使徒達の日々(#01-a)「我らが導師の優雅な私生活」 投稿者:神海


ハイド「……信用してもいいんだろうな? このタイトル」
神海 「(目を逸らして)さて。終わってみない事には、何とも……」
ハイド「ほう…(構成が空間に展開し……)」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


           使徒達の日々(#01-a)

         「我らが導師の優雅な私生活」



 ダーク十三使徒首長ハイドラント。
 百余名の『使徒』を統べる指導者。
 最強といわれた暗殺技能者魔術士。
 魔王・日陰のマスター。
 エルクゥ同盟、ジャッジ、風紀委員会を公然と敵に回す――。
 Leaf学園屈指の問題人物である。


 ……で、ある……はずなのだが。

「邪魔だ悠ぁぁぁ! プアヌークの邪剣よぉぉっ!!」
「綾香の邪魔をしてるのはおまえだろうがっ! 真・魔皇剣!!!」
「……飽きないわね、ホントに」
 今日も今日とて。
 彼は悠朔と綾香争奪戦を繰り広げていた。
 今日の戦場は校庭の片隅である。
「邪剣よ!」
 迫りくる光熱波を、一瞬早く悠は躱す。背後にあったコンクリートの水飲み場が撃砕さ
れる音を聞きながら、木刀を振りかぶる。
 ほぼ同時に水道管が破れ、激しい水柱が巻き上がったらしいが、無視し――。
「真・魔――」
「きゃあぁぁっ!!?」
 滅多に聞けない綾香の悲鳴が響いた。
 驚いて振り返ると、彼女の死角から襲い掛かった水流が、見事に直撃していた。

「………………………………………………………………………………」

「……冷たい」
 呟いた声に含まれた剣呑さに、二人のじゃれ合いもさすがに止まる。
 綾香は、重く垂れ下がる前髪を払いのけながら、二人をじっとりとした視線で見据えた。
「……まだ、続ける?」
『いいえ』
 男二人は、神妙に首を振った。


「まったく……あんた達は顔を合わせれば毎回毎回……」
 水流はいつのまにか勝手に止まっていた。
 愚痴りながら、どこから取り出したのか、取りあえず綾香はタオルで服を拭いている。
 全身濡れそぼっていたが、冬服でもあり、それほど妙な感じになっているわけではない。
「ちっ」
「何が……『ちっ』よ!」
「!?……! ……う……おぅおぅ……」
 踏み抜かれた膝を抑えて転がるハイドラントを尻目に、悠が白衣を脱いだ。
「ほら、着てろ。早く着替えないと風邪をひくぞ」
「あ……サンキュ、ゆーさ…くしゅんっ!」
 この辺りの配慮は、悠に軍配が上がるらしい。と、いうより、ハイドラントにそのよう
な配慮を人並みに期待するのが間違いのような気がするが。
 それでも、くしゃみをする綾香を見兼ねたものかどうか、ハイドラントが言った。
「うちに風呂があるが、来るか?」
「うち?」
「第二茶道部だが」
「あ、そっか。そういえば結構近くね」
 ハイドラントは第二茶道部室に寝泊まりしている。「部邸」と呼ばれることもあるだけ
あって、幾つか部屋もあるらしいし、生活するための最低限の用意も当然あるのだろう。
 加えて、何しろ広大なL学園だ。とりあえずの着替えがあるだろう格闘部へ行くにも、
それなりの時間が掛かってしまう。
 だがそれでも、悠は不審の目を抑えられなかった。
「盗撮カメラでも仕掛けてあるのではないだろうな?」
「なんで自分のねぐらにそんなもん付けにゃならんのだ」
「……それもそうだが」
 意外に真っ当な返事が返ってきて、悠は沈黙しなければならなかった。
 一方の綾香は、まがりなりにも男の家の風呂に入るというのに、さして緊張もしていな
いらしい。
「…………」
 いささかならず複雑な気分になりながら、悠は二人の後を追った。



