Lメモ「異世界からの客人(まれうど)」 投稿者:神凪遼刃
 Lメモ「異世界からの客人(まれうど)」
 ここはLeaf学園オカルト研究会の部室。
 部室の中では神凪遼刃と神無月りーず、来栖川芹香が顔を突き合
わせてなにやら議論をしていた。
「それじゃあ、ここの魔力配分を変えてみたらどうかな?」
「それだと生成時の安定度が不安定になります、それに副作用ので
る確率も高くなりますから・・・、
 むしろここのメリクリウスの調合量に問題があると私は考えてい
るのですが」
 りーずの出した案に神凪が口を挟む。
 ことの始まりは神凪が芹香に秘薬の調合についての相談を持ち掛
けたことだった。芹香と議論をしている内に、話しの内容に興味を
持ったのかりーずもこの魔術談義の輪に加わり、そして3人でオカ
ルト研に置かれていた丸テーブルを囲んで秘薬の生成について討論
しているというしだいである。
 「・・・・・・・・・・」
 「ほう・・・芹香先輩もりーずさんに賛成ですか、うん、ではそ
の線で進めてみましょう。今日は有意義な時間を過ごせましたよ、
お二人とも相談に乗っていただきありがとうございました」
 神凪がりーずと芹香に礼を言う。
 「僕も楽しかったよ」
 「・・・・・・・・・」
 りーずと芹香が神凪に向かって会釈を返す。
 「では続きは明日にでもするとして私はこれで失礼しますよ」
 「もしかしてまたXY−MENさんの所にいくのかい?」
 「ええ、そうですけど・・・それがなにか?」
 神凪がりーずの問いにいぶかしげな気な表情で返答する。
 「いや、別に何もないよ。ただよく行くな・・・と思っただけだよ」
 「たこ焼きは私の好物の一つですからね」
 そうなのである。神凪は大のたこ焼き好きなのである。
 そのたこ焼き好きはかのタル○ート君に匹敵するらしい・・・ってまじ?
 「それでは、また明日」
 神凪はどことなく堅い表情のりーずと芹香に挨拶をしてから部室
を去った。
 「気付いている様子は無いか・・・
 まったくきしめんさんももう少し気を付けて欲しいな・・・」
 りーずが神凪の出ていったドアを見つめながら嘆息した。
 その後、この学園でも希にみる珍客がこの部室を訪れることにな
るだろうということは誰も想像していなかったが・・・


 「こんにちはきしめんさん、一船いだたけますか?」
 ここは学園運動場の一角。
 ここでXY−MENこときしめんがたこ焼きの屋台を開いていた。
 「はいよ!神凪さん、どうぞ!」
 やたら威勢のいい声で10個のたこ焼きを収めた皿を
差し出すきしめん。
 「300円でしたね・・・はい」
 そう言いつつ貫頭衣の内ポケットから財布を取り出しきしめんに
渡す。
 「まいどあり!しっかし神凪さん。よくここに食べにくるなあ、
まあこっちとしては嬉しいしありがたいんだけど」
 そうなのである。
 神凪は図書館地下ダンジョンに潜っていない時は大体二日に一回
はこの屋台にたこ焼きを食べにくるのでる。
 「いいじゃないですか、私はたこ焼きが好きですし・・・それにこ
このたこ焼きは私が知る限りでも一番美味しいですしね」
 爪楊枝でたこ焼きをつつきながら神凪がそう言う。
 正直な感想だった。
 「そう言ってもらえるとこっちとしてもやる気が出るってもんだ」
 きしめんが串でたこ焼きをひっくり返しながら笑う。
 「そう言えば・・・少し聞きたいことがあるんですが・・・」
 「ん・・・・何だ?」
 「少し前に情報特捜部の新聞で読んだんですが・・・学園に人狼
が出たそうです、何か知りませんか?」
 「(げ・・・やばい、読んだのか)」
 人狼・・・錬金術師にとっては垂涎の研究対象。
 もはやこの世界ではほとんど・・・と言うか絶滅したというのが
