Lメモ「Leaf学園の魔獣!」 投稿者:神凪遼刃
  Lメモ「Leaf学園の魔獣!」
  刻は草木は眠り人もその活動を休息するころ。
  Leaf学園から少し離れた公園。
  錆びたぶらんこや近々取り壊される予定のジャングルジムが静かに
たたずんでる、そんなどことなく寂しさが漂っている公園。
  今ここに二人の人間の影があった。
  人間?
  二人?
  いや、二人の他に一人の人間がむき出しの地面に倒れている。
  さらに確かに二人は人間の姿をしているが、一人はどことなく
人間と異なる部位を持っている。 
  まず、腕。
  人間より遥かに太くそして長く伸びた鋭い爪を持っている。
  口。
  鮫の歯のようにとがりぎざぎざに並んだ歯が口外にまで突き出ている。
  そして・・・もっとも違う額。
  一本の角が暗い天を突き刺すように突き出ている。
  そうそれは鬼の姿をした異形の者。
  学園に存在するエルクゥと呼ばれる鬼とは違いこの地に土着していた鬼。
  彼は妖魔と呼ばれる怪。
「一角鬼、貴方が連れてきたこのお嬢さん。なかなかのものですね」
  妖魔−一角鬼−の前に立つ妖術師が地面に倒れ付した女性を見てそう言う。
「・・・お誉めに預かり・・・」
  一角鬼が妖術師に頭を下げる。
  そう前に立つ妖術師−神凪遼刃−こそが彼が仕えるべき主。
  ほとんど一方的な契約により従うを余儀なくされた。
  しかし彼は主を裏切ることは出来ない。その思考を持っただけで
  妖魔の体は自壊を起こし永劫に苦しむ地獄を味わわされる。
  見えない鎖で縛られた者・・・そんな形容がピタリとあっていた。
「さて・・・では始めましょうか・・・」
  神凪が持っていた杖を地面に垂直に立て、手を放す。
  その杖は神凪の手から解放されたにもかかわらず、わずかな動きも
  なく地面から垂直に突きたっていた。
「闇に組み込まれし、魔の数式達よ・・・」
  神凪が詠唱を始めると同時に杖が闇色の光を放ちだす。
「光となり我が元に『開封』の円陣を降ろせ!!」
  ぐ・・・ん
  詠唱が終わると同時に、杖を中心として闇の魔法陣が出現する。
「一角鬼、剣と石符を・・・・」
  神凪の求めに応じ一角鬼が剣と「使い人」によってその存在を封じ
込まれた妖魔が眠る石符を差し出す。  
「お嬢さんには悪いのですが・・・・その命、私の平穏のために使
わせていただきますよ」
  神凪が自分の目前に倒れ付す女性に感情の籠らない声で言い、
  石符を女性の横に置く。
  そして剣を逆手に持ち再び詠唱を開始する。
「『封じられし者』よ、今よりこの女の血と肉を汝に与えん」
  ぎしゃぁぁぁ!!!
  石符から発せられる封印された妖魔の声が公園中に響き渡る。
  だがその声を聞くものはいない。
  この周囲に張られた裏鬼門封じの結界により人払いが行なわれて
いる故に・・・。
「女を喰らわねば我が命により汝を永遠に封ずる」
  詠唱を進めながら逆手に構えた剣を頭上に掲げる。
  一角鬼はその光景を見ながら考えていた。
  もしあの時この呼び掛けに答えなかったら?
  永遠に封印の中に封じ込まれ現世に出てくることはなかっただろう。
  だが解き放たれても自由と言うものはもはやなかった。
  己の命が尽きるまで主に従う、いわば束縛された自由。
  どちらを選んだとしても、もはや自由などというものは存在しなかった。
  石符に封じ込まれた妖魔も女を喰うことを選択するだろう。
  そして自分と同様に束縛された自由を得るのだ・・・
「女を喰らわば我が命によりその封印より解き放たん『目覚めよ』!!」
  詠唱が終わると同時に掲げた剣を女の左胸−心臓−に突き立てる。
  剣が女の体を貫通しその下の地面に食い込む。
  その途中に女の心臓があった。
  剣が突き刺さっているため血はそんなに流れない。
  だが、それでも徐々に血は徐々に地面に広がっていき、ついに石符に
かかる。
  同時に石符の表面にひび割れが走り・・・最後にはガラスが割れ
るような音を残して粉々に砕け散った。 
「目覚めましたね・・・・」
  神凪が弾けとんだ石符の中から現れたものに対して声を掛ける。
  そのものは外見は鳥・・・そう烏にそっくりだった。
  しかし一見しただけで烏ではないと分かる。
  まず大きさ。普通の烏の二倍の大きさはあった。
  そして目。人間かそれ以上の知性の輝きが見て取れた。
  そしてなによりも雰囲気。どんな鳥にもない闇の妖気が感じられる。
「貴方を呼び出したのは・・・分かっているでしょうが、私の駒と
するためです」
「ぎぃいぃぃ・・・・・」
  鳥型の妖魔が耳障りな声を出す。
  神凪は直感的にその声の意味を悟っていた。
「いいでしょう、そこの女性を喰らってから私の配下になりなさい
もともとその女性はそのために連れてきたのですから・・・」
  神凪が淡々とした口調で声を紡ぐ。
  そこには相変わらず何の感情も浮かんではこない。
  心の片隅では自分の犠牲になった哀れな女性に一瞬だけ黙祷を捧
げていたが・・・
「さて、後始末をしますよ・・・残留妖気を全てかき消し、    
  血も奇麗に消し去る・・・少なくとも岩下さんや冬月さんに気取
られないようにね」
  そう言いながら神凪はいまだ突きたったままだった杖をとりあげる。
「御意・・・」
  一角鬼は神凪の意向を叶えるべく活動を開始する。
  後ろからは先程解き放った妖魔が女性を喰らっているのだろう・・・
  耳障りな咀嚼音が神凪の耳を打つ。
  そして・・・妖術師の儀式は終わりを告げた。


