Lメモ「VS FENNEK『おいおい相手が違うだろ?』」  投稿者:風見 ひなた
 試立Leaf学園には様々な『ワケあり』の男達がいる。
 ある者は呪われた血筋を背負い。
 ある者は哀しき宿業と戦い。
 そしてまたある者は愛する者の為に命を賭ける。
 彼もまた、そんな男達の一人であった。
 ……性別を特定するのはおかしい気もするが、まあ一応男という事になっている。
 その身は人にあらず。輝ける銀の身体を持つ者。
 誰よりも早く走る者。最速を自任する者。
 FENNEK。
 その名は今、学園にあまねく伝わる。


「駄目だよ雛山君、疵が付いちゃうよ」
「大丈夫だぞ、とっても頑丈だって言ってたぞ」
「僕も止めた方がいいと思うけどなぁ……」
「わーい、やっちゃえやっちゃえ♪」
「じゃあやるぞ!!」
 きゅーーーーっ。
 ……………………………………。
「うぎゃああああああああああああああああああ!!!」
 FENNEKは悲鳴を上げると人の姿に戻ってごろごろと転げ回った。
「痛ええっ、10円が!!10円傷がぁぁぁぁぁぁ!!!!」
 ものすごく痛そうに転げ回るお兄ちゃんを見て、子供たちは気まずそうな色を
浮かべ顔を見合わせた。
(なんだか凄く痛そうだよ?)
(やっぱり十円で傷がついたじゃない!)
(だって来栖川製の車は傷に強いって言ってたぞ)
(それは今の車の話だよ!昔の車は駄目なんだよ、きっと)
(いいから早く謝りませんか?)
 子供たちが一斉に肯いて謝ろうとしたとき……
 既にアクセルは目一杯に吹かされていた。

 Lメモ外伝「VS FENNEK『おいおい相手が違うだろ?』」

「うーんと、こうきてこうなって……ブースター耐圧がこんだけだから……と」
「やっぱり強化チェーン使わなくて良かったな」
「そーですね。危うく止められなくなるところでした」
「あとはハンドル性能だけど、まあこれは走らせてみてからって事で」
「あ、これでいいんでしょうか?」
 工作部では今日も妙な発明品が制作されている。
 美加香と誠治はいつも通り頭を寄せ合って設計図を油で汚していた。
 その後ろでは智子が額の汗をぬぐってスパナを握り締めている。
「暑……」
 窓を全開に空けても機械熱と機械油の地獄は全く揺らぎようもないような陽気。
 智子は窓の外に目を移して呟いた。
「全く、もう六月やっちゅうのに雷さんはどないなっとんや。蝉の声まで聞こえ……ん?」
 目の端を何かが横切ったような気がして智子は目を細めた。
 だが、もはや何も見えない。
 代わりにとんでもない大音響が高速でこちらへ近づいてくる。
「なんやなんやっ!?」
 智子が慌ててドアの方を振り返ると、両手一杯に子供たちを抱えた青年が険悪な様子で
こちらを睨み付けていた。
「副部長っ!!君は一体子供にどういう教育をしてるんだぁっ!?」
 ……………………………………………………………………………………………。
 みーんみーんみーんみーんみーんみーん。
 しばらくの沈黙の後、美加香は口を開いた。
「オートバランサーの機嫌はどうですか?」
「ああ、それは問題ないよ」
 誠治が自身たっぷりに答える。「何せ気合入れてセット入れた奴だからね」
「ああ、じゃあ平気ですね」
 美加香はほっとした様子で肯く。
 なんだこれは。
 自分が怒っているのに何故部長も副部長も平然とした顔つきなんだ。
 もしや自分はアウトオブ眼中なのか。
 そんな馬鹿な。
 独り立ちすくむFENNEKに向かって、智子は同情に溢れた視線を送った。
「……FENNEK先輩、この人ら仕事に集中して聞いてへんで」
「ぬがああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
 FENNEKが怒りの余り床を何度も踏み鳴らすと、さすがに元が自動車だけあって
かなり大きな音が出た。
 これには二人も驚いたらしく、慌てて振り向く。
「こらっ!床が抜けるだろ、もうちょっと静かに……なんだ、FENNEK君か」
「おかえりなさーい」