錬金術師、魔術師の一般的な見解であった。
 その人狼がついこの間この学園に現れたという情報が特捜部の新
聞に載ったのである。
 そこで錬金術師の端くれである神凪もいろいろ探してみていると
言う訳なのだが・・・
 「さあなあ、どうせ情報特捜部のことだから志保のがせねたじゃ
ねぇのか」
 きしめん・・・唯一ともいえる人狼の生き残りが努めて動揺を押
さえながら答える。
 「・・・長岡さんですか。ありえますね」
 神凪が苦笑しながら同意して見せる。
 それで一応納得したようだ。
 「(ふう、全く・・・もう少し気をつけないとな)」
 きしめんが心の中で溜め息を付く。
 と・・・その時、
 「いたいた、神凪さん!探したんですよ!」
 同級生で同じくオカルト研究会に所属している東西が屋台を目指
して・・・というか神凪を目指して走り寄ってきた。
 「何か用ですか、東西さん」
 神凪が駆け寄ってくる東西に声を掛ける。
 「何か用じゃなくて・・・お客さんですよ、神凪さんに」
 「・・・私に?お客?どこで?」
 神凪がいぶかしげな視線を東西に向ける。
 「オカルト研究会で待っていますから早く行ってあげてください」
 「ふむ・・・とりあえず行ってみましょうか。東西さん、申し訳
有りませんがオカルト研究会まで案内していただけますか?」
 「ああ・・・いいですよ」
 苦笑しながら神凪が筋金入りの方向音痴ということを思い出す東西。
 「ではきしめんさん、また食べにきますよ」
 「ああ、またな」
 そう言うと神凪は東西について研究会の部室に向かった。
 去ってから少し後に、
 「ジンさん!これで終わりです!!ソウルイレイサー!!!!!」
 だの、
 「食らえぇぇぇ!!!!!ナイトメア・オブ・ソロモン!!!!」
 だの、
 「俺の屋台がぁぁぁぁ!!!!てめぇらぁぁぁぁ!!!!」
 と言った声が響いたのだが神凪と東西は無視した。
 いつものことだし(笑)


 でオカルト研究会前である。
 「はあはあ・・・やっと着きましたか・・・」
 乱れた息を整える神凪。
 「で・・・お客さんってどんな人なんですか?」
 神凪が隣で同じように息を整えている東西に聞く。
 お客が来ているとは聞いていたのだが,、
 どんなお客かは聞いていなかったのである
 「そう言えば言ってなかった・・・えーと・・・妖精さんです」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・妖精?」
 神凪が聞き返す。冷や汗を垂らしてどことなく脅えたような感じで。
 「そうです、たしか名前は・・・」
 「知音ですね!そうでしょう!!そうに決まってる!!!」
 思わず声を荒げて東西に詰め寄る神凪。
 「え!え!え!知り合いなんですか?!」
 いきなり態度が豹変した神凪に多少後ずさりながら答える東西。
 「なんてことだ!!!まさか、あいつがこの世界にやって来ているな
んて!!!どうしてここが分かったんだ??!!」
 「あ、あのー神凪さん・・・?」
 動転しまくる神凪に東西が不安気な声を出す。
 「・・・・東西さん。後のことは任せます。
 私、暫くダンジョンに潜ってきますので・・・では!!!」
 「そういう訳にはいきませんよ。神凪さんを尋ねてきたんですから」
 そう言いながら神凪の貫頭衣の袖を掴む東西。 
 「がぁぁぁぁ!!!!後生ですから離してぇぇぇ!!」
 もがきながら暴れる神凪。
 しかし「術」ならともかく単純な力比べなら学園でも最下位にな
ろうかと言う神凪である。はっきり言って逃げれるはずがなかった。
 そのまま部室に引きずられていく。
 そう、いつも自分が被験体に対してそうやってるように・・・
 「神凪さんを連れてきましたよー」