  次の日の朝。
「おおおおおおおおお!!!もう六時ですかぁぁぁ!!!」
  神凪が寮の部屋で騒いでいた。
  いつもなら五時に目を覚ますのだが昨日は色々あって寝るのが遅
れたのだ・・・「開封の儀」と呼ばれる闇の儀式を執り行ったため。
「知音!知音!起きなさい!」
「うにゃ・・・眠いよー、もっと寝てたいよー」
「とっとと起きなさぃぃぃぃぃ!!!!」 
  いつものダークグリーンの貫頭衣に着替えた神凪がこたつの上に
作られた知音専用ベッドをひっくり返す。
  ずごす!
  なかなか凄い音がした。 
「ふぎゃぁぁっぁぁぁ??!!」
  知音がこたつの角で打った頭を押さえて悶絶する。
「マ、マスター!いきなり何するの???!!!」
「早く起きて道案内しなさい!!」
「うぇぇぇぇ!!!嫌だよ!もっと布団の中でまどろんでたい!!」
「うるさい!!居候なんですから少しは私の言うことを聞きなさい!!」
「都合のいい時だけマスターづらしないで!!」
「それは私の台詞です!!!!」
「それはともかく絶対嫌!!」
「しょうがない、強行手段!!」
  そう言いながら知音の羽をつまむ。
「うきゃぁ!その持ち方止めてぇぇぇ!!!」 
  知音の絶叫は無視してかばんを持ち寮の部屋を飛び出す。


