vsジン・ジャザムLメモ 「涼風譚外伝・鋼の疾風」  投稿者:昂河
vsジン・ジャザムLメモ〜昂河晶編〜「涼風譚外伝・鋼の疾風」



 ──試立Leaf学園の校庭。


 青年は静かな瞳で、目の前の男を見つめていた。
「──勝負、だと?」
 男は青年の言葉に対して不敵な笑みを浮かべた。
「はい。」
 青年が頷く。
「俺と勝負、ねえ」
 男はそのギザギザの髪に手をやった。口元から笑みは消えない。
「初対面の挨拶がそれとは……命知らずだな」
「そうですか?」
 青年が微笑む。
「昂河、といったか。お前──なぜ、俺に戦いを挑む?」
 男は、青年をゴーグル越しに睨んだ。
「理由が──必要ですか?」
 青年─昂河晶も男を見据える。その瞳は静かながらも、確固とした意志を宿してい
る。
「聞きてえな。」
「強い人と闘いたい──それだけです。」
 その言葉に、男は片目を細めた。
「ジンさん、あなたを見ていると、僕の闘争本能がうずくんですよ。」
 昂河は笑みを浮かべた。
「もちろん、戦うからには勝ちを狙います。僕の技が鋼の体を持つあなたにどこまで
通用するか──全力で試させてもらいますよ」
 不敵、といってもいい台詞に、男─ジン・ジャザムは口の端を引き上げるように笑
った。
「久しぶりだな……そんな台詞を聞くのは」
 昂河は、そんなジンを見て背筋がぞくっとするのを感じた。
 恐怖ではない。戦いの予感に、心が打ち震えているのだ。
 本来なら、昂河は自分から戦いを挑むような男ではない。武道をやっているがゆえ
に、戦わずして守る事の大切さを知っているからだ。
 だが、戦って自分の力を試してみたいと思っている自分がいるのも、事実だった。
 通っている古武術の道場には、昂河と同等に戦える者はすでになく、「仕事」はあ
くまでも仕事であり、思うままに拳をふるうものではない。
 ジンとDセリオの戦いを目撃するたびに、思うままに戦う2人をうらやましく思っ
ていた。
 そして、そのうちに昂河の中にはある思いが芽生えていた。
 ジン・ジャザムと戦ってみたい。
 生身の自分がサイボーグでエルクゥのジンと戦って、勝ち目があるとも思えない。
だが、あの力に対して自分がどこまでたちうちできるのか、興味があった。
 それに、ジンとなら──なんのしがらみもない、純粋な闘いをすることができるの
ではないか。
 そんな気がして。
「手加減は、しないぜ。」
「望むところです」
 昂河は頷いた。同時に体内の気を練る。
 昂河の古武術は、技に気を乗せることで真価を発揮する。だが、ジンを相手に「普
通」の人間用では役不足だろう。
 清冽な気が膨れ上がり、その奔流が昂河の身体を包む。
 それを悟ったのか、ジンがニヤリと笑った。
 掛けているゴーグルが、陽光を受けてキラリと光る。


「──いくぜっ!ロケットパァァァァァァンチ!!」
 言葉と同時に、ロケットパンチが昂河めがけて飛んで来た。
 高速で飛来するそれを、昂河は横に軽く跳躍してかわした。衝撃波がその髪を激し
く揺らす。
 昂河はジンの目の前に素早く走り込んだ。
 気をまとってほのかに白い輝きを帯びている足が、空気を断つかの如き勢いで、下
から上へと跳ね上がる。
「がっ!」
 あごに蹴りの凄絶な一撃を受けて、ジンはのけぞった。
 その隙を逃さず、昂河は右手に気を集中させた。ただの気ではない。凍気である。
 それを乗せた掌打がジンめがけて叩き付けられると同時に、その接触面から火花の
ように白い光が散った。
「ぐっ……」
 ジンは2、3歩後ろによろめいた。
(いけるかっ?)
 昂河が次の攻撃に移ろうとした時、
「!」
 ジンが踏み込んで来た。
 とっさに後ろに飛び退った昂河の胸元を、ジンの蹴りが薙ぐ。
「くっ!」
 昂河の紺の制服の胸元が、鋭利な刃物で斬られたように、ぱっくりと斬れていた。
「へっ……」
 ジンがニヤリと笑う。
「ロケットパンチだけだと思うなよ」
 言うなり、昂河のふところに飛び込む。
「ちっ!」
「せいっ!」
 うなりを伴って、ジンのパンチがえぐるように昂河の脇腹を襲う。
 避けきれず、昂河の身体が吹っ飛ぶ。
「くうっ……」
 地面に転がりながら、昂河は驚きを抑えられなかった。
 自分の放った攻撃は、それぞれ一撃で熊も打ち倒す威力があるはずだ。だが、ジン
はそれをくらってなお平然としている。いくらサイボーグだといっても、多少のダメ
ージは受けているはずなのに…。
 やはり、一筋縄ではいかない。
 昂河の口元に笑みが浮かんだ。
 ジンのパンチを食らったところは、内出血どころではないだろう。
 だが、そんなことはどうでもよかった。
 心が、たぎる。強い相手と出会えた喜びに。
「ぐっ…」
 昂河は痛みに顔を歪めながら、ゆっくりと立ち上がった。
「へえ……立ち上がれるのか」
「甘く見てもらっては困ります」
 言うなり、昂河は再びジンの目の前に走り込んだ。
「させるかっ」
 ジンの中段蹴りがとぶ。それをしゃがんでかわしながら昂河はそのまま地面に手を
つき、気を乗せた重い回し蹴りをかけた。
「くっ」
 ジンはそれを跳躍してかわす。
 間髪入れず、立ち上がった昂河の足が、鮮やかな弧を描いて跳ね上がった。
 ジンの背中のバーニアが火を噴いた。
 空中へ飛び立ったジンの足元を、昂河の蹴りが白い軌跡を描いてかすめる。
「‥やるな」
 ジンの口元に、楽しげな笑みが浮かんでいる。
「……逃がしませんよ」
「逃げやしないさ」
 ジンはそう言うと、少し離れた地面に降り立った。
「そんな言葉は、俺の辞書にはない」
「だとは思いましたけどね」
 昂河は微笑んだ。
「まだまだ──終わりませんよ。そう簡単にっ!」
 言うが早いか、昂河はジンめがけて走り出した。
「上等だっ!このジン・ジャザムのスピードを甘く見るなよ!」
 ガシャッと音がしたかと思うと、ジンの身体からミサイルが飛び出した。
「見える!」
 昂河は上空に思いっきり跳躍した。その足元を、ミサイルが通り過ぎていく。
「──光撃掌!」
 昂河の手の平がジンに向かって突き出されたかと思うと、白く発光してレーザーの
ような光がまっすぐにほとばしった。
「なにっ!」
 ジンが慌てて避ける。
 その間に地面に降りた昂河は、素早く走り込み、ジンの前に立った。
(これでっ!)
 昂河の身体を、気が螺旋状に包み込む。
「させるかぁっ!」
 ジンが身構える。
 昂河はしなやかに跳躍した。気を足に凝縮させる。白光を帯びた蹴りが、ジンの頭
めがけて放たれる。

