『どよめけ! ミス・L学コンテスト』第二十五話〜Information War?〜 投稿者:神海

『そんなんどーでもよくなった』
 お下げ髪の少女が、微かに自嘲を込めてそう言った。
『もう、いいんや』
 向かい合った男が、呆然としながら彼女の名を呼んだ。だが、少女はゆっくりと首
を振る。
『だから、もうやめる。だから……』
 紡がれる、言葉。
『後悔、しないな?』
 応える男の声に、緊張が混ざる。
 少女もまた、微かに震えていた。それは緊張ゆえか、それとも──
 やがて逡巡していた男は、何かを決意したように、少女へと手を伸ばし。

 衣擦れの音とともに少女の白い肌は空気に晒された。



 がり。
 鈍い音ともに、風見ひなたの動きが止まった。正面の巨大なオーロラビジョンを凝
視したままで。
 ここ、試立Leaf学園体育館では、現在異様なほどの盛り上がりを見せている「ミス
・Leaf学園コンテスト」の実況中継が行われていた。
 今回、特に動く義理のなかったひなたが、『まあ、馬鹿騒ぎ見物と洒落込もうじゃ
ありませんか』と笑っていたのも、たった今目の前の大画面の中で、エントリーヒロ
インの保科智子が過剰なほど雰囲気たっぷりに「脱落」するまでのことだった。
 当然ながら、画面の中の二人──保科智子とディルクセンは、自分達が各紙カメラ
越しに数百人の観客に視聴されていることに気づいていない。
 隣に座ってのほほんと冷たい麦茶を飲んでいた赤十字美加香が、パートナーにそっ
と注意を喚起する。
「……ひなたさん……お煎餅と一緒に指噛んでますよ?」
 彼──風見ひなたには聞こえた様子も無かった。視線を固定させたままとりあえず
煎餅だけを咀嚼すると、無言のまま立ち上がり、まっすぐ、体育館の一角──コンテ
スト運営本部に歩いていく。
 同じく、別の位置から本部に向かう男が一人。背が高くがっしりとした体格の……
二年生、Fool。
 その先には、二人と同じく無表情に顔面を塗り固めた、ひなたと、そして保科智子
の幼馴染──Hi-waitが立っていた。
 終始無言の無言のまま、Hi-Waitによって二人に鉢巻きが配られる。
 合図もなく、三人は同時に口を開いた。

『彼女を汚した不埒者に──』

「血の粛正を」
「悪夢の末路を」
「正義の鉄槌を」

 声を揃えて。

『征くぞ』

 ……彼らは戦場へ赴く。敵を求めて。

・
・
・

 運営本部で一部始終を傍観していたRuneは、三人が姿を消すと、後ろで作業してい
る友人に声を掛けた。
「実況中継、苦労した甲斐があったね、すこちゃん。……すこちゃん?」
 返事がない。振り向くと、その姿も消えていた。
 気配もなく唐突に姿を消すのは友人の得意技なのだが、座っていたはずの席に、一
言だけの書き置きが残されていた。
「………」
 一読後、しばらく無言で宙に視線をさ迷わせてから、Runeはぽつりと呟いた。

「今日は暑いな」
「暑いですねえ」

 残った月島留香がのほほんと応じた。



 とりあえずコンテスト本戦には関係のない出来事である──はずだが、割と予断は
許されないのであったり。(例・戦艦冬月)





          『どよめけ! ミス・L学コンテスト』

               第二十五話

             〜Information War?〜





 ……霜月祐依が去ると、美術室は、一転して静かな討議の場に変貌した。

 姫川琴音、OLH、神凪遼刃、東西、松原葵、そして立川郁美と雄三の兄妹。
 その8人が大机に向かい合い、淡々と意見を交わし合っている。机の上には、大会
公式資料と幾つかのメモ書き、OLHと郁美のノートPC。
 琴音達にとっては期せずして現れた、大規模で強力な援軍。だが、その人数の分だ
け、選択肢は以前より狭まってしまったと言えるかもしれない。
 立て篭もって戦うのはもはや論外になった。子供たちのためだ。もし、この狭い美
術室の中で、強力な能力を持つ者に強襲された場合、子供たちをパニックに陥れて戦
列を撹乱するのは容易だし──あまり考えたくないことだが、大変な怪我をさせてし
まうかもしれない。
 屋外に潜伏も、この大人数では難しい。夜になればともかく、この昼日中では。
 そこで。