 美加香に頭を下げられてついついつられてにこやかに笑い掛けそうになったFENNEK
だが、腕の中の子供たちに気付いてすぐにしかめ面に戻った。
「美加香さんこんにちわー」
「あっ、みんないらっしゃい」
「だーーっ、静かにしろぉぉっ!副部長!!あなたの子供たちは……」
「で、FENNEK君頼んでおいたプラッシーはどうなった?」
「私はスイカソーダなんですけど」
「あ、私はDHA配合のミカタな」
 文句を言いかけたFENNEKは三人に聞かれて申し訳無さそうに頭を下げた。
「すみません、どれももう売ってないそうなんです……ってちがぁぁう!!」
 FENNEKは大声を上げて地団太を踏んだ。
 腕の中の子供たちを美加香に突き出して、先になにか言われないうちに早口で捲し立てる。
「副部長、あなたのところの子供たちが俺に傷を付けたんだぞ!!しかもよりにもよって
十円傷だ!!十円傷!!車にとって最も忌むべき最悪の傷なんだぞっっ!」
 余りの興奮で鼻から煙が噴き出してしまった為良くは聞こえなかったが、なんとなく
ああ、この人怒ってるなぁ、うちの子供が原因なんだなぁと思って美加香は頭を下げた。
「すみません、マルティーナがご迷惑かけました」
 あまり誠意は見えない。
 当然FENNEKも満足できなかったようで自分の眉間に指を突きつけると美加香に顔を
近づけた。
「ご迷惑どころじゃないぞっ!!ほら見ろ、これっ!!」
「……………ぷっ!?」
 怪訝そうに顔を近づけた一同は思わず吹き出した。
 FENNEKのクールそうな顔の真ん中にでかでかと『肉』と書いてあったのである。
「うわはははははははははははははははは!!肉!!肉の王様かぁぁ!!」
「ぷっ……くくくっ、笑っちゃ駄目……笑っちゃ……」
「にゃはははははははははははは!!ナイス!!ナイスなナチュラルボケや!!」
 良太はびしっとVサインを作ると堂々と宣言した。
「僕がやったんだぞ!!」
「偉い!お前はお子様ボケの鑑やぁっ!!」
 智子が爆笑しながら誉めると、FENNEKは再びじたばたと暴れた。
「偉くないっ!!全っ然偉くないッ!!」(←某セト神のスタンド使い口調でネ☆)
 その時窓を突き破って一人の男が現れた!!
 いや、男と呼ぶのもおこがましい!!
 彼こそ男の中の男!!溢れかえらんばかりの男っぷりを持つ男!!
「うおおお、呼びれて飛び出てジャジャジャジャン!!アイアムマッスル!!肉の王様こと
秋山登のご登場だァァァァァ!!俺を呼ぶのは誰だ!風か!舎弟か!筋肉カァァァァ!?」
「お呼びじゃない出てけあんたはぁぁぁぁっ!!」
 美加香のハイキックが秋山を綺麗に窓からフッ飛ばしていった。
 もはや書いてる方にも何が何だか。