 ドアを開き部室内に向かって声を投げかける。
 部室内では芹香とその肩に乗っているエーデルハイド、りーず、
そして神凪と入れ代わりにやってきた、沙耶香が一つのテーブルを
囲んでテーブルの中央にいる「何か」と話していた。
 「あーーーー!!!!!マスター、見ーーーーっけ☆」
 その「何か」が東西に引っ張られている神凪の姿を見つけて叫ぶ。 
 「やっぱり、貴方ですかぁぁぁ!!!!!知音ぇぇぇ!!!」
 神凪がその「何か」−妖精−の声を聞き頭を抱える。
 そう・・・妖精であった。
 身長は30cmくらい。
 透き通った二対の羽を背中からはやし、先端に白いポンポンのつ
いた青いとんがり帽子、草色のチェニックと同色のスカートを
身につけ、さらに両手に白いぶかぶかの手袋をはめている。
 顔には人懐っこい笑みといかにもいたずら好きといった風な瞳を
持ち、ぷかぷかと宙に浮いている。
 想像上の妖精そのままとはいかないが・・・妖精だった。
 もしこいつを見て人魚とか思う人がいたら・・・
 かなり特異な発想の持ち主だろう。
 で・・・その妖精こと「知音」はやっと東西から解放された神凪に
近寄っていった。
 「ふふん☆マースタ、私から逃げられると思った?」
 「だから、何で貴方がこの世界にいるんですか??!!」
 「それはね、私がマスターに会いたいなあ・・・って言ったら、
マスターの昔の仲間さん達がこっちの世界に送ってくれたの☆」
 「(・・・手におえなくなって厄介払いしましたね・・・
あの人達は・・・まったく)」
 心の中で以前−そうかつて異世界にいたころ−の仲間達に悪態をつく。
「大体の話しはそこの妖精さんからお聞きしました。神凪さんも
ひどいことをなされたんですね・・・」
 神凪から一番離れたテーブルについた沙耶香がそう非難する。
 「ひどいことって・・・何がですか・・・・?」
 神凪が冷や汗を浮かべて部室内のオカルト研の面々を見渡す。
 「なんでも・・・神凪君がこっちの世界に戻る時に置き去りにし
たそうじゃないか」
 りーずが「ひどいこと」の内容を説明する。
 「い・・・いや、あれは・・・その・・・」
 「にゃんでも、絶対付いて行くって言ってた知音ちゃんを薬で
 無理矢理ねみゅらして置いていったとか・・・」
 「(・・・このくそ猫・・・実験台にして欲しいんですかね?)」
 そんなことを考えながらエーデルハイドを睨む。
 「神凪君、少しは知音ちゃんの気持ちも考えてあげないと・・・」
 「気持ちですか・・・・・」
 知音の気持ちはよく分からなかった。
 仲間内でも性格に把握していたものはいなかっただろう。
 知音がこの世界に付いてきたいと言った時は驚きだった。
 何故知音がこの世界に憧れたのかは分からない。
 しかし知音はこの世界に来たいと言った。
 しかし自分は知音を置いてきた。
 この世界では自分は使い人から狙われてる。
 知音をそんな所に置きたくはなかった。
 そう・・・初めて知音に会った時から・・・知音のことを色々
気にかけていた。
 恋愛感情ではなく、むしろ妹のような感じだったが・・・
 「知音・・・・」
 「え?な、何?マスター?」 
 神凪が固い表情で知音の呼び掛ける。
 「帰りなさい・・・貴方はこの世界の者ではありません」
 「・・・・!?」
 「神凪君!?」
 「神凪さん!?」
 全員の視線が神凪に集まる。
 「え、えーとマスターがそう言うんならしょうがないんだけど・・・
 その・・・あのねマスター」
 「なんですか?」
 「あははは、帰る方法が分かんないの☆」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・」