 戦力を攻撃と護衛とに二分し、積極的に攻勢に出る。

 それが、お子様オールスター軍団を引き連れる郁美が持ち込んだ提案だった。
 OLHが眉をひそめる。
「そんな手が、何度も通じるとは思えない」
「この子達が警戒されるようになったら、それはそれなりに利用できる隙が生まれま
すよ」
「この学園には、子供にも容赦しない人が結構いると思うんだけど……」
 東西が不安げに視線を向ける。そこには、決意の表情で年長者たちの判断を待つ子
供たちの姿があった。
 姫川笛音、雛山良太、きたみち靜、てぃーくん、榊木風、そしてマール、ルーティ、
ティーナのマルティーナ三姉妹。
 彼ら8人を「攻撃部隊にする」と、郁美は提案したのだ。
「もちろん、相手は選びます」
「……どうやって? 迂闊に動き回るのは自殺行為ですよ」
 神凪の言葉に微笑んで、郁美は自分のノートPCを見せた。
 液晶ディスプレイには、『“Brother Two” Presents』という件名のメールが開か
れていた。




                  ◇




「どうして勝手に抜け出したりしたんですか?」
 偽装した梯子を登り、鳥の巣跡に戻ってきたところで、弥雨那希亜は初めて、そう
尋ねた。
 彼が守るエントリーヒロイン、悠綾芽は、俯き気味に一言だけ答えた。
「……ごめんなさい」
 芹香陣営の混乱から辛くも脱出した後のこと。二人は、空飛ぶ箒で大きく迂回して
着陸位置をごまかし、ジャングルを30分ほど歩いて、やっと隠れ家に戻ってきたと
ころだった。
 実戦戦力面で言えば、おそらくは現在生き残っているヒロイン陣営のうち最弱小の、
悠綾芽チーム。生き残るためには、少なくとも自分たちの手で戦況を左右できるほど
に
 そのはずが、綾芽は、希亜の眠っている隙に勝手に抜け出し、学内をうろついてい
たのだ。幾らマイペースの希亜といえども、文句の一つも言いたくなる。
「私は、抜け出した理由を聞いているんですけどね」
 気が進まないが問い詰めた。これを解決しておかなければ、今後の行動に差し支え
るのだ。
「……それは……」
「それは?」
 綾芽は、かなり長い時間躊躇った末に、答えた。


「………………………………………………………………………………………トイレ」


「………」
「………」
「………」
 どうしようもない沈黙。綾芽はさすがに顔を赤くして、そっぽを向いてしまった。
「ふむ……」
 希亜は困惑しながら頭を掻くと、傍らのディバッグを指した。

「トイレなら、そこに携帯用パックがあったんですが……」

「できるわけないでしょ!!」
「むぅ」

・
・
・

『密林サバイバル』『防げ! 盗聴マニュアル』『集団心理の操り方』……。
 希亜はナップザックからそんな表紙の冊子を取り出し、傍らに広げていく。書店に
行けばずらりと揃っていそうなタイトルなのだが、それらと異なるのは、殆どがコピ
ー紙をホチキス止めされただけの簡単な冊子だということだった。
「……えーと。これ、同人誌ってやつ?」
「はい、情報はなかなか良質ですよ?」
「ふーん……」
 綾芽にはまったく縁のない分野だからだろう。彼女は曖昧に肯いただけで何も言わ
なかった。希亜は次に、ノートPCを取り出して携帯電話に接続する。タッチパネル
を操作してダイヤルアップ接続。
「……そんなことして、電波の傍受とかなんとかは大丈夫なの?」
 綾芽が盗聴云々と書かれたマニュアル本を見ながら首を傾げた。
「三個所で中継してから、学園のサーバーに接続しています。中継点にはちゃんとト
ラップを仕掛けてますから、発見されればすぐわかります。通信時間を圧縮するため
に連絡はメールに限定していますし」
「ふぅん……」
 納得したのかしないのか、もう一度、生返事を繰り返す綾芽。
(まあ、それを上回る技術の持ち主に本腰を入れられたらおしまいですけどね)
 と言う呟きを、希亜は口には出さなかった。素人なりに打てるだけの予防策を打つ
しかない。
 その策の一つが、ここにある。希亜はメーラーを立ち上げた。

