体育祭Lメモ最終競技「障害物リレー・後編」 投稿者:風見 ひなた
『さあ盛り上がって参りました後半戦です!』
『どこが?』
『どことなく』
『後半戦の実況も私姫川琴音がお送りいたします』
『ああっ、志保ちゃんもいるってばぁーっ!』

 体育祭Lメモ最終競技「障害物リレー・後編」

『後半戦は地雷だらけの徒競走とは異なり、ただの直線コースです!開催側は一切トラッ
プを仕掛けてはおりません!』
『それじゃ障害物競走じゃないじゃないですか』
『大丈夫!障害物はたくさん仕掛けてあります!』

「た・の・し・い・障害物がね……くくく」
「すこちゃん、この女嫌な奴だよ」
「岡田以下だよね」


『それでは走者の皆さん!総計1キロ、頑張って走破して下さい!』
『……総計?』

 ジンからバトンを受け取るや否や、セリスは全力で走っていった。
「見ていてくれジン……これが、これが友のために走る男の姿だぁっ!」
 熱き涙を滴らせ、走るセリス。
 その姿が……掻き消える。
『え?』
 さすがに後続の一同はぴたりと立ち止まった。
 当然である。
「今……セリスさん消えなかった?」
「……『えいえんはあるよ』の人に連れてかれちゃったのかな?」
「やばいって」
 ざわざわざわざわ。
 観客達も騒ぎ出す。
 それを遮るように、志保は声を張り上げた。
『えー、この先はワープゲートになっております。合わせて1キロですのでどうぞこのま
まお進み』
「うぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああ……」

 ………………………………………………………………………………………………………。

「何だ今のーーっ!?」
「思いっきりやばげな叫び声が聞こえましたよっ!?」
「今のセリスさんの声でしょ!?」

『……どうぞ落ち着いてお進み下さい』

(マジだ、こいつら)
 一同はごくりと唾を飲み込んだ。
「も、もういやだぁぁーーーーっ!!!」
 YOSSYは泣きながら逃亡した!
 だが、そこに伸ばされる悪魔の腕!
「ふっふっふ……そうはいかないわよ」
「ひ、ひぃぃぃぃっ!?」
 いつの間にか出てきていた四季に笑いかけられ、YOSSYは硬直した。
「ここで逃げられちゃあ前半走った私の立場がないわけよ……」
「ひぃぃぃぃぃっ!」
 だくだく涙を流していやいやをするYOSSY。
「だ、大体あんたは前半走ってないだろ!?浩之の尻追い回してたらたまたま……」
 ざしゅっ。
 YOSSYは何も言えなくなって血塗れで床に転がった。
 沈黙したまま見守る一同。
 四季はこほんと咳払いすると、にっこり笑って言った。
「ヤア、僕よっしー!ヨロシクネ!」
「待てやぁぁぁぁ!!!」

『どうしましょう、志保さん?』
『……認めましょう。暴れそーだし』

 ジャイアン通ればのび太が引っ込む。
  (無理)   (道理)

 四季改めよっしーは、ふっふっと笑うとワープゲートに突撃していった。
「うりゃああああああああああーーーーーーーーーーっ!!」
 その勢いに、遠巻きに見ていた後半選手達も我に返る。
「そ、そうだっ!貴姫君の分まで頑張らねば!」
「やーみぃさん、私、やります!」
「耕ちゃん待っててねーーっ!」
 我先に突撃して行く選手達。
 そんな選手達をほっとしたように見つめる志保だった。
『えー、ワープ先の様子はこの大スクリーンでご覧下さい』
 なお、選手達が立ち去った後にはボロ雑巾にされたばかりか名前までひっぺがされた名
もなき男子生徒Aが転がっていた。
 ひゅうううううううううううううううううううううううううう。
 哀れ。

 ワープゲートを抜けた先には、ぶらぶらとセリスが揺れていた。
 凍てつくような寒さ、そうここは南極大陸。
 超ペンギソの故郷。
「きゅぴ?」
 野生の超ペンギソは凶暴である。注意されたし。
 ってゆうかみんな凍ってるし。
「さ、さびぃぃぃーーっ!?」
「わーーーっ、あの超ペンギソこっちに来る!?」
 おおわらわである。
「きゅっぴーーーー!」
  極太レーザー掃射。
「うひゃあああーーーーっ!?」
「いやあああーーーーっ!こっちこないでぇぇーーーっ!」
 そんな中、ただ一人だけ平気だった少女が居る。
 彼女の名は着物ゆかた。
「うにゃああーーーっ!みんな、カムカムにゃーーっ!」
『キケリリ・キケリリ………』
 その光景に……一同は色を失った。
 ごろごろごろと何処からともなく無数のポチが集まってくる!
「それぇ、やっつけちゃうにゃー!」
『ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ』
 ゆかたの号令でポチ達が超ペンギソを押しつぶそうと突撃して行く!
 慌てて超ペンギソもセリスを口から離し、応戦体勢を取る!
「さあ、今の内に脱出にゃー!」
「あっ、待てえっ!」
 駆けだしてゆくゆかたを追って、一同はそれに続いた。
 後には歯形が付いたセリスが南極の風に吹かれていた。