「だから!マスター右だってば右!なんで左に曲がるの??!!」
  神凪は走っていた!
  知音を肩に乗せ! 
  そう遅刻しないために!
  遅刻すれば風紀委員会地下自主補習懲罰牢行きが待っている!!
  しかし!
  筋金入りの方向音痴は健在であった・・・
「ええい!こっちが右でしょうが!」
「そっちは左だってば!マスターひょっとして馬鹿?!」
「貴方に言われたくないわぁぁぁ!!!」
「だってさっきから左と右を絶対間違えるんだもん!!」
「うるさい!!これは習性です!!」
  どーゆう習性だ。
「あーもう、私まで入れなくなっちゃうよう」
「貴方は生徒じゃないでしょうが・・・」
「何言ってるのマスター!あの中には可愛い女の子が私への愛を心
に秘めながら私を待っているの!!」
  よくもまあそこまで言えるもんだ。
「うん?」
  神凪が前方の一転を見ながら少しうなる。
「どったの?マスター」
「あれは・・・・琴音さん!」
「ええ・・・っていないよ?」
「馬鹿者!私が琴音さんを見間違うことがありますか!!」
  たいした自信だなお前。
「前方約1kmにいます!」
「そんなあほな・・・」
「とりあえずここは琴音さんと登校するチャンス!行きますよ!」
「わぁ!マスターいきなり走らないで!」
  知音が振り落とされそうになりながら神凪の肩にしがみつく。
「よし!もう少しで・・・!!」
  神凪が琴音に声を掛けようとする・・・が、
「「「琴音ちゃん(さん)一緒に行かないか(きませんか)!!」」」
  三人の声が重なった。
「何!」
  神凪が辺りを見回すと・・・
  そこには琴音を巡る恋敵のOLH、東西がいた。
「・・・・琴音さんは私が誘ったんです。貴方たちは遠慮してくだ
いませんか?」
  神凪が二人を睨み据える。
「僕が誘ったんだ、君達こそ遠慮したらどうだ?」
  OLHがなんとなくそわそわしながら神凪&東西に言い放つ。
「くふふふ、琴音ちゃんは僕と一緒にいくんだよ・・・」
  いつのまにやら狂気モードに入っている東西。
「・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」
  三人の間で緊張が高まり・・・そして!!
  ずごべしゃぁぁぁぁ!!!! 
  何かとっても素敵な音を立ててOLHが地面に深々と突き刺さった。
「な・・・・」
「・・・・・??」
  神凪&東西が茫然としてさながらピサの斜塔のようになっている
OLHを見ている。
  ずぼ!
「け、けほ!な、何だ!一体!」
  OLHが地面から頭を引き出しながら辺りを見渡し・・・
  そして一点を見据え、ピキっと言う音を立てて凝固した。
「「お兄ちゃーーーん」」
  そこにはにこやかな笑顔を浮かべた姫川笛音&ティーナの
  幼女二人組みが立っていた。
「「なーにしてるのかな??」」
「ひ、ひぃぃぃぃぃ!!」
  そしてOLHは二人に引きずられて消えていった・・・
「・・・・・・・・・・・は!」
「・・・・・・・・・・・は!」
   同時に忘我状態から回復する神凪&東西。
「ふふふ、一人は脱落、後は東西さん、貴方さえ倒せば・・・」
「くふふふ、勝てると思ってるのかな?」
  そのまま戦闘状態に入る二人。
  しかし気付いてなかった。
  琴音が知音とともにこの場から離れていっていることには・・・


「はあ・・・」
「どーしたの?琴音ちゃん」
  琴音の肩に乗っかっている(うらやましい・・・)知音が尋ねる。
「え、何がですか?知音ちゃん」
「だって溜め息なんかついて・・・」
「なんでもないんです、本当に・・・」
「ふーん、マスター達のことでしょ?」
「え、えっとその・・・」
「図星☆」
「もう・・・知音ちゃんは・・・」
「あはははは、じょーだんだよ、じょーだん☆」
「うふふふふ・・・」
  そして琴音と知音は校門をくぐり・・・
  学園の騒々しいが平穏と言えるかもしれない一日が始まった。

 
  Lメモ「Leaf学園の魔獣!」了  


  追記1  幼女二人組みによるおしおきによりOLHが復学するま
          でに二週間かかったそうな。

  追記2  神凪&東西は学外で争った咎により一週間の補習授業刑
          を受けさせられる羽目になった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
神凪:「どうも、妖魔を支配する者神凪です」
知音:「知音だよ☆」
神凪:「うーん、それにしても・・・」
知音:「前半と後半がばらばらだね☆」
神凪:「それはですね、表と裏の二面性をだそうと」
知音:「いきあたりで書いたのにこじつけましたね」
神凪:「・・・・ぐは!」
SE:どさ        
知音:「あや、没した」
知音:「えーとそれはともかく皆様では!」

追記事項:支配妖魔に関して

一角鬼:
鬼型の妖魔(エルクゥとは別種の鬼です)
エルクゥほどではないが強靱な肉体、高い生命力、
高速再生能力などを持つ。
神凪が教えこんだ妖術(「光破」、「魔爆光」)を使用する。
(ベースは「風使○」の一角鬼)

鳥型妖魔:
通常の二倍の大きさを持つ烏の姿をした妖魔。
主に偵察、情報収集などに長ける。
口からの衝撃波、翼を使って弱い術を弾く、気配消失
などの能力を持つ。

他にも支配妖魔はいますが雑魚です(きっぱり)