===
 差出人 : Ikusaba
 宛先  : Shimapu
 件名  : どよコン情報っス!

希亜ちゃんへ。
 今日は晴天に恵まれて、カチワリの売れ行きは好調っだったっス。これを資金に、
そろそろこみパでも一本立ちしたいところっスねー。
 んじゃ、以下、大志のアニキから送られてきたどよコン最新情報っスよ!
                                   ===

 そんな書き出しで始まったメールには、20人を超える各エントリーヒロイン陣営
の、護衛人数、戦力、状況の詳細がレポートされている。それどころか、徒党を組ん
で獲物を求める一般参加者の大まかな流れさえ記してある。
「すごい……」
「隠れおたくパワー全開ですねぇ」
 綾芽が言葉を失い、希亜ですらやや呆れ気味に呟く。
 ざっと見て、さほど大きな変動はないことを確認する。まだまだ生き残りも多く、
動く時機ではなさそうだ。
(悠さんや来栖川さんの陣営も無事ですしねぇ……)
 と、これは口には出さない。
 希亜もメールを返信する。主に先ほど高空から見てきた状況報告だ。
 因みにこのメールマガジンには、綾芽・希亜の現在位置は流されていない。自分た
ちに不利になる情報は流さなくともよいというのが、このネットワークの参加時の契
約だった。ネットワーク主宰の九品仏大志からすれば、学園に実はかなり存在するお
たく同胞達のうち誰かが、優勝するか、優勝者に恩を売ることができれば構わないと
いうことなのだろう。

 ノートPCを閉じて、希亜は空を見上げた。気づいてみれば、初夏の太陽も大分西
に傾いて、風も涼しいものに変わっていた。
「そうだ、綾芽さん」
「何?」
「上に登ってみませんか?」
 近辺でも飛びぬけたこの大樹の頂上を指差した。


「わあ……!」
 その光景に、綾芽は歓声をあげた。
 オレンジ色の夕焼けが、見える全てを照らしている。
 森の向こうに開けた学園の敷地、四つの校舎や体育館。大小の建物たちの隙間を忙
しなく動く多くの人間たち。それらの一つ一つが、黒い影を伴いながら、くっきりと
オレンジ色に染め上げられていた。
 学園の向こうには、絵画のように鮮やかな街並み。そして、曲線を描く湾。その中
に沈もうとする太陽は驚くほど大きく、波に光を反射して眩しいほどだった。
「機会があれば、もっと上にも案内しますよ」
 天空を示して、希亜は言った。
「………上?」
 ひとときのオレンジから、群青に変わっていこうとする空。漂うひつじ雲が片側だ
けを太陽に染め上げられている。
「わあ……」
 しばらく帰ってこないなぁ、と思うと、希亜は邪魔をするのをやめて、背後の幹に
背中を預けた。

・
・
・

 随分経ってから、綾芽はぽつりと言った。空を見上げたままで。
「……ありがとう」
「景色は、ここにあるだけのものですよ。私にお礼を言うことじゃありません」
「そうじゃなくて」
 綾芽は希亜に振り向いた。巫女装束と揺れる髪も橙色に染められていた。

「助けてくれて、ありがと」

 上げた顔に、不意に沈みかけた太陽の暖かみを感じて、希亜は幹に凭れた身体を一
度身じろぎさせた。
「……まあ、買って出てしまった護衛ですからね」
「そう、ね」
 涼やかな風が流れて、過ぎていく。

