この作品は某アニメのパロディですが、なるべく知らなくても楽しめるように作りまし た。何故なら作者もよく知らないから☆ ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 闇の中に人影が揺らめいた。 白く幻想的な肌をした少女。 思考を悟らせない冷たい目で草原に立っていた。 「匂うのぉ……はぐれ神魔の匂いじゃ」 ふわりと風が舞った。 前髪を散らし、少女のかんばせを月影に明らかにする。 若干の幼さを残す美しい造形。 月光に照らされた少女は誰に聞かせるともなく呟く。 「妾の名は遊輝。凌辱者…遊輝」 そして少女はゆっくりと歩き出す。 彼女の使命を果たすために。 はぐれ神魔を闇に還すこと。 それこそが彼女の使命。抗えぬ、定め。 彼女は人にあらず。 全ての神魔を監視する……監視者。 一人の少年が裏道を駆け抜けていた。 時刻は夜半を過ぎて、およそ人通りはない。 それでもこの闇を住処にする者はいるだろうが、それは彼ではない。 ここを歩くには、彼の服装はあまりにも脆弱すぎる。 彼は迷い込んだのだ。 いや…追い立てられた、と言った方が正しいだろう。 進んでここに飛び込んだわけではない。 少年の名をゆきという。 たまたま獲物に選ばれた彼は、夜の街をひたすらに逃げ続けていた。 心臓は破けんばかりに脈打ち、精神は混乱と錯乱に満ちている。 彼は何故自分が狙われたかも知らない。 そもそも理由などないのだ。 偶然にそこに居合わせただけなのだから。 はっはっと息を荒く吐きながら、彼はその場にしゃがみ込んだ。 もう足ががくがくして走れなくなっている。 背後からはこつこつという足音が聞こえてくる。 まるで、彼の恐怖心を煽るかのように。 もしくは狙ってやっているのかも知れない。 恐怖とは魂の最高のスパイスだから。 それならば彼にはてきめんに効果が現れたと言うべきだろう。 疲労のためばかりではなく足は竦み、彼の頬は熱い涙に濡れている。 次第に地獄への呼び声にすら聞こえる足音は高くなり、やがてぞわぞわと背中の毛が逆 立つような存在感がやってくる……。 「あ…ああああ……」 来る。何かが来る。 ゆきは振り向くことが出来なかった。 振り向いたが最後その場で死んでしまいそうだったから。 ゆっくりとゆきの肩に凶凶しい殺気が迫り……。 「あれー、ゆきちゃん。何やってんの?」 前方から声がかけられた。同時にふっと呪縛から解放される。 目を上げると、彼の知人がポケットに手を入れて自分を見下ろしていた。 「ひ…ひなたちゃん?」 「なーに路上で泣いてんの?変な奴だなぁ」 苦笑しながら、少年はゆきにハンカチを差し出した。 涙を拭け、と言うことらしい。 少年の名は風見ひなた。 ゆきのクラスメートだった。 「こんな裏道、ゆきちゃんみたいな大人しい奴が通っちゃ駄目だよ」 風見の言葉に、ゆきはがばっと顔を上げた。 「違う!僕は好きで入ったんじゃないんだ!追われてたんだよ!」 「追われた?誰に?」 きょとんとする風見の問い返しに、ゆきは言葉に詰まった。 果たして彼に喋ってもいいものだろうか? もしかしたら彼をも事件に巻き込んではしまわないか。 ゆきはしばらく迷った後、弱々しい笑みを浮かべた。 「わけのわからないものに」 こうなったら風見も巻き込んでしまう算段らしい。 ………おい。 まぁ風見を犠牲に逃げることもできそうだが。 「わけのわからないものだぁ?何だよそれ?」 ゆきは説明しようとして、凍り付いた。 背後からまたあの気配が近付いてくる。 どうやら「あいつ」も風見を標的にしたようだ。 ゆきはせめてもの償いに「逃げろっ!」と叫んで駆け出した。 訳が分からないが、とりあえず風見もゆきの後を走り出す。 「な、なんだよあの気配はっ!?」 「わかんないよ!突然追い回してきたんだ!」 並走する二人は必死で逃げながらも、そんな会話をした。 全力で走っているのに、気配はまだ消えない。 二人の頭の中で危険信号ががんがんに鳴っていた。 走っても走っても誰にも出会わない。 二人の背中に熱い息が吐き掛けられてくる。 生命の危険を感じたその瞬間、二人の横を一人の少女が通り過ぎるのが見えた。 