 リタイア……セリス
       南極の土となる

「また……一人!さあ、この調子でどんどこジェノサイドよぉぉっ!」
「死ぬぞ、アレは確実に死ぬぞ」
「もうただの殺人鬼だねこの女」
「聞こえてるわよ」
(びくうっ!!)


『見事第一ゲートをクリアしました選手は七人!』
『死んでませんか、セリスさん』
『えー、彼は後日責任もって委員会が回収に向かうそうです』
『遅いって』
『さあ、気になる次のゲートはっ!?』
『私はセリスさんの方が気になりますが』

《ばびゅん》

 転送されるなり、びーっびーっという音が出迎えていた。
 何の音かは言うまでもない。エマージェンシーコールである。
 だが、それは何故鳴り響いているのか。
 それが目下の所一番の問題であり……そしてそれはすぐに解決された。
「演習所内に不審な侵入者出現!総員戦闘配置!」
 号令により……彼らは素早く戦闘準備に映る。
 彼らの制服はテレビで見慣れたものであった。

『次のゲートは……自衛隊赤野ヶ原演習所のど真ん中です!』
『待てコラ』

「う、撃たないよね?自衛隊は国家と国民の安全を守る軍隊だもんね?」
 あかりの声に、岩下は頭を振った。
「いや……この世界、常識が通用しないから……」
 その瞬間、次なる号令が発せられた。
「要捕獲!生死不問!発砲任意ーっ!」
『でええええええええええええええええええええっ!?』
 自衛隊とはこの国を諸外国の侵略・テロ鎮圧・天災防御・妖魔殲滅とありとあらゆる脅
威から守るべく組織された特殊警察予備隊のことである。
 その行動原則は先守防衛にありながらも、国家の争乱の種となりそうな対象に対しては
予見的先守防衛措置を取ることが認められている………。
 すなわち。
「我等の敵は国家の敵ーーっ!撃て撃て皆撃てもっと撃てーーっ!」
「うひゃあああああああああああああーーーーーーっ!!!」
 そーゆー組織である。
 そして……数分間の樹海疾走の後、ついに彼女がキレた。
「う……うふふふふふふ……この私に兵器で勝とうとはナイス根性ーーっ!!」
 強化人間モード…起動。
 四季、暴走。
 とりあえずサブマシンガンを手に取ると、所構わず乱射を始める!
「うらうらうらうらうらーーっ!かかってこいやぁぁ!!!」
「わーーっ!?こいつ戦い慣れしてるっ!?」
「怯むなぁ、こっちはプロの軍人だーーっ!」
 まるでランボーのごとくアクションを繰り広げる四季を見て、一同はつつっとため息を
上げながら逃げ出した。
「……この場はあの人に任せて先に進もう……」
 一同一致した判断だった。
 と、そのとき……流れ弾がどすどすどすっと岩下の背中にめり込む!
「わーーーっ!岩下さんっ!?」
 慌てて瑠香がその介護に向かうが……なにやら様子がおかしかった。
 ふるふると肩を振るわせ…笑っている。
「おもしれぇ……この俺にっ!人間共の作り出した武器で挑むかっっ!」
「あ、覚醒してる」
 オロチも暴走。

 リタイア……四季    
              暴走して壮絶なアクションを繰り広げる

       岩下信
       暴走して虐殺を繰り広げる


「ふ……予定とは違ったけど……まぁいい!これで二人倒したわ!」
「あのー、こっちにも一人動かなくなったのが居るんですが」

 密かにリタイア……健やか
          さらば健やか、君のことは忘れないよ


『さあみなさん、お待ちかねの最終コースです!』
『なんか私あの暴走した二人より自衛隊の皆さんが心配です』
『さあ、最後のゲートの向こうに待つものとは!?』
『あの……いいですか?』
『はい、何でしょう』
『もうとっくに1キロ越えてると思うんですが』
『…………………………………………………………………』
『…………………………………………………………………』
『さあ、最終ゲートの前にさしかかりました!一体誰が栄冠を手にするのかっ!』
『ごまかさないでください』