 ……しばらくの沈黙の後、綾芽がもう一度口を開いた。

「それで、トイレはどうするの?」
「……どうしましょう?」




                  ◇




「どうですか? 琴音さん?」
 郁美が訊ねる。最後まで反対派に残る琴音に対して。OLHも粘ったのだが、笛音
の「お願い」攻撃で骨抜きにされてしまっていた。
「でも、やっぱり、この子達を危険にさらすのは……」
 躊躇いがある。元々、優勝すること自体には、琴音はこだわっていなかったのだ。
確かに、水着姿を全校にさらしてしまうのは嫌だが……。
 同意を求めて葵を見る。と。
「松原さん?」
「……え? あ、何?」
 彼女ははっと我に帰った様子で振り向いた。郁美のノートPCに見入っていたらし
い。ディスプレイには依然として、大志からのメールが表示されていたのだが。
「琴音ねえちゃん! おれらだって、このがくえんのじどうなんだぞ!」
 煮え切らない琴音に叫んだのは良太だった。
「その通り! 甘く見てもらっちゃ困るよ!」
「いざとなったらボクがマジカル☆ティーナになってやっつけるからさ!」
「きっとお役に立てますよ」
「……がんばりますから」
「優勝目指してふぁいとだよ〜」
 ルーティ、ティーナ、マール、木風、靜。
 そして、てぃーくんが総括するように。
「琴音ねーちゃんにはお世話になってるからね。ま、僕たちの心持ちってやつだよ」
「かっこつけるんじゃないぞ、てぃーくん!」
「このマセガキぃ!」
「痛い、痛いってば!」
 良太とルーティにぽこぽこと叩かれる。そのままいつもの騒ぎになだれ込む──と
思いきや。
「みんな」
 琴音が、それを制止した。
 8人の注目を受けると、彼女は律義に、頭を下げた。
「ありがとう……。よろしくお願いするね」
 ずっと無言で見つめていた笛音が、一転して嬉しそうに微笑んだ。
「きまり! それじゃあ、みんな、はりきっていこうねっ!」
『おー!!』




                  ◇




 ……そして、車が曲がった角を、遅れて屋台が曲がったとき。
 そこに、自動車の姿は影も形も排気音も無かったのであった。

「うおおおおおおおおおおおおおおおっ!!? どこに行ったんですかセリオさん!
出てきなさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあい!!!」
 ディアルトが絶叫しつつ、屋台を振り回して疾走する。
「セリオちゃん! 食べ物の恨みは恐いんだからね!」
「電柱……補充完了です」
「うふふふふふふ……せーりーおーちゃーん。隠れてないで出ておいでー☆」
「ディアルトさん、ストップ! ストぉぉっップ!! ちょっとだけでいいからすと
ぉぉぉぉっぷぅうぅっ!!」

 どんがらがらがらがらがっしょいがらがららら……

 屋台の爆走する音が遠のいていく。
 とーるが懸命に止めようとしていたが、完全にランナーズ・ハイに突入しているデ
ィアルトとその仲間たちは聞く耳を持たなかったようだ。

「……行った?」
「ああ……大丈夫みたいだ」
 それを見送って、校舎の窓からひょっこりと顔をだしたのが、陸奥崇とセリス。
 トリックは単純。ディアルト屋台を引き離したところで、FENNEKが車形態から人型
形態になり、手近の窓から校舎に逃げ込んだだけである。
 当のFENNEKは、廊下の隅に座り込んで落ち込んでいたが。
「ううう……あんな屋台に……あんな屋台にぃぃ〜」
「ま、まあ……たまたま犬に噛まれたと思って忘れましょう。運が悪すぎたんですっ
て」
「人生、割とこんなもんだぞ?」
 崇と昂希が慰めにならない慰めをかけている。
「とにかく、このままじゃまずいね」
 セリスは思案した。あの集団に追い掛け回されては無駄に体力を消耗するし、嫌で
も目に付いてしまう。
 どうにか和解を……と思った時。