 第二茶道部へ赴くと、悠達が初めて見る女性が三人を出迎えた。
 初めて見る、と言っても、その容姿に見覚えが無いわけではない。
 来栖川HMX−13。セリオタイプだったからだ。
(瞳が金色……? 変わったカスタマイズだな)
 悠は思う。そして、それともう一つ、並のHMと決定的に異なる部分に気付く。
 そのセリオは彼らを見て、僅かな時間、驚いたように硬直したのだ。
(市販型のセリオではないんだな)
 だが無論、悠にその『驚き』の原因まで分かるはずがない。
 向こうもすぐに表情を繕うと、丁寧に頭を下げた。
「お帰りなさいませ、兄様」
 ハイドラントは肯くと、隣の綾香を親指で指しながら。
「皇華、ちと風呂の用意を頼む。それからおまえの着替えを貸してやってくれ」
 意外に、優しい声音だった。
「……はい」
 もう一度頭を下げて、皇華と呼ばれたセリオが綾香と去ると、残るは悠とハイドラント
だけになる。
「さて……たまには私が茶をいれるか」
 上座に座ろうとして、ハイドラントはふと思い出したように悠を見た。
「ああ……そういえば。悠、少し顔を貸せ」
「どうした?」
 訝しむ悠に構わず、ハイドラントはさっさと庭に出ていく。
 誰が整備しているのか、日本庭園はなかなか本格的なものだった。
 こういった方面の趣味は合うのか、二人はしばらく黙って歩いていた。
「……いったい、何の用だ? 話があるのだろう」
 綾香の事か……それとも。
 だがハイドラントはその問いを無視するように、石灯籠の一つに手を置く。
「ここなんだがな……」
「? なんだ?」
 意図がまったく読めない。何の変哲も無い石灯籠に見える。
 それでも、悠がよく見ようと目を凝らした時。
 ガコン。
 音を立てて、石造りの一部が四角に陥没した。
 そして。
 足元の地面が消える。
「さらばだ、悠」
「――――」
 表情も変えらないまま、浮遊感が落下感に変わるのをただ無力に知覚する。
「……さっきの台詞はどうしたぁぁぁぁ………!?」
 絶叫に尾を引かせながら、悠は暗黒に呑み込まれた。



 バタン、と地面を元に戻しながら、ハイドラントは一人ごちた。
「ふっ……こんなこともあろうかと掘っておいたのだ。図書館ダンジョン直通コース……
生きて帰れよ。いや、死んでも構わんか」
 邪魔者は消した。
 あとは皇華を何とかすれば、今の第二茶道部(地上部分)には彼と綾香しかいなくなる。
 二人きり、だ。
(クククッ、綾香が戻って来る前にあれをこうして、ふっ、例のものを用意せねばな……)
 とてもここには表記できない事(あくまで推定。あしからず)を考えながら、小躍りし
たい心境を抑えて、ハイドラントは部室に戻り――