 なんとか事態を収める事に成功した一同は出来るだけFENNEKの顔を見ない様に
しながら、なんとか彼から話を聞き出した。
「つまりこの子達が悪戯して十円傷を付けたから、いい年して大人げもなく子供の悪戯に
目くじらを立ててるんやね?」
 智子の説明はいやに子供たちの肩を持っていた。
 美加香は子供たちに囲まれて、ぺこぺこと頭を下げまくっている。
「すみませんすみませんっ!!もうさせませんから、見逃してあげてくださいっ!!」
 誠治はふうっと息を付くと、懐から一本のチューブを取り出した。
「これを使うといい」
「……何です?」
 FENNEKが胡散臭そうにそれを手に取ると、誠治はこともなげに言った。
「傷消しクリームだ。例え土砂に埋もれてもそれを付ければ一気に回復。通販で売ってたんだ」
「そんなもんいらんわぁぁぁぁ!!!」
 FENNEKはクリームを勢い良く地面に叩き付けた。
「ああっ!結構高いんだぞ!!」
「ええいっ!!部長は十円傷の痛みを知らないからそんなことが言えるんだぁぁ!!」
 誠治の悲鳴をあっさりいなしてFENNEKは叫んだ。
 その叫びに智子は首をかしげる。
「そんなに痛いんか?たかが十円やろ、具体的に言うとどれくらいなんや?」
 FENNEKは暗い笑みを浮かべて呟いた。
「急所を机の角に打ち付けて思わず飛び跳ねたところ画鋲が刺さり、その上小指の先をタンスの角に
ぶつけてずっこけてビール瓶に後頭部ぶつけてとどめにこむらがえり起こしたくらい痛い」
「痛っ!!あ痛っっ!!」
「ぐっ……!!」
「………ひぃぃぃぃっ!」
 誠治、良太、てぃーくんは何やら下腹と脚を押さえて顔を思い切り顰めた。
 逆に初めの条件が分からない女子陣はきょとんとしている。
 FENNEKはふっと笑うと、別の喩えを呟いた。
「治り掛けたかさぶたをぐりぐりと触ってる時に思わず引っぺがしちゃって、血がだくだくと
あふれ出てしかもそれが手にどばっと付いておいおいと思ってティッシュ取り出したところで
間違って傷口机の角にぶつけちゃっておまけに肘に電流が走ったところでしゃっくりが始まり
ひっくひっくやってるとなんかひきつけ起こして涙も咳も震えも止まらず暴れてるところに女
の子が大嫌いなゴキブリが口の中に飛び込んで大パニックになったところをみんなに笑われて
涙止まらないわ情けないわ喉の奥気持ち悪いわ苦しいわ……というくらいの恐怖と混乱と苦悶
が貴方を襲ったりしてしまうんだな、これが」
 皆まで言わないうちに、美加香達は口を押さえてがたがたと震え始めた。
 大効果である。
「どうだ!!この子達はこんなに恐ろしい事を俺にしたんだぞ!!」
「ごめんなさいっ!!まさかそんなに痛いなんて思いも寄らなくて!!」
 美加香は平伏した。
 さすがに智子も止めない。
 FENNEKはふっと軽く笑うと、美加香の頭を優しく叩いた。
「まあ、いいですよ。分かってくれたのなら……」
「FENNEKさん……!」
 こうして工作部に平和が戻った。
「ところで、部長達さっき何作ってたんですか?」
「え?時速200キロで走る超高速電気自転車ですけど?」
 ガーン。
 FENNEKはぷるぷると震え始めた。
「あ…怪しいとは思っていたんだ……やっぱり俺を追い出す気だったんだな!!」
「………は?」
「畜生、超高速自転車だって!?時速200キロ!?人力で僕に対抗するつもりか!!」
 疑心暗鬼に陥ったFENNEKは悔しそうに叫んだ。
 何か一人で興奮している。
 そのとき、がんっとドアが蹴り飛ばされて一人の少年が顔を出した。
「こらっ、FENNEKさん!!子供を攫ってどうするつもりなんですか!!」
「あ、ひなたさんだ」
 どうやらFENNEKが子供たちを連れて行くシーンだけを見た為に何か勘違いして
いるようである。
 だが今のFENNEKもまた、いつものFENNEKではなかった。
 今日のFENNEKは荒れていたのである。
