L学恋愛趣味レーションお手本L「雨中の二人」  投稿者:風見 ひなた
 六月の湿った空の下、うだるような暑さが風見を責め立てている。
「暑……」
 思わずそんなうめきが口を衝く。
 額から流れ落ちる汗を指の先で拭い取ると、巨大な水滴になって指の先から
零れ落ちて行った。
「六月になってからめっきり暑くなったよなぁ」
 風見がそうぼやくと、側に立っていた美加香はくすくすと笑い出した。
「……何がおかしいんだ?」
 半目で問うと、美加香は慌てて首を振った。
「あ、何でもないですっ!!」
「……ふん」
 どうせ子供っぽいとでも思っていたんだろうが。
 風見は少しばかりふてながら、美加香を振り切るように歩くスピードを上げた。
「あ、待ってくださいよ!」
「知らん、置いてく!」
 そう言い捨てて風見は早足で歩いて行く。
(あー、こーゆーところがガキっぽいんだろな)
 そう自分で思うが、まあどうしようもない。
「待って……あっ」
 どたんっ。
 背後で大きな音がした。
 ……人間がこけるときの音だ。
 風見は僅かに罪悪感を感じながら、振り返って美加香に手を差し伸べた。
「何やってんだ、全く……」
「ひなたさんが早足で先に行っちゃうから悪いんですよぉ!」
 美加香は膨れながらそう呟いた。
 二人の手が重ね合わされる。
 その瞬間に、風見は手の甲に何か冷たいものが当たるのを感じた。
 水滴だ。
「……雨ですか」
 風見が空を仰ぐが早いか、突然天の底が抜けたかのような大量の雨が二人の
頭上に降り注いだ。
「うわぁ……今日傘持って来てないぞ」
 右手に雨を受けながら、風見は眉を顰める。
 そんな風見の手を握って、美加香は走り出していた。
「ひなたさん、走りましょう!」
「あ、おう」
 風見はその手のぬくもりを感じながら、美加香の後を付いて走って行った。

「あー、すっかり濡れちゃいましたねー」
 美加香はぴっぴっと手に付いた雨を振り落としている。
 風見はそんな美加香を横目で見て、慌てて目を逸らした。
 正面から直視する事が出来ない。
 風見は僅かに赤らんだ顔を隠すように、美加香に背を向けて濡れた頭を掻きむしった。
 最近雨に当たった場所が痒くなるのは、酸性雨のせいだと聞いたからだ。
 本当は単なる気のせいなのだろうが。
「でもここら辺、昼間は誰も居ないんですね」
「さびれた住宅街の裏道なんてこんなもんだろ」
 背後の声に返事しながら、風見は辺りを見回した。
 本当に誰も近くに居ない様だ。
 二人が雨宿りしているこの軒下も、家の中にはもう誰も住んでいないらしい。
 下町の昔風の佇まいを残した通りだった。
 それにしても凄い豪雨だと思う。
 滝のような音が聞こえ、地面に無数の細かい穴が穿たれては消えて行く。
「ねえ、ひなたさん」
 雨音にかき消されて危うく聞き逃すところだった。
 とても小さな呟きを聞いて、風見は美加香の方を振り向く。
 濡れた髪のせいでちょっといつもと違って見えた。
 美加香は指の先でそっと軒下の一角を指差している。
 両手で抱えるくらいの鉢植えの中に、綺麗な薄紫の小さな花が密集して一つの
大きな花を作り出している。
「ほら、紫陽花の花が咲いてますよ。やっぱり育ててる人がいるんですね……」
 その美加香の指差した先から、ぽたりと水滴が垂れ落ちた。
 濡れ髪とうなじの間にも水滴がきらきらと光っている。
 風見は硬直してそんな美加香を凝視した。
「……………」
 視線に気付いて美加香は風見に振り向いた。
 優しい笑顔を浮かべながら、不思議そうな口調で聞く。
「……どうしたんですか、そんな顔して?」
「…………」

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選択!
1.「いや、ちょっと……見とれててさ」
2.何も言わずに美加香を抱きしめる。
3.何も言わずに美加香を蹴り倒す。
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1.「いや、ちょっと……見とれててさ」