 パァン!!

「なっ!」
 昂河の渾身の力と気を込めた蹴りを──ジンは、片手で止めていた。
「馬鹿なっ‥」
 思わず呟きながら、昂河は足を引いた。
 地面に降り立つと同時に、ふところに飛び込もうとする。
 その肩を、がしっとつかまれた。
「しまった!」
「バァスタアァァァコレダアアァァァァ!!」
 ジンの腕から、金属の管が出てきたかと思うと、それが昂河の肩に触れた。
 とたんに、電撃が身体を走る。
「うわっ!」
 昂河の身体がのけぞる。
 ジンの腕が離れると同時に、昂河の身体は地面に崩れ落ちていた。


「はぁ……」
 昂河は、地面に大の字になっていた。
「いいのか?保健室に行かなくて」
 見下ろしながらジンが言う。
「大丈夫です。直せますから」
 昂河は今、活剄を使っていた。治癒のための気功術である。時間はかかるが、全快
するはずだ。
 ジンのバスターコレダーで、勝負は決着がついた。死なない程度に電撃が弱められ
ていたとはいえ、昂河の意識を奪うには充分だったのだ。
「やっぱり、スーパーロボットって、強いんですね…」
「そりゃな」
「僕は……リアル系だから…」
「何言ってんだ」
 昂河の言葉に、ジンは苦笑した。
「でも、楽しかったです。ジンさんと戦えて」
「そうか。」
「はい。…ちゃんと技を使ってくれて、嬉しかったです。」
「最初に言ったろ、手加減しねえってな」
「そうですね。」
 昂河は笑みを浮かべた。
 最後のバスターコレダーこそ死なないようになっていたが、ミサイルやロケットパ
ンチをきちんと普通に使ってくれたのが、なぜだか嬉しかった。
 自分がいつも見ていたジンと変わらなかったのが、嬉しいのかもしれない。
「…いずれにしても、久しぶりに全力で戦えました。‥ありがとうございます。」
「いや、いいって。お前もよく戦ったさ」
 ジンは頭をかいた。
「……最後の方のレーザーみたいなやつ、なんだったんだ?」
「『光撃掌』というんです。気を圧縮して放つ技で、そんなに威力はないんですけど、
フェイントには使えます。」
「マジでレーザーかビームだと思ったぜ。」
「はは、僕はどこも改造してませんよ。」
 言うと、昂河はゆっくりと半身を起こした。
「‥今日は、僕のわがままに付き合って下さって、ありがとうございました。」
 ぺこり、と頭を下げる。
「いや、こっちも真っ正面からこられたのは久しぶりだったからな」
 ジンは笑みを浮かべると、手を差し出した。
 昂河は一瞬きょとんとしたが、やがて笑みを浮かべると、その手を握った。
「…次は、負けません。」
「ああ、いつでもこいよ。」
 2人の間を、爽やかな風が吹きぬけていった。


                             <終わり>

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 というわけで書きました、vsジンさんLメモ。
 リアル系ですので(笑)正攻法でいってみました。
 一度戦ってみたかったんですよ、ジンさんと(^^)やっぱり強い人とは戦っ
てみたいじゃありませんかっ!
 やはり、書いてしまったからには、参加するしかないでしょう(笑)きっか
け考えていたので、まさに渡りに船でした。
 しかし、生身で立ち向かうのは、やっぱり無謀でしたかね(^^;次は、きちん
と防具着込もうかな…(笑)


 >ジン・ジャザムさん
 そういうわけで、戦わせていただきました。いかがでしたでしょうか。僕は、
 あなたに認めてもらえるだけの戦いができたでしょうか……?

 >beakerさん
 ジンさんと戦う機会を与えて下さって、ありがとうございました(深々)。


 ……しかし、本編も書けよな、自分……