テニス大会参加Lメモ「黒の残響」 投稿者:神凪 遼刃
  Leaf学園の昼休み……
「テニス……ねぇ」
  学園掲示板に前に神凪遼刃が突っ立ってぼやいていた。
  ここは学園の掲示板。
  いつもはほとんど誰も寄り付かない場所だが最近は非常に繁盛していた。
  理由は……掲示板に書かれている内容だろう。
  そこにはこう書かれていた。
 『テニス大会開催』
  これだけでこんなに大人数がが集まるわけはない。
  本当の理由は以下の内容であろう。
 『ペアで温泉旅行ご招待』
  普通の学園生徒なら『よっしゃ!ここは一つ彼女(彼)との親交を深める為にいっちょやるか!』と言うことであるが、神凪はちょいと違っていた。
「ふーむ、琴音さんを誘うべきか否か、どうしたものでしょう」
  これがもし普通の高校のテニス大会ならば問答無用で誘っていただろう。
  しかし、どっこい、ここはLeaf学園。
  世間の常識などというものは、ベスビオ火山の中に奇麗さっぱり捨ててきましたなどというた化け物じみた連中の集まる学園である。 この一点が琴音を誘うことを躊躇させていた。
「やっぱり止めておきましょう、絶対に琴音さんに危険が及びますし」
  ここで『男なら好きな女くらい守るくらいの気概はないのか?!』という意見が飛び出しそうだが、神凪ははっきり言って運動というか体を動かすこと全般が苦手、はっきり言って琴音を守り切れるとは考えるほど楽観主義者ではなかった。
「まあ、今回は見物に回りますか……」
  そうして神凪はもう何の興味も無くしたかのように掲示板から離れた。


  そして放課後。
「さて、戸締まりは終わりましたし、早く帰ってホームレスカルトの解読でも
しますか」
  学園最大の魔導研究者の集まりオカルト研。
  そこでの今日の日課(魔導書解読)を終えた神凪が夕張の中を  玄関に向かっていた。
「にしても、随分遅くなりましたね……」
  いくら季節が夏に変わる頃とは言え6時ともなれば辺りは闇を帯び始める。
  そして神凪が掲示板の近くを通り過ぎる時、そこに人の気配を感じた。
「……? こんな時間に……一体誰が?」
  気にかかったのでとりあえず覗いてみることにする。
  女がいた。
  艶のある紫がかった銀髪。
  髪の色と寸分も違わない色を持った瞳。
  申し分無く美しい妖艶でありながらどことなく子供のようでもある顔立ち。
   だが神凪が問題としたのはそんなことではなく……
  女が纏っている気の方だった。
  限りなく純化され清廉ささえ感じる妖気を全身から放っていた。
  それで神凪は女が何者であるか悟った。
「(魔族……か、それもかなり高位の…)」
  女も神凪に気付いて視線をそちらに向けた。
「へぇ、随分と魔界に近づいているわね、半ば同化してるじゃないの」
  女は神凪を見るなり軽く驚いた風を装ってからいきなり言い放った。
「魔界? あいにくと私はただの人間ですよ。あなたとは違って」
「ふふ、肉体的にはね。私が言ってるのは魂の方よ。人間でそこまで魔界に近づくなんてね。もう少ししたら、貴方と私は同族になるわ」
「あいにくと、私は人間以外のものになる気はありませんよ」
「ま、それがいいわね。人間が魔族になってもロクなことにはならないから」
  そう言うと女は掲示板の方に視線を移した。
「まだ名乗ってなかったわね、ルミラよ、ルミラ=ド=デュラル、貴方は?」
  掲示板に視線を向けたままルミラが神凪に問い掛けた。
「神凪遼刃と申します、魔貴族デュラル家の当主殿」
「良く知ってるわね……」
「有名ですからね、人間界にいる魔貴族自体が少ないと言うこともありますが」
「ま、どーせ、良い風には言われてないんだろうけど」
  視線を掲示板に張りつけたままルミラ溜め息を吐いた。
「それで掲示板に何かあるので?」
「張り紙がしてあるわ」
「………………………」
「………………………」 
  絶対零度クラスの沈黙だった。
「冗談よ……だから、そのじと目はやめなさいって。ま、このテニスのやつなんだけどね、見てたのは」
「ああ、テニス大会のですか、出るんですか?」
「そうしたいのは山々なんだけどね……あいにくとパートナーがいないのよ、あいつらは、全員女だし」
  そう言うと再び溜め息をついた。
「じゃあ、諦めるしかないですね」
「諦める……?」(ぎろ)
  思いっきりきつい目で神凪を睨んできた。
「あ、いえ、その…」
「あんたね……役に立たない下僕を6人持ったことある? そいつらにせめて学歴くらいは持たせようとして、バイトをしたことは? しかも昼間だけじゃ足りなくて夜にもバイトをしたことは? それがどんなに辛くて忍耐強いことだかわかる? そんな私に巡ってきチャンスなのよ、これは! 神様が私に少しばかりのプレゼントをくれたのよ! それを諦められるとでも?」
  凄まじい勢いだった。
  まるでフェラーリでダンプカーに突っ込んでいくようだった。
  神凪は少しびびりながらも気になったことを言ってみた。
「あの、魔族が神様関係でそんなこと言っていいんですか?」
「うっさいわねぇ、例えよ、例え! で、どうなのよ」
「うーん、思いません、その勢いからすると随分苦労されてるそうですし」
「そうなのよ……何とか出場できないかなって考えて、ここで相手を探してたんだけど、見つからないのよ」
  ふう……
  三度ためいき。
「こんな時間にここを通る人なんていませんよ」
「それもそうか……でも貴方が来たじゃないの」
「偶然です」
  その言葉にルミラは軽く肩を竦めた。
「起こったことは全て必然よ。それは書き換えることの出来ない事実なんだから……そうか……ここで貴方と会ったことが必然ならそれは貴方と組めということかもね、で、どう?」
  ルミラが神凪を軽く上目使いで見ながら尋ねてきた。
「どうと言われましてもね……」
「すでに組んでいる人がいるの?」
「いえ、それはいませんが。そうですね、ここで魔貴族の貴方に借りを作るのもいいかもしれませんね、わかりました、お引き受けします」
「随分と打算的ねぇ」
「これまた性分ですから」
  そう言って神凪は独特の薄い笑いを浮かべた。
「じゃあ、決またわね」
「ま、引き受けたからには全力を尽くしますよ」
「ふふ、楽しみにしてるわ」
  そして二つの影は闇にとけ、消えた。


 了


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神凪:「どうも」
知音:「随分久しぶりですね☆」
神凪:「忙しいんです、実習多いんです、レポートが悪いんです」
知音:「……政治家みたいな言い逃れですね」
神凪:「私は何も存じ上げてあげてはおりません」
知音:「それにしても、てっきり琴音ちゃんと組むと思ってたのに」
神凪:「いや、こういう場合萌えキャラと組むのが一番正しい選択なんだろう、 しかし、中にはこーいう奴がいても面白いでしょう?」
知音:「捻くれ者ですね☆」
神凪:「悪かったですね、いいんですよ。捻くれてるのが好きなんですから」
知音:「それじゃ、そろそろお別れの時間です☆」
神凪:「よっしーさん、私はルミラ様とペアでお願いします」
知音:「頑張って下さいね、楽しみにしています☆」
神凪&知音:「それでは、またLeaf学園でお会いしましょう」