 風見がそう言った途端、美加香の頬がぼっと燃え上がった。
「な、な、何を言うんですかっ!」
 紅を入れたように赤くなった頬を押さえて、美加香は爪先で小さく地面を蹴った。
 思わず漏れた本音に気付き、風見は慌ててそっぽを向く。
「だーーっ、誤解するなよ!!紫陽花だ、紫陽花!!紫陽花の花が綺麗だったんだよ!!」
「あ、紫陽花……ですか?」
 美加香はそう聞き返して、小さく溜息を吐いた。
 それが安堵か落胆か、経験の浅い風見には解らない。
「そうですか……あ、紫陽花、綺麗ですよね。うん」
 美加香はまだほんのり赤い顔でそう呟いた。
 そんな一人ぎこちなく紫陽花を見ている美加香を、風見はもう一度盗み見た。
 心臓が少しだけ跳ね上った。
 身体のあちこちに水滴をまとわりつかせて、赤い顔で紫陽花を眺めている美加香。
 風見の口は知らずの内に言葉を紡いでいた。
「でも……美加香も……」
「え?」
 また失言してしまった。
 振り返った美加香にじっと目の奥を見据えられて、風見は動けなくなった。
「今、何て言ったんですか?」
「え……いや……その」
 風見は誤魔化そうとしたが、どうしても実行に移す事が出来なかった。
 かといって今更続きを言う事も出来ない。
 硬直した体勢のまま、時間はただ過ぎて行く。
 ……髪から伝った雨滴が、頬を流れて床に落ちた。
 その音で風見は踏ん切りを付けて、右手を固く握り締めながら言った。
「お前も…かわ……は……くしょんっ!!」
「うわぁ!?」
 美加香は風見の突然のくしゃみに驚いて飛びずさった。
「あ、なんかくしゃみが……」
「もう、夏風邪引いちゃったんですか!?しっかりしてくださいよ!!」
 美加香は何だか怒りながら、ティッシュを取り出して風見の鼻をごしごしと
こすった。
 もうすっかりムードは消し飛んでしまっている。
 
 雨が止んだ。
 六月の青空には美しい虹がかかっている。
 その下で二人は黙って歩き続けていた。
 美加香はちらりと風見を見上げて、呟いた。
 もっともさっきの続きはもう聞けない。
 だから別の事を聞いた。
「さっきのくしゃみ……本物だったんですか?」
「な、何の話だ?」
 風見はどぎまぎしてあらぬ方を向く。
「……もう」
 美加香は風見を見上げたままくすっと微笑んだ。
「いつか…さっきの続き聞かせてくださいね」
「覚えてたらな」
 そうして、そっぽを向き続ける風見に笑いかけたまま…二人ははどこまでも
どこまでも虹の下を歩き続けて行った。

                 ラブラブエンド

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2.何も言わず美加香を抱きしめる

「ひ、ひなたさん―――」
 美加香は息が止まるくらい緊張して風見の胸の中に収まっていた。
 不必要に胸が高鳴っている。
 いつもはそんなことされた瞬間に殴り倒しているのに、どうしてか今は風見を
跳ね除ける事が出来ない。
(な、なんでだろ……私が好きなのは雅史先輩の筈なのに……)
 美加香は自分の気持ちに戸惑いながら、何も出来ず風見の胸に身を任せている。
 自分を抱きしめる、風見の腕の力が強くなった。
「……………」
 美加香は黙って静かに目を閉じた。
 そして………
「ベアハーーーーッグ!!!!」
「いきゃああああああああああああああ!?」
 慌てて目を開くと、風見は美加香におもいっきりさばおりをかましていた。
「な、なにするんですかああああああ!?」
「ふん、油断したな美加香!!貴様には僕の技の練習台になってもらう!!」
 一瞬美加香の視界全体が陽炎のように揺らめいた。