「ええいっ、うるさいっ!!俺が何しようがお前に関係あるかぁっ!!」
 当然風見も誤解してしまう発言である。
「くっ……それはつまりケンカ売ってるんだな!?良い度胸だ、このブンブーが!!」
「ブ、ブンブーだとっ!?」
 FENNEKの背後に雷鳴が走った。
「よりにもよって人をブンブー扱いとは……許せん、取り消せっ!!」
「やかましい、大人しくモーフィングして『はたらくくるま』でも歌ってろ!!」
「『はたらくくるま』だと!?そこまでいうか、普通っ!!」
「風見君、それは言い過ぎやで!!」
 智子は風見の腕にすがりついたが、風見はそれを振り払ってFENNEKに指を
突きつけた。
「貴様など『覆面パトカー110』をやっているのが御似合いですねっっ!!」
 ズガーン!!
「お前………覚悟は出来ているのだろうな!!」
 怒りに震える唇でFENNEKが問う。
 風見はそれに頷くと、懐から決闘の証を取り出した。
 古来より紳士は決闘の前に互いが日常的に身に付けるものを投げるのがしきたりで
あるっ!!そう、例えば………
「冷血グレネードォォォォ!!!」
「ハイオクガソリンファイア!!」
 ……爆薬とか!!
「てめーらここは屋内だぁぁぁぁ!!!」
 あまりの凶行についに誠治が泣き出した。
 しかし今の二人は聞く耳ない。持ってたまるか!!
 だってだって決闘なんだもん!!
 互いの爆撃を避けた二人はふっふっふと不敵に笑いあった。
「……ねえ美加香さん、さっきからブンブーとかはたらくくるまとか……何?」
 ルーティが不思議そうな顔で当然の疑問を口にした。
「風見さん達の世代が幼き日に通った神聖なる動画や聖歌の事なんですよ」 
 美加香は平然とした顔で嘘を教えている。
 智子は敢えて突っ込もうとはせず、拳を固く握り締めた。
「くっ……なんて闘気や!!思わず汗が垂れてくるで!!」
「そりゃ夏場の部屋で爆弾炸裂させればそうなると思うけど……」
 その横でてぃーくんは呆れて呟いていた。
 それにしてもなんか作者しばらく書かないうちに馬鹿に磨きがかかりましたね。
 馬鹿なSSだからこれでいいんだけどな。
「さあ、勝負方法は貴様に選ばせてあげましょう、何にするのですか!?」
「かけっこ」
「駄目」
 風見が言下に否定すると、FENNEKは思い切り不満そうな顔になった。
「選ばせてくれるって言ったじゃないか!!」
「何処の世界に車と競争する馬鹿がおるかっ!!」
「たった今俺の目の前に」
「いません!!」風見が叫んだ直後、別の声が彼を遮った。
「いや、いるね!!」
 誠治は腕を組んで不遜なポーズをとっていた。彼なりにキメているらしい。
「誠治さんが代わりに戦うんですか?」
「違うわっ!!我等が工作部がたった今作った電気自転車がある!!これで君たちの決着を
つけるといい!!」
「へ!?誠治さん、それまだ試作……もが!!」
 美加香の声は智子によって無理矢理封じられた。
「もむーもがもがー!!(何するんですか智子さん!?)」
「楽しそうやん、ここは是非やらしたるべきやで」
 最近大分良い性格になってきた智子である。
 FENNEKは胸を張ると高らかに笑った。
「ふっふっふ…はははっ、これはいいな!!俺が自転車なんかよりも遥かに早い事をついで
に証明してやるぜっ!!」
 そうまで言われては風見ももう引き返せない。
 ちらりと不安が頭の隅を過ぎったが、それを無理矢理追い払って宣言した。
「いいでしょう、貴様との決着!!僕がこの手で付けてあげようじゃないですか!!」
 ふうっと智子は息を付いて、呆れた目で風見を見ていた。
「たいがいこの子もお調子乗りやなぁ……」
 そのさらに後ろでは誠治が独り、笑いを浮かべていた。
(くっくっく…調整も終わってないマシンが200キロの重圧に耐え切れるもんか。
部室で爆弾炸裂させた罪、たまには反省してもらおうか……)
 誠治の表情に更に不安になる美加香であった。