 「・・・えーと待ってください、つまり貴方は帰る方法も知らないのに
この世界に来たんですか?」
 数秒間の沈黙の後神凪がそう絞り出す。
 「帰る方法って何?」
 「・・・・・・・・芹香先輩なんとかなりませんか???!!!」
 「・・・・・・・・・・・・」
 「耐魔術用のコーティングがされてから無理にゃそうにゃよ」
 エーデルハイドが芹香の代弁をする。
 「(・・・・あの人達は・・・そこまでしますか)」
 神凪の脳裏にかつて仲間だった者達が高笑いしてる様が浮かぶ・・・
 「あのーー、マスター、私どうしたらいいんだろう・・・。この世界じゃ
マスターしか頼る人いないし・・・」
 知音が懇願するような眼差しを向ける。
 「・・・・うぐ」
 知音の視線をうけて神凪がたじろぐ。
 神凪はこの視線が苦手だった。
 ・・・そう、どことなく妹が何かをねだった時の視線に似ているから。
 「・・・・・・・・・」
 「・・・・・・・・・」
 神凪と知音がお互いの一挙一動を見守る。
 芹香もりーずも東西もエーデルハイドも沙耶香も・・・二人を
見守っている。
 「・・・はあ、分かりましたよ・・・」
 根負けしたのかそれとも腹を決めたのか神凪が溜め息をつく。
 「帰る方法が分かるまで私の所に来なさい、それでいいですか?」
 「りょーかい!!マスター!!」
 知音が笑みを浮かべる。
 神凪がいままで見た中でも五本の指には入る笑みであった。
 

 そして夕刻。
 学園男子寮神凪遼刃の部屋。
 「あーあ、マスター相変わらず散らかってるなぁ・・・」
 あの後オカルト研究会でさんざん騒いだ知音が神凪の部屋を見て呟く。
 神凪の部屋は世界中から集めた魔道書で溢れかえって足の踏み場も
ないほどであった。もっとも宙に浮かんでる知音には関係ないが。
 「うるさい・・・いいでしょう別に・・・」
 「あっちの世界でもそうだったけど・・・
 ちょっとは片付けた方がいいよ?女の子が来たりすると困るでしょ?」
 「困るのはあなたでしょう。それからこの部屋に女性を連れ込まないこと。
絶対ですからね、破ったら放り出しますよ」
 「ほいほーい☆」
 「(分かってませんね・・・・まったくこいつは・・)」
 それから神凪が色々なことを知音に教えていく。 
 この世界での法や常識。
 機械などの操作法。
 外ではあまり妖精の姿をせず人間に変化することなど・・・
 「それから・・・知音、知音?」
 「すう・・・・うーん」
 知音は幸せそうに寝ていた・・・それも宙に浮かびながら。
 「まったく・・・・」
 苦笑しながら即席に作った布団に入れてやる。
 「やれやれ・・・また頭痛の種が増えましたね・・・」
 そう言いつつも神凪の顔には笑みが浮かんでいた。
 いつもは滅多に出さない笑みが・・・

 そして・・・異世界からの客人を優しく包みこみ夜はふけていった。

 Lメモ「異世界からの客人(まれうど)」  了


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神凪:「・・・・しまった 」
知音:「どーしたの、マスター?」
神凪:「これだと、私がシスコンであまつさえあなた萌えのようじゃ
        ないですか」
知音:「・・・うーん、マスター。私と付き合いたいの?」
神凪:「お断りします、私は琴音さん一筋です(どきっぱり)」
知音:「でも某不思議の国社の女の子に浮気したって聞いたけど?」
神凪:「危険な発言は止めなさい、第一世界が違うでしょう」
知音:「ほえほえ、問題のすり替えだね☆」
神凪:「それはともかく・・・・」
知音:「あ、逃げた」
神凪:「ではまた・・・次の作品でお会いしましょう」
知音:「ちぇ・・・それじゃまたねー」