 ――期待したのに――
 ――やっと女の子らしいときめきに出会えたと思ったのに――
 ――馬鹿あああああっっっ!!――

「うりゃああああああああああああああああ!!!」
「うおおおおおっ!?」
 風見は美加香に一瞬で背後に回られ、強烈な投げを食らって壁にぶち当たった。
 そのままずりずりと赤い筋を壁に残しながらずりおちてゆく。
 美加香は涙に濡れる目頭を何度もこすりながら呟いた。
「ううっ……ひなたさんの馬鹿ぁぁぁぁっ!!」
「泣くな婦女子よぉぉぉぉぉぉ!!」
 叫びの瞬間、ぼこおっ!!と音を立てて地面から筋肉が飛び出す。
「その悲しみ!!怒り!!やるせなさ!!嘆く乙女の爪研ぎ勇者、魂の筋肉!!
秋山アニキただいま参上っ!!さあ全てを俺にぶつけろメガヒート青春ぅぅぅぅん!!」
「やらいでかぁぁぁぁぁ!!!」
 美加香の魂の叫びを込めた上段回し蹴りが秋山の首を270度ほど曲げていた。
「おおおおっ!!このデンジャラスな痛みが首ダメージ20%でよい!!よいぞぉぉ!!」
 ごきごきと音を立てて首を直す秋山。
 そんな彼を見ながら美加香は泣き叫んだ。
「ええーーん、私の周りはこんなのばっかりぃぃぃぃぃ!!」
 その叫びに応えるように、次々と地面からはイロモノなみなさんが飛び出してくる。
「ハンティング!!ハンティングヨ、生けとし生きる生命は神に創られた獲物
チャンなのネーーーーッ!!」
「秋山アニキーーッ、セバスゥナガセ助太刀仕りますぞ・お・お・お・おーーーっ!!」
「濃いもアニキもユウヤにお任せ☆魔法少女エルクゥ……」
「女優パワー全開っ!!」
「ダーリンはどこーーーっ!?」
「HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA、イッツグレイトォォ!!」
 奥歯を噛み締める美加香の横では、何故かマイクを持った眼鏡女が実況を繰り
広げていた。
「さあ、盛り上がってまいりました新イロモノ王座決定バトルロイヤル!!
勝利のイロモノ女神は一体誰に輝くのか!?実況は私小出由美子が、解説は
この道27年の緒方英二さんにお願いしてます!!」
「任せろ」
 背後にどこからともなく現れた観客達は好き勝手な声援や野次を飛ばしている。
「美加香ちゃんファイトーーッ!!」
「アニキーーーッ!!が・ん・ば・れ・ッスーーーーーーーーッ!!」
「主役は俺だぁぁぁーーーーーーーっ!!」
 そして……ゴングが打ち鳴らされた。
「さあ、雨の隆山市特設リングでは闘いの鐘が打ち鳴らされました!!緒方さん、
一体誰が勝利を掴むのでしょうねぇ!!」
「さっぱり見当も付かんな」
 美加香は叫んでいた。
 技をかけながら、ただひたすら叫んでいた。
「どーゆーオチだーーーーーーーーーっ!!!」

              プロレスエンド

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3.何も言わず美加香を蹴り倒す

「みきゃああああっ!?」
 思い切り蹴られて倒れ込む美加香。
 そんな彼女の首筋を引っつかんで、風見は叫んだ。
「さあ、こうしてはいられない!!今こそ原点に戻るときがきたのだ!!」
「げ、原点!?」
「今すぐジンさんのところに行って鬼畜ストライクだ!!そしてVSジンに
乱入するんだぁぁぁぁぁ!!」
「ちょ、ちょっと待って下さい!!一体全体何で―――」
 慌てる美加香の脳天に踵落しを決めながら風見は叫んだ。
「問答無用ーーーーーーーーーーっ!!」
「あううううううううううううううううううう!?」
「さあ、行くぞっ!!」

 そして――遠くの方で凄まじい炸裂音。
「鬼畜っ!!ストライクぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」
「みゃあああああああああああああああああああ!?」
「うわあああああああああああああああああああああああ!?」

 気絶したジンをぐりぐりと踏みつけながら、風見は拳を握り締めた。
「よっしゃあああ!!!次は師匠だ!!より高みへ、より高みへ!!」
「公害だぁぁぁぁぁ!!!」
「あっさり勝つなてめえらはぁぁぁぁぁ!!」

 こうして二人は強さを求めて旅に出た。
 そして………。

「HAHAHAHAHAHAHAHA、人気にオ応エして二度登場ネーーッ!!」
「出たぞ!奴こそ伝説のアフロ神、TaS!!」
「何ですかアフロ神ってぇぇぇぇぇ!!」
「アフロな、神だ!!」
「タマダンサーもいるネェェェェェェェ!!!!ヘイ、ブラザービカフクカマンッッ!!!」
「また俺かーーーーーーーーーーーっ!!!」

 そして、やっぱりよくわけのわからないことになっていたという。
 はい、智子さんやーみぃ君、感想は?

『あかんがなっっっっっ!!(べしっ!!)』

                意味不明エンド

=======

えー、こんな具合に「前編」+「選択肢」+「結果後編」で構成してください。
僕は長々と書くのが好きなのでこんなになってしまいましたが、もっと短くても
全然オッケーです。もちろん滅茶苦茶長くなっても構いません。
全編通してスタイルは全て貴方にお任せ。
恋愛ゲーム風味のシチュエーションであれば全くの自由です。
もちろん恋愛には危険な恋愛もあるわけで、好きな女の子とのバトル中の選択肢
であったりるのもオッケーです。
ただ、Lキャラの原作での選択肢のパロディはオススメしません。
企画者の趣味で、Lキャラの場合特にシチュエーションにオリジナリティを強く
求めます。
ちょっと書きにくいかもしれませんが、それだけ貴方の個性が反映された作品が
出来る筈だと信じています。
それでは皆様、参加をお待ちしていますっ!!