 そして。

(どっから湧いて出たぁっ!?)
 思わず、胸の中で絶叫していた。
「篠塚さん、美味しいですね(にこにこ)」
「恐れ入ります」
「おう、ハイド。悠はどうした?」
「…ねえねえ電芹、やっぱり神海先輩って弥生先生のこと……」
「たけるさん、聞こえますよ…(ちょっと赤面)」
「あ、ハイドさん、いたんだ〜。こんにちは〜」
「お茶は、私がおいれしますね」
「ハイドラントさん、部費の件で少々お話が……」
「お邪魔しています、ハイドラントさん」
「どうした、ハイド。そんな所に突っ立って?」
「……………」
 合計五人の人間が、部室でお茶を飲んでいた。
 篠塚弥生、川越たける、電芹。彼女らは良い。神海も……まあ、許そう。邪魔になれば
叩き出せば済むことだ。
 だが。
「なんだ、貴様は」
 ハイドラントが警戒したのは、その中に混じってあぐらをかいている、一人の男子生徒
だった。
 その生徒は不満そうに答える。
「なんだよ、ハイド。さっきからずっと一緒に来たんじゃないか」
「あん?」
「お客さまを置いて、庭で何をしていらしたんですか? ハイドさん」
 電芹が訊ねながらフォローしたが、ハイドラントにはまったく覚えが無い。
「知らん。だいたい貴様は誰だ? 見覚えも無いぞ!?」
 断言すると、男子生徒A(ハイドラント認識)は唐突に畳にのの字を書き始めた。
「……畜生、どうせオレは背景さ……毎回おまえに踏まれてるってのに認識は道端の石こ
ろと同じかよ。けっ。だいたいおまえがぶっ壊した水道管の元栓閉めたのも、綾香にタオ
ル貸したのもオレだってのに……」
「あ〜、ハイドさん、意地悪しちゃ駄目ですよ〜」
「ハイドさん、今の言葉は少し言い過ぎだと思います」
 たけると電芹が口々に非難する。
「その通りですよ、ハイドラントさん。それに、いつも来栖川さん達と一緒にいらっしゃ
る方じゃないですか」
「…………そうなのか?」
 首を傾げるハイドラントの一方で、男子生徒の方はがばっと起き上がると涙を流して神
海の手を取った。
「ありがとう、名も知らない人! オレは君のことは知らないが、君はオレの姿を見えて
いてくれたらしいな! 感謝するっ!」
「……あの」
 さすがに返事に詰まる神海。確かに困るが。
 ……そんな光景を見ながら。
 ハイドラントは我に返る。現在の最優先目的を思い出す。
(どうする?)
 答えは単純だった。
(単純な引き算に限る)
「おい、お手軽飛び道具その二」
「……それ、俺のことですか?」
 さすがに笑顔に汗が浮かぶ神海に構わず、
「厄介ごとに対する保険その一になる予定もあるが、今はとりあえず……」
 首根っこを掴む。
「あぅ」
「飛んでけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっ!!!」
「はうぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ???」
「ぐぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?!」
 飛び道具その二(ハイドラント認識)の直撃を受けて、男子生徒A(あくまでハイドラ
ント認識)は真昼の星となった。

「ふぅ……」
 呼吸を整えながら、思考を巡らせる。
(これで2人……時間をとったな。綾香が戻って来るまでどれくらいだ?)
 それほど長風呂をするとも思えないから、あまり時間はないはずだ。だが。
「神海先輩、また来てね〜」
「お茶が入ったところだったのですが……」
「ハイドラントさん、障子の補修代は部費からは出しませんよ」
(……この三人をどうするよ、おい)
 ちょっと絶望など感じてみたりするハイドラント。
 力尽くなどと考えれば、逆に滅殺される。
「ハイドさん、いつまで立ってるんですか〜?」
 たけるが促がした――それに応えて、動くなり、口を開くなりしなくてはならない。
(こうなれば、綾香を外に連れ出すしかないっ!)
 決意すると、ハイドラントは白々しく言った。
「あ、すまん。用事を思い出した。少し席を外すぞ」
「え〜、そうなんですかぁ。ハイドさん、新しいゲームを持ってきたんですよ〜」
 たけるが取り出したのは、曰く、新システム『インタラクティヴ・キャラクタービュー
・システム』を搭載した待望の本格アドベンチャー――
「ほほう! 噂のアレか。ジン・ジャザムが2800円で買ったと言っていたな」
 ――と巨額の宣伝費を掛けて自己主張していた、大コケ勘違いクソゲーだった。
「あの男が、まだ2800円の段階で金を出すのであれば、余程のものなのだろうな……
って……」
(って………いかん! クソゲーに釣られてどうする!? せっかく綾香が――)
「ハイド君♪ 遊びに来ちゃった」
 聞き慣れた声とともに、唐突に背中に気配が現われる。
「師匠……珍しいですね」
 EDGEの姿が、真後ろ五十センチの位置にあった。相変わらずとんでもない。
(あああっ!? どうして人が増えるんだっ!?)
「御馳走になってもいい? ハイド君」
「はい、御存分に。おたけさん、電芹、お茶をお出ししてくれ」
「ありがと♪」
(……駄目だ、この人にだけは逆らえん)
 ハイドラント、再び絶望。
 それでも何とか立ち直ると、おずおずと口を開いてなどみる。
「で、では。私は小用がありますのでこれで……」
「兄様、お着替えはあれでよろしいのでしょうか」
「ああ。手間を掛けたな、皇華。もう構わんぞ」
「………はい」
「では、私は少し出掛けるから……」
 戻ってきた皇華を労うと、今度こそ立ち上がる。
 またまたその時。
「ハイドお兄ちゃ〜ん!」
(殺気ィ!?)
 思わず振り向くと、無邪気に飛びついて来るむらさきの姿が視界に映った。
 大鎌を手に持ったままで。
「やめんかっ!!」
 無雑作に空を切る大鎌を躱し、懐に潜り込んで両掌で顔面を叩く。むらさきはあっさり
とひっくり返って目を回した。
 大鎌は半回転して畳に突き刺さる。
「うきゅ〜……事務室の南せんせいが、『ごめんなさい』だって〜……」
「……またクビになったのか……」
「マスター! お腹空いた〜、何かちょうだい〜」
「って、日陰までかぁっ!?」
「なによマスター、邪魔者みたいに〜」
「……い、いや、そういうわけではないんだか……」
「……急に賑やかになりましたね」
「そうですわね」
 電芹と弥生はマイペースでお茶を飲みながら、それを眺めている。
 ハイドラント、たける、電芹、弥生、皇華、EDGE、むらさき、そして日陰。合計八
人。
 その上、その殆どがばらばらに騒いでいれば、ある程度余裕のある部室も狭くなろうも
のである。

