔力は膨れ上がり、形になり、マジックナイト・ジンの望む世界を構成していく。 その圧倒的な力に、さすがのエルクゥユウヤも怯む。 マジックナイト・ジンが呪文を唱え始めた! 「言葉は沈黙に! 光は闇に! 生は死の中にこそ在るものなれ! 飛翔せる鷹の虚空に こそ輝けるが如くに!」 そして、マジックナイト・ジンの元から力が放たれ……! 「砕け、鉄拳! ロケットパァァァァァァァァァァァァァンチッッッッッッ!!!!!!!!!!」 「待てぃ! それ、魔法じゃ……へぶしっ!!!!」 マジックナイト・ジンは勝った。 「やったね! ジンさん! これでジンさんも魔法少女の仲間入りだねっ!」 「ああああああ! 勘弁してくれ! これっきりにしてくれよ!」 「駄目だよ! それほどの素質があるのに……!」 エルクゥユウヤを葬った後。 あのとき、実は目を覚ましていたティーナにまとわりつかれ、ジンは辟易としていた。 「俺はいつまでも女でいるつもりはないし、センセのように薔薇に染まるつもりもない!」 「でも、どうやって元に戻るつもりなの?」 「うっ……!」 痛いところを突かれてしまう。 頼みの綱だった柳川は、ジン自らの手で葬り去ってしまった。 科学的に解明する手段が封じられた今、元に戻る術は…… 「ああああああああああ! もう、誰か助けてくれよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」 絶望したジンは、心の奥底から叫びをあげる。 そして、その叫びに応える者がいた。 『そうじゃな……主をからかうのも、そろそろ飽いた……。』 「!」 「?……どうしたの、ジンさん?」 その声は、ジンにしか聞こえない。 そして、その声はジンのよく知っている者の声だった。 「遊輝!……貴様か!?」 「……遊輝?」 『くすくす……なかなか楽しいものを見させてもらったぞい☆』 声の主は、さも愉快そうに笑う。 ジンの表情が怒りに変わっていく。 ワケが分からないのはティーナばかりだった。 『では妾はしばらく眠る……お休みなのじゃっ』 声は一方的に締めると、それっきり聞こえなくなった。 それと同時に、ジンの身体に変化が訪れる……男に戻ったのだ。 ジンは安心する反面、自分の中に眠る存在に、心の中で毒突いた。 (『ミッドナイトブリス』をきっかけにして、俺の身体に干渉したってか? 『封印』が 弱まっているとでも言いたいのか、あいつ!) 「あの〜、ジンさん……」 物思いに耽っていたジンに、ティーナが恐る恐る声をかける。 「?……何だよ?」 「ジンさん……その……格好……」 「へっ、格好……」 と、そこまで言いかけて、ハッ……と青ざめた。 今日は無理矢理、着せられた千鶴さんのセーラ服で登校していた。 と、いうことは……。 「ジン・ジャザムさん……あなた、何をしているんです?」 突然、背後から声をかけられ、後ろを振り向くと……そこには、静かな殺意を瞳に灯し た風見ひなたが立っていた。 「………………よう、風見。」 疲れ果てた口調で答えるジン。 もう、諦めモードに入っている。 今日はきっと……こんな日なんだ……。 「まさか、あなたが幼子に対して、そのような破廉恥行為に及ぶとは……正直、失望しま した……っていうか、ティーナに近付く奴は死ね。」 「……どうせ、俺は戦い無しでは生きられない男なんだな…………畜生! こうなったら、 トコトンやってやる!!!! 所詮、戦士は戦いを通してしか己を表現できぬ、不器用な生き 物ぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」 こうして、ジン対風見の戦いが始まった。 そう。 ようやくジンの平和な日常が戻ってきたのだ……。 周囲を巻き込みながら戦う、風見とジンを見ながら、ティーナは思う。 「……ジンさん、いや、マジックナイト・ジン! ボクは諦めないよっ!」 新たなる混乱の種がまたひとつ、生まれようとしていた。 一方、屋上。 先程のマジックナイト・ジンの戦いを見守っていた者がいた。 「ふん……エルクゥユウヤを倒したくらいで調子に乗るなよ……。いくら君でも、僕の華 麗な魔法にはかなわないさ……。」 月島拓也……いや、シズクゥタクヤ。 彼の瞳には、暗い歓喜が宿っていた。 保健室。 「ふふっ☆ ジンくんも魔法少女に変身するなんてね……面白くなってきたみたい☆」 ふりふりドレスを着た千鶴……ウェディング・リズエル。 近くには簀巻きにされた耕一が転がっていた。 ジンたちが去った、元戦場……その瓦礫の下。 「くっくっくっ……面白い、ジン! 師匠であるこの俺を見事、乗り越えてみよ!!」 やっぱり生きていた。 そのすぐ隣り。 メモ帳を持った金髪少女。 「チキュウ人の強さの秘密、しっかりと記録したネ! これで私も最強ヨ!」 プリティレミィだった。 オカルト研。 「………………。」 「………………ご主人しゃま……。」 魔法ドレスを着たまま、ぽ〜っと突っ立っている芹香をエーデルハイトは、額にでっけ ー、冷や汗マークを浮かべながら見つめていた。 かくして、学園には魔法少女群雄割拠の時代を迎えることになる。 魔法少女の頂点に立つ者……魔法少女・ザ・魔法少女の称号を手に入れるのは、果たし て誰なのか…… 誰でもいい。 誰でもいいから、マジックナイト・ジンのことは忘れてくれ。 頼むから(爆) きっと脳味噌が膿んでいる状態で書いたのさ……完 ………………………………………………………………………………………………………… 何故だ……何故、どんどん長くなる? しかも、内容が壊れていく? はろはろ お久しぶりの、ジン・ジャザムです。 とにかく、マジックナイト・ジンのことは忘れましょう。 俺と君たちとの約束です(笑) ……こんなもん書くのに、さんざん苦しんだのか、俺……。 前の二つはずぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっっっっっっと前に完成していたのに……。 膿んでいるのか、俺? あぐ〜、次回はシリアス。 シリアスだ! これ以上に膿んだら、脳味噌が耳から垂れてくる(爆) ようやく、俺的外伝も5で切れ目がいいので、裏話でもしたい感じです。 こっそりUPしとこうかな(笑) あと、各章タイトルの数字の部分。 第○話とか第○章とかVol.○とか……意味なく、全部変えるのは止めます(笑) 疲れるし(笑) ホントは1回につき、3話掲載するサザエさん的方式もかなり辛いのですが……(爆) では、嘘つき次回予告 ………………………………………………………………………………………………………… 次回予告 「やあおれのなまえはじん・じゃざむこうこうさんねんせいさ」(棒読み) 「くらえてっけんろけっとぱんち」(棒読み) 「でいせりおおれとたたかえ」(棒読み) ……ハイドラントさま。 セリスと一緒に聞きました、例の『To Heart』?(←疑問形)テープ。 素晴らしいものをありがとうございます(涙) っていうか死なせてもらいます、俺(爆) では、復活すれば次回(爆)