「なっ、なんだ!?」 「知るかっ!それより走れ!」 そのまま二人は逃げ出していった。 二人の横を通り過ぎた少女は黒い人影と相対していた。 その人影こそは二人の後を追っていた「得体の知れない者」。 紫の髪をした少女は大事そうに人形を抱きかかえ、人影を見つめた。 「見つけた……はぐれ神魔。あなたを消してあげる……」 透き通って伸びる鈴の音のような声。 人影はくくっとその黒い身体を震わせた。 黒いボロのコートに黒い帽子、そして黒い仮面。 顔がよく分からないが、どうやら笑っているらしいことは十分に分かった。 「消す?僕をかい?……面白い冗談じゃないか」 紫の少女が着ている白い着物が、ふさっと微風にたなびく。 「冗談じゃないよ。私にはそれが出来る…」 彼女の抱きかかえた人形が口を動かさずにしゃべくる。 「紫を馬鹿にするなよ。こう見えてもおまえなんかより遥かに高等な神魔だぜ」 人形を大事そうに抱きかかえ、少女は無表情に人影を見つめた。 少女の名は紫。人形の名は灰土蘭斗。 紫が戦闘に入ろうとしたとき、新たな気配が背後に生まれた。 「余計なことをされては困る。その神魔は妾が狩るのじゃ」 「後から出てきてしゃしゃり出ないで。こいつは私が狩る」 振り返りもせずに言った紫に、腕の中の灰土が同調する。 「そうだ。お前は必要ない、引っ込んでいろ」 「やかましい、ダ○チハズバンドの分際で」 しばらくの静寂。 「だだだだだだ、誰がオランダの旦那さんだこの鎖フェチ!」 灰土は表情一つ変えずに強烈に反撃した。 もし表情を変えることが出来たら血管がブチ切れんばかりに浮き出ていただろう。 「なんじゃと!?誰が鎖フェチじゃ!?」 「てめーだてめー!何が悲しくて和服の上からじゃらじゃらと鎖巻き付けてんだ!」 「これはそーゆー設定なんじゃから仕方なかろーが!」 遊輝の方はしっかり血管が浮かんでいる。 「人形は黙っているがよい、この根暗破滅マニア!」 「黙りやがれ妖怪喰っちゃ寝!」 不毛な言い争いは続く。 何とか一段落したのはたっぷり十分後のことだった。 「ぜいぜいぜいぜいぜいぜい……」 「はあはあはあはあはあはあ……」 息を切らして一息。 「と、ともかくあやつは妾が…」 「いや、紫が……」 「あのぉ……」紫がようやく声を出す。 「はぐれ神魔の人どっか行っちゃったんだけど」 ……………………………………………………………………………………………。 『なにぃ!?』 風見は壁に手を突いて唇を噛んだ。 武器は尽きてしまい、対抗するすべはない。 その足下には白目を剥いたゆきが倒れている。 口から泡を吹き、ズボンをずり下げられたその姿はあらゆる意味で死んでいた。 特にどう死んでいたのかは本人の名誉のためここには書けない。 「………次は君だよ」 人影がにやっと微笑んだのが、何故か仮面越しに見えた。 ぎりっと歯を食いしばる音が、風見の唇から漏れる。 ゆきを……喰ったのだ、この男は。 精神を食い尽くされ、彼はもう目覚めることはあるまい。 それほどにこの男の攻撃は凄まじかった。 男がコートに手を掛ける。 「さて……君の魂はどんな味かな?」 「く、来るなああっ!!!」 風見が絶叫をあげたと同じくして、男のコートや帽子、仮面全てが剥き出しになる! それはまさに阿鼻叫喚。 紫ラメ入りの全身タイツをきこんだ眼がイっちゃってる男は、哄笑と共にポーズを決め た。左手を頭の後ろに、足を組んで特に脇と腰のラインを強調する。 「さあ僕をじっくり見てくれルリコォォォォォォ!!!!!」 「うひぃぃぃぃぃぃぃっっっっっ!?」 風見はだくだくと目から滝涙を流し、血を吐かんばかりに絶叫した。 男はポーズを決めたままちょこちょこと風見に近付いて行く。 その唇は尖り、熱すぎる接吻を求めんばかりだ。 目は血走って焦点があっておらず、タイツを透いて現れる汗の具合といい独特のキ印な 雰囲気といい実にアシッド系! 熱い吐息を吹きかけながら、男は囁く。 「君も一緒にポーズを決めルリコッ!!」 「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ゛!」 