「とゆーわけでひなたさん、ひたすら漕ぎまくればブースターで勝手に早く進みますから
頑張ってくださいね」
「任せろっ!!あいつに一泡吹かせてやるっ!!」
 既に頭の中から何故戦わねばならないのか、という疑問は消えてしまっているらしい。
 そしてそれはFENNEKもまた、同様だった。
 本来の姿に戻ったFENNEKはちらりと風見を見ると、ふっと笑った。(多分)
「ではカウント三秒前、レディ!!」
 智子の声にFENNEKがエンジンをふかす音が聞こえてきた。
 このときになってようやく、風見の頭に失策という言葉がよぎった。
(まずったな……こっちはゼロからやらなくちゃいけないけどあいつは前もって高速度で
スタートが切れるんだ)
 ぎりっと奥歯を噛む。
(負けるか?……いや、負けられない。師匠の名に賭けても)
「2!」
 勝負……決めるしかない!!
「1!」
 行くぞ!!
「Go!」
「いくぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「うりゃああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
 FENNEKが叫びと共に飛び出し、風見は全力を持ってペダルを漕ぐ。
 だが、明らかに風見の方が……遅い!!
「ひなたさん!!」
「大丈夫だ、みかちょん。風見君の方が加速が早い……勝負はこれからだ!!」
(まあ加速が早ければ早いほどダメージも大きいけどな☆)
 美加香はちらっと誠治の顔に浮かんだ本音の色を見ながら、競り合う二人に顔を映した。
 もっとも戦いは1000メートルしか続かないのだが。
 つまりこれは数秒の争い……油断した方が負ける!!
 風見は神の領域を突破しながらFENNEKに速度が追いついたのを感じた。
 ゴールまではまだ間がある、加速はまだお互いフルに達していない。
 だが加速度で言うならこちらの方が上、この差ならもしかしたら巻き返せるかも
しれない。勝率は五分!!
 風見は気合いを入れた!!
 速度が上がる上がる!!
「何ぃ!?まさか……人間と自転車が!?」
 FENNEKは驚異的な加速力に舌を巻いた。
 さすがは工作部が誇る科学力の産物というわけだ。
 だが、こちらも車の意地、負けるわけには行かない。
「追い抜かされるものかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「FENNEK、貴方が止まって見えますよ!!」
 風見は更にスピードを上げた。
 ゴールまで後少し、このままならもしかしていける!?
 風見は力を更に引き出した。
 誠治の顔がニタリと歪む。
(よっしゃああああ!!もう少しでも速度を上げるとドカンだ!!)
 風見は渾身の気合を込めた!!
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっっっっ!!」
「へ?」
 その叫び声は風見の物ではなかった。
「風見ぃぃぃぃぃ!!!待っていたぞぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「何だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
 秋山はしっかりと風見の後輪を掴んでいた。
 先ほど美加香に蹴り飛ばされた秋山はゴール近くに潜み風見を待ちうけていたのだ!!
 いや、必然性はないけど!!
「あんた今日は一体何のつもりだぁぁ!!!」
「つれないぞ風見!!同盟員同士の親睦を深め合おうという気持ちが分からないのか!!
特に裸でくんずほぐれつ手取り足取りィィィィィィィィ!!!」
「分かってたまるかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
 FENNEKは会心の笑みを浮かべた。
 勝てる!!勝てるぞ!!
「ふはははは、さらばだ風見!せいぜいそこで薔薇ってるがいいわ!!」
「ちくしょぉぉぉぉ!!」
「本当にちくしょぉぉぉ!!」
「……誠治さん?」
 心底残念そうに叫ぶ誠治を美加香が白い目で見つめていた。
 FENNEKは秋山を踏みつけて(秋山「あん♪」)、ゴールに向かって大直進!!
 そして今栄冠の!!
 ゴールッッッ!!