 あかり、貞本、ゆかた、瑠香、千鶴。
 彼女たちが出た先には…………。
 空気がなかった。

『最終コースはっ!宇宙空間だーーーーーっ!!!!』
『待てやコラァァァァァ!!!!!』


 空気のない世界。
 だが考えても見るがいい。
 我等が立つこの大地、それは混沌たる宇宙に比べればどれだけちっぽけなものか。
 そう……我等は今、母なる混沌に抱かれている……!

「チェーンジ!アルワイヤースペースモード!」
 瑠香はスペースモードに変身した!
 これでもう真空もへっちゃらだ!

「浩之ちゃん……見ていて!私、なるよ!栄冠の宇宙撫子に!」
 あかりはなんだか違うあかりになった!
 大運動会モードだ!

「さあ、本領出しちゃうぞ☆」
 千鶴はぶるまぁだった!
 まぁそれはそれとして平気だ!エルクゥだから!
 違ってもまぁ何故か平気だ!きっと!

「宇宙にも……お魚さんはいるかにゃ?」
 ゆかたはゆかただった!
 でも平気だ!何故なら、ゆかただから!

「………………………………………………(ぷかぁ)」

『なんか一人死んでますね』
『誰ですか、あれは?』
『えーーーっと、資料によると……貞本、夏樹………?』
『誰です、それ?』
『何でも風紀委員会で広瀬ゆかり会長の親衛隊長をしている人らしいです』
『ああ、バレー部でさおりんをからかう女子生徒Aですね』
『そんなマイナーキャラが出しゃばるからです。大人しく埋もれてればいいのに……』
『おや、通信が届いてますね。え?繋ぐんですか?』
『広瀬会長じきじきの声援のようです』

 ああ……駄目だ。
 やっぱり私は単なる雑魚キャラ……。
 折角出番があったと思ったら死に役だなんて……。
 ああ、でもこれでいいのかも……。
 『雫』の卒業式エンドで滅茶苦茶にされちゃうこと考えたら宇宙の塵になった方が……。
 広瀬会長……お役に立てなくてすみません……。

『しっかりなさい、貞本!』

 はっ……その声は……広瀬会長……!?

『あなたは死なないわ!この私が保証して上げる……何故なら!』

 会長……!

『私はっ!女優だもんっっっ!!!!』

「うりゃああああああああああああああーーーっ!!!」
 地上でご覧なさいませ、会長!
 私……やります!私は……私はっ!
「広瀬会長、貞本夏樹……参りますっ!」

『げっ!?何と言うことでしょう、あの雑魚キャラが物理法則を超越しました!』
『忠誠心って偉大ですね』
『ヒロニウムです!なんかヒロニウムが輝いています!』
『なんか桃色っぽいですね』
『とゆーわけで五人とも真空圧とか無酸素とか全部無視しまくってるのでそのおつもりで!』
『しかもなんか何もないところを走ってる上に風で髪がたなびいてますね』
『もはや何でもアリって感じです!』


 五人の少女のデッドヒートは続いた。
 常識を超越したバカの戦いである!
「負けるわけには!負けるわけには行かないんですっ!」
「なるんだっ!宇宙撫子になるんだっ!」
「うふふふ……耕ちゃーーーん!」
「お魚さんはどこにゃっ?」
「会長ーーーーーーーーっ!」
 やがて……妨害工作が始まる!
 千鶴の目がきゅぴーんと光った!
「うりゃあっ、鴻門の一針!」
 千鶴の姿がぼんやりとぼやけ、分身した千鶴から四人に向かい鋭い手刀が繰り出される!
「きゃあっ!?」
 瑠香と夏樹が吹っ飛ばされる!
 だが、あかりとゆかたは素早く身をかわした!
 ゆかたは怒ってそこら中に落ちていた小惑星を拾い上げた!
「何するにゃーっ!」
「ひぃぃっ!?」
 すんでの所で身をかわす千鶴。
 この日新たに彗星が一つこの世に誕生した。
「くっ!負けるかっ!」
 さらに千鶴に向かい夏樹が手裏剣を投げつける!
 事態は既に混戦状態に陥ってしまっていた。