「ハイドさん、このゲーム、探偵と犯人の双方向からストーリーが始まるんだってっ☆」
「なるほど……『人物描写を深く突き詰める』か。これからどう転ぶのか楽しみだな」
「ハイド君、そのお菓子ちょうだい♪」
「あ、はい、師匠。どうぞ……」
「……兄様、私がおいれしたお茶をを……」
「ふむ……。大分良くなっ……」
「あ〜っ、ハイドお兄ちゃんの隣はむらさきだよっ、皇華ちゃん!」
「マスター、おかわり〜」
「ああああっ、一度に喋るなっ!」
「(かさららっ、と襖を開け)……ねえ、ハイド、着替えってこれしかないわけ? って
……」
「何を言う綾香っ! 黒髪に浴衣こそ、日本文化の極み!」
「マスタ〜?」
「ぷ〜〜」
「……兄様……」
「…………お邪魔みたいだから、私はお暇するわ。お風呂はありがと。皆でお幸せにね」
「ちょ、ちょっと待て、綾香、ちょうど私も外に用事がっ」
「いいじゃないマスター、そんな猫目暴力女なんて(だきっ)」
「………………………なんですって?」
「ふんっ、だ」
「………………(ばちばち)」
「………………(じりじり)」
「おーい、二人とも……」
「ハイドくん、修羅場?(わくわくっ)」
「むー! むらさきだっておこっちゃうんだぞ! 皇華ちゃん!」
「……私だって兄様と一緒にいたいんです……」
「マスターは私と――」
「貴女がハイドとどうしようと――」
「あうあう喧嘩はいけないよ痛いよ危ないよ仲良くしようよお茶もお菓子もたくさんある
よああっ皆食べるの早いよ私お饅頭一個しか食べてないよ〜」
「たけるさん、手にもう一個持っていますよ」
「なんでここで浴衣なんて着て――」
「元々ハイドに付きまとわれて迷惑――」
「『愛とは、勝ち取るもの』、ですか……」
「よく知っているわね、電芹ちゃん。そう、女は愛のために技を磨くのよ。この闘い、貴
女のためにもなるわ。よく見ておくといいわよ」
「はい」
「だいたいハイドが――!」
「マスター! ここではっきり――!」
「なんで俺に火の粉が飛ぶぅ!?」
「若さ、ですわね」
「だから―――!」
「なんで―――!」
「――――――!」
「――――――!」
「―――――――」
「――――………」
「…………………」
 …………………
 …………………
 …………………



 騒ぎは小一時間続いて。

 ハイドラントはそれが終わると、胃薬を飲んでさっさと寝た。




「…導師…導師は僕を…必要としていないんですか…?」
 葛田玖豆夜が、一人天井裏で涙していたことに気付く者はいない……。


                                      了


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ハイド「………………」
神海 「ほら、人も羨む優雅な私生活。八人の女性に囲まれたLで、不服など言わせ
    ませんよ」
ハイド「……うむ、まあ、なんだ……」
神海 「さて。これで義理は果たしましたね。ちなみに、シリーズ【使徒達の日々】
   は、あと十二話残っています。請うご期待(微笑)」
ハイド「……待て」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