「まるせりねえちゃん!」

 不意に響いたのは、子供の甲高い声だった。
 振り向いた6人の前に現れたのは、五つの小さな影。その中央、赤い影が声を張り
上げる。
「ねえちゃんたちにはうらみはないが、これもしがない、と、とせの……えーと……」
「渡世の定め、だよ」
「お、おう、さんきゅ、てぃーくん。
 えっと、とせいのさだめ! よわきをくじきつよきをたくす──」
「ちょっと違うよー」
「われらしょとうぶレンジャー、ただいまさんじょう!」
 どどーん!
 ……と、爆煙と光が無いのがもったいない。
 雛山良太、きたみち靜、姫川笛音、てぃーくん、榊木風。
 白い鉢巻きを風にたなびかせ、五色のコスチュームを身に纏った五人の児童が、彼
らの前に立ちはだかっていた。
「はわわ〜。敵さん……なんでしょうか?」
「──戦隊さん。正義の味方……私が悪、なんでしょうか……?」
 マルチも戸惑いを露わにし、セリオの方は少しショックを受けていたりする。
「一難去ってまた一難……かな?」
 セリスは困った笑みを浮かべて呟いた。
 強力かつ意表を突きすぎた敵の攻勢を凌ぎ、一息ついたところで現れたのはお子様
軍団。
 ……個人差はあれど、多少なりとも緊張の糸が切れてしまったことに、不覚にもそ
の時、彼らは気づいていなかった。




                  ◇




「笛音ぇ〜。怪我だけはするなよぉ〜」
 それほど離れてはいない、『リズエル』の視聴覚室の一つ。
 夕暮れも近いとはいえ快晴の初夏。厚いどん帳が下りて締め切られた室内は、まだ
じっとりと暑かった。
 暗い室内で、二つのディスプレイだけが光を発し、それに四人の人間が集まってい
る。てぃーくんが隠し持ったデジタルカメラから送られてくる映像を、琴音、郁美と
OLH、東西が固唾を呑んで見守っているのだ。
 特にOLHは、ディスプレイにしがみついたり、しがみついたまま辺りをおろおろ
と歩き回ったりと落着かない。
「笛音ぇ〜。ふ、え、ねぇ〜〜っ!」
「ノートを持ち歩かないでくださいよ……。それから静かに……!」
 一緒に見ていた東西が注意が飛んでいる。
 葵もそれは気になっていたが、隠れているとはいえ周囲の警戒を怠るわけにもいか
ず、一歩離れてドアの方へ注意を向けていた。引き続き、てぃーくんの宝貝も作動さ
せている。立川雄三と神凪遼刃もまた、黙したまま半ば背中を合わせるように廊下側
と窓側に視線を向けている。
(この人も、強そうだな……)
 鍛え上げられた筋肉をさらして腕組みする雄三を一瞥して、格闘家の習性か、葵は
そんなことを考えてしまう。どんな攻撃を繰り出してくるのだろうか、それをどう掻
い潜り、どう効果的な打撃を与えるか、と。
 ふと、先刻、郁美のノートPCで目にした情報が、脳裏に浮かび上がった。

『来栖川芹香陣営 : 
   猪名川由宇の「蟲」、及びYOSSYFLAMEの襲撃を受けたものの、撃退』

(芹香先輩はまだ無事でいる。なら、きっと……)
 自分は確かに、琴音のためにこのコンテストに参加したのには違いない。
 だが、『彼女』が自主脱落したと聞いた時から、ある気持ちが、芽生え始めている
のも確かなことだった。
 破られたらゲーム・オーバーの特注制服を着ているわけでもなく、強力な護衛者に
囲まれているわけでもない。
 葵が追い駆けるままの、『彼女』が──
 そこに、いるのだから。

 我知らず、ナックルの拳を握り締めた。


                         第二十六話へ ── 続く

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                               010816
         ──一撃離脱の希亜さんがかっこよかったので(笑)── 神海