「ふふふ、殺し合ってる殺し合ってる☆」
「……既にそーゆーレベルの話じゃねーぞ、あいつら……」
「あはは、今なら軍隊とも戦えるねぇ」
 何処から来た、彰。


『なんか凄いことになってますね』
『誰か収拾付けるのかしら、これ?』
『………あれ?何でしょうか、アレは?』
『へ?どれどれ?………ああっ!?』
『もしかしてアレは』
『来年の干支、恐怖の大王!』
 待てや、ホントに。


 地球に近付きつつあった恐怖の大王は手始めにそこらでケンカしている五つの生命体を
消そうと近寄ってきた。
「きょーーーーふーーーーーー!」
 もはやどんな鳴き声だろうと疑問に思ってはいけない。
 アンゴルモア〜と鳴かなかっただけよしとしよう。
 ……その瞬間、五人の少女達はぎらりっと恐怖の大王を睨み付けた。
 恐怖の大王が恐怖にたじろいだように見え……。
「きょ、きょーーーっ!?」
 やがてあかりはつかつかと大王に歩み寄ると、すーーと息を吸って思い切り殴りつけた。
「黙れぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!」
「きょぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?」

『あ、あれは……!』
『どうやら私達は勘違いをしていたようです。この場を借りてお詫び申し上げます。
アレは宇宙撫子でも神岸あかりでもありません。滅殺あかりさんです』
 その瞬間、UMA&FOOL作「滅殺あかりさんの歌」がフルコーラスで大宇宙に鳴り
響いた。
 そして、ほぼ同時に空間が振動を始め……!

『な、何が起こってるんですか!?』
『じ、時空震です!あまりの破壊力に時空震が引き起こされました!』
『ど、どうなるんでしょうか!?』
『分かりません!ただ、ただ一つだけは確かなことがあります!』
『はい、なんでしょう!』
『来年は恐怖の大王は来ません。あかりさんがやっつけちゃいましたからね』
『それってどーだっていいことでは……』


「うーん、恐怖の大王までジェノサイドされちゃうとは予想外だったわね」
「そんなこと言ってる場合か!?早く逃げないと……」
「ルーン君……逃げるって……どこへ?」
 そんな彰の何気なく重要な一言と共に……暗躍委員会テントは崩壊した。


 すさまじい時空震の末……立っている者は誰もいなかった。
 全てが全てなぎ倒され、全員が気絶していた。
 やがて……一人、起きあがった者が居て……。
 ふらふらと歩き出した。
「おーい、みんなー?大丈夫かー?」
 返答、無し。
 彼は困ったような表情を浮かべてふらふらと歩き出す。
「みんなー?」
 彼は頭を掻き掻きそこら中を歩く。
 こん、と何かが足に当たる。
 なにげに掴み上げたそれは、彼のバトンだった。
 そして、その足が……転けたまま気絶しているちびせりたちの持った白テープにかかる。
 ぷちっ。
『ゴール!ゴールですっ!ただ今ランナーがゴールしました!』
『おめでとうございます!』
 ぼこおっ!っと放送石の残骸から顔を出した志保と琴音がそう放送する。
『皆さん、栄冠の一位にはYOSSYFLAMEさんが輝きましたーーっ!』
『あれ?でも志保さん、YOSSYさんはリタイアになったのでは?』
『馬鹿なこと言っちゃいけません。YOSSYさんはリタイアになったことはありません
よ。リタイアは四季さんです』
『あっ……!そうですね!おめでとうございますYOSSYさん!今のご感想は?』
「はぁ…なんというか、こんなんでいいのかって感じなんですけど」

 そして、瓦礫の下から全ての生徒達が起きあがり、絶叫する。
『いいわけあるかぁぁぁーーーーーーーーーーっ!!!!』

                 完

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 なお、ゲートが閉じて置き去りにされた生徒達は時空震により学園に飛ばされてきた。
 この順位は落ちてきた順に決定されたということである。

 二位 神岸あかり
 三位 着物ゆかた
 四位 柏木千鶴
 五位 貞本夏樹
 六位 月島瑠香

 三年 0点
 二年 40+30+10=80点
 一年 20+10+10=40点
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「ふ、ふふふ……ジ、ジェノサイド……」
「何をしているのかね一体ルリコ?」
「あっ、月島さん。この女おかしいんですが」
「ああ。ミス続きなんでちょっと電波でおしおきしたら壊れちゃたよルリコ」
(てめえのせいか)


               今度こそ本当に
                  完

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 今回のテーマは「一見リーフキャラ使っているように見えながら実は全く関係ない」
 さて、パロはいくつあったかな、と