風見は脅えまくってぶんぶんぶんぶんぶんぶんと頭を振った。 男はふっと息を吐くと、大きく頷く。 「オッケーだルリコ。照れ屋な君にナイスティーチャーを紹介すルリコ」 ぱちんと指を鳴らすと、倒れていたゆきがふらぁと立ち上がった。 ただし何となく肌の色がピンクがかっていた。 風見の腕をがしっと取ると、尋常ではない膂力で締め上げる。 ただしその眼には生気がこもってなかった。 「さあ彼にナイスポーズを取らせて僕に身も心も捧げさせるんだルリコ!」 「心も嫌だが身ももっと嫌ぁぁぁぁ!」 先ほど無理矢理ポーズを取らせられたゆきが何をされたかを思い出し、風見は絶叫した。 そのとき、男の顔面にひゅんと槍が突っ込んだ。 素早く身をかわし、槍は深々とこれ以上ないぐらいに壁に突き刺さる。 ちっ、と舌打ちしながら遊輝が立っていた。 「はぐれ神魔…これ以上好きにはさせぬ。監視者の名に掛けて、貴様を闇に帰す」 男の口がニヤリと歪んだ。 「監視者……?貴様が……ルリコ」 さらに遊輝のその後ろから、紫が現れる。 「お手並み拝見させて貰うわ」 「どうせ無理だとは思うけどよ」 男はそんな神魔達を見て、くっくっと笑った。 「成る程な。だがこのはぐれ神魔シズクゥタクヤ……やすやすとやられはせんよルリコ」 そう言うと、ばっとポーズを取った。 今度は両手を顎の舌にキスをせがむように構え、腰をくねらせ扇情的に。 「ルルルルルルッルリコ萌え萌え桃色光線っ!」 そう叫ぶや否や、シズクゥタクヤの唇からピンクの光線が迸る。 灰土が警告の声を上げた。 「気を付けろ!アレを喰らうと奴に操られるぞ!」 「そう……こんな風になぁルリコ!」 フェイク! シズクゥタクヤの狙いは操ったゆきに攻撃させることだった。 風見は束縛を解かれどさりと地面に崩れ落ちる。 ピンク色のゆきは咆吼をあげながら遊輝に向かって拳を振り下ろす! 「炎よ」 ぼそっと遊輝が呟くと、ぼうっとゆきの身体が燃え上がった。 凄まじい勢いでゆきを消し屑に変えて行く。 だが、それもシズクゥタクヤの手業に過ぎなかった。 その背後からやはりピンク色に染まった男が飛び出す! 今度の男はかなり素早そうだった……デコイという名前だ。 物陰に隠れて写真を撮っていたルポライターだが、彼に先ほどの桃色光線が命中してい た。もちろん狙っていたのだ。 回避できない遊輝にデコイの拳が迫る! 「えいっ」 可愛らしい声でざくりとデコイの腹に閃光が走る。 紫の鎌はあっさりとデコイを上下に分断した。 てっきり対立しているから見過ごすだろうと踏んでいたシズクゥタクヤにはこれは予想 もし得ない事態だった。 手早く次の僕を作りだそうと、倒れている風見をつかみ取る。 意識を取り戻した風見は、こちらを見ている遊輝達に向かって声を上げた。 「たっ、助けてっ……!」 「はぐれ神魔、闇に帰れ」 「ばいばーい」 三者の声が唱和した。 次の瞬間、風見の心臓は遊輝の槍に貫かれ、腹は紫の鎌に切り裂かれる。 背後にいたシズクゥタクヤごと。 風見の眼が非難するように揺らぎ、肺に残った空気で「何故」と呟いた後に…。 口から血が吹き出して、死体は地面に崩れた。 紫は事切れた風見だった物を無表情に見つめると、ぼそっと呟いた。 「あーあ、結構可愛かったから助けてあげようかと思ったのに」 灰土が紫に追従するように重々しく言った。 「遊輝が悪いんだよ。遊輝が来なければこんなことにはならなかったんだ」 「貴様はいつもいつも何でもかんでも妾のせいにするのぉ!?」 遊輝が灰土に噛み付いた。 全くである。 遊輝だけじゃなくて紫も斬っただろうが。 ……そーゆー問題ではないか。 「それより、これさっさと闇に還したら?」 紫がこんこんとシズクゥタクヤの死体を足で蹴った。 浮かばれない。 おおっ、と遊輝は頷くとその側に駆け寄って物憂げな表情を作った。 「はぐれ神魔……闇に還るがよい……」 そう言うと遊輝はぎらりと夜光に牙を輝かせた。 ばりばりむしゃむしゃくちゃぴちゃずるずるずるこりこりこりもがもがごっくん☆ 「あー、喰った喰った!」 そう言いながら遊輝はしーはーしーはーと爪楊枝で真っ赤に濡れた口の中を掃除した。 