 がぁん!!

 がらがらがら。ぐしゃん。

「ああっ、ジンさんが暴走車に轢かれたーっ!?宇治君どーしよー!?」
「ゆきちゃん、急いでタンカ呼んでっ!!」
 たまたま通りかかったところを轢かれたジンは、遠い目をして呟いた。
「すまねぇ千鶴さん……やっぱり海には行けそうにもない、ぜっ……初めから行かん
だろーがな」
「ジンさーーん!!」
「死んじゃ駄目だーーーっ!!」

 余りの事に立ちすくむFENNEKの周りをお子様部隊が取り囲んでいた。
 彼等は言った。
「♪やーやーやーこーやーやー ゆーてやろゆーてやろー せーんせぇにゆーてやろー♪」
「うわあああああっ、俺は……俺はなんてことをぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
 FENNEKはゴールの中にしゃがみこみ……泣いた。


 風見は未だにペダルを無駄に漕ぎながら、唖然として呟いた。
「………これ、どーなるんだ?FENNEKさんの勝ちなのか?」
「えーっと、FENNEKさんはゴール直前でトラブル起こしたから失格です。
とゆーわけで進んでないけど一応ペダル漕いでるひなたさんの勝ちですね」
 美加香の言葉に、風見は複雑な表情をした。
「いいのか……それで?」
「ははははははははは!!風見よ、俺のおかげだなぁぁ!!さあ、踏め!!感謝の気持ちを
込めて俺を踏むがいいィィィィィィィィィ!!」
「あああ嬉しくねえよ畜生ッッッッ!!おら踏んでやる踏んでやるぅぅぅぅ!!」
「ああああああ、いいいいっ!!!」

 誠治はふっと青空を見ながら呟いた。
「勝利とは常に空しいものだ」
「あんたが言うなっ!!」
 智子はお約束通りツッコんだ。

「それで、オチはどうするんだ!!こんな後味の悪いオチは駄目だ!!もっと何かいいオチ、
オチを持ってくるんだぁぁぁ!!」
 秋山を思う存分蹴りながら風見は頭を抱えた。
「ああっ、畜生ブランク長かったからいいオチが思いつかねぇぇ!!!」
「そうだ、こうしましょうひなたさん!!」
「どーするんだ!?」
 美加香は瞳を輝かせると叫んだ。
「ひなたさんはFENNEKさんに勝ちましたが、後味良くありません!!」
「ふむ!!」
 風見は手を組んで叫んだ。
「それとは関係なくFENNEKさんはジンさんを轢きました!!」
「ほう!!」
「だからこの際初めから『VSジン』企画の一つでタイトルも『ジン VS FENNEK』
だったってことにすればどうかと!!」
「それだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 勝負結果!!
 ジン・ジャザム VS FENNEK!!
 FENNEKの0.0001秒TKO勝ち!!

「これでオチがついたぁっ!!ばんざーーーい!!!」
「やりましたねひなたさーーーーーんっ!!」
『ばんざーい!ばんざーい!!ばんざーーーーーーいっ!!!』

        Lメモ『ジン VS FENNEK』
        〜そんなに死にたきゃ殺ってやる!!〜

               完


智子「ってそんなわけにいくかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!(すぱーん!!)」
二人『うわああああああああああああああああああああああああああ!!?(ごすっっ!!)』


             嘘です(笑)

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ひ:おひさしぶりですみなさん、なんかもう既に一ヶ月ぶりですね(笑)
み:かなりブランク空いちゃいましたねー。
ひ:なんかSSの書き方忘れてたって感じで、今回楽屋落ちですがまあいいっすよね(笑)
み:これからもよろしくお願いします!!
ひ:ではでは『ボロ出ないうちに退散!!』風見ひなたと!!
み:『ジンさんFENNEKさんごめんなさーい!!』赤十字美加香がお送りしました!!