神海「【使徒達の日々】シリーズ、やっと始まりました。後書きには関連Lキャラもしく
  はオリキャラの皆さんに登場していただこうと考えますので……。今回は来栖川綾香
  さんにお越し頂きました」
綾香「よろしくね。……で、何、この話」
神海「今回、深い突込みは無しと言う事で(笑)。なにしろハイドラントさん編ですから」
綾香「……ふぅん(じと目)」
神海「あ、それと、関係ないのに私の出番があるのは、このシリーズが、神海の使徒内で
の交友関係強化の一環でもあるから、……なんです(笑)。できるだけ目立たないように
していきたいと思っていますが。



        【シリーズ・ごめんなさい】

>ガンマル様
『壁の花同盟』に誘われてしまったので、取りあえず(笑)。いやLメモには出すおつもり
はないようですけど(笑)
 綾香とは普通に友人をやってらしてるようですしね(笑)


>ハイドラント様
 ええと……。
 謝る必要はありませんよね、今回は(笑)
 多分……。
 あ、クソゲーの描写が未熟なのはお赦しを。精進します(笑)


>悠朔様
 えーと……(汗笑)


>川越たける様、EDGE様
 出演ありがとうございました。
 ……これからもよろしくお願いします(笑)


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


     −おまけ−他の男ども(笑)−

 部室から大勢の騒ぐ声を聞きながら、男達は庭先に座り込んでいた。

「戻ってきてれば……さすがに、入りづらいですよね」
「ま……羨ましい話ですよ。私には、少々活気がありすぎますが」
「均衡が崩れているので来たのだが……これは致し方が無いな……」
「…ああ…皆さん…おそろいで良かった……」
「あ、葛田さん」
「…ふぅ……もうすぐ…冬ですね…」
「ええ、寒くなりましたね……焚火でもしましょうか……」
「葛田師兄も神海さんも、そう気を落とさずに……」
「混沌たる世界は遠いな……」
『…はぁ……』


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


     −おまけ2−あと二人(笑)−


「ぜぇ、はぁ……地上か……。途中で引っかからなかったら一日二日で戻ってこられなかっ
たぞ……本気で洒落にならん……」
「あら、ゆーさく。さっきはどこ行ってたの?」
「あ、綾香? なんで浴衣なんて!?」
「ハイドのとこで……いいじゃない、あんな奴のことなんか。あ、制服と靴、持ってくれる?」
「お、おう……(素足に草履か……いいなぁ)」
「(くしゅんっ)……さすがに寒くなってきたわねえ。髪も上げてるからだけど……」
「…………(う、うなじが……。髪もまだ湿ってるし……(ぽ〜〜))」
「あ〜あ、今日はどうやって帰ろうしら」
「…………(やっぱり和服だよなあ……(ぽ〜〜〜〜))」
「どしたのよ、ゆーさく? さっきから黙っちゃって」
「……そういえば……(ぽ〜〜〜〜〜〜)」
「ん? なに?」
「……和服の時に下着を付けるのは邪道なんだよな……本来日本で下着に相当したのは―
―」
「?!!(バキッ!)」
「ぐはっ!? な、何も殴ることじゃないだろ!?」
「……う、うるさいわね!(真っ赤……になって制服の入っている袋を取り上げると、さ
っさと歩いていく)」
「綾香ぁぁ〜?(涙)」


「あ、ガンマル。これ持ってくれる?」
「へーへー。仕方ないな……(顔はほくほく)」



 無欲の勝利……ってわけでもないですが(笑)


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


神海「……というわけで、今回のごめんなさいは悠朔さんでした(笑)」
綾香「……………」
神海「笑い事で済むでしょうか……?(汗笑)。「綾香に嫌われるかどうか」が重要な価
  値観だとおっしゃってましたし……。
   ともあれ、悠さんとガンマルさんには、次の機会に幸せになってもらいますので、お許し
  下さい(笑)
   それでは」
綾香「……いいたい事は、それだけ?」
神海「(脱兎!)」

                              991018 神海