すでに地面には数本の髪とラメ入りタイツしか残っていない。 血の一滴残さず綺麗さっぱりと食してしまった。 紫がつつっと額に汗を浮かべている。ちょっとえぐい光景だったらしい。 「相変わらず……浅ましい女……」 「こ、この女ばかりは………」 さすがの二人も引いているようだ。 遊輝はさして気にした風もなく手を合わせてごちそうさまをすると、またふらふらと歩 き出した。 あとには人間達の遺体と闇に佇む紫と灰土が残っていた。 ゆらりと風が揺れる。 草原に立つ遊輝の背後に仮面を被った黒ずくめの男が一人。 彼女の守護神魔、ジン・ジャザム。 「ごくろうだった、遊輝」 ひっそりと声をかけると、遊輝は無表情に呟いた。 「ジン……またはぐれを狩った。一体いつまでこの仕事が続くのかのう……」 「……遊輝」 心配そうなジンの声に遊輝はふっと笑った。 「何……言ってみただけよ。妾は監視者。凌辱者……遊輝」 月影がただただ降り注ぐ。 ジンは仮面を外し抱きしめることもなく遊輝の後ろに立つ。 そして……また新たな神魔を狩る。 完 「……で済ましてんじゃねーーーーーーーーっ!!!」 ばきょっ!!!っと風見のでかハンマーアタックが二人の後頭部を強打した。 二人はもれなくごろごろと地面に転がる。 そんな二人を怒りの目で見ながら、血塗れのゆきとデコイがどやどやと出てくる。 「ああっ、お前達死んだんじゃなかったのか!?」 「死ねるかっ!こんな殺されかたでっ!」 「な、何故だっ!?美しい話じゃないかっ!」 ジンの抗議に、三人は怒りの目を向ける。 「あのなぁっ!こんな理不尽な死に様で納得できるかっ!?」 「なんなんだよぅ『ここでは言えない意味で死』ってのはっ!」 「私なんか最後に突然出てきて死んでるぞ!?」 「俺なんか人形だぞ、人形!」 何か混じっているが、この際気にしない。 ジンはあははははは、と無意味な笑いをあげて指を一本立てた。 「じゃ、じゃあ次はエターナルチャンピォンジン・ジャザムてのはどうだ!?ほら、ちょ うどよくこんな所に魔剣スチームブリンガーが……」 『一緒だろーーーが!』 人間に戻ったハイドラントは首を傾げた。 「俺は皆殺しで美しかったと思うが。原作もこんなんだし」 「………破滅マニア」 ぼそっと呟いたむらさきに、ハイドは目を向ける。 「ん?なんか言ったか?」 「ううん、別に」 「とにかく、こんな死に様じゃ僕たちは納得……」 そのときむくっと遊輝が起きあがった。 ぼーーーっと三人を見て、にたりと笑う。 その笑顔にとてつもなく不吉な物を感じ……。 「ごはんー♪」 『うぎゃああああああああああああああああああああああ!?』 そして新たなる惨劇が巻き起こる。 おしまい♪ ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ひ:えーーーっと、今更ですが…ごめんなさいっ!今回ばかりは平謝りです! 特に勝手に了承も得ず殺してしまったゆきさん、デコイさん!本当に申し訳ない! み:デコイさんの扱いが余りにも酷すぎますよ、これは。 ひ:ゆきちゃんもさすがにこれはないよなぁ……(汗) み:まぁ結城さんとハイドさんとジンさん方面から苦情は(多分)来ないとして、問題は ゆきさんとデコイさんに対する謝罪でしょう。 ひ:デコイさんに関しては、物語の進み上どうしてもあそこで誰か一人僕が必要だったん です。で、いつも忍んでいる人と言えばデコイさんということで……。 み:それで許して貰えるとは思えませんが……すみません、デコイさん。 ひ:ゆきちゃんは、本当にいい加減な理由です。実はあそこで出てくるのは空でも浩之で もよかった。それでも風見と絡むのはゆきちゃんだし、ジンさんといえばゆきちゃん だし、ということで殺してしまいました。 み:Lで殺しちゃ駄目ですよね。 ひ:あくまでギャグだから、殺しは御法度。とりあえずフォローはしましたが、不十分だ と思われます。 み:ちゃんと後日埋め合わせいたしますので平にご容赦を! ひ:ではでは「今日は平謝り」風見ひなたと! み:「ひなたさん実はコミックス一巻と20・21話しか見てないんですよ」赤十字美加 香がお送りしました!